大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第55話 スゥ21歳、救出完了

 

 

 ハンコック達3姉妹に加え、テゾーロも保護完了。

 上手いこと、政府の役人にも海軍にも見つからないうちに助けることができた。

 

 マリージョアからそこそこ離れたところの岩陰で、偶然4人とも一緒に隠れてた……あるいは休んでたので、そこから私が、いつもの魔法の絨毯風の紙で連れ出した。

 そのまま夜の闇に紛れて『赤い土の大陸(レッドライン)』を降り、私が使っている隠れ家の1つにひとまず退避。

 

 そしてそこからシャッキーに電伝虫をかけて、彼女達を保護したいので連れ込んでいいか聞く。

 

 ハンコック達については、もともと『マリージョアに捕まっていた九蛇の子』として、シャッキーに以前から話はしてあった。だからスムーズに話は進んで、すぐに許可も出た。

 オマケとしてテゾーロも保護してもらえることになったし、よかったよかった。

 

 まあ、別にこの隠れ家でもよかったんだけど、私1人だけで使うことしか想定してないから、4人だとさすがに手狭なんだよね。交通も不便だし。

 

 シャッキーとしても、『九蛇』が絡んでる以上は他人事とも言えないわけだからって、気前よく『連れてきな』って言ってくれた。

 

 

 

 隠れ家でひとまず休んで体力を回復させた後、私の船でシャボンディ諸島に向かう。

 道中特に何もトラブルとかもなく、シャッキーの店に到着。

 

 なお、途中ここにくるまでに適当に服を買って、奴隷みたいなみすぼらしい、目を引くような姿ではなくしておいた。

 お風呂にも入ってもらって体もきれいにしてあるから、変に目立ちはしないはず。

 

「し、シャクヤク殿……ほ、本当に!?」

 

「ふふっ、今はしがないバーの店主よ。そんなにかしこまらないで……『シャッキー』でいいわ」

 

 当然ではあるけど、ハンコック達は、シャッキーを見て驚いていた。

 まあ、無理もないというか当然というか。『九蛇』の先代皇帝が、こんなところでぼったくりバーの店主やってるんだもんな。そりゃびっくりするだろう。

 

「アマゾン・リリーの先代皇帝……!」

 

「お亡くなりになったと聞いていましたが……」

 

「ちょっと事情があってね、現皇帝に立場を引き継いだ後は、ここで隠居させてもらっているの。もちろん、彼女もこのことは知っていて、了承してくれているわ」

 

 色々苦労を掛けちゃってるけどね、と少しばつが悪そうに笑うシャッキー。

 

 もう何年も前に引退したはずなのに、ハンコック達、きちんとシャッキーの顔知ってたというか、覚えてたんだな。それだけ小さいころから、海賊、ないし『九蛇』の戦士として生きてきて……そして、シャッキーにあこがれてたわけか。

 

 さすがの未来の『海賊女帝』も、大先輩にあたる人を相手にして、すっごい緊張してるようだ。

 『楽にしていいよ』って言われてはいたけど、まあ無理ないだろう。

 

 ……その後、一緒にいたレイリーの素性を聞いてもっと緊張してたけど。

 マリーもソニアも一緒になってガッチガチになってた。

 

「………………(何も言えない)」

 

 そしてテゾーロはそれ以上にガッッチガチになっていた。

 こちらも当然と言えば当然である。一応は『九蛇』っていう繋がりがあるハンコック達と違って、テゾーロの場合は、レイリーともシャッキーとも面識も何もないわけで……かろうじて私と知り合いってだけだからな。肩身が狭いと感じても仕方ない。

 ごめんねこんなとこに連れて来て。でも、アジトに1人残しておくわけにもいかなくて。

 

 何の事前説明もなしに、『海賊王の右腕』と『九蛇の元皇帝』と同じ空間に放り込まれて……ぶっ倒れないだけよく耐えてるというべきかもしれない。

 

 今現在、彼は店の隅っこの座席に座って縮こまっています。距離の取り方が露骨である。

 いや、悪感情からじゃないことはわかってるんだが。

 

 あ、いまレイリーがちらっと視線を向けた瞬間、びくって肩が跳ね上がるように震えた。

 

 ああ、あともしかしたらタイミング悪かったのもあるかもな……入店当初、いつもどおりシャッキーが、支払いができないってごねるチンピラ(テゾーロの数倍ガタイがいい、多分海賊)を締め上げてたところをモロに見ちゃってたから……。

 ハンコック達は、強い戦士にあこがれる価値観があるから、それを見てもむしろ尊敬してる感じになったし、私はいつものことだからもう何も逆に感じなかったけども。

 

 さて、それで……シャッキーの店にハンコック達を連れて来たわけだけど、このままここにずっと置いておくわけにもいかないし、そもそもそんなつもりもない。

 この後どうするかについては、実はもうシャッキー達に相談して、事前に決めてあるのだ。

 

 まず、ハンコック達に関しては、普通に故郷に帰すことにした。

 『九蛇』の本拠地である、『女ヶ島』こと『アマゾン・リリー』に。

 

 これに関しては、シャッキーと……もう1人。『女ヶ島』の先々代皇帝である、ニョン婆ことグロリオーサが、送り届ける役目を担うことになってる。

 ニョン婆とは、私も実はもう知り合いである。時々シャッキーの店に来るから。

 

 シャッキーが前々から、一時期『九蛇』の船に乗せていた娘として話してくれていたのに加え……ニョン婆、作家としての私のファンでもあったので。

 店で会ったりすると、新作の本の感想とか聞かせてくれるから、話してて楽しい。年齢はだいぶ離れてるけど、友達、っていう感覚であり……自意識過剰じゃなければ、娘とか孫みたいに扱ってくれることもあるし。

 

 さすがは元・女帝というだけあって、割と軽くて親しみやすい雰囲気の中にも、威厳みたいなものが……ないこともない感じの人だったな、と覚えている。

 

 まあ総じて、シャッキーと同じで特に堅苦しいやり取りをするような関係でもなく、普通に付き合えてる感じだ。

 

 ニョン婆は自身もこれを機に女ヶ島へ帰るつもりだそうで、ちょうどいい機会だと思ってるんだそう。

 

 そんで実は、その帰省の時に、よかったら私も来ないかって誘われてるんだよね。

 定住するわけじゃなく、遊びに行く感じで。

 

 女ヶ島には、まだ戦士として現役かどうかはともかく、私が船に乗せてもらってた時のメンバーも何人もいるし、『海賊文豪』である私のファンだっていう人もいるんだって。

 

 本来はよそ者は入ることができない島なんだけど、用事があってついでに行くわけだし、それに加えて、ニョン婆達の口利きがあれば大丈夫だとのこと。

 

 前々からシャッキーに聞かされて、『機会があれば』とは思ってたものの、今まで行くことがなかった場所なんだが……ようやく機会が巡ってきたかも。

 

 

 

 そして、もう1人。

 シャッキーの店に連れてきたのは、一応『ついで』という扱いになっている、テゾーロに関してだが……彼の場合は、どこか適当な島に送り届けて、そこで自立してもらうことになりそうだ。

 

 奴隷になる前は、もともとはいろいろな商売やって稼いでたみたいだし、色々ノウハウは持っているだろう。生活力はあるだろうし、心配はいらないと思う。

 

 ただ、それより何よりまず先に……テゾーロの場合は、ステラと会わせなきゃ。

 

 何せ4年前、私がステラを『マリージョア』から連れ出して以来、2人は会ってないのだ。

 ステラも、テゾーロは無事で、元気でやってるかって、事あるごとに心配してたし……もちろんその逆もそうだった。テゾーロも、ステラのことを思わない日は1日もなかったってさ。

 

 テゾーロが解放された(というか逃げ出した)ことについては、既にステラにも伝えてある。

 予想通り、いつものステラからは想像もできないような勢いで『会いたいです!』って言ってきたので、近いうちに会わせてあげる予定である。

 

 私としては、2人想い合ってるんだから、そのまま一緒に2人で仲良く暮らせばいいだろうと思うし、ステラ自身そうしたそうにしてたけど……テゾーロの方がちょっと微妙みたいなんだよな。

 

 いや、もちろんステラを嫌いになったとか、距離を置きたがってるとか、そういうわけじゃなく……あれだな。ただ単に、男としてのプライドみたいなものが邪魔してるんだろう。

 

 今現在、ステラは立派に就職して自分で稼いでて、借家だけど家も持ってる。

 対してテゾーロは、マリージョアから逃げ出してきたばかりで、身一つ。しかも、ちょっと栄養失調気味で体力も戻ってない。住む家も仕事もない。

 

 なので……今2人を一緒にすると、高確率で、ステラがテゾーロを養う形になる、と思う。

 そのへんが、テゾーロ的にはプライドがアレなんだろう。

 

 いや、実際一時的にはそういうのも仕方ないと思うんだけどね……力とか健康を取り戻すまでの辛抱だろうし、ステラだって気にしない、むしろテゾーロと一緒にいられればそれで幸せ、って感じだろうから。

 けど、それで納得できないのが男の子という生き物なんだろう。

 

 ま、これについては今後色々考えて解決策、あるいは妥協案を探っていくだろう。

 どう転ぶにせよ、まずは2人ともとにかく『会いたい』と思ってるのは同じだから……やはり、近いうちに機会を用意してあげないとだ。

 

 そんな感じで、ハンコック達とテゾーロについては近々、行きたいところ、行くべきところに連れて行き、会いたい人に会わせてあげる……ってことになった。

 

 

 

 それと、もう1つ。

 シャッキー達の方から、私達に……というか、私に話して聞かされたことが1つある。

 

 はっちゃんのことだ。

 

「そうですか。やっぱり、海賊に」

 

「ええ。……やっぱり、ということは……知っていたの?」

 

「いいえ、今聞きました。でも……タイガーさんのことをすごく慕ってる感じだったので、もしかしたら……とは思ってました」

 

「ハチらしいといえば、そうなのだろうな」

 

 マリージョア襲撃事件の犯人として、タイガーは世界政府から追われる身となった。

 それ自体はタイガー自身覚悟していたことであるし、事件後、タイガーは生まれ故郷の『魚人島』に迷惑がかからないように、島に戻ることなく去ることになった。自らが解放した、魚人や人魚の奴隷達を連れて。

 

 しかし、タイガーを慕う魚人島の荒くれ達はそれを良しとせず、『魚人の英雄を見捨てることはできない』として、普段は馬が合わずに対立すらしていた者達まで含めて団結し、彼の元に集まり……タイガーを船長とした海賊団を結成することになったらしい。

 名前とかはまだ決まってないそうだけど……後の『タイヨウの海賊団』だな。

 

 そして、はっちゃんもそれに参加することになったからって、数日前にシャッキー達にあいさつに来たんだそうだ。

 『もう前までみたいにちょくちょく、気軽に会いに来ることはできないかもしれないけど、今まで世話になった』って。

 

「スゥちゃんにも謝ってたわ。『魚人島に連れて行って案内してやるって約束してたのにごめん』ってね」

 

 そんな、気にしなくていいのに。

 『魚人島』に行けないでいたのは、単に私の都合が合わなかったのと、魚人島の人達が『人間』に対する苦手意識をなくすまでまだかかるかな、って思って慎重になってたのが理由なんだし。

 

 白ひげが魚人島をナワバリにして、魚人島での人攫いはほぼなくなったとはいえ、それまで海賊達が好き勝手やってた傷は深かっただろうし。

 

 ……あと、『今行ったらアーロンとかいるかも』って思ってちょっと怖かったのもあるな。

 

 ともかく、はっちゃんは海賊になったわけだ。

 これから会う機会があるかどうかはわからないけど、武運長久を祈らせてもらうとしよう。

 

 ……魚人島には、いつか自力で行こうかな。

 海底にあるところに行くのは、ちょっと怖いけど……いい『経験』になりそうだし。

 

 

 

 さて、じゃあこれからしばしの間、忙しくなりそうだ。

 『女ヶ島』はそこそこ遠いから、ニョン婆やシャッキーとのスケジュールその他の調整を考えると、もうしばらく行くのは後になりそうだし……先にステラとテゾーロの方を済ませるか。

 

 

 

 

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