とある原石の決闘目録   作:みんふみ

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リミットレギュレーションは2014年7月1日のものです。


前哨戦

 遊石と美琴たちはゲームセンターに入ると、まっすぐに受付へと向かった。

 デュエルリングが使えるかどうか確認を取るためだ。

 デュエルディスクが普及している学園都市では、大規模なスペースの必要となるデュエルリングはゲームセンターなどに併設されていることが多い。

 公式大会など、ある程度の規模の観客が見ることが予想される時はリングで、それ以外の日常的なデュエルでは各人のディスクで、というように差別化がなされている。

 また、今回の遊石たちのように、デュエルをソリッドビジョンを使って行いたいがデュエルディスクを持ち合わせていない時にも、デュエルリングは使われる。

 

「デュエルリング、使えます?」

 

 遊石が受付の女性にたずねると、女性はパソコンをカチカチといじって状況を確認する。

 

「はい。2番リングが空いております」

「オッケー」

 

 遊石と美琴は使用料を受付のカウンターに置くと、2番リングへと向かった。

 ロビーには十数人くらいの学生がいたが、彼らは御坂美琴がデュエルをするという情報を聞きつけたのか、美琴と遊石のことをチラチラと見ながらヒソヒソ話している。

 

「早くも注目の的になりそうだな」

「ギャラリーがどれほどいても、私は私の戦いをするだけよ。アンタも、手を抜いたりしないこと」

「当然だ」

 

 その言葉を最後に、二人は左右に分かれて自分の立つリングへ向けて歩き始めた。

 歩きながら、遊石は腰の右側のホルダーにしまってあるデッキを取り出した。

 

「遊石君。あの噂、本当なのかしら?」

「……さぁな」

 

 学園都市の頂点に君臨する、7人のレベル5たち。

 その彼らだけが持つことを許されている、レベル5専用のカードというのがあるというのは、デュエリストたちのあいだでは有名な話だった。

 しかし、その噂が本当かどうか、その目で見た者はいないという。

 もしかしたら今日、御坂美琴がそれを使うかもしれない。

 それがモンスターなのか、魔法なのか、それとも罠なのか。

 そしてどんな効果や攻撃力を持っているのか、一切不明だ。

 だが、遊石は気おくれしたりはしない。

 美琴がどのようなレベル5専用カードを持っているかは分からないが、遊石も『切り札』を有している。

 

(できれば使わずに勝ちたい。……が、状況によっては出し惜しみなんてしてられないだろうからな)

 

 遊石と美琴、互いにリングに立った。

 リングには、デッキ枚数をプレイヤーに知らせ、自動的にシャッフルしてくれる装置がついている。

 遊石がその装置へデッキを入れようとした、その時だった。

 

「お待ちになって!!」

 

 響き渡った声に遊石が手を止めると、いつの間にか白井黒子がデュエルルームの入り口に立っていた……かと思うと、次の瞬間には美琴のすぐ後ろにいた。

 

「黒子ッ!?」

「お姉さまの手を煩わせるまでもありませんわ! わたくしが彼とデュエルいたしますの!!」

 

 黒子は突然そう宣言すると、美琴の肩に手を置いて彼女をリングの外へテレポートさせてしまった。

 

「お姉さまと戦いたくば、まずはわたくしを倒してから、ですの!!」

「……白井黒子、だっけか? 白井もデュエルできるのか?」

「当然。177支部の中では結構高めの勝率ですの」

「それは面白い。第三位様にはしばしお待ちいただくとして、まずは白井とデュエルすることにしよう」

「なら、お互いにデッキをセットですの」

 

 改めて遊石がデッキを装置に入れると、装置の中でカードの枚数が数えられると同時にシャッフルが行われる。

 

『プレイヤー、井原遊石のデッキ枚数、40枚。エクストラデッキの枚数、15枚です。よろしければデッキをデッキゾーンに、エクストラデッキをエクストラデッキゾーンに置いて下さい』

 

 遊石はシャッフルの終わったデッキとエクストラデッキを、それぞれのゾーンに置いた。

 黒子もセッティングが完了し、コンピューターが先攻後攻をランダムに決める。

 

『両プレイヤー、準備完了を確認。プレイヤー、白井黒子の先攻でデュエルを開始して下さい』

 

 アナウンスの後、遊石と黒子がデッキの上から5枚のカードを引く。

 

「「デュエル!!」」

 

 こうして、井原遊石と御坂美琴の前哨戦、井原遊石vs白井黒子のデュエルが始まった。

 

「わたくしの先攻。わたくしは魔法カード『ソーラー・エクスチェンジ』を発動! このカードは手札から「ライトロード」と名のついたモンスターカード1枚を捨てて発動。自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後デッキの上からカードを2枚墓地に送りますの」

「……」

「わたくしは手札の『ライトロード・マジシャン ライラ』を捨てて2枚ドロー。その後、デッキの上から2枚を墓地へ送りますの」

 

 遊石は黒子がカードをドローし、そして墓地へ送る動作を見ながら思考を巡らせる。

 黒子のデッキの種類はライトロードで確定である。

 ライトロードの多くのモンスターに共通して、エンドフェイズ時にデッキからカードを数枚墓地へ送る効果がある。

 無論それだけだとデッキの枚数があっという間に減ってしまうが、ライトロードには墓地に多くのライトロードを置くことで特殊召喚できる、『裁きの龍(ジャッジメントドラグーン)』という絶対的エースが存在する。

 ジャッジメント・ドラグーンには、1000ポイントのライフを払うことで自身以外の全てのカードを破壊する強力な効果がある。

 最近はカードの種類が増えたことで、仮にこの効果を使われてもそこまで悲惨なことにならないことが増えてきてはいるが、それでも恐ろしい効果であることに変わりはない。

 特殊召喚の条件は『墓地にライトロードが4種類以上存在する』ことだ。

 今、黒子の墓地には手札から捨てた『ライトロード・マジシャン ライラ』と、デッキから墓地へ送られた『ライトロード・ドラゴン グラゴニス』の2種類がある。

 もう2種類墓地に増えると、いつドラグーンを出されるか警戒しながらのデュエルとなってしまう。

 

「そして、『ソーラー・エクスチェンジ』の効果でデッキから墓地に送られた『シャドール・ビースト』の、2つあるうちの2番目の効果を発動しますの。このカードが効果で墓地へ送られた場合に、デッキから1枚ドロー!」

(……カオスライロか?)

 

 カオスライロとは、ライトロードデッキにカオスモンスターと呼ばれる種類のモンスターを複合したデッキの総称である。

 カオスモンスターとは一般に『混沌帝龍(カオスエンペラードラゴン) -終焉の使者-』・『カオスソルジャー -開闢の使者-』・『カオス・ソーサラー』の3体を指す。

 この3体は共通して、『墓地の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚できる』という効果を持つ。

 つまり、光属性であるライトロードデッキに何体か闇属性モンスターを入れ、墓地に潤沢にモンスターが増えたところでカオスモンスターを特殊召喚するのである。

 遊石が黒子のデッキをカオスライロだと推測したのは、闇属性モンスターである『シャドール・ビースト』が入っているからであった。

 

「まだ終わりませんわ。わたくしは手札から『ライトロード・サモナー ルミナス』を召喚。効果を発動しますの。1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動でき、自分の墓地からレベル4以下の「ライトロード」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。わたくしは手札の『ライトロード・ウォリアー ガロス』を捨てて効果を発動。捨てた『ライトロード・ウォリアー ガロス』を攻撃表示で特殊召喚ですの」

「……あれ?」

 

 二人のデュエルを遊石の後ろで見ていたアヴリルが疑問の声をあげた。

 

「ん? どうしたのアヴリルさん」

「いえ、私、デュエルについては素人なので分からないのですが、捨てたカードをそのまま呼び出すのはできるのですか?」

「ええ。でもだからといって、効果発動時にレベル4以下のライトロードが墓地にいなくてもオッケーかと言われると、それはダメなの。今ルミナスの効果が発動できたのは、すでに墓地に『マジシャン ライラ』があったから。でも、蘇生させるモンスターもライラにしなければならない訳じゃないの。……と言っても、難しいわよね」

「いえ、なんとなくは分かりました」

「このゲーム、かなりルールが複雑でね。もし覚えたいのなら、それなりに覚悟しといた方が良いわよ」

 

 遊石は後ろの二人の話に完全同意しながら、自らの手札を見る。

 黒子のデッキが速度の速いライトロードとなると、こちらも悠長に準備していられない。

 1ターン目にどうやって行動するか、今のうちから考えておかねばならない。

 

「わたくしはこれでターンエンド。エンドフェイズ時、『ライトロード・サモナー ルミナス』の効果が発動。デッキの上から3枚を墓地へ送りますの」

 

 遊石はモニターの画面で、黒子のデッキから墓地へと送られた3枚のカードを確認する。

 その3枚は『ゾンビキャリア』・『ネクロ・ガードナー』・『カオス・ソーサラー』であった。

 

(ソーサラーはともかく、他の2枚は墓地にあった方が良いカード……都合よく墓地に落ちたって訳か)

「まだですわ。自分フィールド上の「ライトロード」と名のついたモンスターの効果によって自分のデッキからカードが墓地へ送られたことにより、『ライトロード・ウォリアー ガロス』の効果が発動。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送りますの」

 

 さらに2枚のカードが墓地へ。

 今の2枚は『ライトロード・モンク エイリン』と『ライトロード・エンジェル ケルビム』。

 これで黒子の墓地には、ちょうど4種類のライトロードモンスターが存在することになり、次のターンから裁きの龍が特殊召喚できる状況になった。

 

「最後の効果ですの。『ライトロード・ウォリアー ガロス』は効果で墓地へ送った「ライトロード」モンスター1体につき1枚カードをドローできる。今、2体のライトロードが墓地へ送られたので、わたくしは2枚ドローですの」

「俺のターン、ドローだ。どうやら幸先よく、4種類のライトロードモンスターを墓地に置けたようだな。おまけにゾンキャリにネクガか……だが」

 

 遊石は改めて自分の手札に視線を落とした。

 最初の5枚と、今ドローした1枚の計6枚の手札。

 この6枚があれば、遊石には十分であった。

 

「悪いが、俺もやりたい放題させてもらう。俺は手札の『聖刻龍-トフェニドラゴン』を特殊召喚する。このカードは相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できる」

「聖刻デッキ……」

「次に、トフェニドラゴンをリリースして、手札の『聖刻龍-シユウドラゴン』を特殊召喚だ。このカードは自分フィールド上の「聖刻」と名のついたモンスター1体をリリースして手札から特殊召喚できる。さらに、リリースしたトフェニドラゴンの効果発動。このカードがリリースされた時、手札・デッキ・墓地からドラゴン族通常モンスターを1体、攻撃力と守備力を0にして特殊召喚する。俺はデッキから『ベビードラゴン』を守備表示で特殊召喚」

 

 遊石のフィールドに、小さなドラゴンのソリッドビジョンが出現する。

 それを見ながら、対戦相手である黒子は首をかしげる。

 

「……黒子も奇妙に思ってるみたいね」

「え、どういうことですか?」

 

 美琴の呟いた言葉に佐天が聞き返す。

 

「聖刻モンスターにはドラゴン族の通常モンスターを特殊召喚する効果が備わっているの。でもその際、攻撃力と守備力は0になってしまうから、例えばブルーアイズなんかを呼び出しても、その力を発揮することはできない。じゃあ、何を狙って呼び出すと思う?」

「それはもちろん、エクシーズ召喚ですよ」

「そう。つまり大事なのはレベル。聖刻デッキで採用されるのは、だいたいレベル4、5、6、8あたりなの。でも、今遊石が特殊召喚した『ベビードラゴン』はレベル3」

「まぁ、確かにそう考えると不思議ですね」

 

 美琴と佐天が疑問に思っている中、遊石のデュエルを何度も見てきた葛城だけが、遊石のやろうとしていることを察した。

 

「なるほどね。えげつないけど、相手がスピード重視のライトロードじゃ、かえってあのデッキで良かったかもしれないわね」

「私にはまったく分かりません……」

「見てると良いわよ」

 

「まだまだ俺のターンは終わらない。俺はシユウドラゴンをリリースして、今度は『聖刻龍-ネフテドラゴン』を特殊召喚だ。ネフテドラゴンもシユウドラゴンと同じく、聖刻モンスターをリリースして特殊召喚できる。そして、リリースしたシユウドラゴンの効果発動。シユウもトフェニと同じく、ドラゴン族通常モンスターを特殊召喚する効果を持つ。俺はデッキから『リザード兵』を守備表示で特殊召喚」

「またレベル3のモンスター……ですの? ランク3のエクシーズモンスターを出そうということでしょうが、一体何を……」

「俺はレベル3の『ベビードラゴン』と『リザード兵』でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!!」

 

 遊石の場にいた2体のモンスターが光の玉となって地面に吸い込まれ、そこから光の爆発が起こる。

 エクシーズ召喚時のソリッドビジョンの演出だ。

 

「現れろ! ランク3、『No.(ナンバーズ)30 破滅のアシッド・ゴーレム』!!」

「くっ……」

「まだまだ。俺はエクシーズ召喚した『No.(ナンバーズ)30 破滅のアシッド・ゴーレム』をリリースして、『聖刻龍-トフェニドラゴン』を通常召喚」

「2枚目のトフェニ……」

 

 黒子の背筋に嫌な汗が流れる。

 1ターンでここまで動かれると、脳裏によぎらざるを得ないある単語がある。

 

「そろそろ終わってほしいだろ? まだ続くんだなこれが。俺は通常召喚したトフェニドラゴンをリリースして、手札の『聖刻龍-ネフテドラゴン』を特殊召喚」

「それも2体目!? どんな手札してましたの!?」

「リリースされたトフェニドラゴンの効果で、俺はデッキから『エメラルド・ドラゴン』を守備表示で特殊召喚。そして、フィールド上に存在するレベル5『聖刻龍-ネフテドラゴン』2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!! 現れろ、『ANO.(アルターナンバーズ)33 先史遺跡-超兵器マシュ=マック』!!」

「あ、アルターナンバーズ!?」

「なんですの!?」

 

 黒子と美琴が驚く中、空中に巨大な城のような姿の物体が出現した。

 

「これで終わりじゃないぞ。俺は手札の……」

「ちょ、ちょっと待つんですの!! 何ですの、その『アルターナンバーズ』というのは!?」

「あ! 私、聞いたことあります!」

 

 マシュ=マックの姿を見ていた佐天が、思い出したように叫ぶ。

 

「普通のとは違う効果を持つ、アルターって単語を持つカードがあるって。都市伝説サイトにありました!」

「その通り。『ANO.(アルターナンバーズ)33 先史遺跡-超兵器マシュ=マック』は、普通の『No.33 先史遺跡-超兵器マシュ=マック』とは異なる効果を持つ。が、この効果を使うのはまだ先だ。俺は手札から、魔法カード『死者蘇生』を発動!!」

「1ターン目で、6枚の手札全てを使い切るなんて!?」

「自分の墓地から、『聖刻龍-シユウドラゴン』を特殊召喚! そして、シユウドラゴンとエメラルド・ドラゴンでオーバーレイ!!」

「さ、三度目のエクシーズ召喚……」

 

 ここまで来ると、もはや諦めがつくレベルである。

 

「現れろ、『No.6 先史遺産アトランタル』!! そして、アトランタルの効果発動!! このカードがエクシーズ召喚に成功した時、自分の墓地の「No.」と名のついたモンスター1体を選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。俺は墓地の、『No.(ナンバーズ)30 破滅のアシッド・ゴーレム』をアトランタルに装備して、この効果で装備したモンスターの攻撃力の半分の数値分攻撃力が上がる。そして、攻撃力の数値が変化したことで、『ANO.(アルターナンバーズ)33 先史遺跡-超兵器マシュ=マック』の効果が発動! フィールド上のモンスターの攻撃力が変化した時、その数値だけ相手にダメージを与える!」

「くっ!? 今、アシッド・ゴーレムを装備したアトランタルの攻撃力は、アシッド・ゴーレムの攻撃力の半分、1500ポイントアップした……つまり、わたくしが1500ポイントのダメージを受けるということですの!?」

「そうだ。そして、アトランタルの効果発動。1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、このカードの効果で装備したモンスターを墓地へ送って発動できる。相手のライフポイントを半分にする。今、白井のライフは4000から1500が引かれて2500になっている。それを半分、つまり1250にする!」

「ま、まさか……」

「気付いても、もう止める手立てはほぼ無いぞ! アトランタルの装備カードが墓地に送られたことで、アトランタルの攻撃力は元の数値に戻った……つまり、1500ポイント分減ったことになる。よって、『ANO.(アルターナンバーズ)33 先史遺跡-超兵器マシュ=マック』の効果が再度発動!! 相手のライフに1500ポイントのダメージを与える!!」

「う、嘘ですのー!?」

 

 こうして、遊石と黒子の前哨戦は、遊石の後攻1ターンキルで幕を閉じた。

 

 

 

 To be continued.




2014年7月31日午前11:46分追記。

ANO.(アルターナンバーズ)33 先史遺跡-超兵器マシュ=マック』をエクシーズ召喚する際、アセトドラゴンとネフテドラゴンで召喚していたのを、ネフテ2体に修正しました。どうして出てきてないアセトを書いてしまったのか……
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