とある原石の決闘目録   作:みんふみ

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駆け引き

「私のターン、ドロー!」

 

 三巡目。

 それまで葛城とアヴリルが攻撃を仕掛け、縦ロールの少女がそれを防ぐという展開が続いていたが、ウィジャ盤の発動で形勢は分からなくなった。

 この葛城のターンのエンドフェイズ時に2枚目のメッセージカード「A」がフィールドに出現する。

 次のアヴリルのターンで「T」、そして葛城のターンで「H」がフィールドに出され、ウィジャ盤の効果で二人の敗北が確定する。

 それまでに縦ロールの少女のライフを0にするか、ウィジャ盤かメッセージカードのどれかをフィールドから離し、完成を阻止するしかなくなった。

 

(彼女の場には、デレメタリカの書庫とウィジャ盤に「E]のメッセージカード、そして神の恵みがある。ウィジャ盤を破壊しようとすれば、間違いなく神の恵みをコストにデレメタリカの書庫の効果を使って破壊を防ぐはず)

 

 葛城はドローしたカードを見る。

 

(ハーピィの狩場……ここでこのカードを引くなんて、今日の私はどうかしてる)

 

 欲しいときに欲しいカードが引けず、いらないカードを引いてしまうということはよくあることだ。

 よくあると分かっていても、これはない。

 

(ハーピィモンスターを引ければ狩場の効果を使えたし、エクシーズモンスターを呼び出すことも出来たのに、よりによって……)

 

 葛城の手札は、今引いた2枚目のハーピィの狩場の他には、死者蘇生のみだ。

 その死者蘇生も、葛城の墓地はおろか、アヴリルの墓地にもモンスターが存在しないこの状況では役に立たない。

 伏せカードが1枚あり、『スワローズ・ネスト』だ。

 スワローズ・ネストは自分フィールド上に表側表示で存在する鳥獣族モンスター1体をリリースして発動し、リリースしたモンスターと同じレベルの鳥獣族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚するカードだ。

 

(待って……)

 

 葛城の思考が動き出す。

 こんな苦しい状況でも、何もせずにアヴリルにターンを渡すことだけはできない。

 

「……リバースカード、オープン! 速攻魔法『スワローズ・ネスト』を発動! ハーピィ・レディ1をリリースして、デッキから同じレベルの鳥獣族モンスター『ハーピィ・チャネラー』を攻撃表示で特殊召喚する! ハーピィ・レディとして扱うチャネラーが特殊召喚されたことにより、『ハーピィの狩場』の効果が発動! 破壊するのは、ウィジャ盤!!」

「ならば、デレメタリカの書庫の効果を発動! 神の恵みを墓地へ送り、その破壊を無効にする!」

「そして、ハーピィ・チャネラーの効果を発動! 手札から「ハーピィ」と名のついたカード1枚を捨て、デッキから「ハーピィ・チャネラー」以外の「ハーピィ」と名のついたモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する! 私は手札の『ハーピィの狩場』を捨て、デッキから『ハーピィズペット(ドラゴン)』を守備表示で特殊召喚するわ!」

「有希さん、頑張って……」

 

 アヴリルの言葉に葛城が頷く。

 

「ペットドラゴンを1枚入れておいて良かったわ……ハーピィ・チャネラーは自分フィールド上にドラゴン族モンスターが存在する場合、レベルが7になる。そして、レベル7の『ハーピィ・チャネラー』と『ハーピィズペット竜』でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚! 現れなさい!! 『幻獣機(げんじゅうき)ドラゴサック』!!」

「なにッ……!」

 

 葛城の狙いに気付いた縦ロールの少女だが、もう遅い。

 

「ドラゴサックの効果は、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動でき、自分フィールド上に「幻獣機トークン」を2体を特殊召喚する。私はエクシーズ素材となっているハーピィ・チャネラーを取り除いて効果を発動! さらに、1ターンに1度、自分フィールド上の「幻獣機」と名のついたモンスター1体をリリースして発動できる。フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。この効果を発動するターン、このカードは攻撃できなくなるけど、これであなたのウィジャ盤コンボを崩壊させることができる! 「幻獣機トークン」をリリースして、『ウィジャ盤』を破壊するわ!!」

「させると思うたか!! 私はデレメタリカの書庫の効果を発動!!」

「そんな……コストになるカードはメッセージカードしかないのに、書庫の効果を!? メッセージカードがフィールドから離れたら、どの道ウィジャ盤も墓地へ……」

「いいえ有希さん、抜け道があります!! デレメタリカの書庫自身をコストにすることで、ウィジャ盤を守るつもりです!」

「なッ……」

 

 葛城はパネルをいじり、改めてデレメタリカの書庫の効果を見る。

 

(このカードが破壊された時、自分フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。そして、自分フィールド上の魔法・罠カードがこのカードの効果以外で破壊される場合、そのカード以外の魔法・罠カード1枚を墓地に送ることで、その破壊を無効にする。ということは、デレメタリカの書庫をコストにしても、全て破壊されてしまうんじゃ……)

 

 そこまで考えて、葛城はアヴリルの言っていた抜け道に気が付いた。

 

「そうか、破壊を無効にする効果のコストは『墓地へ送る』だけど、自分フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊するのはこのカードが『破壊された』時……!!」

「その通り!! 私はデレメタリカの書庫自身を墓地へ送り、防御効果を発動!! これでウィジャ盤は守られる!!」

「くっ……」

 

 葛城の目論みはギリギリのところでかわされてしまった。

 効果を使用したターン、幻獣機ドラゴサックは攻撃できないため、せっかく書庫が無くなったのにライフを減らすことができない。

 

(甘かった……遊石君なら、あの抜け道には気付けていたはず。これが初デュエルのアヴリルさんが気付けて、私が気付けないなんて……)

「あの、有希さん」

 

 己の詰めの甘さを後悔していた葛城に、アヴリルが声をかける。

 

「もっと、伸び伸び戦いましょう」

「伸び伸び……?」

「はい。有希さんが私に負担をかけさせまいと気を張ってくれているのは感じています。でも、それで詰めが甘くなってしまっては意味がありません。私なら大丈夫です。いざとなれば『切り札』もあります。有希さんはもっとリラックスして下さい」

「……そうね。ありがと、アヴリルさん。今の言葉で気持ちが楽になったわ。おかげで、このままエンド宣言するなんてさらなる失態をせずにすんだわ」

 

 お互いに顔を見合わせて微笑むと、葛城は再び鋭い視線を縦ロールの少女へ送る。

 

「まだ私のターンは終わってないわ! 私は手札から魔法カード『死者蘇生』を発動!! 自分の墓地から『ハーピィ・レディ1』を攻撃表示で特殊召喚する!!」

「くそっ……!」

「ハーピィ・レディとして扱うハーピィ・レディ1が特殊召喚されたことで、ハーピィの狩場の効果が発動!! 今度こそウィジャ盤を破壊するわ!!」

 

 縦ロールの少女にウィジャ盤の破壊を防ぐ手段はもうない。

 ウィジャ盤は破壊され、メッセージカードも墓地へ送られる。

 

「バトルフェイズ!! ハーピィ・レディ1でプレイヤーへダイレクトアタック!!」

「ぐぅッ……!!」

 

 自身の効果とハーピィの狩場の効果で攻撃力が1800となっているハーピィ・レディ1の攻撃が決まり、縦ロールの少女の残りライフは1000となった。

 

「どうやら勝負の趨勢が見えてきたみたいね。ターンエンド」

「まだ終わっていない! 私のターン、ドロー! 私は手札から魔法カード『逆転の宝札』を発動!! 自分フィールド上にカードが存在せず、手札がこのカードだけの場合のみ発動する事ができる。相手フィールド上に表側表示で存在するカードの枚数だけデッキからカードをドローする! 今お前たちのフィールドに表側表示で存在するカードはハーピィ・レディ1、パーピィの狩場、魔導書院ラメイソン、魔導書廊エトワール、魔導戦士ブレイカー、魔導天士トールモンドの計6枚。よって6枚のカードをドロー!!」

「ここまで追い込まれたこの状況で、まさに逆転の切り札にふさわしいカードを引いたって訳ね……」

「せっかく破壊したところ恐縮だが、私は再び『デレメタリカの書庫』を発動する! さらに魔法カード『光の護封剣』を発動! このカードは発動後、相手のターンで数えて3ターンの間フィールド上に残り続ける。このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上のモンスターは攻撃宣言できない。そしてカードを4枚伏せターンエンド!」

「相変わらずのガン伏せですね……私のターン、ドロー! スタンバイフェイズ時、フィールド魔法『魔導書院ラメイソン』の効果発動! 「魔導書院ラメイソン」以外の自分の墓地の「魔導書」と名のついた魔法カード1枚をデッキの一番下に戻し、デッキからカードを1枚ドローします。私は墓地の『ヒュグロの魔導書』をデッキの一番下に戻し1枚ドロー! 手札から速攻魔法『サイクロン』を発動! 光の護封剣を破壊します! さぁ、デレメタリカの書庫の効果を使うのですか?」

「ッ……」

 

 葛城は感心した。

 これが初デュエルのアヴリルが、駆け引きを行っているのだ。

 ここでデレメタリカの書庫の効果を使って光の護封剣を守ろうとすれば、書庫自身を墓地へ送らなければならない。

 

「私はカウンター罠『神の宣告』を発動! ライフポイントを半分払い、サイクロンの発動を無効にして破壊する!」

「そちらで防ぎましたか……ではメインフェイズ、私はフィールド上の魔導戦士ブレイカーと魔導天士トールモンドをリリースして、『魔導法士(まどうほうし) ジュノン』をアドバンス召喚!! さぁ、もう一度駆け引きの時間とまいりましょうか」

「くっ……ジュノンの効果発動の前に、私は罠カードを発動する! 罠カード『反撃の狼煙(のろし)』を発動! 自分のデッキ、または墓地からカウンター罠を1枚選択してフィールドにセットすることができる。セットしたカウンター罠はセットしたターンに使用することができるが、セットしたターンに発動しなかった場合はライフポイントを10分の1にする。私は墓地の『神の宣告』を選択してセット!」

「念のため、ということですか。では、ジュノンの効果を発動!」

 

 魔導法士ジュノンには1ターンに1度、自分の手札・墓地の「魔導書」と名のついた魔法カード1枚をゲームから除外して発動でき、フィールド上のカード1枚を選択して破壊する効果がある。

 

「手札のグリモの魔導書1枚をゲームから除外し、光の護封剣を破壊します!」

「デレメタリカの書庫の効果を発動する! 書庫自身を墓地へ送り、光の護封剣の破壊を無効にする!」

「そう、あなたはそうするしかない。護封剣を破壊されれば攻撃が行われ、書庫の効果でダメージが半分になっても負けてしまう。だから、護封剣を守った。先ほど『神の宣告』を再セットしたのは、万が一のため……というより、残りの伏せカードが心もとない物ばかりだから、といった方がよろしいでしょうか?」

「くっ……」

「私の手札に、あなたの護封剣を破壊できるカードはありません。ですが、戦闘をせずともあなたに1000のダメージを与えられればそれで勝てるのですよ」

「何をするつもりだ……?」

「アヴリルさん、まさか、手札にあるの? 『アレ』が」

「はい……というより、実は初手からずっとありました」

 

 そう言ってニコッと微笑むアヴリルと、あっけにとられて苦笑するほかない葛城。

 そう、もう勝負はついているのだ。

 

「私は自分フィールド上のすべてのカードと、手札・デッキ・エクストラデッキ・墓地のモンスターカードをすべてゲームから除外して、手札から『原石眼の切札竜』を攻撃表示で特殊召喚!!」

「……ッ!?」

 

 縦ロールの少女、もとい、彼女を操っている人物の驚愕が葛城とアヴリルにも伝わってくる。

 原石眼の切札竜には特殊召喚を無効化されず、特殊召喚成功時には魔法・罠・効果モンスターの効果は発動できないという耐性がある。

 つまり、決死の思いで再セットした神の宣告は役に立たない。

 

「原石眼の切札竜の効果!! 1ターンに1度、このカードの効果で除外したモンスター1体を選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備できます! 私はエクストラデッキから除外した『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』を選択して装備! エクシーズモンスターを装備したため、エクシーズ素材として魔導戦士ブレイカーを2体選択します! そして、エクシーズ素材を1つ取り除いてグスタフ・マックスの効果を発動! 相手に2000ポイントのダメージを与えます!!」

「くそっ、忌々しき竜と女王がああああああッ!!」

 

 

 

 こうして、2対1の変則デュエルは終わったのであった。

 

 

 To be continued.




今回のオリカです。

《逆転の宝札》
通常魔法

自分フィールド上にカードが存在せず、手札がこのカードだけの場合のみ発動する事ができる。相手フィールド上に表側表示で存在するカードの枚数だけデッキからカードをドローする。
※なお、このカードは私の考えたオリカではなく、アニメGXで使用された、アニメオリジナルカードです。


そろそろ上条さんとか出したいですね。
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