内容はまあ……タイトル通りです。あの美女との出会いが描かれる予定。
では、どうぞ。第66話です。
これは、私がまだ『4つの海』を回っていた頃。
そのうちの1つである『東の海』であった、ちょっとした出来事のお話。
「はー……気持ちいい」
とある島にて、私はゆっくりと足を延ばして温泉……露天風呂を堪能していた。
やっぱり湯船にきちんとつかって温まれるお風呂はいいね……船旅だとどうしてもお風呂はシャワーとか、あるいは体拭くだけとか、簡易的な感じになっちゃうから。
大きい船ならそれもまた違うんだろうけどね。大掛かりなバスルームとかもつけられるんだと思う。
船って大きくなるほど、動かすのに人員多く必要になるからなあ……。帆船とかは特に、帆をはったり畳んだり、碇を上げたり下ろしたり……
基本1人旅の私には、今くらいのサイズがちょうどいいんだよね。
なので、島に着いた時、そして宿屋に泊まれる時はきっちりと利用させてもらって、お風呂でゆっくりリラックスする……それが私のいつものやり方である。
しかし、不意にお風呂場の壁にかけられている時計が目に入った時――お風呂場に置いておいて平気な時計なのかな。曇らずに文字盤がよく見える――ふとあることを思い出してしまった。
お風呂で気分がよくなって、それで忘れかけていたんだけど……はぁ。
もともとこのへんの海域に来たのは、目的があってだった。
『ねじまき島』という島に、世界一高価なからくり時計『ダイヤモンドクロック』なるものがあると聞いて……ちょっと見てみたいなと思って。
あと、その島ってからくり系の技術が発展してるそうだから、面白いアイテムとかあったら買おうかな、って思ってきたのだ。
しかし、その中継地点として立ち寄ったこの島で、その『ねじまき島』が、『トランプ海賊団』なる海賊団に占拠されてしまっていると聞いた。
海賊達は島を支配して圧政を敷き、島民達を自分達のために強制労働させているらしい。
島にある数々のからくりアイテムや武器、そして件の『ダイヤモンドクロック』も、そいつらの手中にあるんだとか。
なんだ……じゃあ見るのは無理かな、と思って今、不貞腐れながらお風呂入ってます。
まあ、その海賊団蹴散らせば見ることもできるんだろうけど、どうしよっかな……『経験』のためとは言っても、面倒ごとを自分から起こすのは、あんまり好きじゃないんだよね。
でも、せっかくここまで来たんだし、世界一高価なからくり時計も見てみたいし……
なんて思っていると、お風呂場の扉がガラガラッ、と開くのが聞こえた。 誰かほかのお客さんが入ってきたのかな?
……あれ? でも宿の店主さん、今日はまだ私以外にお客さんはいないって言ってた気が……
「あらぁ? なぁんだ、先に入ってる人がいたの? 脱衣場には何もなかったから、てっきり私の貸し切りかと思ったのに」
そんな声が聞こえたので振り向いてみると、そこに立っていたのは、すっぽんぽんの金髪美女。
いやまあ、お風呂なんだから裸なのは当たり前だけどね。湯船入ってるけど、私もそうだし。
あ、脱衣場に何もなかったのは、私が荷物とか全部、とある方法で『収納』しているからだ。貴重品とか盗まれたりしないようにね。それで勘違いさせちゃったみたいだな。
その女性は、スタイルのいい裸体を隠すこともなく、ウェーブのかかった髪をかきあげるようにしながら歩いてきて、そのまま湯船に入る。……入る前にかけ湯くらいしなよ。
そして、なぜか私の顔を覗き込んできた。え、何?
「……ふぅん? あなた、結構かわいいわね」
「? はぁ、どうも」
ぺろり、と舌なめずりをする金髪美女。その恰好も相まって、妙な色気を感じる仕草だ。
それに、気のせいだろうか。目が……なんだか、獲物を狙う獣みたいな色を帯びていて……
「ふふっ、けっこういいわね。お忍びで来てみたけど、思わぬ拾い物かも。ねえ、ブージャック」
すると、突然上から降ってくるように大きな人影が……え、男!?
「ちょ、ちょっと!? 何ですかあなた……ここ女湯ですよ!?」
「呼んだぞな? ハニークイーン」
「この子見てちょうだい。結構かわいいでしょ? ベアキング様が喜びそうだと思って」
「そうか? まあ、俺にはよくわかんないけど、お前が言うならそうかもしれないぞな」
え、無視?
私が言ったことがまるで聞こえてないかのように、2人……湯船につかってる女と、今入ってきた丸っこい体の巨漢は話している。
金髪美女の方は、裸ですぐ近くに男の人がいるってのに恥ずかしがる様子はなく、男の方も全裸の美女×2を前にして特に動揺と化してるような様子は見せない。
そして、2人とも無遠慮にこっちを見て、
「おいそこの女。お前、俺達と一緒に来るぞな」
「は? なんで……っていうか何言ってんの?」
「あなた、結構かわいいからさあ。私達のボスのベアキング様へのプレゼントにしようと思って」
……何でいきなり、見ず知らずの誰かにプレゼントされそうになってんの私?
っていうか、そんなことを平然と言ってくるってことは、この2人って悪人? 海賊か何か?
「ああ、言い忘れてたけど、私もこいつもあの『トランプ海賊団』の一員なの。痛い目に遭いたくはないでしょ? 抵抗とか、逃げようだなんて考えずに、大人しく言うこと聞いた方がいいわよ」
やっぱ海賊か……しかも、すごい聞き覚えのある名前が出てきた。
こいつらか。例の『ねじまき島』を占拠して支配してるっていう連中は。聞いていた通り、普通に悪人って感じらしいな。平然と人のこと攫おうとするあたり。
『あの』トランプ海賊団、なんて言い方するあたり、割と自分達のネームバリューには自信があるっぽいな。
確かに、話を聞かせてくれたこの宿屋の主人も、ちょっと怖がりつつ言ってたっけ。このあたりでは、名前を出せば一般人には震えが走るくらいには恐れられてる海賊団なんだろう。
「抵抗しても無駄だぞな。さあ、こっちにこい。今ならちゃんと優しく運んでやるぞな」
「傷とかつけちゃ駄目よ、ブージャック。大事なプレゼントなんだから」
さっきから妙な口調の男が、『わかってるぞな』と返しながら、湯船につかったままの私を掴み上げようと手を伸ばしてきて……
「触んないでもらえる?」
―――ビシィ!!
「ぶごっ!?」
私が放ったデコピンの1発(覇気付き。弱め)で吹っ飛ばされて、女湯の床に転がった。
巨体がいとも簡単に転がったのを見て驚く金髪美女……ええと、ハニークイーン、とか呼ばれてたっけな。そんであっちはブージャック。
そのブージャックの方も驚いてたけど、すぐに起き上がって、怒った様子でこっちをにらんでくる。さすがにデコピン、しかも覇気弱めじゃ、たいしてダメージはないか。
「お前、今一体何をしたぞな!?」
「何って……普通にデコピンしただけだよ」
「嘘つくな! お前みたいな弱そうな女に俺が吹っ飛ばされるなんておかしいぞな! ひょっとしてお前、悪魔の実の能力者か!?」
……確かに私は能力者だけど、今のは能力使ってないよ。
能力使って攻撃してたら、あんた今頃血まみれだ。
「ふぅん……そういうことしちゃうんだ? かわいいのはいいけど……そのままベアキング様にプレゼントするには、ちょっと生意気ね。少し躾をしてあげなくちゃ」
立ち上がって湯船から出るハニークイーン。
すると、何か合図でも出したのか、脱衣場の扉から何人もの武器を持った男たち……おそらくは海賊の手下達が入ってきた。
そのまま露天風呂ごと私を取り囲む。
その中の1人が、女物の服みたいなのをハニークイーンに投げ渡し……んん!?
目の前で、ハニークイーンが……一瞬でそれらの服を着た。
え、何今の!? 早着替え!? 芸!?
すっご、ホントに一瞬だったよ。普通にすごい特技持ってるなこの美女。
思わず拍手しそうになったけど……私を取り囲んで『げっへっへ』と下卑た笑みを浮かべている海賊達が目に入ったのですぐに盛り下がりました。
そして、そのままブージャック共々、私を捕まえに……逆らう場合は適度に痛めつけてもいい、とまで言って襲ってくる。
その瞬間、私は勢いよく湯船のお湯……その水面を殴り、どぱぁん! と派手に水柱を立てた。
それを目くらましにして、海賊達がひるんでいる間に……体から何枚かの紙を取り出す。
それを水にぬれた体にピタッと張り付けて……
「私は早着替えなんてできないからね、ひとまずこれで代用するか……『
体に張り付けた紙に、服の模様を浮かび上がらせて体を隠す。
ボディペイントみたいなもんだけど、まあいいだろう。隠せればそれでいい。
どうせすぐ終わる。
☆☆☆
終わった。
まあ、わかっちゃいたけど、『東の海』の海賊なんてこんなもんか。
覇気すら必要なかったよ……普通に素手で殴る蹴るしただけで、全員ぶっ飛ばせた。私の素の身体能力も、割といい感じのレベルになってると見ていいのかな。
あのブージャックって奴だけは、服の下に仕込んでたらしい、全身に金属製のトゲが飛び出す鎧をまとって突っ込んできたから……ちょっとびっくりした。
けど、そんなに速いわけでもなかったので、見てから回避余裕でした。
そんで、方向転換しようと減速したところに追いついて、丸い体にサッカーボールキック。腹立ってたので、覇気なしではあるけど割と本気で蹴っ飛ばした。
多分、空中で気絶して……そのまま島の外まで飛んで海に落ちたと思う。
残る金髪美女ことハニークイーンは、手下が全滅してブージャックもフライアウェイしてしまったのを見て分かりやすく青ざめて逃げていった。
その時、全身を液体に変えてその場から逃走していったのには驚いた。え、悪魔の実……しかも『
けど……服、全部置いていったんだが……え、服は変化しないの? 『自然系』なのに?
というか、ってことはあの女、すっぽんぽんで逃げていったのか。
とりあえず片付いたので、『
そして海賊達を拘束し、宿の人に海軍への通報を依頼。あとはお任せしよう。
さて……これからどうするかだけども。
片付けをしている最中に考えて、もう決めてある。
宿はチェックアウトして、と。よーし、それじゃあ……
「焼き討ちに行くか」
『東の海』で通じる程度の力でイキってる連中に、ちょっとばかり、『偉大なる航路』の海賊の力ってもんを教えてあげよう。
邪魔者を排除して……そのあとゆっくり『ねじまき島』とやらを観光させてもらうとする。
さあ、弱いものいじめの時間だ。