●ねぇ、こんな噂知ってる?いらない個性をもらってくれる『ヨツメさん』の噂!
■あー、あれ?クイッターの『ヨツメさん』っていうアカウントに『個性をもらってください』ってDMで送ると、一週間後に『ヨツメさん』が現れて個性をもらってくれるってヤツでしょ?
●そうそう!あれってさぁ、本当なんだって!3組のアケミの部活の先輩の友達の弟が『ヨツメさん』に個性をあげたんだって!
■それほぼ他人じゃん。つか、個性をもらってもらうってどうやんの?『はいどうぞ』って簡単にあげられるもんじゃないじゃん?個性って身体の一部な訳だし。
●知らなーい、実際に見た訳じゃないし。でも、噂によると頭に手を置かれると取られちゃうんだって!
■ふーん。そう言えば、なんで『ヨツメさん』って名前なの?
●あ、なんか顔に四つの目だけの仮面をつけて現れるかららしいよ?『ヨツメさん』ってアカウントも元々、別の名前だったんだって。
■へーそーなんだ。キモ。でもさ、そんな赤の他人のそのまた他人みたいな人の話なんて、信じられないわ。しかもさ、いい風に言ってるけどつまりは個性を奪うってことでしょ?なんかそんな個性なんてある訳なくない?ねぇ?▲?
▲え?あ、うん。そ、うだね・・・。
●ちょっと〜!そいつに話振ったってつまんないよ〜、アハハハ!
■それもそっか!ザコ個性の▲ちゃんだもんねぇ〜!『ヨツメさん』に個性あげちゃったら〜?あってもなくてもわかんない個性なんだしさぁ!アハハハハハ!
▲・・・あ、あはは・・・。そうだよね・・・。
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私は三坂 洋子、中学二年生でいわゆる『いじめられっ子』だ。今日も同じクラスの丸山さんと四ノ宮さんに揶揄われてしまった。私の個性は『操爪』、爪の長さを自由に変えることができる個性だ。丸山さんも四ノ宮さんもヒーロー向けのかっこいい個性だ。二人ともヒーロー科がある高校に進学するらしい。私はもちろん実家に一番近い高校に進学することにしている。クラスの皆んなもヒーロー科に進学するようだ。そのことも揶揄いの対象になっている。別にヒーローになりたい訳でもないのに、ヒーロー向けの個性でないことでいじめられる。
「もうっ・・・なんでっ!どうして、私ばっかりっ!」
家の近くの公園のブランコに腰掛けて俯く。これが意味のない嘆きなのは分かっている。幾ら愚痴ったって生まれ持った個性をどうすることも出来ないのは、自分が一番良く分かっている。だからこそ、なんの信憑性のない唯の『ウワサ』に縋りついてしまうのだ。
「『ヨツメさん』のアカウントにDMして今日で一週間・・・、やっぱり来ない・・・」
偶々見つけてしまった『ヨツメさん』のクイッターアカウント。どうせ偽物だろうとDMを送ってみたが、返信はなかった。やはり、あれはただの噂だったのだ。四ノ宮さんも言っていたが、『個性を奪う個性』なんてそんなものあるわけがない。あの噂も私のように自分の個性に困っている子が考えただけのものだったのだろう。もう帰ろうと、ブランコから立ち上がる。
「こんにちは。いや、時間的にこんばんは?初めまして。三坂 洋子さん」
突如目の前に男が現れた。フード付きの黒いコートを着て、顔には四つの目だけが象られている仮面を付けている。その風貌は学校で話していた『ヨツメさん』によく似ている。
「あ、あの、貴方は、もしかして『ヨツメさん』・・・ですか?」
「そうだよー。早速で悪いけどあんま時間ないんだよね、俺。と言うことだからチャチャっと貰ってくね〜」
「あっ!?ちょっ・・・!!」
こちらがそれ以上何か言う前に『ヨツメさん』の掌が眼前に迫ってきていた。どうして本名を知っているのかとか、聞きたいことが沢山あったけど、気がつけば私は自宅のベットで寝ていた。母の話では話しかけても無視したまま部屋に入って行ったのだそう。その日から私は無個性になった。個性を使おうと爪に意識を向けても何も起きなかった。最初は喪失感から何も考えられなかったが落ち着いてくると少し肩が軽くなったような気がする。かなり強引なやり方に感じたが結果的に私の心は良い方向に向いていると思う。しかし、気を失う直前に聞こえた「これならドラマの再放送に間に合うな!」と言う言葉にはどうしても俗っぽさと親しみのようなものを感じてしまった。
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ポケットの中のスマホが震える。全力疾走しながらポケットを弄りスマホを取り出し、チラリと画面を見てから耳に当てる。
「もしもーし!なんすか八木さん?今忙しいンですけど!?」
「あぁ、すまない、盤代少年!取り込み中だったかな?随分と賑やかだが・・・」
「今、ミルコと鬼ごっこ中でーっす!!」
「えぇ!?ラビットヒーロー『ミルコ』かい!?なんでそんなことになってるんだ!?」
「いやー!それには高尾山より高くて琵琶湖より深い訳がありま、うおっ!あぶねっ!?」
「あ、そこまでピンチじゃないっぽいね君?」
遡ること二時間前。今日の仕事を終え、俺はビルの屋上でスマホでドラマの再放送を見ていた。結局自宅まで間に合わず、渋々移動中だがビルの屋上で見ることになった。クソっ!!ちょっとお値段高めのソファで安物のビールを飲みながらドラマを見ると言うのが俺の仕事後のささやかな楽しみだったのに!そんなことを考えながら体育座りでスマホを注視していると、俺の目の前に褐色えちえちバッキバキ太ももバニーが落ちてきた。な…何を言っているのかわからねぇと思うが、俺も何が起きたのかわからなかった・・・頭(というか主に俺のムスコ)がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・!(ポルポル並感)いやービックリしたよ。なんせ前世からのファンなんだよねーミルコ!!褐色だし筋肉だしバニーだしえちえちだし強いからネ!さて、ここで問題です。デデン!(よくあるクイズ番組の効果音)ビルの屋上で黒フードでイカした(当社比)マスクをつけた不審者がスマホを覗きながら体育座りをしていたときのヒーローミルコとして正しい行動を答えよ。
A.とりあえず蹴っ飛ばす。
「待ちやがれ不審者!逃げんじゃねぇよ!蹴っ飛ばすぞ!」
「逃げなくても蹴っ飛ばすじゃーん!?ちょっと落ち着いてどこかでお茶でもしませーん!?!?」
「する訳ねぇだろ!もっとマシな格好してから言え!!」
「おっしゃる通りだわーー!!!」
それから俺とミルコはビルとビルを飛び越えながら鬼ごっこハードモードを続けていた。前世からの推しに追いかけて貰えるなんてサイコーだぜッ⭐︎・・・と言いたいとこだが、これはちょっとピンチかもしんぬ。つか、俺のスピード特化系個性の掛け合わせでも振り切れないなんて、やっぱプロヒーローすげーわ。このままじゃ、多分俺が先にスタミナ切れで捕まる。・・・しょうがない。本当はサインとかツーショットをお願いしたかったんだけどなーミルコってヒーロー事務所ねぇからこのチャンス逃すと次いつ会えるか分かんないんだよな〜。
「名残惜しいけど俺本気で逃げますねー!次会ったときはサインとツーショットお願いしまーす!」
「あ"ぁ!?ふざけたこといってんじゃねぇぞ!!」
俺はビルの隙間に飛び込み、ミルコを撒こうと個性を発動する。しかし、その瞬間脇腹に鋭い蹴りが突き刺さる。そのまま俺は下のゴミの山に墜落し脇腹からの抉りこむような痛みで呼吸が浅くなる。
「ふぅ。たっく、手こずらせやがって、オラ!とっとと立ちやがれ!職務質問だゴラ!!」
「ガッハッ!?あ〜しぬしぬぅ〜・・・。もうちょい手加減、してくれても、ハァ、良かったんじゃなぁい?ま、いいか!」
「っ!なんだお前!?その身体・・・」
ゴミ山に埋もれた俺を見たミルコは少し狼狽えている。そりゃそうだろうなぁ、なんせ、胴体が真っ二つになってんのに断面が肉ではなく、泥のような物体が溢れてきているのだから。
「じゃーね、ミルコ!サインとツーショット、約束だからネ♡あ、あと俺は偽物だから」
「あっ!おい!まて・・・」
その言葉を最後に『俺』はドロドロに崩れて消滅してしまった。ミルコは少し立ち止まってから小さく舌打ちして路地から離れて行く。そして俺は『
「あ、もしもし?まだ繋がってます、八木さん?」
「あぁ繋がっているよ。確か盤代少年はミルコのファンだったかな?随分と熱いデートだったみたいじゃあないか、若いっていいね!!」
「やっぱり八木さんもそう思いますぅ?俺もね?ミルコとはなんて言うか運命の糸?的な?もので繋がっていると思うんだよね!なんだかんだ言って彼女も俺のことそれなりに気にかけてくれた見たいだし、分身が崩れた時も心配そうに駆け寄ってくれたし脈ありだと思うんすよね!さっすがナンバーワンヒーロー!!見る目がお有りでなにより!!結婚式には友人代表として呼びますねスピーチもして貰いますから今のうちに考えといて下さいね」
「いやいやいや怖い怖い怖いよ盤代少年!?て言うか、彼女と君はそう言う関係じゃないだろう!?色々過程を飛ばし過ぎじゃないかい!?」
「ほら、あれですよあれ。プルス・ウルトラ、更に向こうへってやつですよ」
「君の場合は想像と妄想だけが向こう側にイっちゃってる感じだよね!?・・・って、そんなことで連絡したんじゃないんだよ私はっ」
「だったら早く本題に入って下さいよ〜、時間は有限なんですよ?八木さんの場合は笑えないレベルで」
「・・・もう突っ込まないぞ。実は、盤代少年には悪いんだが、私の個性『ワン・フォー・オール』をある少年に譲渡してしまってね・・・」
「いいんじゃないっすか?別に」
どうやらあの後ちゃんと主人公の緑谷くんに個性が渡ってくれたようだ。そこが変わってしまうとこの世界の話がどうなるかわからないからな。そこだけはなんとしてでも変わって欲しくなかったから良かった良かった。
「怒らないのかい?あれだけ君に託そうとしていたのに、君の知らないところで君の知らない第三者に渡してしまって・・・」
「怒る訳ないじゃないですか。他でもない八木さんが・・・いや、『オールマイト』が選んだ。文句なんてつけようがないですし、最終的に誰に譲渡するかを決めるのはアンタだ。俺が口出しするようなこと出来ませんよ」
「盤代少年っ・・・!!!」
「やっと個性の押し付けが終わるのかと思うと気が楽になりますわ〜」
「絶対にそっちが本音だろう、盤代少年!?」
「はっはっは〜なんのことやら〜」
緑谷くんにオールマイトの個性が渡ったことでようやくこの物語が始まる。前世の記憶を思い出して約20年・・・。長かった、ほんっとうに長かった!ここからはノンストップだ。まず第一目標はUSJに介入し、チンピラ共から個性を巻き上げつつ、脳無から『超再生』と『ショック吸収』を手に入れることだ。それだけでこの先の戦いが格段に楽になる。そして入学したてのピチピチの1-Aの皆をこの目で焼き付けるんだグヘヘヘ
「それでだね・・・」
「ん?なんすか?」
「君には私の後継者、『緑谷 出久』の雄英の試験日まで、彼の訓練に付き合ってほしいんだ」
「・・・え?それマジ?」
◇オリジナル個性解説コーナー◇
『影』
・自分の影の形を自由に操作し、相手の影に自分の影が触れると相手の動きを操ることができる。
・盤代 円のお気に入りの個性の一つ。
・モデルはNARUTOの奈良シカマルの忍術より。
『粘着糸』
・指と爪の間からネバネバの糸が出てくる。出てくる糸の粘性や長さはその日のコンディションによって変わる。
・モデルはマーベルシリーズのスパイダーマンより。
『性質逆転』
・触れた物体の性質を一つ逆転させることができる。ただし、その変えた性質以外は元のままである。
・例:常温のまま釘が打てるぐらい硬い豆腐(硬度逆転)、火傷をするぐらい熱いのに溶けないアイス(温度逆転)
『ブースト』
・発動中、自分がする全ての動きが早くなる。個性停止後、再発動に30秒ほどのインターバルが必要になる。
・この個性は他の個性と掛け合わせることでその個性の上限を底上げしたり、隠された能力を覚醒させる。このことを本来の持ち主は知らなかった。
・盤代 円のお気に入りの個性の一つ。
・モデルは仮面ライダーギーツの変身アイテムの一つ、『ブーストバックル』より。
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