とある原石の決闘目録   作:みんふみ

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激突 遊石VS美琴

「すごいです遊石!」

 

 白井黒子とのデュエルを終え、リングからいったん退いた遊石に対してアヴリルが興奮気味に近寄る。

 

「相手に次の番をまわすことなく仕留めるなんて! すごくかっこよかったですよ!」

「そ、そうか?」

 

 予想以上のアヴリルの感激っぷりに若干遊石が戸惑っていると、葛城がアヴリルの後ろから近づく。

 

「ライトロード相手だから手早く決着をつけることが肝要だったわけだけど……あの初手はすごかったわね」

「ああ。まさか、ああも簡単に決まるとは流石に思ってなかった。白井が伏せカードを伏せてなかったのが大きかったな」

「運も実力のうちですよ、遊石!」

「それだと、俺が運で勝ったみたいなニュアンスだが……まぁ、あの初手に相手の伏せ無しじゃ、運も関係してるのは間違いない。それより……」

 

 遊石はクルリと振り返り、先ほどまで黒子が立っていた相手側のデュエルリングに視線を送る。

 やや茫然自失気味な様子の黒子の肩に手を置いて、美琴が何か声をかけている様子が見えた。

 そしてそのまま、美琴はリングに立って遊石の方へと視線をむけてきた。

 

「どうやら、相手のお嬢様は準備万端のようね」

「そうみたいだな」

「ところで遊石君。また聖刻デッキで戦うつもり? 幸い後攻1ターンで終わらせたとはいえ、御坂さんは遊石君の聖刻デッキのコンセプトを感じ取ったはず」

「遊石は、相手の方のデッキをご存じないのですよね?」

「ああ。いつもなら、もう一つデッキを持ってるからそっちで戦うんだけど……」

 

 遊石は聖刻デッキを入れていたホルダーとは反対側、腰の左につけているホルダーのふたを開ける。

 

「今日は置いてきちまったんだよな……急ぎの外出だったし」

「なら、私のデッキを使う?」

 

 そう言って、葛城が一組のデッキを差し出す。

 遊石はそれを受け取ると、デッキのカードの構成を確認する。

 

「葛城のメインデッキだな」

「ええ。遊石君とはこのデッキで何度か戦ったことがあるから、見たことはあるでしょう?」

「当然。動かし方もおおよそ大丈夫だ。借りても良いのか?」

「カードに傷さえつけなければね」

「流石にそんなことはしねーよ」

 

 遊石は聖刻デッキに入れていた『原石眼の切札竜』を葛城のデッキに入れると、再びデュエルリングに立った。

 

「へぇ? 知り合いから借りたデッキで私と戦おうっていうのね。ずいぶん余裕そうじゃない?」

「それはちょっと違うぜ第三位様。他人のデッキで戦っても勝つくらいに、俺はこのゲームを愛してるんだ」

「言うじゃない。その言葉、デュエルで確かめてあげる!!」

 

 遊石と美琴が装置にデッキをセットすると、自動シャッフルと同時に、機械が先攻後攻をランダムに決める。

 

『両プレイヤー、準備完了を確認。プレイヤー、御坂美琴の先攻でデュエルを開始して下さい』

「「デュエル!!」」

「私の先攻! 私はモンスターをセット。さらにカードを2枚伏せてターンエンド!」

「俺のターン、ドロー! 俺は『マドルチェ・ミィルフィーヤ』を攻撃表示で召喚!」

 

 遊石の場に現れたのは、ピンク色の毛並みをした小さな猫のようなモンスターであった。

 

「かわいいー! ……って、そんなモンスターで私を油断させようとしても無駄よ!」

「……俺は何も言ってないぞ? 俺は『マドルチェ・ミィルフィーヤ』の効果を発動! このカードが召喚に成功した時、手札から「マドルチェ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札の『マドルチェ・エンジェリー』を守備表示で特殊召喚!」

 

 マドルチェ・ミィルフィーヤの隣に姿を現したマドルチェ・エンジェリーは、全身を包むような長いふんわりとした髪が特徴的な、小さな天使というべきモンスターである。

 

「そして、エンジェリーをリリースして効果を発動する! デッキから「マドルチェ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは戦闘では破壊されず、次の自分のターンのエンドフェイズ時に持ち主のデッキに戻る。俺はこの効果で、デッキから『マドルチェ・ホーットケーキ』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 三体目のマドルチェとなるマドルチェ・ホーットケーキは、フクロウのような姿をしたモンスターだ。

 

「……なるほど? アンタの狙いが分かったわ」

「なら、どこかで止めてみるんだな。俺はホーットケーキの効果を発動! 自分のメインフェイズ時、墓地のモンスター1体を選択してゲームから除外し、デッキから『マドルチェ・ホーットケーキ』以外のマドルチェモンスターを特殊召喚する! 俺は墓地の『マドルチェ・エンジェリー』をゲームから除外し、デッキの『マドルチェ・メッセンジェラート』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 遊石のデュエルを眺めていたアヴリルがポツリと呟く。

 

「相手の方のターンはすぐに終わったのに、遊石のターンは終わりそうにありませんね」

「デッキの種類にもよるけど、最近の遊戯王は一つのターンで次から次へとモンスターが出るから。アヴリルみたいにルールや処理、効果が分からないと大変かもね」

「いえ、頑張って勉強します!」

(……また一人、デュエリストが増えちゃったかしら?)

 

「そして、特殊召喚した『マドルチェ・メッセンジェラート』の効果発動! このカードが特殊召喚に成功した時、自分フィールド上に「マドルチェ」と名のついた獣族モンスターが存在する場合、デッキから「マドルチェ」と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える事ができる。俺はデッキから永続魔法、『マドルチェ・チケット』を手札に加える。さらに手札から、魔法カード『簡易融合(インスタントフュージョン)』を発動! 1000ライフポイントを払って発動する。レベル5以下の融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃する事ができず、エンドフェイズ時に破壊される。俺はエクストラデッキから『フュージョニスト』を守備表示で特殊召喚!」

「……」

 

 遊石の場には4体のモンスターが並んでいる。

 美琴はジッと戦況を見つめている。

 その表情に、遊石も警戒を怠らない。

 

(……カウンターのタイミングを虎視眈々を狙っているに違いない。マドルチェデッキは『女王様』がマストカウンターの筆頭だ。恐らく、あの2枚の伏せカードが飛んでくる)

 

 だが、遊石はここでは止まらない。

 

「俺はレベル3の『マドルチェ・ミィルフィーヤ』と『フュージョニスト』でオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!! 勝利の道を切り開く力をもたらせ!! 『M.X(ミッシングエックス)-セイバー インヴォーカー』!!」

 

 マドルチェ・ミィルフィーヤとフュージョニストが光の渦の中に消え、そこから剣を持った剣士――インヴォーカーが姿を現した。

 インヴォーカーの効果は1ターンに1度、エクシーズ素材を1つ取り除き、デッキから戦士族または獣戦士族の地属性・レベル4モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚するというもの。

 可愛らしさが目を引くマドルチェモンスターではないが、彼がマドルチェの『女王様』を呼び出すための布石である。

 だから、それまで沈黙を貫いてきた美琴が動くとすれば、今を置いて他に無かった。

 

「効果は使わせないわ! アンタがインヴォーカーの効果を使う前に、私にカードの発動機会がくる! リバースカード、オープン! 罠カード、『強制脱出装置』発動!!」

「くっ……」

「せっかくエクシーズ召喚したところだけど、エクストラデッキに戻ってもらうわよ」

 

 強制脱出装置は本来、モンスターを手札に戻すカードだ。

 だが、シンクロモンスターやエクストラモンスターなどに使った場合、手札ではなくエクストラデッキに戻ることになるのだ。

 墓地に行ってくれれば『死者蘇生』などで呼び出すことも可能かもしれないが、エクストラデッキに戻されると、もう一度正規の方法で召喚することを余儀なくされてしまう。

 シンクロモンスターやエクシーズモンスターにとっては、まさに天敵と呼べるカードだ。

 

(やはり防がれたか……さぁ、どうする?)

 

 遊石は美琴のフィールドを見やる。

 現在美琴のフィールドには、伏せモンスターが1体とリバースカードが1枚。

 

(通常召喚権はすでに使ってしまった。俺の今の手札で、このターンこれ以上モンスターを出せるカードは無い。残るは攻撃表示の『マドルチェ・ホーットケーキ』と『マドルチェ・メッセンジェラート』で伏せモンスターを攻撃するかどうかだが……)

 

 マドルチェ・ホーットケーキの攻撃力は1500であり、マドルチェ・メッセンジェラートは1600.

 攻撃する価値が無い訳ではない。

 だが、もし守備力の方が高ければ反射ダメージを受けてしまうし、仮に倒せたとしても、その破壊が引き金となって効果が発動するモンスターの可能性もある。

 しかし、倒せる倒せないにかかわらず、攻撃すれば美琴のモンスターは表側表示になるため、美琴がどのようなデッキを使っているかという情報は得られる。

 攻撃して情報を得るか、止めてこのターンを無難に終わらせるか。

 

(……俺の手札はそこまで良くない。が、ここはやはり攻めておきたい!)

「さぁ、どうするの?」

「バトルフェイズに入る! 俺は『マドルチェ・メッセンジェラート』で裏守備モンスターへ攻撃!!」

「アンタの攻撃したモンスターは『電池メン-ボタン型』よ!」

「電池メンか!」

 

 電池メンとはその名の示す通り、電池がモチーフのモンスター群であり、雷族であることも考えると、美琴のイメージとはマッチしたデッキである。

 

「『電池メン-ボタン型』のリバース効果発動! 自分のデッキから「電池メン-ボタン型」以外のレベル4以下の「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。ここからが電池メンの本領発揮よ! 私はデッキから『電池メン-角型』を攻撃表示で特殊召喚!!」

 

 美琴のフィールドに、角型電池に手足が生えた形のモンスターが出現した。

 

「特殊召喚した『電池メン-角型』の効果!! デッキから「電池メン」モンスター1体を手札に加え、このカードの攻撃力・守備力を元々の倍にする! デッキから『電池メン-角型』を手札に加え、角型の攻撃力・守備力が2000になる! さらに、リバースしたボタン型が戦闘で破壊されたことで、私は1枚ドローするわ!」

「角型とは厄介な……」

 

 美琴のフィールド上に存在する『電池メン-角型』は、その効果で攻撃力が2000となっている。

 遊石の場にいる、まだ攻撃を行っていない『マドルチェ・ホーットケーキ』の攻撃力は1500であり、勝つことは出来ない。

 

「俺はバトルフェイズを終了し、メインフェイズ2に移行。リバースカードを2枚セット。さらに、永続魔法『マドルチェ・チケット』を発動する。これでターン……」

「アンタのエンドフェイズ時、リバースカードオープン! 速攻魔法『サイクロン』! 対象は『マドルチェ・チケット』よ!」

「ちっ、サイクロンだったか……!」

「『マドルチェ・チケット』には、フィールド上・墓地の「マドルチェ」と名のついたカードがカードの効果によって自分の手札・デッキに戻った時、デッキから「マドルチェ」と名のついたモンスター1体を手札に加える効果がある。そしてマドルチェモンスターには、相手に破壊された時にデッキに戻る効果がある。この2つを組み合わせて私の攻撃の抑止力にするつもりだったんだろうけど、そう上手くはいかないわよ」

「……ターンエンド」

「まずいわね……」

 

 遊石の後ろでデュエルの行方を見守っていた葛城がそう呟く。

 背中でその言葉を聞いていた遊石も、心の中で同意する。

 

「私のターン、ドロー! 私は『電池メン-角型』を攻撃表示で召喚し、効果を発動! デッキから電池メンモンスターを手札に加えて、攻撃力と守備力を元々の倍にする!! 加えるのは『燃料電池メン』よ!!」

「くっ!!」

「アンタ、デュエルには詳しいみたいだから知ってるとは思うけど、『燃料電池メン』は自分フィールド上に「電池メン」と名のついたモンスターが2体以上存在する場合、手札から特殊召喚することができる。私は『燃料電池メン』を攻撃表示で特殊召喚!!」

 

 これで美琴の場には、電池メンモンスターが3体並んだことになる。

 これで、電池メンデッキの切り札ともいえる魔法カード『漏電(ショートサーキット)』が発動可能となった。

 このカードはフィールド上に電池メンモンスターが3体以上いる時に発動でき、相手フィールド上のカードを全て破壊するという恐るべきカードだ。

 これを発動されたら最後、ダイレクトアタックを受けて遊石の負けとなる。

 

「そして私は手札から、魔法カード『漏電』を発動するわ!! 自分フィールド上に「電池メン」と名のついたモンスターが3体以上表側表示で存在する場合に発動する事ができ、相手フィールド上に存在するカードを全て破壊する!!」

「くそっ!!」

 

 

 

 To be continued.




最近の電池メンって強いですよね。角型最高!!

これまではオリカをかなり控えてきましたが、そろそろ顔を出しはじめそうです。
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