ARC-Vをいい感じにするためにオリ主を奮闘させてみた 作:偽馬鹿
「むう」
遊戯王。
いや遊戯王OCG。
それに関して語ることはない。
分からない人は凄く売れているカードだと思ってくれればいい。
そんなカードを弄りながら、男は考えていた。
どうしようかな。
面倒臭いな。
寝よう。
彼は飽き性だった。
『あのですねご主人』
ぺしぺしと、そんな男を叩く半透明な影。
金色の髪。
エメラルドグリーンの瞳。
紫を基調に、帯を緑色に染め上げたミニ和服とでもいうかのような恰好。
その上から更に黄色い和服を羽織る。
そして紫色のタイツを履き、厚底のブーツを履く、少女のような存在。
それが男の頭をぺしぺしと叩いていたのだ。
『分かりますかご主人。
貴方は選ばれた存在なのです。
この世界を救うのです。
でーゆーあんだーすたん?』
「……」
多分「Do you understand?」って言いたいんだろうな、と思いながら、男は寝転がる。
それどころではない。
男は惰眠を貪るつもりだった。
『おーきーてーくーだーさーいー!』
ぐいぐいと、頭を掴んで起き上がらせようとする少女らしき存在。
それを片手で制しながら、男は起き上がる。
単純に髪の毛を引っ張られて痛かったのだ。
「……俺に何をしろと」
男は何度目かの質問をする。
そうなのだ。
少女らしき存在は男に対して何を求めているのか分からないのである。
ただ『世界を救ってほしい』と願うだけである。
『世界を救うんですよ!
ひーろーですよひーろー!』
ばびゅーんしゃきーんと謎のポーズをとる少女的な何か。
なるほど全然分からない。
男は惰眠を貪ることにした。
『だーめーでーすー!』
「やめろめろめろ」
今度は脛をボカボカと殴ってきたので流石に止める。
尋常じゃない筋力であった。
というか半透明なのに実態があるのか。
甚だ謎の存在である。
「そもそもだ」
男は少女っぽい影に対して向かい合う。
とりあえず、今言いたいことを言うことにしたのであった。
「俺である必要性は何だ?
俺がやらなければならない理由は何だ?
はっきり教えてくれ」
じっと少女みたいな影に問いかける。
その台詞を聞いて、少女のような影はうーうー唸る。
そして、決意したかのようにきりっと顔を正した。
『それはですね……貴方がこの世界において
「―――――」
それは。
男が見ようとしなかった本質であった。
真実だと言い換えてもいい。
そう、彼はこの世界においては異物であった。
何せ、彼の知っている遊戯王カードは娯楽であって、社会に浸透し切った存在ではなかったからだ。
「―――――それで、異物である俺が世界を救うには?」
男は真剣な顔で聞く。
この世界に生まれてから、初めてと言っていいほど真剣だった。
しかし、それの返事は極めて軽く、それでいてぶっ飛んでいた。
『世界をぶっ壊してください☆』
「……ん?」
『ん?』
にっこりと笑っているその影を見遣り、やはり男は惰眠を貪ることにしたのだった。
『んもー!!!』
―――――
「―――――本日の授業は終了」
「「「ありがとうございました!」」」
「……ああ」
授業。
そう、授業だ。
男はなんとデュエルスクールの教師であり、惰眠を貪っていたのは、子供たちと交流するためのエネルギーを確保するためであった。
ちなみに彼の担当はシンクロである。
『……でもですねご主人。
どうしてあたしたちを使わないんです?』
「マツリカ先生! 今日のここが分からないんですけどー!」
「……ああ、ここは……」
今日も今日とて男――林マツリカの背後には例の少女的生命体がいる。
その少女っぽい奴の不満げな台詞を受け流しながら、マツリカは生徒の質問を消化していく。
『無視ですかっ』
「後でちゃんと話すから待て」
『……むぅ』
「?」
「なんでもない」
面倒なことになった。
男の思考はこれに尽きる。
林マツリカは転生者である。
何だかんだ細々と続けていた趣味、遊戯王OCGの世界に転がり込むことになった元一般人である。
この世界でデュエルモンスターズに誘われたのは5歳の頃だ。
その頃には自身の思考力も安定し、割とまともな子供として生活できるようになっていたマツリカだったが、デュエルモンスターズと聞いて驚いた。
そう、彼がそれなりに親しんでいた遊戯王OCGのことをデュエルモンスターズと呼んでいたからである。
元々の知識と大人としての思考力を駆使し、あれよあれよという間にデュエリストとしての地位を確立。
今ではデュエルスクールの教師として教鞭を振るっている。
安定した地位だ。
それに給料もいい。
あとは趣味が仕事になっているので、いつも楽しく仕事ができる。
それが崩れたのが数日前。
気紛れに訪れた古びたカードショップ。
そこにあった捨て値で売っていた開かないデッキケース。
中にカードが入っていることは分かるのに、開くことが出来ないという不思議なそれ。
お金には余裕があった。
そして遊戯王の世界ならなんかこう、高く売れるカードが入っているかもしれないと思い、購入。
開かない開かないという店主の反対を押し切って蓋に手をかけると―――――
『―――――ご主人! 貴方があたしのご主人ですね!?』
―――――簡単に開いた挙句、謎の少女的生命体が現れたのだった。
「……先生」
「ん、なんだ千代桐」
「……なんでもないでーす」
『……?』
何だか少女風味のそれを見ているような気がする生徒、千代桐ハツミを不審に思いながらも、今日の仕事は終了した。
その様子を見ていた少女のような変なのも疑問に思っていたようだが、マツリカはスルーした。
『……で、御主人は考えてくれたんですか?』
「まあ待て」
興奮気味で詰め寄ってくる少女的生命体を手で制しながら、マツリカはデッキを弄る。
少女とかそれっぽい表現をしていたが、姿形を見るに【No-P.U.N.K.セアミン】のそれに近かった。
認めるのも面倒なことになりそうだから思考の外に追いやっていただけだった。
「……セアミン」
『……!』
ぱあ、と少女系半透明生命体――セアミンが顔を輝かせる。
正解らしい。
なるほど、
面倒臭い。
マツリカの思考はそれだった。
「俺を選んだ理由はまあ、なんとなく分かった」
『はい!』
「だが俺は何もしない」
『?』
マツリカ、お祈り申し上げる。
新しいご主人にご期待ください。
そんな感じだった。
だって面倒臭い。
折角安定した職業について、賃金を得ている。
それ以上望むことはないのだ。
『えっ? えっ?』
「お祈り申し上げます」
笑顔から一転、困惑の表情を浮かべるセアミン。
マツリカはそのままお風呂へと直行する。
明日は朝が早いのだ。
準備を早く終わらせたかったのである。
『でもでも! それじゃあ世界が滅んじゃいますよ!?』
「……え?」
涙目になったセアミンのそれは、シャンプーを手に乗せたマツリカの動きを止めるのには十分だった。
「……聞き捨てならない台詞を聞いた」
『はい』
「滅ぶとは穏やかなじゃないな」
『事実なので……』
何故かお互いにベッドの上に正座をして向かい合っていた。
お風呂はちゃんと入った。
あとセアミンはお風呂に突入したりすることはなかったのでラッキースケベなるものは発生しなかった。
「滅ぶのか」
『滅びます!』
「俺が何かする必要があるのか」
『あります!!』
「お前の性別はどっちだ」
『秘密です!!!』
残念。
勢いで聞けるかと思ったのだが。
【No-P.U.N.K.セアミン】の性別は不明。
何故なら能、歌舞伎の世界に置いて、女人は禁制。
女形といって男性が演じることが常であった。
それ故に、モチーフがそれである【No-P.U.N.K.セアミン】の性別は不明、ということになっている。
「まあいい。
とにかく、俺が何かをする必要があるんだな」
『はい!』
「それではその方法は」
『わかりません!!!』
「返事だけは良いな……」
元気に手を上げながら言うセアミン。
お手上げ、ということだろうか。
お手上げなのはこっちなのだが、と思いながらマツリカは頭を掻く。
「……まあいい」
立ちあがるマツリカ。
こうなっては仕方がない。
やることをやろう。
『何するんですか?』
「上司と相談する」
『……???』