大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第92話 スゥとレオナとスズと次なる島

 

 

 スズが旅の仲間に加わり、2人旅が3人旅になってからしばらく過ぎた。

 

 ほんの1か月弱ほどではあるんだけど、その約1か月の間に……割と大きいと言えば大きい変化が起こっている。

 スズにも……私やレオナにも。

 

 まずスズだが……割と体が丸くなってきた、と思う。

 太ってきた、という意味ではない。いや、最初の方に比べれば太っては来てるんだろうけど……頭に『健康的に』が付くというかね。

 ぶっちゃけ、レオナと同じで、最初が痩せすぎだったんだよ、スズは。

 

 まあ、毎日安全な食材はお年寄りたちに譲ってて、毒がある食材ばかり食べてたんだ。しかも、前提として入ってる毒を食べすぎないように、食事そのものの量を抑えてた。

 そりゃ体に肉もつかないし、つき方だって健康的とは程遠いものだった。

 

 けどこうして私達と一緒に旅に出てからは……量も質も、きちんとまともなものを食べている。

 育ち盛りの肉体が欲する栄養を十全に……毎回お腹いっぱいになるまで食べて、きちんと血肉に変えることができている。

 

 最初の方こそ、『こんなに食べていいんだろうか』ってちょっと遠慮気味だったんだけど、隣に座っているレオナが一切遠慮せずガツガツ食べる上に、スズの皿の上に載っている料理まで、飢えた獣の目で見てるような状況を見て、『緊張とか遠慮するだけ無駄だ』と悟ったようで。

 今では、レオナに食べられる前に食べる、とばかりにぱくぱく食べてます。

 

 レオナGJ。まあ、狙ってやったわけじゃないだろうけど。

 

 けど、これはまあ……言ってみれば、それまで最悪だったものが普通に戻っただけではあるけどね……それでも、その差は大きい。

 

 それに加えて、2人に出している食事は、基本的に私が作っている。

 『紙』にして備蓄している食事を出すときもあるが、基本それらは『何かあった時用』なので、料理する余裕がある時はきちんと料理しているのだ。

 

 食材は、海域にもよるけど、海でいくらでも釣りなり狩りなりして手に入るので。

 運が良ければ海王類とか出て来て、大量の肉を一気にゲットできる。

 

 ……どうでもいいけど、海王類って種類によって味や食感が全然違うって知ってた?

 海にいるんだから魚肉的なものばっかりなのかと思ってたんだけど、牛肉とか豚肉とか、明らかに陸の生き物の味や食感のものもいたりして……食べてみるまで割と分からないのが面白い。

 

 何せ、見た目から全然予想できないのだ。味が見た目通りだったり、全然違ったりもするし。

 こないだも、カエルみたいな……っていうかまんま巨大なカエルの海王類を仕留めて食べたんだけど……カエルって普通だと、鶏肉みたいにあっさりした触感なんだけどさ、その時の海王類、A5ランクの牛肉ばりに霜降りでジューシーな肉だったんだよね。

 いやーびっくりした。そして美味しかった。

 

 ……話が脱線したけど、まあそんな感じで、食材は現地調達しつつ私が料理作ってるのね?

 

 で、私以前の『冬島』でのとある一件のおかげで、ちょっとだけとはいえ『攻めの料理』作れるんだよね。『カマバッカ王国』秘伝の、食べると力がみなぎる、心と体を強くする元になる料理。

 本格的に修行したわけじゃないから、ホントに基礎の基礎みたいな部分だけだけど。

 

 だから私が作る料理は、『体を作る』ことに非常に向いているのだ。

 そしてそれを、育ち盛りの2人が食べてるわけで……相性は最高といっていい。いっぱい食べてガンガン成長していっている。

 

 そしてそれは、運動代わりに行っている戦闘訓練でも見ることができる。

 

 スズは今言った通り、健康的に体が丸くなってきたのに加えて、適切に肉がついてきちんと腕力に変わってきたおかげで、腰に差した刀2本の『二刀流』も鋭く、力強く振るえている。

 我流ではあるけどずっと修行は欠かしてなかったようで、形は中々さまになっている。

 

 しかも、実戦経験も割とあるようだ。

 相手は山の獣とかで、主に狩猟目的での戦いだけどね。

 

 加えてレオナも、ますます動きの力強さと、獣特有の俊敏さに磨きがかかってきた。

 今の時点では、だけど……パワーもスピードも、レオナの方がスズよりも上だ。戦闘訓練で攻撃を受け止めてやる時に、それがはっきりわかる。

 

 スズはちょっと悔しそうだけど、まあまだまだこれからだよ。

 スズの体は、ようやくまともに鍛え始められたところなんだからさ。

 

 ちなみに、戦闘訓練では、当然、刃をつぶした模造刀を使っている……とかいうのはなくて、普通にスズはいつも使ってる真剣2本でやってます。

 レオナは武器はないから拳と……『人獣型』になった時には爪とか牙も使うけど。

 

 スパーリングの相手は私が務めているわけだが、『紙人間』である私には、『覇気』をまとっていない物理攻撃は効きません。

 なので、2人とも遠慮せず全力で、殺す気で攻撃させている。

 

 もっとも、それはただ単に『万が一当たっても死なないから全力で来い』と言っているだけで……無抵抗で受け入れてるわけじゃない。腰の入っていない、踏み込みが足りない、全然なってない攻撃なんかには、当然当たってやることはなく、『はいダメ』と言う感じで反撃してます。

 

 なお、スズ達は真剣ですが、私が使う武器は、紙でできた剣……ですらない、棒です。

 君達にはこれで十分。

 イメージとしては、ラップの芯みたいな感じ。丸くて、地味に硬い棒。アレを能力で作って、覇気を弱めに纏わせれば、覇気なしの剣が相手でも普通に戦える武器になる。

 

 本物の刀と、結構な威力の爪や牙、それに体術を、紙の棒で受け流されているというのは、2人のお子様たちにはちょっとショックであるようで……しかし落ち込むのではなく『なにくそ!』とやる気出して向かってきます。向上心豊かでよろしい。どんどん強くなれ。

 

 そんな感じで子供組は成長を続けてますが……一方で私も、少しずつだが成長していたりする。

 

 もちろん、日々のトレーニングは欠かしてないけど……それとは別に、ちょっと最近、別な部分の……というか『覇気』の方で新しいトレーニングを始めたんだよね。

 

 これは実は、こないだスズを連れ出した時に、家から持ち出した荷物の1つである『黒炭家秘伝ノ書』が関係してたりする。

 ちらっと読んだ通り、剣術とか武術系統の指南書だったんだけど……そこに書かれているものの中に、『覇気』関係の知識までもが書かれていたのだ。

 

 しかもだ、今まで私が知らなかった『覇気』の使い方までもが書いてあった。

 

 これにはさすがにびっくりした。びっくりして、その後ガッツリ熟読した。

 

 それによると、どうやら『ワノ国』で使われている技術らしいんだけど……書の中では、おそらくは『覇気』のことだと思うんだが、『流桜』という呼ばれ方をされてた。

 『覇気』そのものを指してるのか、それともその使い方を含めての呼称なのか……いまいちはっきりとはわかんなかったけど。むぅ……私もまだ読解力が足りないのかな……。

 

 まあでも、ひとまず『覇気』のことを指して言ってるんだと仮定して……書の中では、『流桜』を扱う技術の1つとして、文字通り『流して纏う』というものが語られていた。

 

 簡単に言えば、全身に纏っている覇気のうち、使っていない場所の覇気を『流し』て、使っている場所により多く、より強く『纏う』ことで、より攻撃を強く鋭くし、より防御を堅牢なものにするというものらしい。

 

 右手で攻撃している時に、左手や背中にも同じ量の覇気を常に纏っていても意味がない。

 いやまあ、不意打ち防止とかの点ではいいかもしれんけど、基本的に無駄である。

 

 だったらその分の、無駄打ちになってしまっている『覇気』も、右手に集めてしまおう、というわけだ。

 なるほど……単純だが理にかなっている使い方だと言える。思いつきそうで思いつかない発想だな……こんな技術があったなんて。

 

 しかも、より強く纏った覇気は、直接相手に触れなくても攻撃として機能するという。

 拳圧とか衝撃波とか『飛ぶ斬撃』とか、そういうのとは別に、『触れてないのに当たっている』という攻撃が可能になるらしい。……いまいちイメージしづらいが。

 

 しかもしかも、さらに強い覇気になると、その衝撃は相手の内側に到達し、より強力な破壊をもたらすんだとか。

 これも、『鎧通し』とか『発勁』とか、その手の内部破壊の『技術』とは別物。

 

 ……覇気をちょっと使えるだけで、ワンピース世界の上位者になった気になっていた私の頭に、それはそれは大きな衝撃をもたらしてくれた。

 これらの技術を覚えれば……私はもっと強くなれる。と思う。

 

 いつか『ワノ国』に行った時に、これを書いた人……は今まだ生きてるかどうかわかんないので、スズの生家である『黒炭家』の人にでも、お礼の1つも言いたいもんだ。

 

 とまあそういうわけで、私はこの『秘伝ノ書』を元に自主トレを頑張ってます。……まだ全然できないけど。

 

 頑張れ私。アレだ……似たような概念が某狩人マンガにあった気がする。アレを思い出せ。

 

 『纏』『絶』『練』『発』……いや『発』は無理か。

 

 『凝』……が多分『流桜』だな。体の各部位にオーラもとい覇気を流す、攻防力移動。

 移動……『流す』部分のスピードも速く、なめらかにできるようになる必要あるよな。

 

 

 

 とまあ、そんな感じで色々順調に私達の旅は進んでいる。

 

 もちろん、修行とか一色ってわけでもなく、あちこち回って観光なり取材なりやってる。

 私の料理以外にも、きちんと店売りの、本職の職人さんが作った美味しいもの食べて、時には思いっきり羽目外して遊んで、メリハリつけて楽しむことも大事だ。

 

 何より、私の『作家業』のためにもね。定期的にきちんとインプットしないと、いいアウトプットはできないもんだ。

 まあ、『毒島』のことも相当に印象の強くて濃厚な『インプット』だったと思うけど。

 

 ちなみに、ここまでの説明で気づいていると思うが……スズの呼び方について。

 

 『ウーバステン島』を出て以降、私はスズのことも、レオナと同じく呼び捨てにするようになった。ちゃん付けだとなんだか他人行儀みたいに思えてたしね。

 

 そして、スズの方からも……

 

「母上、島が見えたぞ! あそこが今回の目的地か?」

 

「お、ホントか! やった! 母ちゃん次はどんな島だっけ?」

 

 とまあ、こんな風に……スズも私のことを『母』呼ばわりするようになった。

 

 理由を聞いたら……スズの場合、親がいなかったから、だそうだ。

 いやまあ、『ワノ国』に戻ればそりゃいる(あるいは『いた』)んだろうけど……小さい頃過ぎてスズの記憶にはないし、『ウーバステン島』に来てからは、おじいさんとおばあさんばかりの村だったから……彼女は『母親』ってものを知らずに育った。

 

 けど、この船に乗って、私やレオナと仲良く旅をして……母親とか姉妹がもしも一緒にいたら、こんな風に楽しくて、暖かい『家庭』ってものが自分にもあったのかもしれない、と思うようになったらしい。

 

 それに加えて、なんだか私を遠慮も何もなく『母ちゃん』って呼んでるレオナがうらやましくも感じたとのこと。

 

 それで、できるならば今からでも、あるいは今だけでも……血縁がなかったとしても。そう呼びたいってことで。

 彼女がそう思うなら、まあ別にいいかなと思って、私もうなずいて……で、その時から私は、スズの『母上』になったのだ。

 

 最初のうち、自分から言い出したくせに、呼ぶたびにちょっと照れ臭そうにしてて……けど、同時になんだかうれしそうに、ほっこりした笑顔になってたな、スズ。かわいかった。

 ……そのたびにレオナにからかわれてたけど。

 

 なお、必然的にレオナとは姉妹になったわけだが、どちらが姉かをめぐって喧嘩していた。

 というか、今もまだ決着ついていない。何かにつけて競って『わしが!』『あたしが!』って姉の座争奪戦をしている。微笑ましい。

 

 ……さて、現状説明はこのくらいにして……

 

「えーでも、もう見えたの? やけに早いな……早くてもあと1日はかけないと着かないはずなのに……あ、でもホントに島見えるね」

 

「む、そうなのか? ということは……アレは何か別な島かの?」

 

 念のため海図を見てみるけど、あんな位置に島はないはず……

 指針の向きとかからしても、私達が今いる位置を見間違えてるってわけでもないと思うけど。

 

 と、いうことは……

 

「あー……海図が古かったのかな?」

 

 たまにあるんだよなあ、そういう粗悪品。

 まあ、現代と違って衛星写真とか便利な観測設備も何もないわけだし、ある程度無理もないことなのかもしれないけど。

 

「のう、この地図買ってきたのって……」

 

「あぅ……ごめん母ちゃん、つかまされたかも……」

 

 ああ、そうだ。初めてのおつかい的な感じで、地図その他の買い物、レオナに任せたんだっけ。

 

「大丈夫大丈夫。ほかの大まかな地形とかは間違ってないと思うし……よくあることだから。多分だけど、私達が行く予定の島を目指す分には大丈夫でしょ」

 

 それに……実はその『初めてのおつかい』、誘拐その他防止のために、私が隠れて尾行してたんだよね。

 だから、その時に指摘できなかった私も同罪です。責めるつもりはない。

 

 ぽんぽん頭を軽くたたいて慰めつつ……さて、そうなると、だ。

 

「あの島は何なんだろうね? 遠目から見ても、そこそこ大きそうに見えるけど……ちょっと気になってきたな」

 

「お、もしかしてまた『寄り道』か?」

 

「今現在しようかなと思ってる。レオナ、スズ、行っちゃってもいい?」

 

「よいのではないか? 元々、次の目的地も、何か確固たる用事があって目指しておったわけではないしの。気ままに進んでみるのもよかろう……というか、わしら2人とも外界に関する知識とかはないんじゃから、母上が決めて構わんじゃろ」

 

「そーだな。……そういえば、スズの島に行った時もこんな感じで『寄り道』した結果行きついたんだよな。今度はどんな島で、どんな奴がいるんだろうな!」

 

「そうなのか、ふむ……母上にとっても情報なしの、未知の島、というわけか。そう考えると少し怖くもあり、楽しみでもあり……不思議な気分じゃな。これが冒険か……」

 

 よし、反対意見なしということで決まり!

 急遽予定変更で、今見つけたあの謎の島に向かいます!

 

 どんな島かなー? 何か面白いものがある、見どころがある島だといいなー♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……来るんじゃなかったかも、この島。

 

 

 

 

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