はいどうも、スゥです。
自由気ままに作家業を続けながら海賊やってます。
『海賊文豪』なんて呼ばれちゃいるけど、私的には作家の方が本業で、海賊は副業……というかそうした覚えもないんだけど、まあそんな感じにとらえてますのでよろしく。
こないだも新作発表したばかりだしね。
タイトルは『破海の刃』。
とある悪魔の実の能力者の海賊に家族を殺されてしまった少年。
たった1人生き残った妹も、その能力者の力によって人外の怪物に変えられてしまった。このままでは怪物として討伐される存在になってしまう。
少年は妹を助けて元に戻すため、そして自分達のような思いをする者をこれ以上出さないため、諸悪の根源である男を倒すことを決める。
そのために、その能力者の一味を追い続ける『破海隊』に入隊し、その男と、その男が生み出した眷属である怪物達との壮絶な戦いに身を投じていく……というお話。
何でコレを書こうと思ったかっていうと、こないだ、開通したばかりの『海列車』に乗ってきたんだよね。
いやあ、スムーズに都市と都市が繋がるし、乗り心地もいいし、感動した。
政府関係者が多かったから、夜の空いてる時間を狙って乗ったけど……それでもやっぱり人数は多めだったな。
けどこれでも、今はまだ人数が少ない方だと思う。
開通したばかりで『本当に乗っても大丈夫なのか? 安全なのか?』って疑ってるような人もいただろうからな……実際、駅とかにいぶかしげな表情で海列車を見てる人も多かったし。
ま、気にしないで乗せてもらったけどね。
で、その時にまあ、前世の世界で400億の男を生み出した映画とか、その原作であるマンガとかを思い出して……この世界風に分かりやすく世界観を変えて書いてみたわけだ。
人気出るといいなー。たくさんの人に読んでもらえるといいなー。
さて、その辺はさておいて……今日、久しぶりに会うお客さんが来ました。
ステラと、テゾーロだ。
2人はマリージョアの事件の後、2人で暮らし始めて……ほどなくしてテゾーロも働き始めたと聞いてたけど、そんなに密に連絡取ってたわけじゃないから、現況はあんまり把握はしてなかったんだよね。
ほら私、不本意ながら海賊だから……海賊と仲良くしてるって思われると、2人にも迷惑がかかっちゃうし。
だから、たまに電伝虫とか手紙で連絡取りあうくらいに(手紙はモルガンズの会社を介してのやりとりだから、海軍や政府にはばれない)してたんだけど……おおむね、テゾーロの『商売』も含めて上手くいってたみたいだから、そんなに心配はしてなかったんだよね。
そのため、こうして直接会うのは何気に1年以上ぶりなんだけど……どうやら、何か私に相談があって訪ねて来たらしい。
いつも通り、秘匿性が確保できる個室レストランで話を聞いてみると……
「え!? テゾーロ……能力者になったの!?」
「ああ、取引の中で偶然手に入った『悪魔の実』があって……それを食べたんだ。俺が予想していた通りなら、その実の能力で、俺は無限の金を手に入れられる……そう思って」
「私もテゾーロから相談された時に……まあ、お金があるのはいいことだと思ったのと……仮に食べないとしても、裏ルートでも流通とかに乗せるには、いや、持ってるだけでも危険すぎる気がして……それなら、テゾーロが食べちゃったほうがいいんじゃないかな、って」
無限のお金とは……大きく出たな。
しかも、あまり『裏』に縁がないであろうステラでもそんな風に思うくらいにやばい悪魔の実なのか……一体どんなのなんだろう。
「どんな実なの? 名前は?」
「『ゴルゴルの実』。食べると、黄金を自在に操れるようになり、また、無限に黄金を生み出せるようになる……という話だったんだが」
そりゃすごい……経済とかぶっ壊せるレベルの能力だな。いかにもそれは、立場を問わず、世界中の強欲な連中が欲しがりそうな能力だ。
ステラが『持っているだけでも危険』『流通させるのも危険』だと言ったのもうなずける。
「でも、そんな感じで言うってことは……」
「ああ……黄金を操れるっていうのは本当みたいなんだ。だが……黄金を『生み出す』方の能力は……何をどうやっても、使える気配すらない」
「ガセネタだったってこと?」
「いや……その能力については、『悪魔の実図鑑』だけじゃなく、いくつもの文献に出てきているようで……それに、俺自身、なんとなくそういう力がありそうな気はしているんだ。根拠も何もなくて、直感的なものなんだが……」
でも、そういう直感ってバカにできないんだよね。
特に、悪魔の実の能力者は……直感的に、力の使い方を本能が理解するってパターンが多い。
『悪魔の実』ってのは、そのくらいにはわけのわからない力だ。
力自体はある気がする。でも、使えない。
けど、こんなこと他の誰にも相談できない。
黄金を生み出す能力者(かもしれない)なんて、力を制御できてない現状じゃ、特級の厄ネタだからな……後ろ暗い連中に知られでもしたら、どんな風に目を付けられるか。
悩んだ末に、自分達にとって絶対的に信頼できる相手であり、『能力者』としての先輩でもある私に声をかけた……ということね。
うーん……頼りにされたのは嬉しいし、力になってあげたいけど、『ゴルゴルの実』なんて、私も知らない能力だからな……原作に出てたのか? それとも、映画とかスピンオフ?
私の原作知識って、途中までで止まってる上に、映画もほぼ見てないからなあ……
ひとまず、個々の能力云々は抜きにして、純粋に『悪魔の実の能力』という部分だけで考えてみると……一番ありえそうなのは、単純に錬度不足かな?
私も『紙人間』になりたてだった頃は、上手く紙を操れなくて色々練習したもんな。
この力に目覚めた時は、火事場のバカ力でなんとかなったけど……それ以降は、かなり練習してようやく使えるようになったんだよ。
これについては、あらゆる悪魔の実で共通だと思うし……まずは修行し続けて様子を見る、ってのが1つの手じゃないかな。
……でも待てよ? 練習って言っても……
「テゾーロ。今あんたが使える能力って、その『黄金を操る』って奴?」
「ああ……見ててくれ」
テゾーロは、ポケットから金のインゴットを1本取り出し、手の上に乗せる。
するとその黄金は、アメーバみたいにぐにゃりと変形し始め……ブレスレットに変わった。
さらにその後、立て続けにネックレス、短剣、酒杯……と姿を変えて、最後にまたインゴットに戻った。
おぉ、すごい。鋼の錬金術みたいだ。自由自在じゃん。
「こんな風に、この能力については、時間を見つけてトレーニングしてるんだが……問題は……」
「トレーニング自体が難しいってことだね?」
「ああ……当たり前だが、この能力を使うには、操る『黄金』そのものが必要だ」
そう、黄金を操る能力なんだから、トレーニングにしろ何にしろ、黄金がなきゃ何もできない。
そして、『黄金』ってのは貴重で、高い。
今、手の上で転がしているインゴットも、テゾーロがそれなりにためていた貯蓄を切り崩して手に入れたものらしい。
調べたことないから、金の価格っておいくらベリーになるのかはわかんないけど……安いってことはないはずだな。練習用の金も、おいそれと量を集めることはできないだろう。
仮に『黄金を生み出す』能力が使えない理由が『錬度不足』だとしても……それを解消するには錬度を高めなきゃいけないわけで。
けどそれにはいくらでもトレーニングしなきゃいけないわけで。
トレーニングするには黄金が必要なわけで。
「……初期投資が必要なのか、この能力……」
「そうみたいなんだ。こんな扱いに困る能力聞いたこともない……」
貧乏人が食べたとしたら、全力で宝の持ち腐れになること確定の能力だ……。
「大量の黄金なんて、そう手に入るものじゃない。金庫や銀行でも襲えばそりゃ手っ取り早いんだろうが、そんなことをすれば海軍に目を付けられるし……何より、そういう、関係ない他者を不幸にするような商売はしないと決めてる。ステラと生きていくのに、恥ずかしいような男にはならないつもりだ」
「テゾーロ……」
「それでいいと思うよ。人間、生きたいように生きるのが一番だ」
「ああ……ありがとう。……しかし、そうなると結局、問題の解決は難しいというままだな……いっそスゥみたいに、自分の体が変わるような能力だったら楽だったのかもしれないが」
「その場合、テゾーロの体が黄金になるの?」
「それなら、自分の体の形を変えていればいいわけだから……練習も楽そうだ」
想像してみる。
くすんだ緑色の髪の毛や、ぴしっと決めたスーツ、艶のある革靴、整った顔……それら全部がきんきらきんになったテゾーロ……。テゾーロの黄金像……。
……うーん、微妙。
「スゥ。スゥ」
「ん? 何ステラ?」
「顔。顔に出てる」
「え?」
苦笑しながらステラにそう指摘された。
見ると、テゾーロがこう、なんというか……何か言いたいのをこらえているような、渋い顔になっていた。
あ、ごめん、つい想像しちゃって。
でも、仮にそうだったとしても……そんなに簡単に錬度ってのは高められるもんじゃないと思うけどね。
私だって、13歳で能力者になってから、結構長いこと賞金稼ぎやら何やらやってこの能力を鍛えて来て……それなりに錬度は上がった自覚はあるけどさ。それでもまだ、覚……
「……あぁ、そうか。もしかしたら」
「? どうしたの、スゥ?」
「うん、テゾーロの言ってた『黄金を生み出す』能力って、もしかしたらゴルゴルの実の『覚醒』のステージのことじゃないか、って思って」
「……? 覚醒、って何だ?」
どうやら、テゾーロは知らない様子なので、説明してあげることにする。
悪魔の実には、通常の能力行使のさらに上のステージとして、『覚醒』という段階が存在する。
『覚醒』のステージに至った能力者は、それまでよりもさらに強力な能力を使えるようになる上に、その実の系統によって、さらに特異な能力が発現することになる。
それが『
例えば、原作のドンキホーテ・ドフラミンゴの場合、『イトイトの実』の能力が覚醒したことで……周囲の物体を糸に変えて操ることができるようになっていた。
私の『パサパサの実』も、テゾーロの『ゴルゴルの実』も、どちらも同じ『超人系』だ。
私の場合は多分、『覚醒』すれば、『周囲の物体を紙に変える』能力あたりが発現するんじゃないかと思う。
そして、これが『ゴルゴルの実』なら……
「周囲の物体を……黄金に変える能力が発現する……!?」
「かもしれない、って程度だけどね」
0から黄金を生み出すんじゃなく、今あるものを黄金に変える……とかだったら、よっぽどしっくりくる気がする。
そんな段階があるのか、という知識と共に、新たな予測を立てることができて……テゾーロは、より一層やる気を高めることができたようだった。
……ただ、その『覚醒』の段階に至るにしても、道のりはすごく長いぞ、って話なんだけどね。
自慢というかひけらかすような形になっちゃうけど、それなりに戦闘の中で力を使いつつ、10年近くももう能力を鍛え続けてる私も、未だ『覚醒』の領域には至ってない。
……というか、『覚醒』のための条件ってそもそも何なんだろうな……そのあたりだけでもわかったら多少楽かもしれないんだけど、原作じゃ出てこなかったし……。
……レイリーあたりに聞いたら教えてくれないかな?
「結局練習が必要になる、ってことか……先は長いな」
「いいじゃないテゾーロ。もともとそんな能力なしでもやっていくつもりだったんだから……時間がある時ある時で鍛えていけば」
「ああ、それはそうだが……せっかく食べたんだから、使いこなしたいだろ? このままじゃ俺、無駄にカナヅチになっただけだぞ」
「ああ、うん、それは確かに損した気分になるよね……手っ取り早く上達させるには、能力を使う規模を大きくしていって、コントロールの感覚をつかむのがいいと思うんだけど……」
それができないんだよね……黄金が貴重だから。
…………あれ、でも、待てよ?
「……黄金、か……多少ならなんとかなるかもしれない」
「「え?」」
不意に私がつぶやいた言葉に、テゾーロとステラがきょとんして聞き返してくる。
「テゾーロ、ステラ……来週の今日って空いてる?」
「特に予定はなかったはずだが……」
「じゃあさ……ちょっと、私の『取材』に付き合わない?」
『ゴルゴルの実』に関しては、ネットで調べてみると『黄金を生み出す能力』があるって書いてあるページと、そういう能力はなくて黄金を集めたのはテゾーロの手腕だって書いてあるページの両方あって、判別つかなかったです。
映画でも明言されてなかった気がするし……
なので、独自解釈で『覚醒』によるもの、ってことにしました。
違和感あったらすいません。
あと、本来『ゴルゴルの実』はテゾーロが某鳥のオークションから強奪したものですが、この世界では取引中に偶然手に入った、ってことになりました。