《反撃の狼煙》
罠カード
自分のデッキ、または墓地からカウンター罠を1枚選択してフィールドにセットすることができる。セットしたカウンター罠はセットしたターンに使用することができるが、セットしたターンに発動しなかった場合はライフポイントが10分の1になる。
「葛城、アヴリル!!」
学舎の園と、その外とをつなぐゲート。
男子禁制の学舎の園に入ることのできない遊石は、このゲートの事務室で葛城たちと合流するのを待っていた。
「無事か!? 電話じゃ、二人も闇のデュエルを挑まれたとか……!」
「なんとかね。アヴリルさんのおかげで勝てたわ」
「遊石、私、頑張りました!」
胸を張るアヴリルだが、平坦な胸のせいでやや迫力に欠けるな、と遊石はつい思ってしまう。
「……遊石、今変なこと考えてませんでした?」
「いや、全然!! それより、二人も負けたら魂が奪われるとか言われたか?」
「ええ。ふざけた冗談だと思ってたけど、私たちが勝った後、相手の常盤台生めがけて闇が収束し始めたのを見て、冗談ではないと思ったわ」
「その常盤台生はどうなったんだ?」
「私には分からないわ。アヴリルに聞いて」
「? どういうことだ?」
その場にいた葛城が分からないとはどういうことだろうか? と疑問に思いながらも、遊石はアヴリルに視線をむける。
「私にも正確には……ただ、相手の方の魂が闇に飲み込まれようとした直前、ジャムストーンアイズ・ジョーカードラゴンのカードが光を放ったのです」
「ジェムストーンアイズが、光を……?」
「はい。その次の瞬間には、闇など最初から存在しなかったかのように晴れ渡った空が広がったのです」
「つまり、元の空間に戻ってきたってことか」
「はい。その相手の方は気を失ったままでしたので、御坂さんと白井さん……でしたか? お二人に事情を説明して、身柄を預かっていただきました」
「そうか……」
二人と無事再開できたことに安堵しつつも、遊石は安心しきれない現実が依然続いていることに頭を悩ませる。
いったいどこの誰が、何の目的で遊石たちに魂をかけるデュエルを挑んでくるのか、それがまったく分からない。
ジェムストーンアイズ・ジョーカードラゴンを狙っていることは分かっているが、それがなぜなのかは不明だ。
ただ、ジェムストーンアイズ・ジョーカードラゴンが闇の力を払ったというのが、敵が狙う理由と関係あるのかもしれない。
そしてもう一つ、遊石が気になっているのが、デュエルの終わった時に操り主の言っていた言葉。
(『君を倒すこともそうだが、あの竜と忌まわしき女王を闇に葬ることも、私の使命なのでね』か。忌まわしき女王ってのは誰の事なんだ? この学園都市で女王と呼ばれるのに一番近い存在といえば、今行方が分からない食蜂操祈のことだが……まさか、食蜂が行方不明なのは、敵から逃げているからか?)
思考を巡らす遊石の視界に、1枚のカードががスッと姿を現した。
「ん? なんだ?」
「これ、戦った常盤台生が持っていたカードよ」
「……絵柄が何も書いてないな。エラーカードか?」
「普通ならそう思うわよね。でも、そんなものをわざわざ持ち歩く意味は無いわ」
「確かに。デュエルディスクはこのカードに反応するのか?」
「試してみたけど、何も3D表示しなかったわ」
「うーん……」
カードを裏返して裏側を見てたりするが、表紙に文字やイラストが無いこと以外は普通のカードと同じであった。
(3D描画しないということは、本来内蔵されているはずのICチップが入っていないのか? それじゃ、本当にただの紙だな。何のためにこんなもの持ってたんだ、その常盤台生は)
しばらくの間そのカードを見つめていた遊石だが、顔を上げて改めてアヴリルを見る。
「葛城の話じゃ、今日のデュエル、アヴリルの活躍が無かったら負けてたって? 初めてのデュエルでそんなこと言われるなんてすごいな。しかも、2対1の変則だったんだろ?」
「そんなことありません。手札が良かっただけです。それに、私一人でも勝てたかどうかは分かりません。あのデュエルは、有希さんとのペアだったから勝てたんです」
「あら、そんなに謙虚にならなくてもいいのよアヴリルさん。今日のあなたは立派だったわ。大覇星祭で行われるタッグデュエル大会、私と遊石君で出るつもりだったけど、アヴリルさんに変わってもらおうかしら」
「そういえば、そんな大会もあったな……でも今は、今日俺たちを襲ってきた奴らを見つけるのが先だ。奴らをどうにかしない限り、デュエルが命をかけて戦う戦争になっちまう」
「そうね。とりあえず遊石君、そのエラーカード、私に貸しておいてくれない?」
「何か手がかりでもあるのか?」
「イラストも文字も書いてないエラーカードなんて、そうそう手に入るものじゃないわ。つまり、希少性があるってことね。当然、手に入れる手段も限られてくる。調べようと思えば、このカードの出どころなんて分かるわ」
「……それもそうだな。それじゃあ、これは葛城が持っててくれ。それと、これからは出来る限り離れないようにして、三人一組で行動しよう。1対1の場面を作り出すことだけは極力避けるようにしておけば、仮にまた襲われたとしても切り抜けられる確率が上がる」
遊石の言葉に、葛城とアヴリルが頷く。
「……それで、これからどうするのです? 食蜂さんの情報を手に入れるためにここへ来たのですから、もう一度中へ?」
「いえ、今はこのエラーカードの調査をすることにしましょう。遊石君、遊戯王の学園都市支部に行きましょう」
「ああ。葛城なら、あそこの人たちにも多少顔が利く。調べてもらえるかもしれない」
こうして、遊石たちは学舎の園を後にし、学園都市で遊戯王を展開している
◆◆◆
蓮華坂コーポレーションは、学園都市内でデュエルモンスターズを展開している会社であり、第七学区に拠点としているビルがある。
ビルの下階はショップやデュエルリングなどがあり、学園都市のデュエリストならば一度は訪れる、聖地のような場所でもある。
「やぁ葛城君!! まさか君の方から会いに来てくれるとは思わなかったよ! ついに僕と付き合ってくれる決断をしてくれたのかい?」
「……悪いけど、今日はそんな浮いた話をしに来た訳じゃないの。電話でも事前に言っておいたでしょ?」
遊石たち……というより、葛城を出迎えたのは、蓮華坂家の御曹司であり、遊石や葛城と同級生の蓮華坂純一であった。
「相変わらずのきざっぷりだな、純一」
「おや、井原遊石じゃないか。まったく気付かなかったよ。君みたいな地味な人間が、葛城君と昔からの顔なじみだという事実が、いまだに腹立たしいよ」
「……悪かったな」
「ところで、そちらのお嬢さんは?」
純一がアヴリルを見てたずねる。
「電話では言ってなかったわね。彼女はアヴリルさん、留学生よ」
「蓮華坂さん、お初にお目にかかります。今後とも、よろしくお願いいたします」
葛城のとっさの機転で、海外からの留学生という設定になったアヴリルが、純一に丁寧にあいさつをする。
「へぇ、日本語がお上手なんですね。私は蓮華坂純一と申します。今後ともどうぞよろしく」
(……そう言えば、アヴリルは何の違和感もなく日本語をしゃべってるな)
「蓮華坂君、さっそくだけど、本題に入っていいかしら?」
「っと、そうだったね。そのエラーカードとやら、見せてくれるかい?」
葛城がエラーカードを渡すと、純一は「ふむ……」と小さくうなる。
「これはまた、ずいぶんとレアなエラーカードだね。イラストのズレなんかは比較的あるエラーなんだけど、そもそも何も印刷されていないというのはかなり珍しい」
「このカードの出どころを知りたいの。何とかならないかしら」
「任せてくれたまえ。カードは工場で印刷、カード化しているんだけど、その時の記録はエラーカードを含めて全て保存している。ついでに、ICチップの中身も取り出してみようじゃないか」
「助かるわ」
「葛城君の頼みとあらば、お安いものだよ。そのかわりと言ってはなんだが、今度どこかにデートでも行かないかい? せっかくの夏だ、海や綺麗な夜景の見える場所を確保しよう」
「……考えておくわ」
「良い返事を期待しているよ。では、このカードをデータ室で調べるから、そのあいだはショップなどで待っていてくれたまえ」
そう言うと、純一はエラーカードを持って奥へと消えていった。
「ずいぶん変わった方でしたね……」
「だろ? いわゆるお坊ちゃんってやつだ」
「どうやら、有希さんに気があるみたいでしたが……」
「私としては、彼にあまり興味は無いんだけどね。でも、今回のエラーカードに関しては、彼に相談するのが一番早いだろうし、しょうがないわ。それより、ショップでも見に行かない?」
「お、そうだな」
遊石たちはロビーから離れ、自動ドアをくぐりショップの中へと足を踏み入れた。
店内にはカードのパックをはじめ、プレイマットやカードケースなどが数多く並んでいる。
「ここのショップは学園都市の店の本家本元なだけあって、品ぞろえは完璧だ。なんせ、これまでに発売されたパックが全部売ってるからな」
「す、すごい数ですね……この、ガラスの向こうにある、単体のカードは展示用ですか?」
「いや、それも売ってるものだ。ただ、学園都市ってのは学生の遊びの道具からはやたら金をとる傾向があって、トレーディングカードも例外じゃない。特に、単体で売ってるカードはそこそこの値段でないと買えないのがネックなんだ」
「あぁー!! これ、俺の欲しかったカードじゃねぇか!! ばら売りしてたのかよ!? しかも、5000円!? 貧乏学生の上条さんには手の届かない代物だわこれ……」
遊石たちの近くでカードを見ていたツンツン頭の男子学生が、カードに付けられた値段を見て悲鳴をあげた。
「俺の
「へぇ、HEROデッキの使い手なんですか? 強いですよね、HERO」
「だろ? お前もデュエリストなのか?」
「ええ。井原遊石っていいます」
「俺は上条当麻、高校1年だ」
「あら、私たちと同学年なのね。私の名前は葛城有希」
「私はアヴリルと申します」
「よろしくな。せっかくだ、誰か俺とデュエルしないか?」
「じゃあ俺が! どうせ、純一の解析が終わるまでは暇だしな」
「おし、それじゃあ、デュエルリングを借りるとしようぜ」
To be continued.