大文豪に私はなる!   作:破戒僧

85 / 306
第85話 スゥとレオナと次なる島

 

 

「レオナ、そろそろこの島出ようか」

 

「え?」

 

 私とレオナが『リトルガーデン』でキャンプ兼修行の日々を送り始めてから、3週間ほどが過ぎた頃……私はふと、レオナにそう言った。

 

「あーもちろん、例の『施設』に行こうってんじゃないから安心しな? ぶっちゃけ、いいかげんこの島にいるのにも飽きてきたなー、って思っただけだから」

 

 もともと私、拠点にしてる島でもなければ、あんまりひとところに長く滞在するってことがない人間だからさ。一カ所に長くいると、『よそ行きたいなー』って思えてきちゃう。

 

 加えて、ここだと食べるには困らないけど、毎食恐竜の肉だとさすがに飽きるし……。

 いや、美味しいんだけどさ。でも、そろそろ他のものも食べたい。ここじゃ食べられないものを。

 

 加えてここ、密林だから虫とか多くて……

 一応虫よけ炊いて家には入って来れないようにしてるけど、完全に防げるわけじゃないし……こないだなんか、レオナが虫に刺されて熱出して寝込んだりしたからな。

 

 しかもそれが、ワンピース原作でもでたあのやばい病気持ってるダニだった。

 まあ、あらかじめ私が薬持ってきてたからすぐ直ったけど。ここ来ると決めた時点で、必要そうな医薬品とかは一通り用意してあったから。

 

 それに……原作では明言はされてなかったけど、ここ多分『夏島』だと思うんだよね。密林だし……結構暑いし。

 そしてここ最近、だんだんさらに暑くなってきてるような……多分コレ、『夏島の夏』になろうとしてるんじゃないかな、季節が。

 

 今更ながら私達は、別にそんな、こう……根を詰めたガチな修行のためにここにきてるわけじゃなく、『サバイバル風味なキャンプ生活を楽しみながら修行もしようぜ』みたいなノリでここに居るわけなので……そこまで過酷な環境とかに耐えてまで滞在続けたくもないんだわ。

 

 まあ、ここ、修行するには割と最適な島の1つなのは確かなんだけどね……。

 あの2人以外には人住んでないから、暴れても誰にも迷惑かけないし。

 食料にも困らない。恐竜の肉は美味しいし、なんならその食糧確保のために恐竜と戦うのも修行になる。レオナも何回か、小型~中型程度の奴なら、苦戦しつつ狩った。

 

 あと、1回だけ対人戦闘の経験も積めたっけな、予定外に。

 

 どうやら『記録指針』を使った航海でこの島にたどり着いた海賊達だったらしい。

 上陸したはいいものの、そんなに強くない十把一絡げの連中だったみたいで、たちまち恐竜に襲われて壊滅状態になってて……そのままがむしゃらに逃げて島内に散らばって。

 

 で、その中の何人かが私達を見つけて、住処と食料を奪い取ろうと襲ってきた。

 ……あと多分、視線にゲスい感情が乗ってたので、『慰安目的』もあったんだと思う。

 

 ま、さくっと返り討ちにしつつ、むしろレオナの修行相手として一役買ってもらったけども。

 

 撃退したその後は、どっかに逃げてった。それ以降のことは知らん。

 知らんけど……数日後には島内に人の気配は、私達2人と巨人の2人だけしかいなくなってたので……まあ、そういうことなんだろうね。

 

 巨人の2人も、『この島に来て生きて出られた奴はほぼいない』って言ってたし。普通の海賊は、この島に来たって時点でほぼほぼ『詰み』なんだな、やっぱり。

 

 そして理由の最後に……私の持病である。

 そろそろ、刺激的ではあるものの、代わり映えのしない生活にちょっと飽きがきてて……次なる『経験』が欲しくなってきた。アウトプットの前のインプットを欲する、作家のサガである。

 

 まあ一応、『拾ってきた子を母親役で育てる』なんて未知の経験を積んでる最中と言えばそうなんだけど……それはそれとして、環境が変わり映えしないのもやなの。

 なので、出ます。この島。

 

「まあ、あたしは別に何も文句とかはないけどさ。ちなみに、次どこ行くとかもう決めてんの?」

 

「そだねー……ここでがっつりサバイバル生活したから、次はきちんとした人の文明があるところに行こうかな、って思ってるくらいかな。修行は適当に、人のいない場所とかでやればいいし……そろそろ大味じゃない、手の込んだ料理とか食べたい気分」

 

「手の込んだ料理か……まあ、あたしは母ちゃんの料理も美味くて好きだよ?」

 

「あっはっは、嬉しいこと言ってくれるねー。でも、私だってまあ多少は自信あるとはいえ、まだまだだよ。本職の人が作る料理ってさ、やっぱ違うんだよなー、味とか触感がすごく緻密に計算されてて、もうホントじーんと来て感動できる美味さとかだったりするし」

 

「ほ、ほぉう……」

 

 お、さすが食いしんぼう。ガッツリ興味持ったな。

 ほら、よだれ垂れてる。気持ちはわかるけどね。拭きな。

 

 そうだな……ここから近いところだと、その条件を満たす島は……

 

「アラバスタ行くか。あそこの料理も美味しかったし、人のいない場所なんてどこにでもあるから修行にもいいし!」

 

「へー……まあ、あたしはわかんないから任せるよ」

 

「よし、じゃ決定。行こうか。あーでも、あそこ砂漠の国だからここよりさらに暑いよな……まあでも港町とか、海や川の近くなら多少マシだろうから、どうにかなるか」

 

 

 

 その後私達は、ドリーさんブロギーさんに挨拶してこの島を後にした。

 

 で、その際、

 

「ええぇぇえぇえ!? ちょ、ちょっと母ちゃん!? こ、これ……この船、飛んで……!? え、飛べたのこの船!?」

 

「うん」

 

「じゃ何でここ来る時は飛ばなかったの?」

 

「いやコレ、船ごと飛ばすと体力結構使うからさ。そんなに急ぐ用事でもないときは基本、普通に海の上進むことにしてるんだよ。目立つしね。ま、今回は必要だから飛ぶけど」

 

「必要って……何で?」

 

「あの島、出ようとすると襲ってくるバケモンがいてさ。普通に出航しようとすると、そいつに食われちゃうんだよ。まあ、力ずくでどうにかできないこともないと思うんだけど……めんどいし」

 

 ほら、『島食い』って怪物金魚。

 超大型の海王類と同等かそれ以上のサイズで、雑食でそのへんの島とか食べちゃう奴。

 

 前にこの島に来た時は、それ忘れて普通に出たから食われそうになって、能力で限界まで加速してどうにか逃げられたっけ……いやあ、あの時は死ぬかと思った、ホントに。

 向こうも、船自体が小さかったからか、すぐに見失ったのか……それとも食いでがなさそうだからもういいやって思ったのか……。

 

 そいつに見つかると面倒なので、空から失礼します。さらば、リトルガーデン。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 それからしばらくして。

 

 アラバスタ王国に行った後も、飽きるまでそこに滞在した後は、また別な島に移動して、修行もしつつ食道楽とか、そこで味わえる娯楽を楽しんで……みたいな旅をつづけた。

 

 レオナも……記憶喪失だからかもしれないけど、見たことも聞いたこともないものばかりで、色々な経験ができて楽しめてたみたい。

 美味しいもの食べて、やったことのない遊びして、見たことない絶景を見て……

 

 まあ、『色々』とはいいつつ、まだ3~4個くらいしか島回ってもないんだけどね?

 彼女に見せて楽しくやれそうなものなんて、まだまだたくさんあるよ。

 その気になれば、この『偉大なる航路』だけじゃなく、『4つの海』にだって見るものは沢山あるし……なんなら『新世界』だって。

 

(というか。なんかすごく自然にレオナのことあちこち連れ回しちゃってるな……前にもまして、親子扱いしたりされたりするのに抵抗なくなってきちゃったし)

 

 最近では、レオナも私を『母ちゃん』って呼ぶの、それ自体全然恥ずかしがらなくなってるし。

 言ったあとではっとするけど、『まあいいか』って感じで普通にそのまま行く感じ。

 

 次の目的地決めるのも、フランクな軽口で決める感じになってるし。

 

「次どこ行く?」

 

「魚が食べたい!」

 

「『どこ』って聞いてんのに食べ物のリクエストが飛んでくるあたりこの子はもー……まあ、魚料理がおいしい島にしよっか。なら…………ん?」

 

 そんな、ある日のことだった。

 

 今交わしたような、微妙に頭の悪げなやり取りを船の甲板でかわしながら、私とレオナは海を進んでいたわけだが……その途中、ふと私はあるものことに気づいた。

 

(……風の流れが……何か変な感じ。これは……何だ?)

 

 直感的に『何か』を察した私は、『風見鶏』を何羽か空に飛ばして、風を探る。

 それを見たレオナは頭の上に『?』を浮かべて首をかしげてたけど……あ、レオナの前で『風見鶏』使うの初めてだったかな?

 

 しかし、説明しようか、と思うより早く、『風』が私にその違和感の正体を教えてくれた。

 

「……こりゃ一雨くるな。結構強めの風も……嵐になるか」

 

「ぅえぇっ!? ちょ、あ、嵐って……この船大丈夫? 転覆とか……」

 

「見た目より頑丈だから大丈夫だとは思うけど、まあヤバそうだったら……ほら、この船飛べるからさ、雲の上にでも逃げるよ。そこなら雨も降らないし」

 

「あ、なるほど……なら一応安心か」

 

 それを聞いてほっとした様子のレオナ。

 

「ていうか母ちゃん、今の鳥、何? それに、何かいきなり天気が変わるって気づいたみたいだったし……それも能力?」

 

「能力といえば能力だけど……私、なんとなく、湿度とか風の移り変わりみたいなのが感覚でわかるんだよ。言葉では説明しづらいんだけどね。それとさっきの紙の鳥は……『風見鶏』って呼んでるんだけど、アレ飛ばしてしばらく待つと、風とか湿度、気圧の感じなんかから、この先の天気の変化がなんとなくわかるの」

 

「へー……便利」

 

 紙人間だから、湿気とか風に敏感なのかもね。紙、ちょっとの風でもひらひらするし。

 それを生かせるくらいには、私自身に航海術や天候その他の知識が、最低限備わってたのも運がいいと言えばそうなのかもだが。

 

 ……原作のナミはこれ以上の天候予測を、知識はあれど、ほぼ感覚だけでやってのけてたと考えると……すげーな。

 『予兆がない風』とまで言われるサイクロンの予想までするもんな。あの航海士。

 

 まーでもその辺は置いといて……今レオナに言った通り、大丈夫だとは思うけど、できればきちんと陸地とかで休みたいんだけどなあ。

 それも、岩礁とかみたいな頼りない陸地じゃなく、ちゃんとした島で。そっちの方が安心はできるでしょ、やっぱり。

 

 けど、残念ながらこの近くにそういう陸地は……

 

 ……陸地、は……

 

「……あった」

 

「え?」

 

 船の前方に、うっすらと……島らしきものが見える。

 携帯望遠鏡を取り出してみてみると……幻とか見間違いじゃない。ちゃんと、島があった。

 

 けど……おかしいな? この海域に、あんな位置に島なんてないはず……

 

 海図を確認してみるけど、やっぱりだ。現在地からして、何もない海のど真ん中であるはずの場所なのに、あんなに大きな島が……

 

 まあ、『偉大なる航路』は、気候から何からでたらめすぎて、よくわかっていないことの方が多いと言われるくらいの海だ。まだ見つかっていない、地図に載っていなかっただけの島がある、ってくらいなら、あってもおかしくはない、と思う。

 ただ……

 

(船がいる……?)

 

 結構しっかりしたつくりの船が、その島に停泊してるのが見えた。

 しかも、その近くに港町らしきものも見える。人がきちんと住んでいるようだ。

 

 その時点で、誰も知らない無人島、ってわけじゃなくなったわけだが……海図に載っていないのに、あれだけしっかりした船が来てて町もあるってのは、ちょっとおかしいな?

 しかもあの船、旗を掲げてないぞ? 海賊旗はもちろん、海運会社マークや、加盟国の国旗などの、どこの船であるかを示すようなものが何もない。

 

 ……怪しいな。何だろうアレ?

 

 と、思ったら、その船が今まさに港を出発して、島を離れていった。……チャンス?

 

「レオナー、ごめん、ちょっと予定変更するわ」

 

「うん? どゆこと?」

 

「嵐が来るから避難と……あと、ちょっと取材目的も兼ねて、寄り道しよう」

 

 海図に載っていない島……そこに停泊する船……きちんと人の暮らしているらしい町……。

 

 ただ何もないだけの島なら、裏組織とかが小規模な闇取引に利用しているだけの、無名の島、って可能性もあった。

 ずっと前に私が奴隷として売られた時みたいに、仮設で設置された裏取引用のオークション会場みたいに。

 

 が……あんだけしっかりした町があるのなら、それも考えにくいだろう。

 どういう場所だ、あそこ? ちょっと気になるな……

 

 ……うん。久々に……『取材』に行こうか。

 

「あの島に行くのか? ……う~……」

 

「そうだけど……え、嫌?」

 

 まあ、魚料理があるかどうかは微妙だけど……

 

「嫌っていうか……何か変な臭いがする……」

 

(……匂い?)

 

 私は何も感じないけど……レオナは『動物系』だから、嗅覚がその分鋭くなってるのかな?

 だとすると、風向きからしてあの島だが……匂い、って何だ? 火山か何か?

 

 ますます気になるな、あの島……何があるんだろう?

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。