Blue Archive Daughter is the Devil 作:クラウディ
ストサンうまいよね。
「意気込んでみたものの、これを着ることになるのか……」
今日の日付を確認してみたところ、まだ春休み期間中だということが判明。
これ幸いと、この世界がどうなってるのかを確認するために外出しようとした俺だが、まずは寝巻きから着替えないといけないことに気づく。
そして目の前に鎮座するは、少し飾り気の無い女の子ものの服。
白い生地で作られたそれは、自分にとっては触れたこともないようなものだった。
「これが新世界か……」
意味不明な言葉を呟きつつ、置いていた服に手を掛け、身体を通していく。
前世というべき人生では機能性重視で選んでいたため、こういった服、ましてや女物の服なんて着たこともない。
だが、この身体には自然と馴染むようだった。
「くっそぉ……めっちゃ足がスースーするぅ……」
そして、服一式を着てみたのだが正直感覚としては違和感しかない。
今までは結構ゆったりとした服を着ていたのですぐに動けたのだが、今着ている服はこの子の身体にジャストフイットしすぎていて少し窮屈さを感じる。
それに、スボンと違って今穿いてるのはスカートだ。
「こ、これがスカートの感覚か……うぅ……」
思わず内股になって顔が熱くなる。
なんというか、下だけパンツ一丁みたいな感覚なのだ。
女の子ってすごいんやなって……そう学びを得た瞬間であった。
「と、とりあえず、服は着た。荷物も用意した。護身用のブルーローズも入れた。たぶん、これで大丈夫なはず……よ、よし!」
今の自分に出来る準備を整え、玄関の扉に手を掛けた俺は外へと出た。
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「すっげぇ……」
外へ出て、町中を歩いているときに自分の口から出たのはそんな感想だった。
東京の町並みよりも遥かに発展した学園都市キヴォトス。
その一部であるトリニティ総合学園の自治区は少し毛色が違っていた。
最新鋭を行くミレニアムとは違い、アンティークな建築物が並ぶこのトリニティの自治区は、コンクリートジャングルで生きてきた俺には新鮮で、ひどく興奮させられる。
「わぁ……!」
思わず目を輝かせてキョロキョロと周囲を散策し始めてしまう。
老舗と思われるスイーツ店や、ブティック、その他にも様々な店があった。
美味しそうな匂いや興味をそそられる品物の数々にそちらへと足が向かってしまう。
「い、行ってみようかな……あ、ダメだダメだ。俺はあくまでこの世界がどうなのかを調べるために来たんだ! 欲望に負けるなぁ……でもぉ……」
思わずスイーツ店の前で右往左往してしまう。
この子の身元を調べる際、鞄に入っていた学生証なども確認していたが、分かったのはこの子がトリニティ総合学園初等部一年だということ。
流石にエデン条約が締結されてないところから原作開始前なのはわかったものの、今がいつくらいなのかは分かっていないため、正直、原作開始した時に俺の成長が足りてないと"アイツ"を見つけてぶん殴る前に俺がエデン条約の事件でポックリ逝きかねない。
もしもスパーダの血とヘイローの力があるのなら早々死にはしないだろうが、また別の要因を考えると事前準備はしておきまくって損はないはずだ。
だが……
「うぅ……朝飯食べたはずなのに、お腹が空いてくるぅ……」
なんでかは分からないが、スイーツを見ているとすごくお腹が減ってくる。
特にあの「ストロベリーサンデー」とか。
「……ごくりっ……」
ストロベリーサンデーとは、アイスクリームの上に苺や洋酒のソース、チョコレートソース、ホイップクリーム、ナッツなどをトッピングした菓子のことだ。
作り方が似ている「パフェ」との違いとしては、グラスの差だそうな(パフェの時はパフェグラスを使う)。
ちなみに、ストロベリーサンデーはダンテの好物でもある
そのストロベリーサンデー以外にも大きなパフェなどもあるのだが、その時の俺はストロベリーサンデーしか目に入らなかった。
――まさか、ストロベリーサンデーには悪魔を魅了する力があるのか?
そう思ってしまうほどに釘付けになってしまった。
「…………」
無言で鞄の中を探る。
そして、取り出した自身の手のひらより少し大きいサイズの財布から1枚のカードを抜き取る。
「ブラックカード……」
財布の中にあった黒色のカード。
形状からしておそらくこれを使えば決済できるのだろう。
限度額……どれくらいなのか分からないが、一先ず使って確認をしてみるか。
「こ、これは確認するだけ……決してストサンの誘惑に負けたわけじゃないんだ……!」
誰かへの言い訳を呟きながら俺はスイーツ店へと入店した。
店内は多くの生徒が座っており、そこかしこで楽しげな雰囲気が伝わってくる。
その様子を見ながら俺はカウンターにいる店員さん(ヘイローが浮かんでるからアルバイトの人かな?)のところへ向かった。
「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか?」
「あ、一人でお願いします。そ、それと、これってどのくらい使えますか?」
「はい! 確認させていただきま……!?」
「へ? もしかしてここじゃ使えないんですか……?」
とびっきりの笑顔で答えてくれた店員さんにカードを見せると、目を大きく開いて固まってしまった。
え、これヤバいやつだったりするの?
「え、えっと、だ、大丈夫です! お好きな席に着いてごゆっくりどうぞ~!」
「え、あ、はい」
な、なんか店員さんの反応がおかしかった気もするけど、大丈夫みたいだ。
いそいそと空いている席に着き、店員さんを呼びだした。
「はい! ご注文は何にされますか?」
「こ、このストロベリーサンデーをお願いします……」
「はい! ストロベリーサンデーですね! かしこまりました!」
快活な声で注文を受けてくれた店員さんの背中を見送りつつ、周囲を見渡す。
このスイーツ店にいるのは自分よりも身長が大きく、おそらくはトリニティの高等部の生徒なのだろう。
春休みということもあって休暇を楽しんでいるようだ。
そんな中で俺みたいな初等部の生徒が一人でいるというのは浮いているのか、チラチラと何人かがこっちを見ている。
……ちょっと恥ずかしい……。
そんなこんなで縮こまりながら待っていると、店員さんがお目当ての物を持ってきてくれた。
「お待たせしました! ストロベリーサンデーです! 追加のご注文がありましたらお呼びください!」
「おぉ……」
運ばれてきたのはそれはそれはうまそうなストロベリーサンデーだ。
少し色づいたバニラのアイスクリームの上に、ホイップクリームが存在し、その中央に真っ赤なイチゴが鎮座している。
チョコレートソースもかけられた、普通ならただ甘ったるいだけのこれでは食に楽しみがない……ということを解決するため、カリカリとしたナッツをかけているため想像するだけでのどが鳴った。
「…………はっ! い、いつから俺はストサンがここまで大好きになったんだ……!」
なんでかよく分からないまでの自身のストサンへの執着に頭を振ってスプーンを手に持つ。
恐る恐るスプーンを土台であるアイスに突き刺すと、サクッという軽さとともにアイスが掬い上げられた。
ひんやりとしたアイスからは食欲をそそるバニラの香りがして、思わずよだれが垂れそうになる。
「……い、いただきますっ!」
かれこれ30秒ほど葛藤していたが、覚悟を決めて口の中に放り込んだ。
「…………」
瞬間、頭が真っ白になった。
なんだこれは……う、うますぎる……!?
前世でもダンテがあれほどハマるストサンを食べてみたがうまいという感情しか思い浮かばなかった。
だが、今感じる感情の波はそれ以上だ。
おそらく、味覚がこの子の身体依存になっているため、以前と比べて甘いものがより甘く感じるのだろう。
うますぎる……それしか言う言葉が見つからない……!
語彙力が消失してしまったが、そんなことは関係ないといわんばかりに次を口に持っていく。
「は~むっ……ん~~~~!!!」
あまりのうまさに頬がとろけそうだった。
チョコとホイップクリームの違う甘さも感じつつ、パクパクと勢いよく食べ続け……
「も、もう無くなった……だと……!?」
気づいた時にはなくなっていた。残っていたのは空の器だけである。
早い……あまりにも早すぎる……!
ま、まぁ、ストサンはパフェみたいな大きい器じゃないからすぐ無くなるのは納得できる。
それにしては楽しみが消えるのが早すぎた。
正直言えば、この後のことも考えるとここらで終わらせておいた方がよさそうだ。
ストサンだけで腹を満たすなんて、あのダンテと同じことはやりたくない。
しかし……
「す、少しだけならいいよね……?」
俺は欲に負けてしまったのだった。
その後、ストサンだけを10杯は食べ続けた。
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「お、アイツめっちゃ食ってんな。会計って、アイツブラックカードじゃねぇか」
「あんなガキがねぇ……そんなに見せびらかすように使ってたら獲物になるんだよなぁ~」
「アタイ達みたいなのに、な」
・ネロ
なんでかよく分からないがストサンが滅茶苦茶好き。
ストサンには悪魔を魅了する力でもあるのかと戦々恐々している。
ブラックカードの限度額はかなりあるみたいだとこの後分かった。