原作のどこかとかではなく、なんとなく思いついたオリジナル展開ですが。
第66話、どうぞ。
これは、私がまだ『4つの海』を回っていた頃。
用事があって一時的に『偉大なる航路』に戻ってきていた時に……とある『冬島』で起こった、ちょっとした出来事のお話。
「やれやれ、参ったな……こんなことになるとは」
その時私は、まだハニー達と出会うずっと前だったので、1人で気ままに航海を続けていた。
その旅の途中で立ち寄ったのがこの島だ。
知っての通り……と言っていいかどうかはわからないけど、『偉大なる航路』の前半の海は、季節が固定されている島が多くある。
年中春のような暖かい気候の『春島』に始まり、同じような感じで『夏島』『秋島』『冬島』があり……その中でさらに四季がそれぞれ存在している。
例えば、『夏島』の夏はバカみたいに暑いし、逆に『夏島』の冬はそこそこちょうどいい気温……という感じで。
そこにさらに各島ごとの気候が加わってくるし、『四季』が決まったスパンで来るわけですらないわけだから、もう滅茶苦茶な気候なのだ。
……これでもまだ『新世界』の海に比べれば平和だってのが恐ろしいところだが。
さて、そんな『偉大なる航路』において、今私がいるのは『冬島』だ。
しかも、いくつもある『冬島』の中でも特に寒さが厳しいっぽい場所のようで……かつて訪れたことのある、常冬の『ドラム王国』をも上回るレベル。
さらには、今の季節は『冬』ときた。
『夏島の夏』の逆なわけだから、とんでもなく寒い状況であるというのは、説明するまでもないと思う。
そんな冬島に、私は今、閉じ込められてしまっていた。
この島は無人島だ。しかし、最初から人がいなかったわけじゃなく……あまりに過酷な環境ゆえに、人が住むことを諦めて出ていった、という経歴らしい。
ワンピース原作で、ルフィが二年間の修行をした、『凪の帯』の島と同じような感じなのかもな……名前忘れたけど、あの島。
もっとも、あっちでは文明を滅ぼし、追い出したのは猛獣で、こっちは気候って差はあるが。
この島にも猛獣はいるみたいだが、やっぱり一番の猛威はこの寒さだろう。
そんな島に私が来たのは、その滅んだ文明の遺構やら何やらを見物ないし取材するためだったんだけど……島に入ることができたはいいものの、そのあとすぐに特大の寒波がやってきて、海が凍って船を動かせなくなってしまった。
しかも、その時からずっと猛吹雪が島中を覆っていて……仮に船を出せたとしても、暴風で転覆する未来しか見えない。
雹とかもガンガン降ってくるし、視界も最悪。下手な嵐よりひどい。おまけに海には流氷が無数に浮いてて……うん、しばらくは出航は無理だ。天候が落ち着くのを待たないと。
なお、この島に閉じ込められたのは、私1人ではなかったりする。
「お、おい、寒くてたまらねえよ! 何か燃やして火を起こそうぜ!」
「何かって何だよ……燃やせるもんなんかもってねえよ!」
「この際だ、荷物でもなんでも……いやでも、海図や鞄を燃やすわけにはさすがに……」
冒険家だという、3人の男性。
『記録指針』にそって冒険を続けている最中にこの島に来たらしい。
それなりに旅慣れてはいるようだけど、こういうぶっ飛んだというか、極限的な環境にある島に来るのは初めてだったみたい。今までの運がよかったのかな?
その分といっていいのか、今はこうして災難に会って、色々な意味で震えてるが。
「外に出れば、獣や薪くらいはなんとかなる。拠点もあるし、しばらくは生き延びられるか……」
次に、流れの武人、ないし賞金稼ぎだという若い女性。
それなりに戦えるみたいで、色々過酷な旅を乗り越えてきたような貫禄を感じる。この非常事態にも落ち着いて対処し、取り乱した様子を見せない。
何度か視線を感じた。多分、私が『海賊文豪』だってことには気づいていると思う。
けど、さすがにこの状況で戦いを吹っ掛けてくるつもりはないみたい。そんな場合じゃないしね。
今は隅っこに座り込んで、たばこをふかして気を落ち着けているみたい。
「くそっ、あいつら……俺達を置いていきやがって!」
「だから嫌だったんだ、こんな見るからにやばそうな島の偵察に出るなんて……」
「せっかく海軍から逃げ延びたってのに、こんなところで死ぬなんてごめんだぜ!」
「………………」
さらに、海賊らしい3人の男。
どうやら航海の途中でこの島に立ち寄ったはいいものの――会話の内容からして、海軍にでも追われて逃げてここに行きついたのかな?――島の偵察に出ている間に天候が急変。
この島はやばい、と判断した海賊船は出港し、置き去りにされてしまったようだ。
さらに、もう1人……その海賊達が荷物持ちとして連れていた少年。
奴隷、なんだろうな。首輪――爆発する奴じゃなくて、ただ頑丈なだけの革製のやつ――がついてる。『人間屋』か何かで買われて、下働きでもさせられてたんだろうか。
ほとんど何もしゃべらず、海賊達や、こっちをちらちらと見て……少し震えている。
多分だけど、寒さが原因じゃないだろう。怯えてるんだ。
いやでも、寒さもありそうだけどな……海賊達に比べて明らかに薄着だ。ひどい扱いされてる。
……そして――
「はいはい皆、そんな辛気臭い顔しててもいいことないわよぉ~!」
「そうそう、笑う門には福来る! 皆ほら、元気出してぇん?」
「ここで出会えたのも何かの縁。皆で協力して生き延びましょう!!」
――オカマが3人。
「うるせぇ化け物! この大変な時に騒がしくするんじゃねえよ!」
「そうだ! てめえら目障りなんだよ、さっさと出ていきやがれ!」
「んまぁぁあっ、なんて乱暴な言葉遣いなのかしら!」
「こらこら坊や達、今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」
「そうそう。そんな態度じゃ女の子にカッコつかない……ゾッ?」
小指を立てて小首をかしげる決めポーズとともにウインク。
(((……おえっ)))
海賊達に多大な精神的ダメージ。
今のウインク、効果音をつけるなら『パチッ☆』とか『キラッ☆』とかじゃなくて『バヂョーン★』とかだと思う。
海賊達が黙ったのは、それ以上何も言い返す気力がなくなったからだろう。
……いやでも実際、このオカマさん達3人、顔面は青髭で濃い感じなのに加えて、海賊より全然筋骨隆々だし、大柄ですごい屈強な体躯なんだよな。
多分だけど、戦っても普通に強い。この海賊達3人くらいなら楽勝……だと思う。
顔面と口調とかいろいろ合わさって、威圧感が……威圧感が、すごい。
心なしか、部屋が狭く感じるし、気温も上がってるような……いや、気温は逆にありがたいか? 今の状況なら。
なお、このオカマさん達は花嫁修業の旅の最中で、この島に立ち寄ったのは冬島で滝に打たれて心身を清め、鍛えるためなんだとか。……どっからツッコめばいいんだ。
(まーでも話してみた感じ、口調はともかく、人格的にはまともそうではあるんだよな……ってか、ワンピース世界のオカマって総じてそんな感じな気がする)
そして私達が今いるのは、この島でかつて人が生活していた遺構というか遺跡というか……その建物の残骸の中だ。石とか土で作られてるからか、朽ちてはいなかった。
当然、滅んで長い時間がたってるがゆえに、人が生きるための設備等は何ものこってないけど、雨風をしのげる寝床にはなるし、広さもかなりある。
私、冒険家3人、賞金稼ぎ1人、海賊3人、奴隷1人、オカマ3人……計12人が寝泊まりしても、全員が足を延ばしてどころか、プライベートスペースもある程度確保してゆっくり寝られる。
とはいえ、寒さまでは遮断してくれないようだし、食料の問題もある。いつまでもここにこもっているわけにはいかないな……さっき賞金稼ぎのお姉さんが言ってたように、どこかのタイミングで外に出て、燃料になる薪を確保したり、動物の肉とか食料を確保しないと。
この島について事前の情報を持ってたオカマさん達曰く、この島では不定期にこういう猛吹雪がやってくることがあるらしく、しばらくはこのまま天気は回復しないそうだ。
ある程度風や雪が緩んだりはするので、短時間外に出て獣を狩ったり薪を確保したりはできると思うけど、船を出すには時間が足りないし風も強すぎるままだって。
だから、素直に天気が回復するまでここにいた方がいい、とのこと。
そして、それに必要な時間は……短ければ数日、長ければ……およそ1か月くらい。
それだけの期間、ここで生き延びなければならない。
それを聞いて、冒険家達や海賊達はショックを受けたり、絶望したり、いら立ちをさらに募らせてたようだったけど、どうしようもないとあきらめて、納得しようとしているようだ。
そしてその話をした後、今はオカマさん達も何も言わずに静かにしてくれている。
知らずにこの島に来て閉じ込められた人たちにはショックだろうし、心を落ち着ける時間が必要だろうからって。気配りのできるオカマである。
そんな中で、比較的平気そうにしている賞金稼ぎのお姉さんが、私の方に近寄ってきた。
隣に腰を下ろして、少し小声で話しかけてくる。
「『海賊文豪』スゥ……で、間違いないな?」
「自分からそう名乗ったことはないんだけどね。何か用? 賞金稼ぎのお姉さん」
「呼びづらかろう。私の名はシェレ……好きに呼べ。単刀直入に言う……手を組みたい」
お姉さんことシェレ曰く、こうだ。
この島で生き延びるには、ここにいる者達が力を合わせてサバイバルをする以外に方法はない。
過酷な寒さ、屈強な猛獣……問題は多く、その1人で全てに対応しようとするのは厳しいと言わざるを得ず……各自が役割を決めて生き残るためにそれぞれ手を尽くすのが一番確実で効率的。
戦闘能力があるものは獣の狩りを、それ以外の者は見張りや雑事を……という感じで。
そのためには、色々な意味で『戦力になる』協力者を見定めて手を組むことが急務。そう考えて私に話を持ってきた。
「私を選んだ理由は?」
「消去法だ。今の時点で味方にしておくべきだと判断できる者のうち、最も優先度が高い者がお前だった。……無論、最善はここにいる全員で力を合わせることなのだろうが……」
ちらりと周囲を見渡すシェレ。
冒険家だという3人は、この事態に委縮してしまっているし、実力的・耐久力的にも不安があると言わざるをえない。……率直に言って、ちょっと頼りない。
協力自体はできそうだが、するとしても、雑事とかそのへんの担当になるだろう。
一方で海賊3人は、こっちの言うことを素直に聞いてくれるとは思えない。海賊らしい横暴さがこんな時にでもにじみ出ていて、歩調を合わせようという気が感じられない。自分達だけ美味しい思いをしようとして、肝心な場面で足を引っ張ったり裏切ったりされるのは困る。
しかも、こんな状況だっていうのに、私やシェレの方を見て、なんどか下卑た視線を向けてきたことがすでに何度かあった。……率直に言って、信用できないから組みたくない。
その海賊が連れている奴隷の少年は……冒険家達以上に、肉体的に頼りないというか、今の時点ですでに衰弱気味なのが目に見えてわかる。これも頼りにはできない。
そして、オカマさん達3人は……ちょっと現時点では何もかもが不明なので保留、だそうだ。
「連中も馬鹿ではない。生き残りたければ、協力するしかないだろうというのはわかっているはずだ……しかし」
「人間ってのは、そういう状況でも……いやそういう状況だからこそ、本心みたいなのが出てくる生き物だし、感情に流されたりもするからね」
無駄にいさかいを作るのもバカげてるし……一応皆、協力はするだろう。
見張りとか、この拠点の修繕とか……力がある者は、狩りとか。その、狩ってきた食材を使って料理をしたりとかも、当番制になるかな?
けど、サバイバルってのは余裕がない状態でやると、じわじわ心を追い詰めていくもんだ。そうなった時に、短絡的な行動に出る者がいないとも限らない。
そういう時に協力して身を守ろうという提案で、シェレは私に声をかけたと。
「幸い私達は2人とも女だし、男よりは心情的に組みやすいだろうとも思ってな。極端な話……私とお前の2人が組めば、余裕はなくとも、どうにか生き残るくらいのことはできそうだと見ている」
「あら、そんなに評価してくれてるんだ。ありがと」
「それに着替えや、風呂……は無理そうだが、体を拭く時とかに、交代で見張りをすることもできるだろう。……こんな状況でも欲望に流されるような愚か者は、どこにでもいるものだ」
「……確かに」
どうにか気分が落ち着いてきたからか、こっちをチラチラ見始めた海賊達を、気づかれないように横目で見ながらの会話。
「それで、返答は?」
「もちろん……こちらこそよろしく」
「うむ、よろしく」
こうして、偶然居合わせた12人の男女(とオカマ)による、冬島でのサバイバル生活が幕を開けたのだった。
いつまで続くかは、わからないけれど。いろいろな意味で。