大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第83話 スゥとレオナと太古の島

 

 

 明けて翌日。

 結局どうやら昨晩、うまいことうなされずに寝ることができたらしいレオナは、すっきりした顔で朝を迎えることができていた。

 

 起きた後しばらく恥ずかしそうに、顔を赤くしてうつむいてたけど。

 

 起きた時、甘える子供みたいに私に抱き着いてたのが恥ずかしかったのか――寝てる間に、私からだけじゃなくてレオナからも抱き着いてきてたみたいなんだよね――それとも、起きた直後にまだ寝ぼけてて私のこと『お母さん?』って呼んだことの方か……両方かな。

 

 ていうか、寝ぼけて『お母さん』発言はともかく、みたいも何も実際に子供なんだし、そもそも女同士なんだから別に気にせんでも。

 ああいやでも、年齢的にたぶん小学校高学年か中学生くらいだし、さすがにお母さんと一緒に、しかも抱き着いて寝るみたいなのは……恥ずかしいか。同性でも。

 

 結局朝食食べるくらいまで、私の顔あんまりまともに見れなかったレオナだったけど、その後はいくらか気がまぎれたのか、元通りの態度に戻ってた。

 

 

 

 朝食が終わったら、また島を出て海に。

 また私の能力で船を走らせて、しばらく海を進み……昼過ぎくらいに、次の島についた。

 

 そして一応ここが、私が当初目的地として設定していた、レオナと一緒にしばらく滞在しようと思っている島である。

 

 その名も……『リトルガーデン』。

 

「…………(唖然)」

 

 おー、驚いてる驚いてる。

 

 太古の密林に、そこを歩いている恐竜、あるいは……

 

「ガババババババ! 誰かと思えば、随分前に来た白い髪のチビ人間か!」

 

「ゲギャギャギャ! ああ覚えているぞ、恐竜の肉をわざわざ食べに来た娘、久しぶりだな!」

 

 この、身の丈10mを優に超える巨人2人……さて、どれに驚いてるんだろうね。

 

 ワンピース原作を知る人なら知っているだろう。この島『リトルガーデン』に住み、100年もの間、決闘を続けている2人の巨人族の戦士。

 元・巨兵海賊団船長、『赤鬼のブロギー』と『青鬼のドリー』。両名ともに、懸賞金1億ベリーの大物である。

 

 以前私がこのリトルガーデンに、恐竜の肉を食べに来て、そのまましばらく滞在した時に知り合った2人である。お久しぶりです。

 

 ……さて、レオナは再起動するにはもうちょっとかかりそうなので、先にこっちの用事済ませますか。

 

「お久しぶりですお2人共! またしばらくこの島に滞在させてもらいたいんですけど、いいですか? あ、今度はこの子も一緒に」

 

「ああ構わんぞ? 別にここは我らの島というわけでもないしな。ここで生きていける力があるのなら好きにすればいい」

 

「おうとも。それと、我らの邪魔だけはしないようにすればな……ところで娘よ、それとはまた別にちと相談があるのだが……」

 

「ああ、大丈夫。持ってきてますんでどうぞ。……よいしょっと」

 

 言いながら私は、船から降りて地面に……『エニグマ』で収納していた、大きな酒樽を取り出してドン、と置く。

 それを見て2人共、『おぉ!』とわかりやすく喜びを顔に浮かべていた。

 

「ゲギャギャギャ、何だ、用意がいいな!」

 

「大好物だって聞いてましたから、お土産ならこれがいいかと思いまして。全部で6樽あるんで、3つずつどうぞ」

 

「ガババババ、こいつはいい。久しぶりにいい夜になりそうだ!」

 

「じゃ、お2人の決闘の邪魔にならないくらいの場所でしばらく失礼しますね。ほらレオナ、そろそろ帰って来い。挨拶しなさいちゃんと」

 

「……はっ!?」

 

 その後、再起動したレオナが、『きょ、巨人に、恐竜……』って愕然とした様子のままではあったけど、どうにかドリーさんとブロギーさんへの挨拶も済ませた。

 怖がってるのかただ驚いてるだけか、明らかに挙動不審だったけど、そんな反応は普段この島に来る『チビ人間共』で見慣れてるらしく、お2人は気にした様子もなかった。

 

 とか思ってる間に、『ドォン!!』と轟音が鳴り響く。

 リトルガーデンの中央にある『真ん中山』と呼ばれる(この2人が勝手に呼んでる)火山の噴火である。だいたい1日に1回起こるらしいそれが、この2人の決闘の合図だ。

 

 ってことで2人共、酒を住処に持ち帰った後でまた決闘するらしいので、私達はさっさと、住処にする場所を探しにいくことに……

 

「え、ちょちょちょちょっとまって母ちゃん!? ここ!? え、私らここに住むの!?」

 

「そうだよ? いやさっきからそう言ってるじゃん」

 

「なんでこんな……さっきの恐竜だよね!? あのめっちゃでかい二足歩行のトカゲ! え、この森、っていうか島、あんなのゴロゴロいるんでしょ!? なんでこんな危険な場所にわざわざ……」

 

「まー確かにちょっと危険だけど、ここなら多少暴れても誰にも迷惑かからないし、食料もそこら中にいくらでもあるから過ごしやすいしさ。まあ、ちょっと暑いけど」

 

「あ、暴れ……? ひょっとして、私のアレのこと?」

 

 途端にちょっと申し訳なさそうな感じの表情になるレオナ。

 夜中に飛び起きてライオンに変身して、昨日一昨日と私に襲い掛かったアレのことを思い出してるんだろうけど……残念、違います。

 

 いや、まあそれも一応理由の一つではあるけど、本題はまた違うの。

 

「レオナさあ、記憶喪失だってのは聞いてるけど……そうなる前は『悪魔の実』の能力のこと、さすがにきちんと覚えて、っていうか認識してたと思うんだよね。それと……多分だけど、それを使って戦ったり暴れたりしてたんじゃないかと思う」

 

「え?」

 

 昨日、レオナを抱きしめて寝た時に、体を触った感触からと……あと、朝寝汗を拭くために服脱いだ時に体を見て思ったことなんだけどさ。

 レオナって、今は大分痩せた感じだけど……けっこう鍛えられてる体してるっぽいんだよね。

 

 細く見えても、全体的に引き締まったしなやかな筋肉に覆われてるし、それを効率よく動かすための体づくりもされてる感じだ。

 普段の動きも、よくよく見てると、割と動きに筋ができてるから……何かしら、荒事に関して修行なりなんなりしてたんじゃないかな? という風に予想した。

 

 もちろん、『記憶喪失』である今、彼女にこんなことを言っても、むしろ彼女自身が『???』って戸惑ってしまうだけだろう。答えなんか出てはこない。

 けど、そのきっかけになるかもしれない手段なら、1つ当てがある。

 

 記憶喪失の人間に対して、そうなる前の生活とか出来事をなぞった体験をさせることで、眠っている記憶を刺激する……っていうアプローチがある。

 よく漫画とかでもやってて、見たことあるってひとも多いんじゃないかな? 私は、ちょっとそれをやってみようかと思ってるのだ。

 

 つまり、レオナを暴れさせようと思ってるのだ。この『リトルガーデン』で、思いっきり。

 そして、相手は私が勤める。

 

 もしレオナが、記憶を失う前、あの能力を使って戦っていた過去があるなら……何かを思い出すきっかけになるかもしれないから。

 

 そう説明すると、レオナはちょっと考え込むようにした。

 この島、只滞在するだけだとしてもちょっと怖い場所だし(っていうか普通に危険だし)、そんな島で、得体のしれない『能力』を使って戦おうなんて言われたら、そりゃ困惑もするわな。

 

 けど、自分の記憶について……取り戻したいかと問われれば、それはもちろんイエス。

 覚えていないからこそ、自分がどういう存在だったのか、何ができるかは気になるようで……考えた末に、そっちの意識の方が勝ったみたいだった。

 

「……でも、母ちゃんは大丈夫なのか? いや、昨日も一昨日も、私をあっさり抑えてみせたわけだし、強いんだろうけど……」

 

 と言いつつも……まあ、レオナその時『暴走』してて、私が戦ってるところを見たわけじゃないからね。

 『私が止めたんだよ』って聞かされたとしても、半信半疑にはなっても仕方ないか。

 

 でもね。

 

「問題ないよ、全然。こういう言い方はアレだけど……レオナくらいなら、全然まだまだ勝負にもならないから」

 

「……っ(むっ)」

 

 お、流石にちょっとコレは面白くなかったか? ムッとしたような顔になった。

 けど、むきになって何か言い返してくるようなことはなく……代わりに、またしばし何やら考えたかと思うと、私の目をまっすぐ見て、こう言った。

 

「わかった、やる。……その、よろしくお願いします」

 

「はい。よろしくね。じゃ、これからしばらくここで楽しくキャンプ生活だ。……ところでさ」

 

「?」

 

「さっきから言おう言おうと思ってたんだけどさ……呼び方、それでいいの?」

 

「? …………ふぁっ!」

 

 途端に赤くなる顔。

 あー、やっぱ気付いてなかったか。さっきからレオナ、私のこと『母ちゃん』って呼んでたのは……どうやら無意識だったようである。

 

 いやまあ、別に私はどうでもいいんだけどね……そんなに嫌でもないし。

 私個人的にはだけど、30も過ぎると、そんな風に扱われるのも別段気にもならないわー。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 適度に開けたよさそうな場所を見つけて、『段ボールハウス』を建てた。

 その際、しばらく使うことになる拠点なので、紙だけじゃなくて石材とか金属とかを混ぜ込んで作り、金属なみの強度に仕上げておいた。

 これで寝てる間に恐竜が噛みついてきてもぶつかってきても大丈夫だ。

 

 実際に大丈夫だったので間違いない。

 建てた直後にトリケラトプスが全速力で突っ込んできたけど、『ガキン!』って弾かれて逆にすっころんでたからね。

 あ、でもちょっと壁の方がへこんで穴空いたな……修繕しとこ。あと、念のため壁は2重にしとくか。

 

 なおそのトリケラトプスは、本日の昼ご飯になりました。個人的に一番好きな恐竜なんだよね……食料として。

 

 で、食べ終わった後は、腹ごなしの運動もかねて、さっそく……

 

「よし! じゃあ……どっからでもかかってこいレオナ!」

 

「は、はい……行きます! えーと……えい!」

 

 掛け声と同時に、レオナの体に変化が起こっていく。

 昨日見せてもらったのと同じ変身だ。髪の毛が逆立って鬣みたいになって……いや実際に鬣になってるんだけど、そのままぶわっと広がっていく。

 

 全身に『鋼色』の毛が生え、4足歩行になり、牙をむき出しにして唸りながらこちらを睨みつけて……あれ?

 

 

 

「……ッッ……GAAAAAA―――ッ!!」

 

 

 

 ……あ、起きてても変身すると暴走する感じ?

 

 

 

 

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