大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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今回、ちょっと大きめの原作というか設定の改変がある……かも。

第74話、どうぞ。



第74話 スゥの冒険記 スゥVSハンコック(前編)

 

 ハンコック達とのお食事会から少しして……私達は、『女ヶ島』の近くにあるとある無人島に場所を移していた。

 あ、ちなみに原作でルフィがレイリーと修行してたあの動物王国的な島じゃなく、別な島です。多少木とかは生えてるけど、ほぼ荒野で何もない、無人島。

 

 食料になるような動物も何もいないから、サバイバルには向かない島だ。

 だが、何もないからこそ、『一騎討ち』にはもってこいの島でもある。

 

 その島で、私とハンコックは、少しの距離を取って向かい合っていた。

 ハンコックは素手。私はいつもの番傘を持ってる。

 

 そこから少し、いや結構離れたところで、サンダーソニアとマリーゴールド、それにニョン婆が審判がてら見守ってくれている。

 あと、ハンコックのお供の、あのドクロかぶってる蛇も……何だっけ名前?

 

「ふむ……さて、それでは双方、用意はよろしいかニョう?」

 

「うむ」

 

「いつでも」

 

 私とハンコックがそう答えたのを聞いて、『こほん』とニョン婆が咳ばらいを一つ。

 

「ではルールの確認じゃ。勝負は1対1の『一騎討ち』、武器の使用は自由。どちらかが気絶などによって戦闘不能になるか、負けを認めるまでとする。審判はわしが勤めるゆえ、わしがそのように判断した場合も同様とする。双方、それには従ってもらうぞ」

 

 ルール説明を聞いて、また私とハンコックが頷く。

 それを確認して、ニョン婆は手に持っている杖を振り上げ……

 

「それでは……はじめッ!」

 

 そうしてついに、私とハンコックの『一騎打ち』が始まり…………っとその前に、何でこんなことになったのかというと、だ。

 話は、少し前に時間をさかのぼりまして……

 

 

 ☆☆☆

 

 

 唐突に、というほどでもないとはいえ、ハンコックに『一騎討ち』を持ち掛けられた私は、勧誘の時に引き続いて、きょとんとしていた。

 けど、そう時間をおかずに再起動できたので、ハンコックにその真意を聞く。

 

「えっと、それはつまり……『負けたら仲間になれ』的な?」

 

 私のことを諦めたくないハンコックが、『デービーバックファイト』的なことを言い始めたのかと一瞬思ったのだが……しかし、どうも違うらしい。

 ハンコックは『いや、違う』と首を横に振って、

 

「勝負の勝ち負けでどうこう、という話ではない。そういうのを抜きにして、一度わらわと本気で戦ってほしい、と言っておるのだ。それも、いつもやっている稽古や模擬戦のような、ある程度力や『能力』をセーブした戦いではなく……正真正銘の『全力』でな」

 

 それに続けてハンコックが言ったのは、こうだ。

 

 さっきの話の中でも言っていたように、そもそも私は、私の好みとか価値観の問題として、『海賊』という行為ないし稼業にあまり魅力を感じていない、むしろ避けている。

 だから、無理言ってというか、私のそのへんの意思を無視して、私をその道に引き込みたいとまでは、ハンコックも思わない。

 けど、やっぱり私は仲間にはしたい。

 

 ではどうすればいいか。

 簡単な話だ。私に心変わりしてもらえばいい。海賊をやってもいい、と。

 

 より正確に言えば、ハンコックと一緒なら海賊生活も楽しそうだし、考えを改めてもいい、と……そんな風に思ってくれるようになれば、万事解決だと考えたらしい。

 

 そしてそのためにハンコックが考えたのは、彼女自身が海賊としていつもやっている方法だった。

 

「スゥ、そなたには、わらわに惚れてもらう」

 

「……はい? えっと、それは……どういう?」

 

「もちろん、『メロメロ』の能力を使ってのことではないぞ? まあ、敵対する海賊達はいつもそうしておるのだが、今回は違う。『九蛇』の価値観としきたり、何よりわらわの信条にのっとったものじゃ」

 

 『九蛇』では、強いものこそ美しく、尊いとされている。そういう、戦闘民族ならではの価値観が存在する。

 だからこそ、この島で一番強く、そして美しいハンコックが誰よりも尊敬されている。彼女の強さを誰もが認めているからこそ、彼女達は全ての九蛇の戦士達に認められ、憧れられている。

 それが、彼女にとっても一番身近で、わかりやすく、自分にとっても誇れる強みだ。

 

「簡単に言えば……わらわのもとでなら海賊をやってもいい、わらわにならついていきたい……とスゥに思わせることができれば、認めさせることができれば、わらわの勝利ということじゃ。それこそ、自分の元々持っていた価値観すら過去のものにするような勢いで憧れさせてな。『一騎討ち』は、そのためのアピールの手段ということ」

 

「なるほどね……そして、そういう提案をしてくるってことは、私にそう思わせることができるくらいに、自分が強くなったっていう自信がある、と」

 

「無論じゃ、この数年間、わらわがただ怠惰に過ごしていたわけもない……日々研鑽を積み重ね、肉体を、能力を、そして覇気を磨き上げた。今ならばそなたと戦っても負けはせん、と自信をもっていえるところまでにな」

 

「……それで昨日、せっかく会えたのに自分は模擬戦しようとしなかったんだ?」

 

 『女ヶ島』に遊びに来た時は、毎回模擬戦とかしてたのに、昨日戦ったのはマリーゴールドとサンダーソニアだけで、ハンコックは審判も兼ねた見物だけだったんだよね。

 疲れてるのかな、とか思ってたけど……今日のコレを見越してのものだったか。

 

 今回ここに来るのはけっこう久しぶりだ。間も開いてたし、その間にハンコックが何を習得し、どのくらい強くなったのかは……たしかに予想が難しいかも。

 

 加えて今回の申し出は、『一騎討ち』。いつもやってる模擬戦とかよりも、より実践に近い形での戦いだ。私にとっても、もしかしたら初めて、ハンコックの『本気』を見ることになる戦いになるかもしれないわけだ。

 

 なんか物騒なことになっちゃったなあ、と思う反面……それを喜んでいる自分も、確かにいる。

 それだけ本気で私を欲しがってくれているんだ、ということが嫌でもわかるから。ハンコックの……私への勧誘に対する、『本気度』とでもいうべきものが。

 

 現にこうして今、返事を待つ間に私に向けてきている視線も、曇りなく真剣なものだし。

 

「……わかった、やろう」

 

 となれば、私としても……別にバトルジャンキーでもなんでもなくても、戦ってみたい、受け止めてあげたい、と思っちゃうね。

 

 

 

 そして、時間は現在に戻る。

 ニョン婆が、開始の合図を出した、その瞬間に。

 

 

 

 先手はハンコック。

 『チュッ』と飛ばした投げキッスが、ハートマークになって具現化し、それを銃のように構えてこちらに向けて……

 

「“(ピストル)キス”」

 

 ドキュン! と銃弾よろしくそのハートマークが飛んでくる。

 

 実際に銃弾か、それ以上に威力がある攻撃なのはよく知ってるので、番傘を広げて防御。

 ……お、ちょっと揺らいだ。威力上がってるな。

 

 後手になったが、私からも反撃。広げた番傘の影に隠して体から何枚か小さな短冊状の紙を取り出し、投げナイフのように投げつける。こちらも、殺傷能力高めの飛び道具だ。

 

「“紙剃(ペーパーナイフ)”」

 

 下手な刃物以上に鋭い切れ味を持つ紙の手裏剣。

 それをハンコックは、また投げキッスからハートマークを生み出し、それを大きく膨らませて盾にすることで防御した。それは一瞬で消えてしまったけど、私の“紙剃”も力なく落ちる。

 

 今の一瞬で、遠距離では互いにらちが明かないと悟った私達は、次の瞬間、ほぼ同時に地面を蹴って前に飛び出し……番傘と足に、それぞれ『武装色』の覇気をまとわせて激突させる。

 『ガキィン!!』と、金属と金属がぶつかり合ったような音が響いて……周囲には衝撃波までまき散らされた。

 

 そのままどちらも押し込まれることなく、力は拮抗し……しかし一瞬後に、ハンコックが舞うように体を翻らせて受け流した。

 力を込めていたところにいきなり脱力されて、わずかに体勢を崩した隙を見逃さず、そのまま一回転するような動きで、ハンコックの回し蹴りが飛んでくる。

 

 それを私は『武装色』を込めた腕で受け止めようとするが、それもフェイントだった。

 蹴りの足を軌道を変えて踏み込みに変えて、より近く……ほとんど懐にまで潜り込んできたハンコックの膝蹴りが、私のみぞおちに突き刺さる。

 

 が、一瞬早く体を紙に変えてばらけさせた私は、それを回避することに成功。

 そのままハンコックの背後に回り込み、先端で突き貫くような勢いで番傘を突き出した。

 

 それもハンコックは、くるくると回るような動きのまま回避して見せる。こちらには視線を一瞬も向けていないのに、完璧に紙一重な回避……それでいて、十分余裕はあったように見えた。

 『見聞色』も相当に鍛えてるな、ということがわかる動きだった。

 

 そのまま私の頭を狙って放たれた蹴りを、素早く引き戻した番傘で受け止めると、

 

「“芳香脚(パフューム・フェムル)”!」

 

 切って返した足で、さらに強烈な蹴りを見舞ってくる。

 『メロメロの実』の能力を載せた蹴りだ、覇気で防御しないと、当たった部分が石化し、そのまま砕かれるという、色々な意味で凶悪な技である。

 

 それを受け止めてしまった私の傘は、一瞬だけ防いだものの……ぱきぱきっ、と乾いた音を立ててその部分から石になってしまい……そして、砕けた。

 『武装色』は使ったんだけど、どうやら貫通されてしまったらしい。

 

 しかし、その中にあった仕込み刀までは届かなかったようで、私は素早くそれを引き抜いて、続く形で何度も繰り出された追撃の『芳香脚』を全て受け止め、弾いて防御する。

 今度は石化せずに受け止められたようだ。

 

 ……本当によく鍛えられてる。生半可な『武装色』は貫いてくるし、油断すると私も石にされかねないな。こりゃ怖い。

 しかも、抜き身の刃である私の剣と打ち合ったにもかかわらず、ハンコックの足(当然だが生足である)には傷一つないと来た。向こうの『武装色』も相当レベルが高いとわかる。

 

 そのまま一気に勝負を決めるべく飛び込んでくるハンコック。石化の力を込められた足が幾度も振るわれ、襲い掛かってくる。

 が、その間にできたごくわずかな隙間に、私は手元に大量の紙面を生み出して収束させ……

 

「“獅紙戦吼”!」

 

 ハンコックが飛び込んできたのと合わせて、よける隙がないタイミングで打ち出された紙の獅子は、彼女の顔面……ではなく、その踏み込みの際の軸足めがけて飛んでいく。

 もう片方の足を振り上げている彼女は、そこに痛打を受ければ転んでしまう。

 

 それを悟ったハンコックは、とっさにその場で飛び上がって宙返りするような動きで、紙の獅子を回避。そしてその勢いのままに空中で飛び回し蹴りを放つ。

 横合いから強烈な一撃を叩き込まれた紙の獅子は、一瞬で石化して砕ける。

 

 が、その頃にはもう私は次の手を用意していた。

 私の両サイドに、さっきよりも大量の紙でできた2匹の獅子が、そしてさらに何匹もの『紙の鳥』が現れて飛び回っている。1羽1羽が刃の切れ味を持つ羽と嘴を持った鳥だ。

 

「“折神”……“紙剃鳥葬”! “獅紙舞”!」

 

「“虜の矢(スレイブアロー)”!」

 

 四方八方から殺到する紙の鳥の軍勢を、ハンコックはかわしながらハート形の矢を放って、1羽残らず撃ち落とす。当たったはしから石化して墜落し、砕けていった。

 

 同時に襲い掛かってくる紙の獅子は、これも回避してハートの矢を打ち込むが、撃ち込まれた部分は石化するものの、こちらは体を構成する紙の量が多すぎるために、一気に石化はできない。

 流動するようにその部分だけを切り離してなおも襲い掛かってくるそれらを見て、ハンコックは眉をひそめて飛びのいた。

 

 すると今度は、また投げキッスでハートマークを出す。

 『銃』か『矢』か……と思ってみていると、どうやらそのどちらでもない。

 

「“(ソード)キス”!」

 

 ハンコックがそのハートマークを拳の中で握りつぶすように持つと……その手の中から、ピンク色の光の剣が伸びた。まるでライトセイバーみたいに。

 しかし、どうやら新技らしいそれを見たわけだが……私が驚かされたのはむしろその後だった。

 

「恋焦がれ……“鮮烈一閃”!」

 

 横一文字に振りぬかれたその一撃で、『獅紙舞』2匹が同時に深々と斬りつけられたかと思うと……次の瞬間、石化するかと思ったら、切り口から炎が燃え上がって焼き尽くしてしまった。

 

「火ィ!?」

 

 そんな能力あった!?

 え、『メロメロの実』の能力って、魅了したものの『石化』だよね!? あと副次的に、ハートマークを具現化して矢とか弾丸にして放ったりとか。

 

「ニョン婆から聞かされての……時に恋や愛は、燃え上がるように熱く激しいものなのじゃとな。生憎とわらわにその気持ちはわからぬが……お主が時々書いている恋愛ものの物語は、色々と想像を膨らませるうえで参考になった」

 

 再現はできた、ってわけか。しかも情報源がニョン婆と私の本!?

 確かに色々書いたけど! シリアスなのは苦手だから笑って読める系のテイストのラブコメをいくつか!

 

 ホント無茶苦茶っていうか、アバウト過ぎない? 悪魔の実の能力。

 恋愛とかそういう系に関連付けられそうな範囲なら割と何でもありですか、『メロメロの実』。

 

 まあでも、『悪魔の実』の能力って、本人の適性とか次第で化けることがままあるからな……。

 それこそ、元々存在しなかった能力が発現するようなパターンすらあるらしいし。何かの設定とかで書いてあった気がする。能力者本人がどう使うか、あるいは、どう使えると思うか次第だって。

 

 ブルックが氷タイプになったのもそうだし……CP9のカクの『キリン』の手足が伸び縮みしたり、ドフラミンゴが『イトイトの実』の能力で影武者作り出したり(関連要素が技名のダジャレくらい)……割と設定ガバガバだもんな、悪魔の実……。

 

 かくいう私自身、『覚醒』後は特に、色々自分でもやりたい放題な能力いくつか作り出してる自覚があるし……うん、気にしても仕方ないか。

 

「それに……『愛』というものが何なのかは……テゾーロとステラの様子を見ていれば、なんとなく想像もつく。あの幸せそうな、見ているこちらの心が温かくなってくるような様子を見れば……悪いものではないだろうというのもな、わかる気はするのじゃ」

 

 『わらわには縁がないがの』と付け足しつつも、そう言うハンコック。

 ……もしかしたら、そういうのに触れたことによる、彼女自身の心の成長みたいなのも、この新能力の発現に関係がある……のかもしれない。そんな風に、ふと思った。

 

 何にせよまずいんですけど……『火』とか『熱』って。『紙人間』である私の最大の弱点でして……いやまさか、ハンコックが炎タイプになるとは……

 いや、というかむしろ、その為にこの能力編み出したのでは……?

 

「ここから先は、ちと激しくなるぞ、スゥ……降参するつもりなら早めにしてくれると助かる。でないと……文字通り、火傷することになるからの」

 

 手にピンクの光の剣を持ったまま、必殺の蹴りを繰り出す足をかかげるように前に出してみせるハンコック。

 ……もしかしてだけど、その炎パワー、蹴りとか弾丸にも乗ったりする? エンチャント的に。だとしたら相当やべーんだけど……

 

 そうなるという想定の下で動いた方がいいだろうな。

 もともとそんなつもりはなかったとはいえ、ここから先は一層油断できない戦いになりそうだ。

 

 多分だけど、現時点ですでに原作よりも強くなっていると思う、“海賊女帝”との戦いは、本人も言っていた通り……ここからより一層、激しさを増していくことになる、と思う。

 

 

 

 

 




Q.ハンコックの能力、さすがに改変しすぎじゃない?
A.でも原作の中でも、キリンがパスタマシンしたり、トリケラトプスがプロペラみたいになったり、ブラキオサウルスがスポーンと射出されたり、素っ頓狂な能力があちこちに出てきますから、このくらいありだなと思って踏み切りました。

それに、原作のハンコックとの違いも出したいなと思って。
原作では妹達やレイリーとか以外に心を許せる相手がおらず、ニョン婆から『氷になってしまったニョかと』とまで言われていたハンコックですが、本作ではスゥやテゾーロやステラなど、他にも仲のいい、秘密も共有できる+競い合える相手がいるので、その分心に余裕ができてます。
『男=醜悪』以外の価値観や感情を理解し始めているハンコックだからこそ、この能力に目覚めることができた、的な感じで考えました。

それでもやっぱり不自然すぎておかしいな、と思う方がいたら申し訳ないです。
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