大文豪に私はなる!   作:破戒僧

59 / 306
第59話 スゥ22歳とゴールドラッシュ

 

 

 テゾーロとステラに相談を受けた翌週。

 私が2人と一緒に訪れたのは、グランドラインにあるとあるさびれた島だった。

 

「スゥ、ここは?」

 

「鉱山の島だよ。いや、鉱山だった(・・・)島、かな。もう、すっかり枯渇しちゃったそうだから」

 

 簡単に説明すると、ここは数年前まで、金鉱山があった島だ。

 島の持ち主はさる大富豪で、雇った労働者達に日夜金を掘らせて、それを加工して売りさばくことで荒稼ぎしていたらしい。

 

 もちろん、黄金狙いの海賊やらギャングやらコソ泥やらが後を絶たなかったそうだけど……そこはきっちり対策済みで、海軍や私兵に島を警備させ、罪人は厳しく処罰することで自分の利権を守っていたそうだ。

 政府の認可が下りたうえで行っていた採掘だったから、ある種の公共事業扱いになってて……それで海軍も動いてくれてたってわけらしい。

 

 しかし、そんな金鉱山もすっかり枯渇してしまい、もう金が取れなくなった。

 

 稼げなくなった島のために、維持費やら何やらを発生させるのもバカらしい話。この島はあっさりと放棄され、当時の設備やら何やらが、ほぼ不法投棄ばりにそのまんま放置されている……というのが、この島の現在である。

 

 ただ、今でも全く金が取れないわけでもないらしい。

 運が良ければ、ザクザク掘って……ほんの砂粒程度の金が出てきたりとかもするそうだ。

 

 しかし、確実に取れるわけじゃないのに加え、到底労力に見合った稼ぎにはならないので……金が取れるとしても誰ももう見向きもしない、ってわけだ。

 

 それどころか、中途半端に採掘が進められていたおかげであちこち脆くなってて、崩落の危険すらある。

 

 今では、たまに物好きな旅行者が記念に掘っていったりするくらい。浮浪者すらここに魅力を感じてはいないという話だ。

 

「それで……俺達はその『物好きな旅行者』ってわけか?」

 

「もともと私は、ゴールドラッシュが終わった夢の残骸、っていうものを見てこようと思ってここに来る予定だったんだけどね……もしまだ金が取れるなら、テゾーロ達にとっては都合がいいことが起こるかもしれない、って思ってさ」

 

「えっと……つまり、掘るの? 金を?」

 

 さっき私が説明した話を聞いていたステラが、すごく頑張って爪の先程度の金が出るか出ないか……という現状のここで採掘をするのかと、ちょっと不安そうに聞いてくる。

 ついでに言うならステラ、普段着なので、体力もそうだが土木作業とか無理そうである。

 

「安心して、そうじゃないから。テゾーロの能力を使うんだよ」

 

「? 俺の……能力?」

 

「そ。テゾーロの能力で、手持ちの黄金の形を変えて、地中を探れないかなって思って。ほら……地引網で根こそぎ魚とか取るみたいに」

 

 それを聞いて、イメージができたのか。『ああ、なるほど』という感じの顔になるテゾーロ。

 

 もちろん、土の中だから、網の目みたいに細かい形でやるのは難しいだろうけど……先週見たみたいに、液体みたいに金を扱えるなら、それに近いことは可能だろう。

 ろ過装置の中を通る水みたいに黄金を動かし、その途中で砂金とかがあったら、そのまま『黄金の地引網』に取り込んでしまう。

 

 その繰り返しで、網が届く範囲の金を集めれば……多少は集まるんじゃないかな、と思ったわけだ。

 

 ま、元々が枯渇してる鉱山なわけだから、ホントに『多少』だけどね。

 

 それでも、人力で掘るよりずっと効率よくできると思う。

 

「こんな夜遅い時間にここに来たのも、俺に能力を使って採掘をさせるためだったのか」

 

「やり方が特殊すぎるから、他人に見られるわけにはいかないからね。一応私も周囲は警戒するけど」

 

 見聞色の覇気で。

 

「まあ、やってみる価値はあるか……何もなくても、失うものはせいぜい時間と労力くらいだしな。じゃあ、さっそく……」

 

 言いながらテゾーロは、『ゴルゴルの実』の能力で手に持った金のインゴットをどろりと変形させ……それを地面の中にしみこませていく。

 そしてそのまま、ゆっくりと歩いて……歩きながら、地中で『黄金の地引網』を動かし、地中の黄金を探って回収していく。

 

 何も言わず、黙って集中して作業に当たっているようだけど……時々『おっ』ってつぶやいたりしてるのを見ると、たまに砂金とかを吸収出来てるみたいだな。

 

 そのまま小一時間続。

 

「どんな感じ、テゾーロ?」

 

「まあまあじゃないか? まんべんなくやれば結構残ってるもんだな……とはいえ、通常の採掘方法でやろうとしたら大赤字だろうから、ここが放棄されたのは妥当な判断だったと思う」

 

「そっか……じゃあ、今そうしてテゾーロが回収してるわずかな黄金も、ある意味では、このへんの捨てられた設備類と同じ、『夢の残骸』なのかもね」

 

「ははっ、さすがは作家の先生だ、表現が実に…………ん?」

 

 そこでふと、テゾーロが何かに気づいたような表情になる。

 

 ? どうかしたのかな?

 

「どうしたの、テゾーロ?」

 

 気になったのか、ステラもそう尋ねるけど……テゾーロは返事をせず、しばらく、何やらぼーっとしているようだった。

 

 その後、なぜか冷や汗みたいなのをかきながら、

 

「……なあ、スゥ。ここの鉱山って……枯渇したんじゃなかったか?」

 

「? そう聞いてるけど……それがどうかしたの?」

 

「いや、その……だいぶ深い位置になんだが……やたらまとまった量の黄金があるみたいで……」

 

「「え?」」

 

 テゾーロはちょっと戸惑った様子のまま、黄金の地引網を伸ばしている手に力を籠めるようにして……なんか、すごく集中してるっぽい?

 しばしそのまま時間が経過。ほんの数分だけど、もっと長くに感じられた気がした。

 

 するとテゾーロは、もう片方の手も添えて、畑から大根とか芋を引っこ抜くような動きでぐいっと網を引っ張り……次の瞬間、野菜の代わりに金色の塊が地中から出てきた。

 

 土砂を押しのけて『ボコォッ!』と顔を出したのは、もちろんというか……

 

「「金!?」」

 

「は、ははは……おいおい、とんでもないもの掘り当てちまったよ……どうする、コレ?」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 約600㎏超。

 今、『おおきなかぶ』よろしくテゾーロが掘り当てて引っこ抜いた黄金の総重量である。

 

 しかも、テゾーロの能力で割と不純物も取り除いた状態でコレである。

 

 すごいもん掘り出しちゃったな……まだこんなに金が残ってたんだ。ここの管理をしてた大富豪とやらは気づかなかったのか。

 

「どうやって地下の構造なんて調べてるのかはわからないけど……無理もないと思うぞ? やたら硬くて大きな岩盤の向こう側に残ってた金鉱脈から引っ張ってきたからな。むしろ、通常の採掘方法じゃ、そこまで到達しても掘り進められなかったと思う」

 

「金を自在に操れるテゾーロだからこそできた採掘法ってことか……いや、それにしたってすごい量が回収できたもんだね」

 

「えっと……コレ、もらっちゃっていいのかしら? ここの島の持ち主とかに、報告とか……」

 

「……しない方がいいと思うよ。これ、確実に厄介ごとになるから」

 

「同感だ。ネコババしたくて言ってるわけじゃなく……いやまあ正直したいとも思ってるが……仮に正直にこれを土地の持ち主に渡せば、どうやって掘り出したのか説明しなきゃいけないしな」

 

 そうなると、テゾーロの『ゴルゴルの実』の能力のことも話さなきゃいけない。

 ……うん、厄介なことになる気配しかしないな。黙ってよう。

 

 いやしかし……ギリギリなんとか私の船に乗るかどうか……って量だな。重さ的に。

 賞金稼ぎやってた頃に、賞金首を含めた、海賊船からの鹵獲品を搭載できるように、積載可能重量は大きめになってるけど……まさか黄金ばかりこんなに積み込む日がこようとは。

 

「どこに運ぶコレ? テゾーロ、どこかに安全な隠し倉庫とか持ってたりする?」

 

「一応そういうのは何件か押さえてはいるが……ていうかスゥ、もしかしてコレ全部俺達に渡すつもりか?」

 

「え!? そうなのスゥ!?」

 

 驚いたように2人が言うけど……いや、だって私別に黄金とかほしくないし。ここでとれた黄金は、もともとテゾーロの練習用に全部渡す予定だったじゃん。

 お金なら私、作家としての収入で今んとこ足りてるんだってば。

 

「いや、そんな……いくら何でも、こんだけ引き当てておいて全部俺がもらうわけには……」

 

「けど、もらっても私使い道無くてさあ……まあ、ここまでの運賃くらいならもらってもいいかもしんないけど、コレ掘り当てたの全部テゾーロじゃん。私何もしてないよ」

 

「それはそうだが……」

 

 納得できない、という感じのテゾーロ。

 

 金額が大きすぎて――いやいくらになるのかもそもそもわからないんだけど――独り占めするには気が引けているんだろうか。

 ホントに私はいらないんだけど、でも……こういう時って、受け取ってもらえない、自分1人の取り分だけが多い方が負い目に感じちゃったりすることもある、か。

 

 それなら……

 

「あー、じゃあさ。ひとまず全部テゾーロが持ってってよ。今言った通り、私が持ってても特に使い道はないもんだし……私、ほぼほぼ根無し草だから、置いておく場所もないし。ただ……」

 

「? ただ?」

 

「近々、船を修繕とか新調するかもしれないってちょうど思っててさ。その時になったら、料金とか頭金で相談させてもらうことにするよ。だから、その時まではテゾーロが預かってて。その方が、私のところで宝の持ち腐れ状態にして、死蔵しとくより有効活用でしょ?」

 

「ああ、まあ……そういうことなら」

 

 よし、OK。納得したな。

 これで黄金は全部テゾーロのものだ。

 

 何、船を新調する時まで預けておくんじゃないのかって?

 

 確かに、私はそう言った。船を新調するときになったら、お金を出してもらいに行くと。

 

 しかし、私は『近々』と言っただけ。しかも『かもしれない』と言っただけ。

 具体的にいつ船を新調、ないし修繕するかなんて話はしていない。

 

 つまり……私がその気になれば……

 船の新調……すなわち、金の受け渡しは……

 

 10年、20年後ということも……可能だろう……ということ……!

 

 ほら、ステラは気づいてるよ、私の意図に。

 気付いて『この人はもう……』的なジト目を向けてきているよ。かわいいね。

 

 というか……なんか、こんなこと考えてたら、銭ゲバでブラックなギャンブルものの物語が書きたくなってきたな。

 帰ったらプロット考えてみようか。

 

 さて、じゃあ……明るくなる前にさっさと帰りましょうかね。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。