魔女保有国アトランタを目指して。   作:ペジテ市民A

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起動 1930年アトランタ

 こりゃ死んだな。今助けが来ても間に合わないだろう。

 

 観光客としてアメリカを訪れていた私は、現在火炎地獄にいた。そこら中であらゆる物が燃えている。壁に掛けられていた絵画が、廊下に敷かれた絨毯が、淡い緑の壁紙が、どれも燃えている。館内には何かが崩れ落ちたかの様な轟音が響いている。

 

 そんな地獄の日常風景が現出しているのは、アメリカ某所のホテルだ。何故燃えているのかと言えば、大統領選の結果に不満を持った市民が暴徒化して、私の泊まっていたホテルに火をつけたらしい。部屋の窓からホテルの玄関を包囲する群集が見えた。

 

 このホテルが燃やされたのは、昨日新大統領の選出記念のパーティーが開かれていたからだろうか。何にしても、アメリカ国民でない私からすれば理不尽でしかない。

 

 どうにか外に出ようとして、私は階段に辿り着いた。燃え盛っているが、辛うじて姿は残っている。私は勇気を出して階段の一段目に足を下ろす。

 

 途端、足元が崩れ私の身体は宙に投げ出された。

 

 ああ、まずい。こんな所で怪我したら、もう本当にお終いだ。

 

視界が回転する。階段に頭から落ち、どうにか受け身を取ろうと転がると、今度は崩れた階段の部材に足が引っ掛かり、踊り場に頭から突っ込む事になった。

 

 その時、焼け落ちた踊り場に突き出た、恐らく梁か何かだった部材が見えた。その嫌に尖った先端がこちらに迫って来る。

 

 くそ、まさか火事の中で失血死かよ。

 

 固定された視界で、燻る炎を消しながら広がる血溜まりを見ながらそう思った。これが、私の、佐藤渚としての最後の記憶である。

 

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 私は執務室で目を覚ました。あの時の夢を見るのは久しぶりだ。

 

 どうも、アトランタ合衆国上院議員のネヴィル・アーガスです。実は前世の記憶があったりします。前世で私は、こことは異なる世界の日本人でした。この世界でいうところのヤシマですね。

 

 その世界は、実に平和でした。まあ、私が死んだ頃にはきな臭くなってきていたけども。かなり平和だったのです。大国同士の戦争など、長い事起こっていませんでした。つい最近まで大戦争をやっていたこの世界とは違いますよね。

 

 ところで、何がその世界の平和を支えていたと思います?

 

 実はですね。爆弾なのですよ。それもとんでもない威力の。世界の国々はその爆弾にビビり散らかしてしまいまして、核と言うのですが、核の撃ち合いを始めると、世界が滅びると、みんな知っていたのです。

 

 そして、ここからが本題ですが、この世界にもそんな超兵器の素と言うべきものが存在します。そう! 魔法です。エイルシュタットの白き魔女なんかが割と有名ですよね。いや、アトランタならセイレムの方ですか?

 

 何? 科学の世紀に何言ってんだ? ええ、もちろんそう思われる事でしょう。しかし、魔法は実在します。この辺は私自身調査によって確認しましたとも。

 

 総括すると、我々が平和を掴むためには、魔女の力が必要という事です。本当なら私が魔法少女でもやって、合衆国大統領=抑止力の等式を打ち立てるところですが、生憎今世の私は魔法の使えない中年男性です。いや、前世でも魔法は使えませんでしたが。

 

 ここまで聞いて、こう思った合衆国国民の皆さんもいる事でしょう。

 

 魔女はどこにいるのか、と。

 

 もちろんお答えしましょう。確認出来ている魔女は2人です。両者ともアルプス地域を転々とする生活をしております。さあ! いざ欧州へ!

 

 残念ながら、そうも出来ない事情がアトランタにはあったりします。孤立主義ですね。なので私は原作開始まであと10年、アトランタの孤立主義をどうにかしないといけません。そうしないと介入が遅れてこの世から魔法が消失してしまいます。この世界だと核兵器の技術的ハードルが高そうなので、どうにか魔女方式でやりたい所です。

 

 うん? あら、言っていませんでしたっけ。ここは、「終末のイゼッタ」の世界ですよ?

 

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 どうにか私は正気を取り戻した。誰に向かって説明してるんだ。

 

 外宇宙の更に先からの視線を感じる。やっぱり、アーカムでの調査がまずかったのだろうか。

 

 これから、アトランタを改造し、私の支配下におく計画を立てる必要がある。精神を落ち着かせるため、コーヒーカップに手を伸ばした。一口含んで、冷めている事に気がついた。まあ、いい。私が望むのは冷戦だ。熱々の泥濘など、私の望むところではない。

 

 そう思いながら、私は秘書を呼びコーヒーを淹れてくれと頼んだ。

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