大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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お待たせしました。今日から更新再開いたします。

今回からしばらく、オリキャラ多めで、展開もオリジナルな感じで進む見込みです。

もし苦手な方いたらごめんなさい。……原作までもうちょっとだと思うので、待ってね。

第80話、どうぞ。


第6章 文豪、母になるってよ
第80話 スゥとレオナ(1)


 

 

 ふと、空を見上げてみる。

 ラピ○タでも飛んでるかと思ったが、晴れ渡った青空があるのみで……空島らしきものが見える気配もなし。

 

 まあ、全く雲がないわけじゃないし、上空1万mとかに浮いてたりしたら、地上から視認するのは難しいかもしれんけど……今はひとまず気にしなくていいか。

 見てもわからないなら見る意味もない。それよりも先に、落ちてきたこの子のことだ。

 

 年の頃は、中学生くらいか? 明るい灰色の髪に、やせ型の体……目、閉じてるからわかりにくいけど、ちょっとツリ目気味かも? パッと見の特徴はこんなとこか。

 着ているのは民族衣装っぽい服だけど、なんかボロボロだ。今の落下の衝撃……だけじゃないな。なんか、焦げ跡みたいなのや、刃物で切られたみたいな痕跡もある。服にも、体にも。

 空島の民特有の、背中の羽飾りはなし。……壊れて取れただけかもしれないが。

 

 で、さっき言った通り、どこから落ちてきた、あるいは飛んできたかもわからない上に、こんなクレーターができる勢いで地面に激突したってのに……きちんと息がある。

 どころか、骨もちゃんと無事っぽいな。驚異的な頑丈さだぞ。

 

 しかも、

 

「……うっ、ん……?」

 

「「「!」」」

 

 自力で意識を取り戻しそうと来た。

 

 そのまま見ていると、女の子は身じろぎした後にむくりと起き上がる。

 ゆっくりだし痛そうだけど、しっかりした動きで……上半身を起こして地面に座った。

 

 そして、周囲を見回し……私達を見つけて、はっとしたような表情になる。

 けどその直後に、何か言いかけてやめたようにぴたっと動きをとめ……さらに何か考え込むような仕草を見せたかと思うと、そのまま空中に視線をさまよわせて……ぽつりと、

 

「……ここは、どこ? あたしは……誰?」

 

…………え、マジで?

 

 

 ☆☆☆

 

 

 マジでした。

 記憶喪失でした。んなテンプレな。

 

 その女の子は『レオナ』という名前だけは覚えていて聞けたんだけど、それ以外のことを何も覚えていなかった。

 そのまま私達に『あたしのこと何か知らない?』と聞いてきたんだけど、知るはずもない。目の前でいきなりどこかから落ちてきただけなんだから。出会って1分くらいだもん。

 

 そしてもうこれ以上はお手上げである。何も調べようがないから。

 

 話が先に進まなくなってしまい、皆『どうしよう』って感じになってたんだけど……ぼーっとしてても仕方ないので、ひとまず今日はこの島で一夜を明かすことにした。

 

 『どうしよう』ってなってた最中に、なんか急に雲行きが怪しくなってきたんだよね……

 不安に思って『風見鶏』を飛ばして風を探ると、結構大きめの嵐が近づいてきてるのがわかったので、船で島を出るのを断念したのである。

 ごめんねシュライヤ君、アデルちゃん、ご飯また今度ね。

 

 で、嵐が来るってのに野宿は無理がある。

 かといって、船で夜を明かそうにも、すんごい揺れると思うのでそれもダメ。

 

 なので、船は2隻とも(私の船とシュライヤ君達の船)私が紙に変えて一時的に収納し、私が能力で野宿用の家……段ボールハウスを作ることに。

 デザインは……いわゆる『豆腐建築』。一晩だけの仮の宿なんだし、そこまで凝ったデザインにする意味もないでしょ。

 

 大きさも、大きめのプレハブ程度で、部屋は4つ。リビング的な共有スペースに、シュライヤ君とアデルちゃんの寝室、私の寝室、レオナちゃんの寝室。

 なお、お風呂はない。トイレはそれぞれの寝室につけてあるのでそこで。一晩くらいなら臭いも大丈夫でしょ。

 明日の朝、家ごと全て焼却処分します。もちろん、延焼とかしないように気を付けた上でね。

 

 目の前でいきなり家が出来上がって唖然としていたレオナちゃんに簡単に説明しつつ、『ほら早く』と急かして中に入り……その数分後には雨が降ってきた。

 家の外で、雨と風の音がずっと聞こえている。

 

「結構な勢いだな……明日の朝までにやむのかこれ?」

 

「大丈夫。雲とか大気の感じからしてそんなに長くは続かないと思うから。なんだったら夜明け前にはもうやむと思うし」

 

「それならいいけどな。と、この家は大丈夫なんだよな? 雨に濡れて柔らかくなって、夜寝てる間に倒壊して下敷きに……なんてごめんだぜ?」

 

「もちろん大丈夫。強度と防水性は嵐くらい余裕で耐えられるレベルに作ってあるから。火さえつかなきゃ一晩くらい全く問題ないよ、断言できる」

 

「あ、でもやっぱ火はダメなんだ」

 

「うん、そりゃね。紙だからね」

 

 なので火気厳禁ね。この家は全てが可燃物です。耐火性は皆無ですわよ。

 

 ちなみに私達は今、食事中である。

 雨で気温が下がってるから、体が冷えないように、熱々のシチューをみんなで食べてます。あー……この濃厚なホワイトソースの風味がたまらん。やっぱ乳製品は正義。

 

 え? 火が使えないのに温かい料理なんて作れるのかって?

 作ったんじゃないよ、取り出したの。『エニグマ』でしまってあった料理を。

 

 私の覚醒能力の1つ『エニグマ』は、無生物であればどんなものでも――例外が全くないわけじゃないけど――『紙』にして収納できる。そして、しまってあるものは状態が変化しない。

 

 例えば、出来立ての料理を収納しておけば、時間経過なしなので、熱々のまま冷めずにしまっておけるわけだ。

 九州のとんこつラーメンを紙にして収納して、出来たて熱々のままのそれを、数日後に北海道で食べるなんてことも可能だ。

 ……この世界に九州も北海道もないけどね。例えだよ例え。

 

 そんな風に使うために、私はあらかじめ作った食事を何十食分も、非常時用の保存食として『紙』にして持ち歩いているのである。

 それを人数分取り出して、今日の食事として提供したってわけ。

 

 ここでもレオナちゃんは、紙が料理に変わったのを見て驚いて……というか、わけがわからない、といった感じの顔になってたんだけど……食欲が勝ったのか、受け取ってすぐに食べ始めた。

 付け合わせのパンと、飲み物であるジュースも。口に合ったようで何よりだ。

 

 ……すごい勢いで食べるな。まるで、何日も何も食べてなかったみたい。

 いや、実際そうなのかもしれないな。細身にしても痩せてる気がするし……涙まで流して口の中に詰め込んで……あーあー、慌てない慌てない、誰もとらないからゆっくり食べな。詰まるぞ。

 

 どうしてそんな風なのか聞こうと思ったけど……記憶喪失だったと思いだしてやめた。

 聞いてもわかるはずがない。本人が覚えてないんだから。

 

 ……そう考えるとレオナちゃん本人も大変だな。何も覚えてないのに、体は傷だらけだわ、妙に痩せてるわ、お腹は減ってるわ……

 

 ひとまず、満足するまで食べさせてあげよう。色々聞くのはその後、落ち着いてからでいい。

 ん? おかわり? はいはい、いいよ、どんどん食べな。

 遠慮なんかしなくていいんだよ、まだまだあるし……(見た感じ多分)育ち盛りなんだから。

 

 シュライヤ君やアデルちゃんも見守る中、満足いくまでレオナちゃんはシチューをお腹の中に詰め込んで……4杯目で満足したのか、幸せそうに『ふぅ』と息をついていた。

 そして、

 

「えっと、その……ごちそうさまでした。……ありがとう」

 

「はい、お粗末様でした」

 

 ちょっと恥ずかしそうに、しかしきちんと言えたので、きちんと褒めてあげました。

 

 

 

 今日はもうやることもないってことで、さっさと明かりを消して就寝することにした。

 一応、各部屋に小さな明かりは備えてあるので、トイレとか行く際はそれでね。

 

 なお、明かりはランタンとか火を使うものじゃなく、『灯貝(ランプダイアル)』だ。

 重ねて言うけど火気厳禁だからね。

 

 

 

 そして……時刻は多分、午前2時ごろ、かな?

 外の雨音はうるさいものの、屋根もあるし温度的にも心配ない、頑丈な寝床にいるってことで、きちんと安心できる中、皆がすっかり寝静まった頃。

 

 

 

 それは、起きた。

 

 

 

『GAAAAAAAA―――ッ!!』

 

 

 

 その直前に、何か強烈な気配を『見聞色』で感じて、私は飛び起きた。

 

 それとほぼ同時に響き渡った、獣のような何かの咆哮。

 そしてすぐ隣の部屋から聞こえてくる、紙の壁をバリバリと破壊する音。

 

 ドアを蹴破るくらいの勢いで自分の部屋からでると、昨日皆で一緒に夕食を食べた大広間的な部屋に……そいつは、いた。

 

「何こいつ……ライオン!?」

 

「に、見えるな、一応……アデル、お前はそのまま部屋にいろ」

 

 シュライヤ君も同時に飛び出してきた。まあ、あの音量だしさすがに起きるか。それ以前に彼も『見聞色』で起きたかもだけど。

 

 広間(仮)にいたのは、今言った通りライオンだった。

 それも、普通のそれよりもだいぶ大きなサイズの。多分……ワゴン車くらい大きい。

 

 それが、牙をむき出しにして、明かに敵意をむき出しにした感じで部屋の中央で唸ってて……今にもこっちにとびかかろうとしているみたいな様子だった。

 

 というか、来た。

 

 私達を視界に収めたと同時に、牙をむいてすごい勢いで突進してきて……とっさに回避した私とシュライヤ君の横を通り抜けて、段ボールの壁に突っ込んだ。

 そのまま止まらず、私の部屋……を通り過ぎて外の壁までぶち破って、段ボールハウスの外に出ていった。あーあー、どうすんのコレ、雨入ってくるじゃん。

 

 しかし、すぐに飛び上がってその穴から中に戻ってきて、再度こっちをにらみつける。

 どうやら私をターゲットに定めたみたいで、唸って威嚇しながら襲い掛かる機会をうかがってくる。いつまたとびかかってきてもおかしくない。

 

 けど、何だろう。この気配というか、『見聞色』で感じ取れるものが、不自然な感じがする。

 

 何て言えばいいんだろう? 闘争心とか、敵意はむき出しになっててすごく感じられるのに……それが私や、シュライヤ君に向けられてる感じがしないのだ。

 誰に対してでもなく、ただただ湧き上がる感情をまき散らしてる、みたいな様子に思える。

 

 これって、もしかして……

 

(正気を失って……暴走、してる? それに……こいつもしかして)

 

 考えている間に、また突っ込んでくるライオン。

 その時、違和感を覚えつつ、もう1つ『あること』に気づいた私は、今度はそのライオンの牙をよけずに体で受けた。

 

 しかし、『覇気』もこもっていない一撃では私への痛打にはならない。

 ばらけた私の体が紙に変わり、そのまままとわりついてライオンを拘束する。

 

 身動きが取れなくなり、戸惑いつつも暴れるライオンに私は、

 

 

 ―――ド ク ン!

 

 

 『覇王色』の覇気をぶつけて威圧。

 その瞬間、がくん、とライオンの体から力が抜けて、その場に倒れこんだ。

 

 横倒しになって転がる巨体。

 しかし次の瞬間、それは私……と、シュライヤ君とアデルちゃんの目の前で、しゅるしゅると小さくなっていき……

 

「う、うぅ……」

 

「……やっぱりか」

 

「……! おいおい、マジかよ」

 

「え!? それ……レオナじゃん!?」

 

 眠ったまま(気絶したまま、か?)苦しそうに身をよじる、レオナの姿になった。

 

動物(ゾオン)系だったのか……まあ、そのことも本人覚えちゃいなかったんだろうが……」

 

「ね、寝ぼけて暴れ出しちまったのか?」

 

「……どうだろうね。そんな感じじゃなかったように思えたけど……」

 

 言いながら私は、私の部屋に開いた大きな穴を見る。たったいま、ライオン……もとい、レオナの『獣形態』の突進で、外まで一直線にぶち抜いて開けられた大穴を。

 もっとも、私が壁に手をあてて能力を使うと、すぐにふさがったけど。壊れてた痕跡も残さず。

 

 そして私は、その穴と反対側に開いているもう1つの穴を見た。

 

 大広間と、レオナに割り当てた部屋をつなぐ形で開いている大穴だ。

 それ以外に穴は開いてない。……外につながる穴は、今しがたあけられた私の部屋の穴だけだったのだ。

 

 さっき私は、そのことに気づいた。この巨大なライオンは、外から壁をぶち抜いてこの段ボールハウスに入ってきたわけじゃない。家の中に突然出現したんだって。

 そして、穴が開いていたのがレオナの部屋だったから……このライオンの正体がレオナかもしれないってことにも、すぐに気づけた。

 

 気付けはしたものの、一体この子は何者なのかっていう点は……まあ、最初と変わらず全然わからないわけだが……。

 まあ、今日はとりあえずもう起きないと思うし……これからどうするかも含めて、後回しにするか。

 それしか選択肢がないともいうけど。

 

 

 

 

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