とある原石の決闘目録   作:みんふみ

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遊石vs上条

 闇の力を操るデュエリストの手掛かりとなると思われる、エラーカードの解析を待つことになった遊石たち。

 カードショップに偶然居合わせた上条当麻と、遊石はデュエルをすることになった。

 

「遊石」

「ん?」

 

 アヴリルに声をかけられた遊石が振り向くと、原石眼の切札竜をスッと差し出された。

 

「使いますよね?」

「……いや、いい。今回はジェムストーンアイズは無しだ。毎回頼ってばかりじゃあれだからな」

「大丈夫なのですか?」

「見たところ、上条は普通のデュエリストだ。別に負けたからといって魂が抜かれることもないさ」

 

 そう言うと、遊石はデュエルリングに立つ。

 

『両プレイヤー、準備完了を確認。プレイヤー、井原遊石の先攻でデュエルを開始して下さい』

「「デュエル!!」」

 

 遊石は手札を見る。

 

『マスター、今度はホルアクティのデッキじゃないんですね』

(まぁな。あのデュエルの時は、いざとなったら神の力を具現化して相手を倒すことも念頭に入れていたからな。闇のデュエルでもないのに、あんな事故満載のデッキは使わないよ)

『このデッキなら、普通に戦えそうだな。だがマスター、相手はHEROデッキ、上手くまわった時の爆発力は尋常ではないぞ』

(ダルクの言うとおりだな。ま、このデュエルは純粋に楽しませてもらうさ)

「俺のターン! 俺はモンスターをセット、さらにカードを2枚伏せてターンエンド」

 

 遊石は対戦相手である上条の様子を見る。

 

「じゃあ俺のターンだな。ドロー! 魔法カード『増援』を発動! デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加える」

(始まったか……)

 

 HEROデッキはその大半が戦士族モンスターで構成されるデッキである。

 制限カードである増援をはじめ、デッキから「E・HERO」モンスター1体を手札に加える『E-エマージェンシーコール』、自分フィールドに表側表示モンスターが存在しない場合、LPを半分払って発動でき、デッキからレベル4以下の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚する『ヒーローアライブ』など、サポートカードが豊富に存在する。

 これらのカードを駆使して、手札やフィールドにモンスターを展開するのがHEROデッキの特徴であり、一度動き出すと止めるのは難しい。

 

「俺が手札に加えるのは、HEROデッキなら当然これだ。『E・HERO(エレメンタルヒーロー) エアーマン』!」

「来るか……」

「そして、エアーマンを通常召喚して、効果を発動する。デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから『E・HERO シャドー・ミスト』を手札に加える。さらに、手札の『沼地の魔神王』の効果を発動だ。自分メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ捨てて発動でき、デッキから「融合」1枚を手札に加える」

「くっ、デッキの回りが速い……」

「『融合』を発動!! 手札の『E・HERO バブルマン』と『E・HERO シャドー・ミスト』を融合素材として、『E・HERO アブソルートZero』をエクストラデッキから融合召喚!!」

「早速お出ましか……! HEROデッキの中でも最強の一角を誇るモンスター……!」

 

 アブソルートZeroは、「HERO」と名のついたモンスターと水属性モンスターとを融合させて融合召喚される融合モンスターである。

 遊石が『最強の一角』と称したのは大袈裟なことではなく、アブソルートZeroにはこのカードがフィールド上から離れた時、相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊するという、超強力な除去効果が備わっている。

 「フィールドから離れた時」という条件があまりにも緩く、普通の方法で除去しようとすればほぼ確実に効果を使用されてしまう。

 攻撃力も2500あり、その効果も相まって、倒すことはかなりのリスクが伴うことになる。

 

「融合素材に使用したシャドー・ミストは、墓地へ送られた時にデッキからシャドー・ミスト以外の「HERO」モンスター1体を手札に加える効果を持っている。俺は『E・HERO ブレイズマン』を手札に加える。バトルフェイズ、まずはエアーマンで裏守備モンスターへ攻撃!」

「破壊されたモンスターは『ダンディライオン』だ! このカードが墓地へ送られた場合、自分フィールド上に「綿毛トークン」を2体守備表示で特殊召喚する!」

「これで、遊石へのダイレクトアタックはなんとか防げましたね……」

「でも、アブソルートZeroにいつまでも居座られるのは厳しいわね。かと言って除去すれば、遊石君の場はがら空きになるわけだけど。でも、この遊石君のデッキならなんとかなるかもしれないわ」

 

 遊石の場に綿毛トークンが特殊召喚された。

 

「なら、アブソルートZeroで綿毛トークンへ攻撃! メインフェイズ2に移行し、カードを2枚伏せてターンエンドだ」

「上条のエンドフェイズに速攻魔法『スケープゴート』を発動する! 自分フィールド上に「羊トークン」4体を守備表示で特殊召喚する。このトークンはアドバンス召喚のためにはリリースできない。そして俺のターン、ドロー! 俺は羊トークン3体をリリース!!」

「3体リリース……特殊召喚モンスターか!?」

「そうだ。羊トークンはアドバンス召喚には使えないが、特殊召喚のためのリリースには使用できる。手札から『超弩級戦艦(ちょうどきゅうせんかん) コスモガーディアン』を攻撃表示で特殊召喚!!」

 

 遊石の場に現れたのは、その名の表すとおりのスケールの、砲門をいくつも備えた超巨大な戦艦であった。

 大戦中の洋上艦というよりは、SFアニメに登場する宇宙空間で活躍する架空の戦艦に近い形をしたコスモガーディアンの砲門が、上条のモンスターたちへと向けられる。

 

「コスモガーディアンの特殊召喚は無効化されず、特殊召喚成功時、相手は魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。さらに特殊召喚成功時、自分のデッキ、墓地から「コスモ」と名のつく魔法・罠カードを2枚まで手札に加えることができる。俺はデッキから装備魔法『逆位相式障壁-コスモウェーブバリア』と、永続魔法『軸線式超重力砲-コスモウェーブキャノン』を手札に加える。そして、装備魔法『逆位相式障壁-コスモウェーブバリア』をコスモガーディアンに装備!」

 

 装備魔法の発動によって、コスモガーディアンの艦体表面を白く輝くバリアが包み込んだ。

 

「コスモウェーブバリアはコスモガーディアンにのみ装備可能な装備魔法だ。このカードは発動後、自分のターンで数えて3ターンの間のみ装備され、3ターン目のエンドフェイズ時に破壊される」

「ターン制限つきの装備魔法ってことか」

「ああ。そのかわり、効果は優秀だ。このカードが装備された「超弩級戦艦 コスモガーディアン」はこのカード以外の効果を受けず、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージが0となり、戦闘では破壊されなくなる」

「なんだそれ!?」

「バトルフェイズだ! コスモガーディアンでエアーマンを攻撃!!」

「ぐっ……!」

 

 コスモガーディアンの主砲が火を噴き、エアーマンのソリッドビジョンが消滅する。

 上条のライフが、コスモガーディアンの攻撃力2500からエアーマンの攻撃力1800を引いた数値、つまり700減り、残り3300となる。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー! その巨大戦艦に張られたバリアが邪魔だから、これでそれを壊させてもらうぞ! リバースカード、オープン! 速攻魔法『マスク・チェンジ』! 自分フィールドの「HERO」モンスター1体を墓地へ送り、そのモンスターと同じ属性の「M・HERO(マスクドヒーロー)」モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する!! 俺は水属性のアブソルートZeroを墓地へ送り、『M・HERO アシッド』を特殊召喚!!」

 

 M・HEROアシッドは『マスク・チェンジ』の効果でのみ特殊召喚できるモンスターであり、特殊召喚に成功した時、相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊し、相手フィールド上の全てのモンスターの攻撃力が300ポイントダウンするという効果を持つ。

 さらに、墓地へ送られたアブソルートZeroの効果で、フィールドのモンスターも全滅する。

 つまり、このコンボが成功すれば、相手フィールドは文字通りのがら空きになる。

 

「アブソルートZeroとアシッドの効果は同時に発動する。この場合、俺の好きな順番でチェーンを組むことができる。俺は最初にアシッド、次にアブソルートZeroの効果が発動するようにチェーンを組む。遊石、お前はカードの発動をするか?」

「ああ。罠カード『和睦の使者』を発動させてもらう」

 

 和睦の使者によって、このターン遊石のモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージが0になる。

 もっとも、遊石の場のモンスターは戦闘を行う前に、アブソルートZeroの効果を受けることになるが。

 和睦の使者の効果処理が終わり、次はアシッドの魔法・罠を全て破壊する効果の処理が行われる。

 逆位相式障壁-コスモウェーブバリアが破壊され、コスモガーディアンを覆っていた白いバリアが消滅する。

 

「そして最後にアブソルートZeroの効果で、遊石の場のモンスターは全て破壊される!」

「だが、コスモガーディアンには逆位相式障壁-コスモウェーブバリアが無い素の状態でも、1ターンに2度まで、戦闘およびカードの効果では破壊されない効果がある! 戦艦はそう簡単には沈まないってことさ!」

「しぶといさは随一ってことか。和睦の使者の効果で、このターンは戦闘ダメージも与えられない。が、それ以外の方法ならダメージを与えることができる! 俺は手札から魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動!!」

「フィールドまたは墓地の融合素材を除外して、「E・HERO」の融合モンスターを特殊召喚するカード……一体、何を呼び出すんだ?」

「俺は墓地のバブルマンとアブソルートZeroをゲームから除外して、『E・HERO ドヴォルザーク』を攻撃表示で特殊召喚!!」

「なっ、ドヴォルザーク……!?」

 

 上条のフィールドに現れた新たなE・HEROは、他のHEROたちとは異なる存在感を放っていた。

 他のHEROたちと共通して人型に近いモンスターであり、身体は全体的に光をまとっているように見える――右腕を除いては。

 右腕の先にはドラゴンの頭部のようなものがあり、その風貌だけ見れば『E・HERO フレイム・ウィングマン』に近い。

 しかし、その右腕の部分のドラゴンは身体の他の部分とは異なり闇をまとっている。

 光と闇が混在し、圧倒的な威圧感となってフィールドを支配するドヴォルザーク。

 

(HEROモンスター2体で融合できるモンスターか。ドヴォルザークの攻撃力は2900、守備力は2000。光属性ってことになってるが、あの右腕の部分はどう見ても光とは思えない。むしろ闇……というより、何もない『無』という形容の方が正しいかもしれない)

『マスター、このモンスターの効果も見ておいた方が良いぞ』

 

 ダルクの指摘を受けて、遊石はパネルに表示されているドヴォルザークの効果を見る。

 

(1つ目の効果は、1ターンに1度、手札のカードを1枚リリースすることで相手モンスターの効果の発動を無効にし、そのモンスターを破壊する、か。手札のカードをリリースってのがかなり珍しい行為だけど、要は『天罰』を内蔵してるってことか。2つ目は、1ターンに1度、自分フィールドのモンスターの攻撃宣言時に発動でき、相手に800ポイントのダメージを与える、か。攻撃の成否に関係なく800ポイントのダメージを与えられると考えると、悪くない効果だな)

『あの上条さんという方は、この効果でマスターにダメージを与えるつもりなのでしょうか』

(だろうな。コスモガーディアンを破壊せずとも、攻撃宣言するだけで800のダメージを与えられれば、5ターンで決着がつくからな)

「バトルフェイズ、ドヴォルザークでコスモガーディアンへ攻撃!! 攻撃宣言したことにより、効果が発動! 遊石、お前に800のダメージを与えるぞ!」

「くっ……」

「これでターンを終了する」

 

 遊石にとって、この状況は良いものではない。

 アシッドの効果によって、コスモガーディアンの攻撃力は300ポイントダウンして2200となっている。

 上条のモンスターの攻撃力はアシッドが2600、ドヴォルザークが2900であり、コスモガーディアンを攻撃表示のままターンを終了させれば、サンドバッグにされてしまう。

 

(ここは守備表示にして、コスモガーディアンの1ターンに2度まで破壊されない効果で耐えるしかない……)

 

 コスモガーディアンは守備力も2500あるため、戦闘で破壊するためには2500より高い攻撃力のモンスターで3度攻撃する必要がある。

 しかし、1ターンに2度まで破壊に耐える効果は、魔法・罠・効果モンスターの効果も1回とカウントするため、魔法・罠・効果モンスターの効果を使われると戦闘で耐えられる回数が減ってしまうことになる。

 やはり、遊石の状況は苦しい。

 

「俺のターン、ドロー……!」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 遊石が苦しい状況に立たされていたその頃。

 蓮華坂純一はデータ室でエラーカードの調査を行っていた。

 現在、ICチップの中の情報を取り出し、このエラーカードが何のカードの失敗作であるか、いつどの工場で出来てしまったものであるか調べていた。

 

「……あれ、おかしいですね」

「どうした?」

 

 端末を操作していた社員の疑問の声を聞き、純一が画面をのぞき込む。

 

「……製造データがない、だと?」

「はい。ですが、容量は減っているため、何らかのデータが入っているものと思われます。現在、そのデータが何であるか解析中です」

 

 二人が見つめる中、ほどなくして解析結果が画面に表示された。

 

「……どうやら、音声データが入っていたようです」

「カードに音声データだと? 製造工場の人間のいたずらとかじゃないだろうな」

「再生します」

 

 社員がマウスを操作し、音声データを開く。

 しばしの沈黙の後、データ室にその音声が響き始めた。

 それは、歌や音楽ではなく、女性の肉声であった。

 やや切羽詰まったようにも聞こえるその声は、自分の名を名乗った。

 その名前を聞いた二人は、互いに顔を見合わせることになる。

 

「純一様、これは……」

「ああ。エラーカードに見せかけた、メッセージカードってことだ。それも、SOSのな。そのデータを僕の社用タブレットに送っておいてくれ。葛城君たちに知らせてくる。それと、このことは他言無用だ、いいな」

「了解いたしました。至急、データをお送りします」

 

 純一はデータ室を後にし、下階へ向かうためエレベーターのボタンを押した。

 

 

 

 

 To be continued.




今回のオリカです。

《超弩級戦艦 コスモガーディアン》
効果モンスター/レベル8/光属性/機械族/攻撃力2500/守備力2500

このカードは通常召喚できない。自分フィールド上のモンスターを3体リリースした場合のみ特殊召喚できる。このカードの特殊召喚は無効化されず、特殊召喚成功時、相手は魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。このカードの特殊召喚成功時、自分のデッキ、墓地から「コスモ」と名のつく魔法・罠カードを2枚まで手札に加えることができる。このカードは1ターンに2度まで、戦闘およびカードの効果では破壊されない。

《逆位相式障壁-コスモウェーブバリア》
装備魔法

このカードは「超弩級戦艦 コスモガーディアン」にのみ装備可能。このカードは発動後、自分のターンで数えて3ターンの間のみ装備され、3ターン目のエンドフェイズ時に破壊される。このカードが装備された「超弩級戦艦 コスモガーディアン」はこのカード以外の効果を受けず、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージが0となり、戦闘では破壊されない。

《E・HERO ドヴォルザーク》
融合モンスター/レベル7/光属性/戦士族/攻撃力2900/守備力2000
HEROモンスター×2体

1ターンに1度、手札のカードを1枚リリースすることで発動できる。相手モンスターの効果の発動を無効にし、そのモンスターを破壊する。この効果は相手ターンにも使用することができる。1ターンに1度、自分フィールドのモンスターの攻撃宣言時に発動できる。相手に800ポイントのダメージを与える。

※ドヴォルザークはこの小説を読んで下さっている方が考案して下さったモンスターです。なお、頂いた原案よりダメージ量を上昇させるなど、若干強化してあります。
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