とある原石の決闘目録   作:みんふみ

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波乱

「……という訳なんだ」

「なるほどね……」

 

 アヴリルの記憶を取り戻す、という方針を定めた遊石たち。

 当初はアヴリルのことは内密にしておこうかと考えた遊石であったが、考えを改め、葛城有希にも知らせることにした。

 葛城は遊石の昔からの知り合いでもあるし、頭も良い。

 話しておいて損はないと判断したのだった。

 

「それで、常盤台中学にいる序列第五位のレベル5、心理掌握(メンタルアウト)に協力してもらおう、そう考えた訳ね」

「ああ。ただ、すんなり力を貸してくれるかは分からねぇけど……」

「恐らく、難しいでしょうね」

 

 キッパリと言い切った葛城の言葉に、アヴリルはやや表情を曇らせる。

 

「断言かよ。葛城はその心理掌握のことを知ってるのか?」

「詳しくは知らないわ。世間一般で言われていることに、多少毛が生えた程度ね」

「教えてくれ」

「まず、名前は食蜂操祈(しょくほうみさき)。常盤台中学に在籍する中学2年生。だけど、腰のあたりまで伸ばした金髪に長身痩躯(ちょうしんそうく)な風貌は、とても中学2年には見えないって話ね。何より、巨乳らしいわ」

「ふーん……」

 

 遊石はチラリと葛城の胸部に視線を送った。

 

「……何よ」

「いや、お前がそうやって言うってことは、よっぽどデカいんだろうなって思って」

「確かに、有希さんも大きいですよね。私は……」

 

 アヴリルも葛城の胸の部分に視線を送った後、今度は自分の胸部に視線を落とした。

 葛城と比べると平坦と言わざるを得ないその双丘を見て、ため息を漏らすアヴリルであった。

 ちなみに、その話を黙って聞いていたブリザード・プリンセスも、胸に視線を落としてやや気落ちした表情になる。

 

「胸が大きくたって良いことないわよ。通りすがる男の視線が来るってだけで、私としてはマイナスポイントだわ。それより、話を元に戻すわよ」

「そうだな。今の話だと、外見はかなり特徴的みたいだな」

「性格も、いかにもお嬢様っぽい……というより、むしろ『女王様』って表現が的確みたいね」

「女王様か……話が通じにくそうだな」

「そうね。そして何より、相手が精神系能力者ってところが厄介よ。見かけた瞬間に能力で脳内をいじられるかもしれないし、いじられたこと自体にも気付けない。目に見えない能力だから対処も難しい」

精神防壁(プロテクト)も意味なさそうだな」

 

 学園都市には、精神系能力者に心や脳内を読まれないようにするための、精神防壁と呼ばれる対抗策が存在する。

 企業の社長や重役、あるいは組織の上層部など、精神を操作されると著しい不利益が生じるような人間には、必ず精神防壁が施される。

 だが、いくら強固な精神防壁を施しても、学園都市最強の精神系能力者である食蜂操祈の前では、何の意味もなさないのは容易に想像がつく。

 もし食蜂の能力に対抗できる精神防壁が存在するのならば、今頃彼女の地位はもっと低いものになっていただろう。

 

「あと、そもそも出会えないっていう問題点があるわね」

「らしいな。同じ常盤台でも、御坂美琴なら比較的すんなり出会える……っていうか、今日すでに会ったしな」

「常盤台のイメージキャラクターと言っても過言ではないものね、御坂美琴は」

「ああ。今さらだけど、御坂美琴と普通の会い方をしとけば、レベル5つながりで食蜂に会えたかも。後の祭りだけど」

「そうね……でも、記憶の復元となると、やっぱり食蜂操祈の力が必要ね。何とか研究機関のつながりを使って、彼女に接近できないか考えてみるわ」

「助かるよ葛城」

「有希さん、ありがとうございます」

 

 深々と頭を下げるアヴリルを見て、葛城は「良いわよ」と首を横に振る……が、すぐに深刻な表情になった。

 

「ど、どうしたんだ葛城?」

「ちょっとね。今、急に、気になることができたの。ちょっとアヴリルさん、耳を貸して」

 

 葛城はアヴリルのそばによると、耳元で何かささやいた。

 何を言っているのかは、遊石は直接は聞き取れなかったが、直後のアヴリルの言葉に衝撃を受けることになる。

 

「え、その『ぶらじゃー』というのは何ですか?」

「なっ!?」

「ちょ、ちょっとアヴリルさん!?」

 

 よもや想定もしていなかったアヴリルの言葉に驚く遊石と、同じく愕然の表情の葛城。

 ブリザード・プリンセスも最初はポカンとしていたが、すぐに「あ、私たちモンスターには関係ありませんでしたね」と、こちらもある意味衝撃の発言。

 

「おい葛城!! 何の話をしてるんだ!?」

「何のって、今ので分かったでしょう!?」

「分かったけど分からねぇよ!! 何だってそんなものの話してるんだよ!?」

「だって……アヴリルさん、してないんだもの!!」

「えっ……マジかよ!?」

 

 遊石は思わずアヴリルのことをまじまじと見てしまった。

 アヴリルの服装は、縄文時代の人のコスプレですか? と言いたくなるほど現代の服装とはかけ離れたものではあるが、一応隠すべきところは隠れているため、機能は果たしている。

 しかし、その下に下着が無いとなれば、意識するなと言われても意識してしまう。

 

「な、なんでなんだ……」

「分からないわよ! 一つハッキリ言えるのは、アヴリルさんにはブラの知識がないってこと」

「そうか……って、にわかには納得しがたいけど。それにしても、よく分かったな」

「さっきアヴリルさんが身体を前にかがめた時に……その、見えちゃったのよ」

「あ、ああ。そういうことか……」

 

 見えちゃったと言われて、想像しない男子がいるだろうか?

 いや、いない。

 

『マスター!? 今、変なこと考えてましたよね!?』

「な、何を言ってるんだプリンセス!?」

『誤魔化してもダメですよ! マスターと私たちモンスターは思考を共有できるんですからね!!』

「うっ……」

 

 その場の全員が、ブリザード・プリンセスの全身から放たれる、絶対零度と形容しても違和感のない冷気を肌身に感じる。

 このままでは冷凍パックにされてしまう、そう考えた遊石は慌てて葛城に話を振る。

 

「よし葛城、買い物に行こう!! アヴリルがこの街で過ごすために必要なものを揃えに行くぞ!!」

「どうやら、その必要がありそうね。私もついていくわ。服や下着は、遊石じゃ買えないものね」

「た、頼むぜ葛城。ところで、買い物に行くときのアヴリルの服装だけど……」

 

 今のアヴリルの格好は、ハッキリ言ってかなり目立つ。

 変なことで注目を浴びるのは、アヴリルにとっても良い事ではないと遊石は考えた。

 

「私の私服を貸すわ。下着はサイズが合わないから貸せないけど、身長はさほど変わらないみたいだし、服なら違和感はなさそうね」

 

 そう言って、葛城は立ち上がると服を取りに自分の部屋へと戻っていった。

 

「……結局、『ぶらじゃー』とは何なのですか?」

「あ、あとで葛城にこっそり聞いてくれ! 俺からは言えない!」

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、遊石たちはアヴリルの生活用品の買い出しのため、再び熱波渦巻く真夏の学園都市へと繰り出していた。

 アヴリルは葛城の私服を借りたため、見た目には何の違和感もない格好になっていた。

 英語のプリントされたTシャツにショートパンツという出で立ちは、まさに年頃の女子といった雰囲気を醸し出させていた。

 それに加えて、ベビー・ブロンドの髪と白っぽい肌、オッドアイと、海外のモデルが突如日本に舞い降りたかのような状態になっている。

 事実、道行く人間が男女問わず、すれ違うアヴリルに目を奪われていた。

 

「なんか、俺たちがすごい場違いみたいになってるな……」

「私、あんまりおしゃれに興味がないから、私服もシンプルな物しか持ってないんだけど……まさか、あんなにも輝かしいオーラを発するなんて、思ってもみなかったわ」

 

 アヴリルの前に立って道案内をしている遊石と葛城は、アヴリルのオーラに萎縮するかのように身体を少し縮めてしまう。

 

「遊石、有希さん」

 

 見慣れない景色にキョロキョロする旅行客のように、あちこちへ視線を送っていたアヴリルが二人に声をかけた。

 

「私たち、どこに向かっているのですか?」

「セブンスミストっていうお店よ。まずはそこで、遊石には必要のないものを買うわ」

「ああ、さっき教えてもらった『ぶらじゃー』ですね」

「わざわざ言わなくていいから!!」

 

 道行く人に聞かれないかとおろおろする遊石と葛城。

 どうやらアヴリルには、ブラジャーというものの概念自体が存在しないらしい。

 だが、現代の女性、しかも高校生くらいの年齢のアヴリルにその概念が無いというのは、どう考えてもおかしな話である。

 

「なぁ葛城。ひょっとしてアヴリル、大昔からタイムスリップしてきた……なんてことないよな?」

「非科学的……なんて言いたいところだけど、学園都市では何が起きてもおかしくないってところが、ね。でも、未来の学園都市から人がタイムスリップしてくるならともかく、過去から人が飛んでくるというのは、いささか腑に落ちない説ね」

「だよなぁ。でっきり、縄文時代あたりからこの時代に飛んできたのかと思ったんだが」

「可能性がゼロではないでしょうけど、限りなくゼロに近いとは断言できるわね。まぁ、もし本当にそうなら、アヴリルさんを元の時代に戻す手段がない以上、ここで過ごしてもらうしかないけど」

 

 いかに学園都市といえど、物体を時空を超えてやり取りさせることは現時点ではできない。

 未来の学園都市ではタイムマシンが作られている可能性もあるが、少なくとも、未来人が接触してきたとかそういった話を聞かない以上、未来においてもタイムマシンは作られていないと推測するほかない。

 

「とにかく今は、アヴリルの買い物をするのが先だな。代金は……割り勘にしよう」

「あら、レベル4ともあろう遊石君が、結構けち臭いことを言うのね? 『ここは俺が出す』とか期待してたのに」

「葛城だって、研究機関に所属してる分奨学金が出てるだろ? 実は俺、今月カードの買いすぎで普段より厳しいんだよ」

「それは自業自得じゃない? まぁ、遊石君の自業自得とアヴリルさんはまったく関係ないし、ここは割り勘で良いわ」

「助かるぜ……って、今財布の中に金入ってねーわ」

「はぁ?」

「大丈夫だって。確か、通りの反対側に銀行があったろ? あそこのATMで下ろすから」

 

 遊石は目的地である通りの向かい側へと渡るため、横断歩道で信号が青になるのを待つ。

 とその時、その銀行に視線をむけていた葛城が疑念の声をあげた。

 

「ねぇ遊石君。あの銀行、閉まってないかしら」

「は? んな馬鹿な。今日は平日で、しかもまだ閉まる時間じゃねー……あれ、本当だ」

 

 遊石がお金を引き出そうとしていた銀行の建物は、シャッターが閉まっていた。

 

「おかしいな、休業のお知らせもしてなかったはずだし、普通なら営業してるはずだけど……」

「……何か異常が起きてるとか?」

「強盗か……? とにかく、行ってみるしかない」

 

 ちょうど、横断歩道の信号が赤から青へと変わった。

 遊石と葛城は走って横断歩道を渡ると、シャッターの閉まっている入口へ向かう。

 事態についていけないアヴリルであったが、二人に遅れまいと走ってついていく。

 そして、シャッターの正面にたどり着こうとしたその直前、そのシャッターから軋む異様な音が聞こえてきた。

 

「ッ!? 遊石君、まさかっ!?」

「任せろッ!!」

 

 直後、銀行のシャッターが爆音と同時に粉々に吹き飛んだ。

 巻き込まれればタダでは済まない距離にいた三人であったが、遊石がとっさに展開した『聖なるバリア -ミラーフォース-』のおかげで、破片などが襲い掛かることはなかった。

 周囲には黒煙がたちこめ、銀行内からは人々の悲鳴と異常を知らせるベルが漏れ聞こえてくる。

 

「な、何が起こったのですか!?」

 

 まったく事態を飲みこめていないアヴリルがおろおろする中、遊石と葛城は冷静だった。

 

「葛城、アンチスキルへの連絡頼む!」

「ええ! 遊石君は!?」

「犯人を取り押さえるか、銀行内に怪我人がいないか確かめる! プリンセス!!」

『はい、マスター!』

 

 遊石の呼びかけに応じて、ブリザード・プリンセスが実体化した姿を見せる。

 

「いつでも攻撃できるようにしといてくれ! 犯人と鉢合わせになるかも……!?」

 

 その言葉は、すぐさま現実のものとなった。

 破壊された入り口から男三人組が出てきて、遊石の方たちへと向かってきたのだ。

 三人はいずれも黒のジャンパーを羽織り、口元を白い布で隠している。

 それぞれの手には黒のカバンがあり、いずれもかなり膨らんでいる。

 

「言ったそばからこれかよ……」

「おいガキども!! そこをどきな!!」

 

 男の中の一人が、遊石たちに激しい口調で威圧する。

 その怒号にアヴリルが身体をビクリと震わせるが、遊石とブリザード・プリンセスは涼しい顔で聞き流し、葛城も意に介さずアンチスキルへの通報を続ける。

 

「あ、あの女! アンチスキルに通報してるぞ!?」

「させるか!!」

「お待ちなさい!!」

 

 鋭い声が遊石たちと男たちのあいだに響いた。

 遊石が声のした方を見ると、そこには緑色の腕章をした一人の少女が立っていた。

 常盤台中学の制服に身を包み、腕章を見せつけるツインテールの少女に、遊石は見覚えがあった。

 

「お前、あの時の!」

「またお会いしましたわね。ですが、今はあなたよりこいつ等の方が先ですわ」

「またガキが増えたか……って、その腕章、ジャッジメントか」

「ええ。わたくし、第177支部の白井黒子と申しますの。器物破損、および強盗の現行犯で、あなた方を拘束します!」

 

 男たちは遊石たちと黒子に視線を送る。

 人数だけで言えば、遊石たちの方に分がある。

 だが、学園都市において、人数の優位性は時として意味を持たない。

 レベル5という化け物は別にして、能力の強さと相性次第では、多少の不利も覆るのが学園都市だ。

 ただし、相手の能力が何であるか、また自分の能力との相性が良いかどうかは、やってみないと分からない。

 つまるところ、出たとこ勝負である。

 

「はいそうですかって素直に連行されると思うなよ」

 

 一人の男がやや声を低くして、右手を自らの前に掲げた。

 その直後、男の手のひらの上に火の玉が渦を巻くようにしながら出現した。

 

発火能力者(パイロキネシスト)……」

 

 男が作り出した火球を見て、黒子が小さく呟く。

 

「俺はあのジャッジメントをやる。お前ら二人はあっちのガキどもを片付けろ」

 

 そう言うと、発火能力者は黒子に向けて火球を投げつけた。

 空中へと放たれた火球はカーブを描きながら黒子の方へと飛んでゆく。

 それと同時に、他の男二人が遊石たちの方へと駆け出す。

 これによって、遊石たちと黒子を分断させることができるというのが、彼らの狙いだった。

 

「させませんわ!!」

 

 しかし黒子も男たちの狙いをすぐに見抜いた。

 男の放った火球をギリギリまで引きつけると、テレポートでそれを回避しつつ、遊石たちと二人の男のあいだに割って入った。

 

「なっ!?」

「コイツ、テレポーターかよ!?」

「ええ。あなた方の狙い、この状況を切り抜けるには良いものだったとは思いますが、わたくしには通用しませんわ」

 

 黒子は再びテレポートで姿を消すと、今度は二人の男の背後へ姿を現した。

 そのまま、一人の男の足を払いつつ、肩を掴んで後ろへと引っ張る。

 

「ぐわっ!?」

 

 隣の男が引きずり倒されたのを見て黒子が後ろにテレポートしたことを察知したもう一人であったが、もう遅い。

 気付いた時には、同じ技で自らも仰向けに地面に倒れていた。

 間髪入れず、黒子は両手を自らのスカートの中に突っ込み、太ももに巻きつけてあるホルダーに仕込んである金属矢を撫でるように触れた。

 能力によって金属矢は、地面に倒れている男たちの服と地面とを縫い付けてしまう。

 

「これ以上の抵抗はおよしなさいな? 次は、これを体内に直接テレポートさせますわよ?」

 

 空間移動能力は、物体を押しのけて転移させることができる。

 つまり、いきなり人間の体内に異物を埋め込むことも可能だ。

 腕や足などに転移させれば相手の行動を制限できるし、脳や心臓などに転移させればどうなるかは言うまでもない。

 そして、それを相手に想像させることができれば、抵抗力を奪ったも同然だ。

 

「うらぁッ!!」

 

 だが、黒子が二人に気を取られている一瞬の隙をついて、発火能力者である男が遊石たちの方へと火の玉を投げつけた。

 

「プリンセス!!」

『はい!!』

 

 しかし、遊石とブリザード・プリンセスは冷静であった。

 ブリザード・プリンセスが両手をかざすと、そこから凍てつく冷気が放たれて火球とぶつかる。

 冷気の勢いと冷たさに負け、火球はあっという間に消滅してしまった。

 

「チッ、あの女、ただのコスプレ女じゃなかったのか!!」

『誰がコスプレ女ですか!!』

「遠慮はいらないプリンセス、アイツにお前の2800の攻撃力を見せつけてやれ!」

『当然です! 必ず殺します!』

「いやそれはやめろよ!?」

 

 ブリザード・プリンセスは武器として、鎖につないだ巨大な氷の塊を持っている。

 発火能力者の男を睨みつけたブリザード・プリンセスは、鎖ごとその氷を振り回すと、勢いよく男へと叩き込んだ。

 

「嘘だろ!?」

 

 ギリギリのところで発火能力者の男はその攻撃をかわす。

 地面に叩きつけられた氷の塊はコンクリートを粉砕し、4分の1程度が地面にめり込んでいた。

 

『かわされましたか……今のが決まっていれば、貴方の命はこの世から完全に消え去っていたのに』

 

 恐ろしいことを無表情で、無感情の声で呟くブリザード・プリンセスを見て、男の背筋が凍りついた。

 ひょっとしたら、この女の力で物理的に凍っているのかもしれない、そう思ってしまうほどだ。

 攻撃をかわして反撃に転じていようと思っていた男であったが、その戦意もあっという間に消え失せてしまった。

 

「プリンセスを怒らせるから……間違っても、コスプレなんて言うんじゃなかったな」

 

 遅すぎる上に、理不尽といえば理不尽な忠告を発火能力者の男にする遊石。

 その様子を黒子もボンヤリと眺めていたが、男が逃げ出さないのを見て、テレポートですぐ近くに飛ぶ。

 そして、ポケットから手錠を取り出すと男の両手にガチリとはめた。

 

「後はアンチスキルに引き渡すだけですわね……それにしても、あなた方」

 

 黒子は遊石とブリザード・プリンセスに視線をむける。

 

「どういった能力なのか、皆目見当がつかないのですが……」

「まぁ、そうだろうな。……ん?」

 

 近付いてくる人影があったので遊石がそちらに顔を向けると、その人影が不敵な笑みを浮かべた御坂美琴であることに気付く。

 

「また会ったわね」

「レベル5の第三位様もいらっしゃったとは……何か用みたいだけど」

「そうよ。路地裏で会った時、私の電撃が跳ね返されたのが気になってね。私も黒子と同じで、アンタの能力が気になったの」

「知りたいか?」

「仮に教えないって言われたら、私と勝負してもらうまでの話よ」

「何を言ってますのお姉さま。そんな決闘みたいな野蛮事、する必要ありませんわ。調べようと思えば書庫(バンク)でいくらでも……」

「その勝負、受けてやるよ」

 

 遊石の一言に、美琴をなだめようとしていた黒子は言葉を失い、葛城はやれやれと首を横に振った。

 一方、美琴はその瞳に闘志をたぎらせる。

 

「ただし、能力勝負じゃない。別のもので勝負だ」

「まさか、実力もへったくれもないジャンケンとか言い出さないでしょうね?」

「いいや、違う。……これだ」

 

 遊石が腰につけていたホルダーから取り出したのは、遊戯王カードだ。

 

「それ……遊戯王?」

「ああ。勝負をふっかけてきたのはそっちだ。なら、その内容は俺が決める。能力勝負じゃ、レベル4がレベル5に勝てる道理なんてないからな」

「私の電撃を跳ね返しておいて何を……まぁ良いわ。アンタの言うとおり、決闘(デュエル)で勝負しましょ」

「お姉さま!?」

「流石は常盤台のお嬢様、心が広くて助かる」

「私が勝ったらアンタの能力を包み隠さず全部教えること。良いわね?」

「ああ。俺が勝ったら、そうだな……彼女たちを、常盤台中学のある『学舎(まなびや)の園』に招待してもらおうか」

 

 遊石は後ろ手に葛城たちを指さした。

 

「え? なによそれ」

「引き受けられないか?」

「……良いわ。いくらでも招待してあげる」

 

 言質を取った遊石は、近くにあるゲームセンターの建物を指さす。

 

「俺は今デュエルディスクを持ってないし、第三位様もお持ちではなさそうだ。だから、あのゲーセンにあるデュエルリングを使おう」

「分かったわ」

 

 こうして、急遽レベル5の第三位である御坂美琴と、井原遊石のデュエルが行われることとなった。

 遊石が勝った時の条件として学舎の園への招待を申し出たのは、心理掌握こと食蜂操祈に接触するチャンスだと考えたからだ。

 常盤台中学のある学舎の園は男子禁制であり、女子でも生徒や関係者でなければ入ることは出来ない。

 だが、招待ということであれば入ることができる。

 無論遊石は入ることはできないが、葛城とアヴリルは入ることが可能になる。

 ブリザード・プリンセスをはじめモンスターたちを半透明の状態で潜入させることも出来るが、遊石とモンスターとの距離が離れすぎると同調が切れてしまうので、広範囲を探すことができないのだ。

 

「悪いな葛城。勝手なこと言って」

 

 ゲームセンターへ歩き出しながら、遊石は葛城に声をかける。

 

「ホントね。後で何かおごってもらおうかしら」

「ぐっ……」

「冗談よ。でも、遊石君が勝たないと元も子もないわよ」

「その辺は安心しろって。負けたりするかよ」

「遊石、頑張ってください」

 

 アヴリルの声援に、遊石はグッと親指を立てて応えた。

 現場処理のため、白井黒子と彼女の同僚である初春飾利(ういはるかざり)は現場に残ることになった。

 遊石は、初春飾利の同級生である佐天涙子(さてんるいこ)と共にゲームセンターへと入っていく美琴に続いて、店内へと入っていった。

 

 

 

 

 To be continued.




自分は貧乳好きです(唐突)。

小説を書くとき、ヒロインは必ず貧乳という設定にしています。

さて、次回は再びデュエル回ということになります。

流石にライディングデュエルやアクションデュエルは無理ですが、ペンデュラム召喚はぜひやってみたいですね。……でも、よく考えたら能力アクションデュエルというのがあったか?
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