本文中でも乗せてありますが、まあ一応。
『新世界』の洋上に浮かぶ、黄金の巨艦『グラン・テゾーロ』。
全長10㎞を超える大きさのこの船には、カジノ、スパ、ホテル、レストラン、劇場、エステ……その他諸々、あらゆる娯楽が揃っている。
船でありながら独立国家として認められていて、世界政府加盟国の要人や貴族、海賊や海兵、さらには天竜人までもが訪れて遊んでいく場所。
世界政府によって認められた『中立地帯』であるこの船では、海軍も海賊を捕らえるようなことはしない。できない。いうなれば治外法権。
まさしく、世界最高のリゾート地。海の楽園。
そんな場所を作ってしまったっていうんだから……テゾーロとステラの商才には、驚かされるしかないよなあ……。
「ようこそいらっしゃいました、スゥ様」
全面が黄金できんきらきんの『グラン・テゾーロ』の正面入り口から入ったところにある、これまたきんきらきんの黄金の港。
……の、さらに奥にあるVIP専用のスペースに着港。
到着した私の前に、到着を事前に聞いて待っていたんであろう、赤い髪に褐色肌、すごく大胆なドレスが特徴的な美女が現れ、優雅な仕草でお辞儀をする。
彼女はバカラ。この艦の、VIP専門コンシェルジュだ。私がここに来た時は、いつも彼女が案内等を買って出てくれる。
「久しぶりー、バカラ。今日もよろしくね。テゾーロは?」
「テゾーロ様はホテル『ザ・レオーロ』に。ご希望でしたらすぐにでもお通しするようにと仰せつかっておりますが、すぐに行かれますか? それとも、少し遊んでから行かれますか?」
「待ってくれてるならこのままいくよ。待たせるのも悪いし、用事もすませちゃいたいし。案内を頼める?」
「かしこまりました。では、お車を用意しておりますので、どうぞこちらへ。それと……」
バカラは、後ろの方の大きな扉を手で示しつつ、私の後ろに目をやり、
「お連れの方々についても、こちらで案内をいたしますわ。ハニー、ここまでお疲れ様。スタッフエリアに戻って休んでちょうだい」
「そうさせてもらうわ……じゃあ、あとは後はよろしくね、バカラ」
そう言って、私と一緒に乗り込んだ金髪の美女……ハニーは、バカラの横を通り抜けて進み、バカラが示したのとは別な扉に入っていった。
「リュビ、サフィル、エムロード、あなた達はどうする?」
「はい、じゃあ私は遊んでいく! 久しぶりにここの金色のプールでいっぱい泳ぎたい!」
「サフィルは元気ね……私はもう休むわ。スタッフ用のサロンは使っても?」
「そちらでもいいけど、オーナーからVIP用ホテルエリアの手配をいただいてるわ。よければそっちを使ったらどうかしら?」
「あら、いいの? じゃあお言葉に甘えて。エムロードはどうする?」
「私も休みたいけれど……報告書を書き上げてからにしますわ。記憶が新しいうちに」
彼女達3人……リュビ、サフィル、エムロードは、私が旅の途中で出会った……というか、奴隷商人にさらわれそうになってたところを助けてあげた縁で知り合った娘達である。
リュビは、服や髪、ヒレの色が赤っぽくて、割と気が強くてしっかり者。3人の中ではリーダーみたいな立ち位置かも。スジベラの魚人。
サフィルはちょっと小柄で、子供っぽく明るい元気っ娘。ムードメーカーとも、お調子者とも言えるかも。髪や服、ヒレの色は青。コバルトスズメダイの魚人……だったかな。
そしてエムロードは、ですわ口調が特徴的で、他2人より少し大人しめな感じ。優しくて面倒見がいい。髪や服、ヒレの色は緑が基調。確か、エンゼルフィッシュの魚人。
彼女達3人、今はこの『グラン・テゾーロ』のスタッフをやっている。魚人の特性を生かして、水中での仕事とか……あと3人ともかわいいから、ホールスタッフなんかも。
そして、さっき先に歩いていった金髪美女……ハニーも同じく、ここのスタッフである。
というか、バカラと同じコンシェルジュだ。VIP専門の。
彼女については……まあ、また今度でいいか。
そんなスタッフ達がなぜ、私の旅に同行していたのかというと……まあ、仲間というより従者的な感じでっていうのは、こないだ話した通り。
話せば長くなるんだけど、簡単にまとめると……ある人に『お前どっか抜けてんだから、面倒見てくれる部下の1人や2人連れてっとけ』って言われてね。
それで、少し前からだけど、テゾーロに彼女達を借りて、同行してもらってたんだよ。毎回じゃないけどね。
まあ実際、それで助かる部分も多かった。
船に私1人しかいないと、雑務も何もかも自分でやらないといけないし、疲れた時にちょっと舵を任せて自分は一休み、ってこともできない。
1人旅じゃどうにもならず、諦めてた部分だ。もっとも、それを承知の上で1人旅してたんだけどもね、当然。
けど今回みたいに……特に私は突発的に執筆で徹夜して寝不足になるので……私が休んでる間の舵取りを任せられる仲間がいるのはすごい助かった。
それでも、やっぱ1人旅の方が気楽でいい部分もあるんだよねぇ……
「ではスゥ様、こちらへ。と、その前に……規定ですので、一応パスの確認を」
「あーうん、はいはい。コレね」
言われて私は、手のひらから1枚のカードを取り出す。
金色に光り輝くその名刺大のカードは、こんな見た目だけど実は紙製。もちろん、タダの紙じゃなくて、偽造不可能な特殊な素材だけど。
けどあくまで『紙』だから、私が体の中に隠しておけるわけだ。
これは、世界で私しかもっていない、『グラン・テゾーロ』の永久フリーパスである。ここに初めて来たときに、テゾーロにもらった奴だ。
これがあれば、『グラン・テゾーロ』にあるどんな施設でどれだけ遊んでも、飲み食いしても、全てがタダ、というもの。オーナー公認の最強のパスポートである。
いやあ……今になってもなお思うけど、すげえもんもらっちゃったな……。
貰った当初は、恐縮そのものだったわ。天竜人すら手に入れられない最上級のパスだぞ。
「はい、確認しました。では、どうぞこちらへ」
バカラはカードを確認すると、そこに止めてあった高級外車みたいな車に私を案内する。
後部座席に私を乗せると、彼女の運転で走り出した。
ほどなくして、『グラン・テゾーロ』中央部にある最高級ホテルであり、テゾーロの居城でもある『ザ・レオーロ』に到着。
そのVIPルームで、すっかり見知った……しかし、昔よりもちょっと逞しくなった男性と、昔と変わらない美しさを持つ女性の2人が待っていた。
「やぁ来たか、スゥ。久しぶりだな……元気そうで何よりだ」
「テゾーロもね。ステラも、久しぶり」
「ええ、ホントに。『4つの海』の旅は楽しかった?」
「うん、とっても。いろいろお土産とか、お土産話とかあるよ。あ、お土産は船に積んであるから……」
「ああ、後でスタッフに運ばせよう。船の整備も同時にやっておくよ。さ、今日はスゥの帰還祝いも兼ねて盛大なショーにしないとな。楽しんでいってくれよ」
『黄金帝』。『新世界の怪物』。そんな風に言われているそうだ。
闇商人であったテゾーロだけど、途中からは海軍や世界政府にも目をつけられて、ステラ共々追われる身になった。さらに、金目当ての他の海賊達や、海賊以外の裏稼業からも。
しかし、その頃には、テゾーロ自身はもちろんとして、強力な仲間達を揃えていたため、それをはねのけ続け……こうして非武装地帯の王として、『新世界』に君臨するまでになった。
体格もがっしりして、顔にも少ししわが増えて、威厳みたいなものが出てきたテゾーロだけど……少年みたいに無邪気そうに笑うところは、あの頃から全然変わってないな。
なんだか見ていて安心しちゃう。……私より5つも年上なんだけどね。
……そのテゾーロよりさらに2つ、私の7つ年上のはずのステラについては……ええと、女性に対してごめんなんだけど、君、今年38では……?
女子大生くらいにしか見えない、いや、下手したらもっと若く見えるんだけど……美魔女?
それとも、件の『悪魔の実』の能力だろうか? ありそうだな……世の中には、副作用として年を取らなくなる『悪魔の実』もあるみたいだし。それと同じ、あるいはそれに近い効能が……?
いやでも、ステラってもともと肌綺麗で若々しかったし、案外、素でコレっていう可能性も……
いやでもしかし、ステラがいつの間にか能力者になってたのにはびっくりしたなあ……しかも、中々どころじゃなくレアな、分野次第ではチート級に強力な能力だったし。
聞かされたのはもう何年も前だけど、その時には『えぇ!?』って大声出しちゃったっけ。
恐らくそのリアクションを狙ってたんであろう2人は、おかしそうに笑ってた。
けどまあ、そのへんの事情とか関係なしに……2人が並んでるの、絵になるなあ。
うんうん、幸せそうで何よりだよ。
しばしの雑談の後、私はホテルの部屋……というか、事実上私の家(の、1つ)として使ってる部屋に案内され、そこで正装に着替える。
大人しめだけど艶やかな、エンパイアタイプのドレス。
バカラに丸投げ……もとい、任せて選んでもらった奴である。私、こういうの興味ないせいで、あんまセンスないので。
その後は、今夜のショーが行われるステージの、ロイヤルランクとかいう席に案内された。
ここはテゾーロが個人的に仲良くしている人を招くための特別な席らしく、いるのは私と、コンシェルジュだけ。
が、いるのはバカラじゃない。お仕事モードに戻り、セクシーなドレス着用のハニーである。
彼女についてちょっとだけ説明すると、彼女は実は元々海賊で、私の敵だった。
その時の名前は確か、『ハニークイーン』。本名じゃなくてコードネームみたいな感じだけど。
『東の海』を旅してる途中だったんだけど、世界一高価なからくり時計っていう噂の『ダイヤモンドクロック』っていうのを見に『ねじまき島』という島に行った時のことだ。
その島はしかし、『トランプ海賊団』という一味に占領・支配されていた。
そこに入り込んだ私を見つけたハニー(当時:ハニークイーン)が、私を攫って自分達の船長……ベアキングとかいう奴への貢ぎ物にしようとして、部下を率いて襲い掛かってきたのである。
が、見たかったものが見れなかったうえに、貢ぎ物呼ばわりされて腹が立っていた私は、それらを一蹴。部下達は全滅させたが、能力によってハニーだけは逃走。
そしてそれを報告したんだろう。今度はその『ベアキング』も含めた、トランプ海賊団の総力で私を捕らえに、あるいは殺しに来た。
が、たかだか懸賞金額1160万ベリー程度の奴に負けろって方が難しい。
体が鋼鉄の硬度になる『カチカチの実』の能力が自慢らしかったが、覇気使ったら普通にダメージ通ったし、普通に斬れた。そのまま一味全員ぶちのめして気絶させ(ハニー含)、島の人達に通報をお願いした。私も海賊だから、海軍は呼べないので。
その後は、お礼ってことで、ねじまき島特産の色々なからくりアイテムをもらい、『ダイヤモンドクロック』も見せてもらった。
さらに、材料費と製作費をもらえれば、好きなからくりアイテムを作ってくれることになったので……その手柄になってくれたトランプ海賊団には、ちょっとくらいは感謝してもいいかも、と、思ってた。
それから数か月後。
ちょっと用事があって『偉大なる航路』に一旦戻った時に、とある島に潜伏していた彼女に再会したのである。
隙を見て彼女だけ、海軍の監獄船から逃げ出したらしい。
しかし、『東の海』でイキってる程度の力しかなかった彼女には『偉大なる航路』のレベルは高すぎた(彼女の懸賞金は780万だったはず)。
海賊に襲われ。賞金稼ぎに襲われ、人攫いに襲われ、海軍に追われ、ちょっともう可哀そうなくらいに憔悴していた。
再会した時、なりふり構わず『何でもしますから助けてください』って、言ってきて……。
しかも、ちょっとその時の状況が状況だったのも合わさって、まさかの全裸土下座だったもんで……さすがにちょっと哀れになったので、手を差し伸べた。
で、その後、見た目はいいので普通に働けばいいんじゃないかってことで、テゾーロに相談したところ、ここの従業員として雇用することになったのだ。
そこからは、一度死んだ気になって努力して、数年後、実力で上級コンシェルジュの座を勝ち取った……というのが、彼女の来歴である。
今ではその頃のことも笑い話にできるくらいには持ち直してるし、恩人として私のことも慕ってくれているので、いい友達である。
あと、個人的には彼女を助けた理由の一つに……もったいないから、ってのもあるんだよね。
せっかく『
ここ『グラン・テゾーロ』は、海賊も訪れるため、従業員にも護身その他の訓練を徹底してる。能力者であればなおさらだ。
警備責任者のタナカさんや、ディーラーのダイスを筆頭に、そのへんをきっちり鍛えてくれる面子が揃ってる。覇気を使える者も少なくない。それこそ、リュビ達やバカラだって結構強いし。
今では、警備の一端を任せられるくらいには十分強くなったそうだ。
一回手合わせしたことあるけど、今の彼女なら、かつての『トランプ海賊団』も完封して全滅させられるだろうね。うんうん、いいことだ。
ところで、ちょっと気になってたんだが……
「ハニー、今日のステージって、ステラやテゾーロも出て歌うんだよね?」
「ええ、その予定ですよ。その後、こちらにいらして宴席を共にするとのことです」
お仕事モードで他人の目もあるからか、敬語のハニー。
「そっか……でも、座席、それより多いけど……後、他に誰か来るの?」
このロイヤル席には、つくことができる座席が……今、全部で6つ用意されてる。
うち1つは私が座ってて、ステラとテゾーロがこの後来るとして……残り3つは誰?
「少々到着が遅れておりますが、ボア・ハンコック様と、ボア・サンダーソニア様、ボア・マリーゴールド様がいらっしゃる予定です。当初は明日到着の予定でしたが、予定が早まったとかで」
「あ、そうなんだ。それは楽しみ」
「ただ、ステージに間に合うかどうかは微妙だそうですが……あ」
すると、明かりが消えて……ステージにスポットライトが。あ、もう始まるのかな?
そして、出てきたのは、黄金の衣装に身を包んだテゾーロ……ではなく、
テゾーロはメインだからね、まずは前座の娘みたいだ。
……見たことない子だな? 新人かな……まだ中学生か、高校生くらい?
「私もさっき、打ち合わせの時に聞いたのですが、最近新しく入った歌姫だそうですよ。テゾーロ様が直々に出向いてスカウトした子で……ボイストレーニングなどの訓練を始めて、僅か3か月で見習いを卒業。前座ではありますが、今日、記念すべき初舞台なんだとか」
「へえ……そりゃ楽しみ」
ステージの上で、少しだけ緊張した様子で立っている……しかし、音楽が鳴り始めると、一気にノリノリになって満開の笑顔を見せる、赤と白の髪の少女。
なるほど、一目見てわかる……ステージの上で、これでもかってくらいに生き生きしてるな。
演技力がすごいのか……あるいは、あれは演技0で、心の底から歌が好きなのか。
なんとなく、後者の気がする。
手元にタイムスケジュールが書かれた紙が置いてあったので、見てみる。
名前……へえ、ウタちゃんっていうんだ。うんうん、これはホントに将来有望だな。
★★作中に(突然)出てきたキャラ達について★★
〇リュビ
ゲーム版(GBA)に登場したキャラクター。
スジベラの魚人。
気が強くしっかり者。魚人3人娘の中ではまとめ役。
イメージカラーは赤色(髪とか服とかヒレとか全体的に赤が多い)
〇サフィル
同じくゲーム版のキャラ。
コバルトスズメダイの魚人。
明るく元気で子供っぽい性格。3人組の中ではボケ担当。身長一番低い。
イメージカラーは青。
〇エムロード
同じくゲーム版のキャラ。
エンゼルフィッシュの魚人。
性格は丁寧かつ冷静。『~ですわ』口調が特徴。身長一番高い。
イメージカラーは緑。
〇ハニー
劇場版第2作『ねじ巻き島の冒険』に、敵海賊団の幹部として登場したキャラ『ハニークイーン』。
林原めぐみヴォイスでお色気担当の美女。
この世界では4つの海漫遊中のスゥに出くわしてボコられた後、色々あって仲間と呼べる立ち位置になった様子。
彼女との出会いはいつかもう少し詳しく書くかも。
なお、魚人3人娘はゲームが昔過ぎてネット上にもあんまり画像もないみたいで……変なところから引っ張ってきて申し訳ない。
作者が昔やったの覚えてて、雰囲気とか設定的にちょうどよくて……