大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第72話 スゥの冒険記 小さな女狐

 

 

 これは、私がまだ『4つの海』を回っていた頃。

 東の海を冒険している時に起こった、ちょっとした出来事のお話。

 

 

 

 『東の海』に、『軍艦島』という島がある。

 かつて、島の形が軍艦ににているからという理由で、そう名付けられたらしい。

 

 位置的に『偉大なる航路』にほど近い位置にありながら、なぜかこの島は外部から視認することができないという特徴を持っていて……それゆえに、『東の海』内部にありながら、外界とは『偉大なる航路』の島以上に隔絶された島となっている。

 

 もっとも、見えないだけで出入り自体が制限されているってわけじゃないし、ある程度島に近づけばその姿を確認することもできる。

 なので、その存在と、正確な位置さえ知っていれば、こうして訪れることもできるわけだ。

 

 で、何で私……もとい、私達がそんな島を訪れているのかというと。

 

 

 ―――ざばぁっ! ×3

 

 

「お、帰ってきた」

 

 海沿いの岩場の上で釣り糸を垂らし、のんびり釣りをしながら待っていた私。

 その耳に、大きな何かが海から陸に上がってくるような音が聞こえてきた。

 

 その正体が何なのか、確かめるまでもなく私は知っているけど……一仕事して帰ってきてくれた彼女達を労わないのも、それはそれでアウトなので、釣りを一旦切り上げ、音がした方まで行く。

 

「どーぉ、3人とも。成果は?」

 

「上々ですね……サフィルがまとまって採れる場所を見つけてくれたので、かなりの量です」

 

「へへへ、すごいでしょお姉さま。誉めて誉めてー!」

 

 機嫌よくにっこり笑ってそう言ってくるサフィルに、採取の成果である袋と、その中身を見せてくるリュビ。

 その後ろではエムロードが、しかしちょっと疲れた様子でため息をついていた。

 

「けれど、採るものが『石』……ないし『化石』だけに、採るのもここまで運ぶのも一苦労でしたわ。魚人の腕力があるとはいえ、それなりに重さがあるから、海底から引っ張り上げるとなると」

 

「エムロードもお疲れさん。やっぱそうなっちゃうか……不老不死の妙薬だけあって、そう簡単には採らせてくれないもんだねえ……『竜骨』」

 

「不老不死の効能なんてありませんけどね」

 

「栄養剤としてはすごくいいらしいけどね」

 

 そんなことを言いながら、リュビは手に持っていた袋を岩場の上に置き、中に入っているもの……様々な大きさや形の石、というか化石を眺める。

 これらはただの化石じゃない。『千年龍』と呼ばれる伝説の生き物の亡骸が、長い時間をかけて化石化した『竜骨』と呼ばれる物質だ。

 

 順序良く話していこう。

 

 この『軍艦島』、およびその周辺には、『千年龍伝説』という伝承、ないしおとぎ話みたいなものが語り継がれている。

 

 かつてこの周辺の島々は、『千年龍』と呼ばれる偉大な生き物によって支配されていた。

 そして、その『千年龍』の体の一部を食べると、不老不死の力を手にすることができる、というものだ。日本で言う、火の鳥伝説みたいなもんかな。

 

 そんな時代が本当にあったのかはわかんないけど、その『千年龍』という生き物自体は確かに存在していて、今の時代にも生き残りがいる。

 

 群れを成して生息しているようだけど、常に移動しているのか、はたまたどこか人目につかない場所にでもいるのか……その辺はわからないけど。具体的には知らない。

 目撃証言とかを集めた感じだと、そうなんじゃないかと推測できただけだ。

 

 あと、前に一度、その群れからはぐれた個体を見たことがある。

 襲ってきたので仕留めたけど、見た目の割にそんなに強くはなかった。……そこらの海王類にも油断したら負けて捕食されるんじゃないかな、って程度だ。軍艦の大砲でも仕留められそう。

 

 なお、そんな感じで『千年龍』自体は実在し、現存しているんだけども……一方で、その血肉に不老不死の力がある、なんて事実はない。さっき言った『はぐれ』を倒した時の死骸をパパの所に持ち込んで、お抱えの研究者達に色々と調べてもらったから、これは確かだ。

 

 ただ、その体成分はかなり独特なそれであり、不老不死とまではいかずとも、滋養強壮的な作用は強く、人体にとって様々な有意な影響をもたらす薬になるかもしれない、とのことだった。

 さっきサフィルが言ってたように、栄養剤というか、栄養補助食品(サプリメント)としてはかなり優秀で、活力を失った体を回復させ、今元気な体はさらに元気にしたりとか、そういう効能を期待できそうだとのこと。加工次第で他の様々な薬の原料にもなりそうだって。

 そういう効能がある事実に尾ひれがついて、不老不死という伝説が出来上がったんじゃないか、という話だった。

 そしてその性能は、死んですぐの個体から採取したものよりも、化石化した後のものの方が強いらしい。メカニズムはわからん。

 

 軍艦島の沖には、1000年に一度浮上するという幻の陸地『ロストアイランド』があり、そこはどうやら、寿命を迎えた『千年龍』達が最期を迎えるための場所らしい。

 なので、今からはるか昔の時代にここで死んだ千年龍の化石が、そこにはわんさか残っている。化石化した『千年龍』の素材も取り放題だ。

 というか、厳密にはここで化石化した後の千年龍素材を『竜骨』と呼ぶらしいし。

 

 墓荒らしをするようで若干気分はよくないけど、文句を言ってくる人がいるわけでもないので、そこに転がっている『竜骨』を頂戴していくことにした。

 

 で、今、魚人3人娘に頼んで、それらを取ってきてもらっている最中なのだ。

 私、カナヅチだからね。海の底にある素材、取れないからね。

 

 とまあ、長々語ってしまったけれど、パパのところに持ち込むための大量の『竜骨』はどうにか確保できたわけだ。

 

 さて、じゃあ後はこれを船までもっていかないとな。

 けれど、魚人が全力で集めた大量の『竜骨』……化石化してるからすごい重いし、そもそも大量すぎてかさばる。とても船には積み込めないし、運ぶのだって一苦労だ。

 

 ……このままならね。

 

「さてと、それじゃあ……“エニグマ”!」

 

 そうつぶやくように言いながら、私がその大量の『竜骨』に触れると……それら1つ1つがみるみるうちに縮んで、平たくなって……しまいには1枚の紙になってしまった。

 よし、成功。これでOK。

 

 

 

 この『4つの海』の漫遊旅行中に、私の『パサパサの実』の能力は『覚醒』のレベルにまで既に至っている。そのおかげで、『周囲に影響を与える』ことができるようになり……また、それに伴って色々とできることが増えた。

 今見せたのもその1つだ。

 

 覚醒した私の能力を使えば、周囲のものを紙に変えることができる。

 しかもそれは、ドフラミンゴのアレみたいに『普通の紙そのものに変える』こともできるし、一度紙に変えたものを後から元に戻す、なんてこともできるのだ。

 後者を使うと……『紙に変えた』ものは、そのサイズの大きな紙に、その『物』が描かれているという見た目のものになる。当然、紙なので軽いし、折りたためる。

 

 そして私は『紙人間』。紙を体と一体化させることで、体内に収納することができる。

 

 この2つを組み合わせると、紙に変えたものを体内に収納するという、アイテムボックスじみたことができるのだ。

 

 これを利用して、私は色々なものを、鞄や船の倉庫ではなく、体内に収納して持ち運んでいる。

 見られたらちょっとまずいものを持ち運ぶのにも役立つし。一度体内に収納してしまえば、海に落ちたり海楼石に触れても、落としてしまったりなくすことはないからね。

 

 

 さて、そんな感じで大量の『竜骨』を収納完了した私が、それじゃあぼちぼち帰ろうか……なんて思っていた時だった。

 

 

 ―――ぷるぷるぷるぷる……

 

 

 懐に入れていた小電伝虫が鳴った。

 

「はいもしもし……あ、ハニー? どしたの、何かあった? ……え、船に泥棒?」

 

「「「え?」」」

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.三人称

 

 スゥ達が最近、『4つの海』を渡るのに使っている船……船体の中に特殊な『紙粘土』が仕込まれていて、それを使って翼などを作り、自在に移動できる船だ。

 やや小型で、泊まり込み等を考えれば、数人乗れる程度の大きさしかないが……かなり快適に過ごせるようなつくりになっている。

 

「放して……放しなさいよっ……!」

 

「大人しくしなさい、逃げられやしないわよ、あんた程度じゃ」

 

 そんな船の甲板で、1人の少女が、かわいらしい顔を苦しみにゆがめながら、もう1人の……自分の首元を手で締め上げている女性に、憎らしそうな視線を向けていた。

 その女性はというと、嗜虐的な笑みを隠そうともせず、か弱い抵抗しかできない少女の体をそのまま持ち上げて宙づりの状態にする。

 

「そんなに怖い顔しないで。心配しなくても、取って食おうってわけじゃないんだから……まあでも、何もおとがめなしで返してもらえるなんて思ってないわよね? これは小さいとはいえ、海賊の船で……あなたはそこに盗みに入ったんだもの」

 

「……っ……!」

 

 薄紫の髪の少女は、脅すようなことを言われながらも、キッと強気に睨みつける。

 しかし、それで余計にその、金髪に、露出が多い服装が特徴的な女性は、嗜虐心を刺激されてしまったらしい。あるいは、なめられていると感じて面白くなかったのかもしれないが。

 

 おもむろにその掴んでいる手が、とろり、と溶けるようにして液体に変わり……少女の顔を覆っていく。

 ぎょっとする少女だったが、やはり身動きは取れず……すぐにその液体は、彼女の顔の下半分……当然、鼻と口を含む範囲を覆ってしまう。

 

 呼吸ができず苦しいのだろう、ばたばたと手足を動かして抵抗するが、何の効果もない。

 自分を掴んでいる腕を殴ったり蹴ったり、ひっかいたりするものの、それらはすべて、まるで体表面が水面であるかのように波打っただけで衝撃を殺され、拘束は揺るぎもしない。

 

 幸いにして、彼女の顔を覆う液体は完全にその女性の制御下にあるらしく……肺に入り込んでくるようなことこそなかったが、それでも呼吸ができないことに変わりはない。

 徐々に暴れる体が大人しくなっていき、少女の目が虚ろになっていく。

 

 しかし、意識を失う前にその液体の拘束からは解放された。

 依然として首元は拘束されたままだが、呼吸はできるようになった。

 

「ぷはぁっ! はぁーっ……げほげほっ! はー……はー……けほっ、ぐぅ……」

 

「自分の立場ってものがわかったかしら、泥棒猫ちゃん?」

 

「はぁ、はぁ……泥棒猫、じゃないわよ……そいつは、別の奴」

 

「……?」

 

「私は、女狐、って呼ばれてるの……間違えないでよね」

 

「……呆れた。大した度胸ね、こんな目にあっておいて、まだそんな強気でいる余裕があるの……ふぅん……じゃあ、もうちょっとひどい目に遭わせてみても大丈夫かしら? ……ふふふっ♪」

 

「……っ……!」

 

 それを聞いて、少女は再び怯えたような顔になり、女性は舌なめずりをしてその恐怖の表情を堪能し……

 

 

 

「ねーお姉さま、リュビ、エムロード……あれってハニー何やってんの?」

 

「侵入者を拘束してるだけ、だと思うけど……なんかただの弱い者いじめというか、マウント取って楽しく遊んでいるようにも見えるわね」

 

「最近あんな風に、自分が一方的に優位に立っていたぶれるような相手とかいなかったからかもしれませんわね。なんか実に生き生きしてるように見えますわ」

 

「あー、元々そういうの好きだったもんなぁ、ハニー。ストレスたまってたのかな?」

 

「そこ、うっさい! 帰って来たなら普通に話しかけなさいよ、そんな陰口っぽく言ってないで!」

 

 

 

 と、後ろの方から聞こえてきた会話を聞いて、冷徹な女幹部的なムーブが一瞬で消え、ギャグちっくな表情になってツッコミを入れる女性こと、ハニー。

 そして、今ちょうど帰ってきたところだった魚人3人娘と、彼女達のリーダー、ないし主であるスゥは、すたすたと彼女に近づく。

 

 それを待って、ハニーは拘束していた少女をべしゃっ、と甲板に投げ落とすようにして解放した。

 

 その少女の、苦しそうではあるが、拘束から解放されて少しほっとしたような顔を覗き込むように見て……スゥは、はぁ、とため息をついた。

 

「やっぱりというか、またあんたか、カリーナ……いいかげん付きまとうのやめてくんない?」

 

「……うっさい」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 この子の名はカリーナ。

 私がこの『4つの海』漫遊の旅の途中で出会った、泥棒娘である。

 

 原作のナミと同じように、海賊専門……なのかどうかはわかんないけど、以前、財宝目当てで私の船に忍び込んできたことがあったのだ。

 もちろん、すぐに気づいてサクッと撃退したんだけど……まだ10歳かそこらっぽい小さい女の子が泥棒なんてやってるのか、ってびっくりしたのを覚えてる。

 

 泥棒とはいえ、小さい子供だ。殺したり痛めつける気にはなれなかったので、お説教だけして解放した。

 その時は、カリーナもお礼を言って『二度としません!』って、頭を下げて去っていった。

 

 ……その1時間後、2度目の侵入・窃盗を企てた時はさすがに腹が立ったので、どうしてやろうかこのガキャ、と考えた末に、お尻ぺんぺん100発かました上で解放してあげた。

 半泣きになって『あっかんべー』しながら走り去っていった。お尻が痛いのか、少し走りづらそうだったのを笑いながら見送った。

 

 さすがに3度目はなかった。……その日は、だけど。

 

 で、それ以来……なぜかこのカリーナ、何度も私をターゲットに定めて盗みを働こうとして、そのたびに失敗して捕まって、お仕置きされたうえで解放されて……ってな感じの仲なんだよね。

 

「それってこの小娘、お嬢様をちょろい獲物だと思ってなめてるんじゃないの? 捕まっても許してくれるし無傷で解放されるから大丈夫だ、って高をくくって」

 

「逃がすにしても、一度きつめにお仕置きしてあげた方がいいのでは? 何なら、私達がやりますけど……」

 

「ひっ!?」

 

 ちょっと怒ったような口調でリュビが言ったのを聞いて、『やばい』とでも言いたげな顔になっているカリーナ。

 それを見てエムロードは、呆れたような顔になってため息をつく。

 

「泥棒として海賊に手を出すなんて、その場で捕まって殺されても文句は言えないもの。お姉さまが優しいからといって油断して調子に乗っているのが丸わかりですわね……むしろこの調子で他の海賊に喧嘩を売ったりして、よく今まで無事でいられたものですわ」

 

「ちょっと考え方が甘いというか軽いというか……覚悟が足りない感じだよね」

 

「サフィルに言われてちゃおしまいね」

 

「なにおう!? 私だって最近は色々考えて動くようにしてるんだぞー!」

 

「で、どうすんのお嬢様? こいつ、今回も逃がすの? それともちょっと色々する?」

 

 『色々って何!?』と聞きたそうな、やっぱり聞きたくないような微妙な表情になってるカリーナはまあ置いといて……まあ別に私は、逃がしてもいいとは思ってんだけどね。いつも通り。

 ただ、こうまで何度も何度も挑んで来られると、さすがにめんどくさくもあるなあ……。

 

 けど一応、彼女がホントに悪い子ってわけではないことも、どうしてこうまでむきになって私に挑んでくるのかも、知ってはいるから……なんとなく許しちゃうというか。

 

 さっきの話……カリーナが初めて私の船に盗みに入った時の続きになるんだけど。

 

 カリーナは当時、親を失ったり捨てられたりして孤児になった子たちのグループにいた。そのグループの中では割と年長さんだったため、お姉さん役として皆の面倒を見ていたらしい。

 そしてその時、同じグループの子が病気になっていて、治療代ないし薬代が必要だった。

 

 危険だと承知しつつも私の船に何度も乗り込んできたのはそのためだったわけだ。

 

 2回目の侵入の後、なんか訳ありっぽいな、と直感して彼女の後をつけてそれを知った私。

 すると同じタイミングで、彼女の仲間の孤児が別な海賊団に手を出したらしくて……怒り狂った海賊達が孤児たちを襲撃しに来た。

 

 その剣幕たるや、私とは違って確実にその孤児達を怒りに任せて皆殺しにする気だとわかるもので……見捨てるのもアレだったので、さくっと壊滅させて助けてあげたのである。言っても『東の海』の海賊だったからね、全然苦戦も何もしなかった。

 そんで、海賊達から奪った宝のうち、半分は私がもらって、半分はカリーナ達にあげた。

 

 海賊達は、後で匿名で海軍に通報してその後とっ捕まえてもらった。

 

 病気だった子も無事に回復し、すごい感謝された。カリーナもこの時ばかりは、素直に私に感謝してた。

 

 ただその後、命を救われた恩と……それ以上に、戦って海賊達をばったばったとなぎ倒す姿がかっこよかったとかで、孤児たちに懐かれた。

 ……あまりに余裕だったので、時代劇の殺陣のイメージで、『魅せる』戦い方で派手に立ち回ったのも理由の一つかもしれない。

 

 それこそ、お姉さん役だったカリーナより私に懐いちゃった子も少なくなくて……それがカリーナとしては面白くなかったみたい。

 

 その後、普通にその島を出てからはしばらく会ってなかったんだけど……一年以上経って、なんと全く別な島でカリーナがまた私の船に盗みに入ってきたときには驚いた。

 

 話を聞いたら、カリーナはあの後、ほどなくしてあの孤児のグループを抜けたらしい。

 なんか、引き続き泥棒稼業で彼ら、彼女らの生活を支えてたらしいんだけど、堅気の人達からもちょいちょい失敬してたから目をつけられて、あそこにいられなくなっちゃったんだって。

 自分がいると他の皆にも迷惑がかかるからって、グループを抜けて海に出たそうだ。……十代前半だってのに、行動力すげえな。

 

 ……で、変わらず泥棒で生計を立ててたらしいが、偶然その島で、久々に私の船を見て、『リベンジだ!』って挑んできたそうだ。

 そんで、そんな感じの付き合いが今まで続いてきたのである。

 

 

 

 結局今回も、お説教(正座で1時間)の後、何もせず解放してあげた。

 去り際に動けないでいるカリーナの足を、サフィルがつんつんして絶叫させて遊んでいたので、まあそれも含めて罰ってことでいいか、と判断した。

 

 そしてこれ以降も、カリーナは時々『東の海』で私の船に挑んできた。

 

 その頃にはもう、3人娘とハニーも慣れたもんで、むしろ挑んでくるカリーナを『誰が捕獲するか』を競う感じのゲーム的な娯楽にしてたくらいだ。当のカリーナはそれをわかってたのやら。

 

 それに、回を重ねるごとに、カリーナ自身も色々な意味で成長して、手口も巧妙になったり、動きもよくなって守りを突破してみせたりしてたので……何気に油断できなくなってきてた。

 なので、こっちの暇つぶしないし防犯訓練にもちょうどよかったっちゃあよかったのだ。

 

 ……そもそもの話、私の船は貴重品は『エニグマ』で私が収納してるんで、盗みようがないし。

 

 しかし、ある時を境にぱったりと姿を見せなく……というか盗みに入ってこなくなった。

 

 泥棒から足を洗ったのか、それともただ単に私達を狙うのをやめたのか……あるいは、彼女の身に何かあったのか。

 泥棒に入ってくる子を心配するなんていう変な状況になってたけど、何だかんだで愛着がある子だったので、心配してたんだよね。

 

 聞いてみると、その、カリーナが現れなくなった時期と、ステラとテゾーロがカリーナを拾った時期が一致する。

 それを聞いて、私は納得するとともに、やっぱりというか安心してしまっていたのだった。

 

 今こうして、眼下のステージで歌って踊っているカリーナは、すごく生き生きしてるし、輝いてると思う。歌もすごく上手いし、ここが天職なんじゃないか、と割と本気で思う。

 

 彼女自身も、このステージを楽しんでいるように見えるのだ。

 彼女が体を張って助けようとした奴隷の子達や、後輩であるウタちゃんと触れ合ってる時も、実に楽しそうに、嬉しそうに笑っている。

 

 けど、何でかな。

 なんとなくだけど、私にはどうしても……彼女が『泥棒』という生き方を、完全に捨ててしまうような気がしないというか……

 

 油断してると、またいつか私のところに『ウシシシシ♪』なんて笑いながら、盗もうとして忍び込んでくるんじゃないか……なんて思っちゃうんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、数時間後、

 

 

 

「お姉様~! ハニーから伝言! あの女狐がお姉様の部屋に盗みに入って、ルイ・アーノートの『ブラッグメン』の初版本を盗もうとしたからとっ捕まえたって!」

 

「フラグ回収早すぎィ!」

 

 あんのガキゃあ! よりにもよって私にとってお金より価値のあるもんを!

 

 よーしお仕置き決定、次は正座何時間にしてやろうか!

 

 

 

 





『千年龍伝説』は、アニメオリジナルのストーリーで出てきたやつです。


あと、ネットとかで探してもカリーナの過去とかの情報が特に見つからなかったので、適当に不幸な感じで捏造しました。

違和感あったら、あるいは自分が知らないだけで設定あったら申し訳ない。
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