区切ろうにも区切れず1話分丸々えいやと入れたので、今回内容の量が多いです。
是非お時間のある時にゆっくりじっくりと呼んでいただければと思います。
「しっかりして、ねぇ!スカイ!プリズム!」
地面に叩きつけられて倒れるキュアスカイとキュアプリズムの存在に気付いた俺と聖先輩は、一先ずランボーグに目をつけられないよう2人を近くの裏路地へと運んだ。
「……っ、あげはちゃん?」
「シロウ、さん……?」
それから2人が意識を取り戻すまで時間はかからなかった。
目を覚ましたどころか目の前で声を掛ける俺達をすぐさま認識出来るまで回復していたことに、先輩はホッと胸を撫でおろす。
「助かりました、ありがとうございます……!」
「ああ、無事で良かった。それより、エルを見なかったか?」
「え?エルちゃんならおばあちゃんのところにいるはずじゃ……」
「2人が心配になって飛び出しちゃったらしくて、今この街の何処かにいるんだ」
「そんな!?」
「……あっ、あれ見て!」
「えるぅ~!!」
プリズムが指を指した場所には、UFOに模したランボーグにエルが吸い込まれている。
そしてその隣に、オレンジの丸っこい未知の物体がバタバタと暴れながら同じ状況に見舞われていた。
「エルちゃんに、ツバサくんまで!?」
「ツバサって……アイツがプニバード族の!?」
「取り敢えず、今は質問はなし!早く2人を助けないと!」
「はい。あげはさんの言う通り、なんですけど……」
先輩の言葉に肯定するスカイだが、その語気は何処か弱気だ。
プリズムも上空を見上げるなり、複雑な表情を浮かべている。
「あのランボーグ、凄く高い所に飛んでいて、私とプリズムで力を合わせてもジャンプ力が限界を達して届かなくて……」
「後から合流した凛さんも"ガンド"っていう弾みたいな飛び道具を打ってたんだけど、やっぱり距離が遠すぎるみたい……」
──夕焼け空を見上げる。
流石のプリキュアでも大気圏を突破出来るほどの跳躍力はない。
それに対して、相手はUFOの形をしているだけでなく、性質も世間に知れ渡るモノと何とも相性が悪い。
そんなヤツ相手に、遠坂は今でも屋上から1人で撃ち落とそうとしているようだ。
プリズムが言っていた"ガンド"──あれは飛び道具というより、どちらかと言えば"呪い"めいた物だ。
確か、北欧のルーン魔術に含まれる物で、狙った対象を指差す事で病状を悪化させる間接的な呪いの筈だ。
"弾みたいな飛び道具"と言っていたが、効用はあくまで体調を悪くするだけで弾丸並の威力は出るものではなかったはず。
だが、プリズムの言っていたことが本当ならば、遠坂のガンドはあまりにも濃い魔力で編まれているのだろう。
そうなると、外見だけでなく威力も効果も弾丸と同じだってことになる。
流石は遠坂だ。
本来ゆったりとした呪いを即効性にするなんて実力行使にも程があるし、まずランボーグとカバトンに対する殺意が高すぎる。
「じゃあ、それを踏み台に利用して連携を取れば……」
「……あっ、それだ!」
「? あげはちゃん、何か言い考えがあるの?」
「うん、あるにはあるけど……もしかしなくても危険だよね、これ」
「たとえ危険だとしても構いません!2人を助けられるなら、耐えて見せます!」
「分かった!取り敢えず、遠坂ちゃんと一度合流してから話すよ!」
「一か八か。リスクはあるけど、今のところこれ以外方法がないもの」
1枚のクラスカードを持ちながら、わたしはそう呟く。
時計の針はもうじき午後五時を指そうとしている。
わたしにとって膨大な魔力を使うには波長の良くない時間帯。
それにまだ、周囲にいた人々は逃げ回って混乱しているだろう。
それでも状況が状況なんだから今やるしかないし、その為には僅かなミスも許されない。
──床に陣を刻む。
退去の陣を四つ刻んで召喚の陣で囲み、その上にクラスカードを置き、わたしはそこに立つ。
ケイネスが軽々と使いこなしたように、実際のところ夢幻召喚にはさして大がかりな降霊は必要ない。
クラスカードは聖杯によって作り出されるモノ。
魔術師はカードを介して英霊の座へとアクセスし、英霊化に必要な魔力を提供することが第一なので、後の疑似召喚は彼らの受け取り次第である。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
それでも、細心の注意を払う。
本来は自身の血液で描く魔法陣を、代用として溶解した宝石で描く。
……わたしが今まで溜め込んできた宝石のうち半分を使うんだから、財政的にもこんな下らないことで失敗なんてしたくない。
「
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
……ここまで順調。
遠坂の家に伝わる召喚陣を描き終え、全身全霊で対峙する。
「──Anfang」
わたしの中にある、形のないスイッチをオンにする。
かちり、と身体の中身が入れ替わるような感覚。
通常の神経が反転して、魔力を伝わらせる回路へと切り替わる。
これより遠坂凛は人ではなく。
ただ、神秘を成し得る為の部品となる。
指先から満たされていく。
元からあった肉体が別のモノに塗り替えられていく感覚。
だから、満たされるという事は、同時に破却されるという事だ。
「──」
全身に行き渡る力は、大気に含まれる純然たる魔力。
これを回路となった自身に取り込み、違う魔力へと変換する。
魔術師の体は回路に過ぎない。
幽体と物質を繋げる為の回路。
その結果から成し得た神秘を、我々は魔術と呼ぶ。
……体が熱い。
額に浮き出る汗。
背中に生えて来る汗。
手に溜まり込む汗。
踝に溢れる汗。
それら全ての汗が、滲む。
グサリ、グサリ、と体中に剣が突き刺さる。
それは人であるわたしの体が、部品であるわたしの体を嫌う聖痕だ。
如何に優れた魔術師であろうと人は人。
この痛みは、人の身で魔術を使う限り未来永功つきまとう。
それでも循環を緩めない。
この痛みの果て、忘我の淵に"繋げる"為の境地がある。
「──」
……左腕に蠢く痛み。
魔術刻印は術者であるわたしを補助するため、独自に詠唱を始め、余計にわたしの神経を侵していく。
取り入れた外気は血液に。
それが熱く焼けた鉛なら、
起動した魔術刻印は茨の神経と成る。
ガリガリと、牙を持つ百足のようにわたしの神経を這いまわる──
我を忘れるほどの痛み。
同時に、至ったのだと、手応えを得た。
ここまで上手く行ったのは、実は初めてだ。
あまりにも聴覚が過敏になっているせいで、UFOの高音が執拗に聞き届く。
だがその威勢も、じきに終わる。
全身に満ちる力は、もはや非の打ち所がないほど完全。
始めよう。
取り入れたマナを"固定化"する為の魔力へと変換する。
あとは、ただ。
この身が空になるまで魔力を注ぎ込み、召喚陣というエンジンを回すだけ──
「────告げる。
汝の身は我に、汝の剣は我が手に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
視覚が閉ざされる。
目前には肉眼では捉えられぬ第五要素。
故に、潰されるのを恐れ、視覚は自ら停止する。
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ──―」
『アーチャー、
文句なし……!
手応えなんてもう、カジキマグロを釣り上げたってぐらい完璧!
嗚呼、視覚が戻るのがもどかしいっ。
あと数秒で目が回復して、そうすればもうわたしの身体は召喚されたアーチャーの形に──。
──ジジ、ジ。
「は──うきゃああああああ!!!!!」
「遠坂!」
屋上をこじ開け、咄嗟に声を掛ける。
真っ赤な閃光が起こった直後に、何かとんでもない爆発音と奇声が聞こえたものだから焦りが一層沸き上がって来る。
「クク、ク──」
「──」
床に描かれた赤い魔法陣のようなものの近くでひっくり返っている遠坂。
それを見た直後、俺は反射的に目を逸らした。
だって、遠坂のスカートのプライベートゾーンが露わになっている気がしたから。
ああいや、あまりに反射的で見えてるかどうか分からなかったので"気がした"って曖昧な言い方しか出来ないけど。
「凛さん大丈夫ですか!?」
……やばい。多分相当顔赤いぞ今。
ちゃんと見てないのに、情けない格好で倒れてるだけなのに、そもそも事態がそれどころじゃないのにかなり火照っている。
まさかとは思うが、もしかして異性のそういうコトに対する耐性がないのか、俺?
「……士郎さん、どうかした?」
「え、ああいや、何でもない!」
──危ない危ない。
プリズムの声掛けで瞬時に理性を復活させ、汚れた野性にフタをしてみせる。
「なんでよ──!どうして何回やってもインストれないのよ──ー!?」
そう、バタバタと倒れたそのままの状態で足を動かして大暴れする。
だから、目のやり場に困るからやめてくれ。
「……凛、君が納得行かない気持ちも分かるが、特殊な魔術回路を持つ私と君では釣り合うことは不可能に近いと言っただろう」
「え──」
と。
呆れた声で伝えながら、赤い外套の男が実体化する。
そういえば、遠坂には使い魔なるモノを召喚出来るって聞いたことがあったな。
ソイツの姿を見るのはこれが初めてだ。
「私という英霊を実体化させられる以上、夢幻召喚を使う必要などない。せめて限定展開にしておけ」
「限定展開だと弓が出てきても肝心の矢がないんだもの。意味ないじゃない……」
赤い外套の騎士は、その言葉にやれやれ、なんて大げさに首をすくめる。
あの夜、ランサーのクラスカードを持つケイネスと打ち合い、互角の勝負をした英霊。
死にかけた俺を運ぶ遠坂達の護衛をしていた男。
そんなヤツとこうして対面して直感し、断言する。
コイツは絶対に性格が歪んでるし、嫌いだ。
「──」
その視線に気づいたのか、アーチャーの英霊も敵意のまじった目で俺を見据える。
……俺のことが嫌いなら、願ったり叶ったりだ。
こっちも大手を振って毛嫌い出来る。
「──解っている。アレを撃ち落とせば良いのだろう?」
「待って!中にはまだエルちゃんとツバサくんが……!」
それに地上には大勢の人だっている。
撃ち落とすにしても、それだけで受けるリスクは大きい。
「私に考えがあるの!あんまりいい作戦とは言えないかもだけど……」
先輩が持つ考えを皆に説明する。
要約すると、数多くの踏み台を作り出してスカイのジャンプの飛距離を上げる、というものだった。
プリズムが放った光弾を踏み台にし、遠坂がガンドで打ち上げる。
それを上手く繋げていけばランボーグに辿り着くのではないか、というのが先輩の考えだそうだ。
「……確かにいい作戦とは言い難いけど、物は試し。やってみましょう。アーチャーもそれでいい?」
「──君の指示に従うさ。だが、危険が生じた場合は私なりに対処させてもらうぞ」
そう告げると、アーチャーは姿を消した。
「……あの、凛さん。彼は何処へ?」
「自分の持ち場に向かっただけ。安心して、あんな奴だけど皆には協力的だから」
ここにいても自分の力を発揮出来ないだろうから、別の場所から援護するということだろう。
「じゃあ私達は私達で作戦を実行しよっか!」
「はい!」
まず第一に、先輩の合図でスカイとプリズムが同時にジャンプをするところから始まる。
「せーの!」
一度のジャンプで上がるところまで行ったら、プリズムは空中で体勢を変えて両足を上空へ向ける。
スカイはその両足を最初の踏み台にして、更に上へと飛んでいく。
「撃って!出来るだけ沢山!」
直後、プリズムがサッカーボールくらいの大きさの気弾を放出。
まずは近づいてきた気弾を踏み台にして、行ける分まで上昇する。
「よっ……と!」
気弾を撃ちながら落下するプリズムの背中を俺は抑え、抱き留めた。
スカイが限界まで飛んだ後、ここで遠坂のガンドが登場。
気弾を更に上へ飛ばし、再び踏み台とさせる。
「はああああ!!!」
作戦は順調。
ランボーグの目の前まで接近し、あとはそいつに乗り込むだけだが──
「そんな、またダメなんて……!!」
先程もこうして失敗したのだろう。
頃合いを見て勢いよく飛び込んだのをいいことに、UFOは接近を拒むように華麗に避けてみせる。
触れることさえも成し得なかったスカイは、虚しくもスタート地点まで落ちていった。
「スカイ!大丈夫!?」
「こ、このくらい、大丈夫です──」
「中止!」
どう見ても大丈夫じゃないくらいボロボロの2人を見て、指揮官はそう宣言した。
「ごめん。私の作戦、流石に無理があった。だから、もっと別の……」
「大丈夫です!まだ2回しか失敗してませんし、ここで諦めるわけにはいきません!」
「うん!何度だってやるよ!」
元々、スカイもプリズムも危険を伴うのを承知でこの作戦を引き受けた。
理由は勿論、ツバサとエルを助け出すため。
助けられるのならどんな作戦でもやってみせると言っていたが、やはりその言葉に嘘はなかったようだ。
「でも、どうするの?さっきより遠くに行っちゃったけど。殆ど雲の中に入ってるでしょ、アイツ」
段々とランボーグは遥か彼方まで上がり、形もその分小さくなっている。
工夫して飛んでも届かなかったのに、更に届かなくなってしまった。
遠距離でも難しい地点にいる奴を、ここからどうすれば良いのか──
「っ、あれ、UFOの傍に何かいない?米粒サイズで見づらいけど」
良く見ると、確かに物体がゆっくりとUFOから離れていく様子が小さく見える。
「もしかして……エルちゃんとツバサくん!?」
「カバトンから逃げようとしてるんじゃ……!」
──エルちゃん、逃げて。
ゆりかごから手を放した少年から、そんな言葉を口にしたような気がした。
……いや、私は聴覚が人並み以上に優れているわけではなく、遠くから視覚で彼の口の動きでそう感じ取っただけなので、実際にそう言ったのかは定かではない。
あの少年はただの一般人ではなく、プニバード族という小さな異界の鳥類を本体として人間にも変化出来る生物らしい。
だが、本体であっても重量の影響なのか、ゆりかごの速度が限られてしまっている。
そのリスクを減らすため、何としてでもプリンセス・エルを逃がすために、少年は自らを危険に晒す行為を選択した。
「えるぅ〜!」
だが、プリンセスはそれを否定して落下する少年を何かの魔法で引っ張り上げる。
「エルちゃん!ボクのことは良いから!」
「えるるっ!」
それでも少年を離すまいと首を振るプリンセス。
猶予はない。
こんな繰り返しをしているうちに魔の手は迫っている。
「掃除機光線発射!」
奇形の怪物は主人の合図でプリンセスの吸引を開始した。
「える!?えるるぅ〜!」
「エルちゃん!」
「ギャーハッハッ!バーカ!そんな脇役なんか放っといて1人で逃げれば良かったのによ!」
「……やめろ。これ以上、エルちゃんを馬鹿にするな」
少年の訴えも聞こえず、怪人の高笑いが街中に響き渡る。
私には、奴が何故プリンセスを狙っているのかは分からない。
ただ、ここまで清々しいほどに性根が腐っていると思うと、怒りや呆れを通り越して苦い笑みが零れそうになる。
もっとも、彼は侮辱に耐えられないようだが。
「エルちゃんを笑うな!!!」
怪人に対する怒りが爆発した瞬間、少年の胸元から光が溢れ出した。
「嘘だろ……!あんな脇役がブリキュアになるっていうのか!?」
「……もし、ボクに最期が訪れたとして、その時に思い出すのはボクを笑った人達じゃない。プリンセス、ボクを守ろうとしてくれた貴女の顔です!」
そう言って、少年は溢れ出た光の中から出現したペン状の物を手に取る。
怪人の言葉通り、アレはプリキュアに変身するためのアイテムだ。
「でもそれは今じゃない。だってこれからは、ボクが貴女を守るんだから!」
「させねぇ!絶対に逃がさないのねん!」
危機感を感じたのか、怪物らは吸引するその力を段々と強めていく。
さて、そろそろ動くとしよう──
数百メートルを超える離れた場所、屋根の上で弓を構える。
ここは実に見晴らしがいい。
凛に教えてもらった、ソラシド市で5本指に数えられるほどの絶景。
同時に、ここであれば私の本領も発揮出来るだろうと、何となく思った。
『──ランボー!?』
やがて放った矢は怪物を射止め、悲鳴を上げて被弾する。
少年側も怪人側も当然ながら、私の居場所を最後まで察知は出来なかった。
そのおかげか、突然の出来事に少年は困惑していた。
「誰かは分かりませんが……無駄にはしません。プリンセス・エル!あなたの
──新たなプリキュアが、ここに誕生する。
「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」
鳥の尾をイメージしたアンダーポニーテールは不死鳥の如く。
前髪で隠れていた眼がショートヘアーに変化したおかげで露わになり、より少年らしさを際立たせる。
彼は今宵、空に羽ばたく戦士となったのだ──。
「お、おい何してんだ!さっさと追いかけるのねん!」
そう強く命令する怪人に従う怪物だが、その動きはどこかおぼつかない。
今のはただの矢ではないのだから、無理もない。
以前、ケイネスに放ったのと似た、私の矢に凛が使った宝石の魔力を細工したものだったのだ。
奴らが体たらくをしている間に、ウィングはプリンセスを抱えて彼女らに託し、再び奴らに立ち向かう。
夕焼け空の中で高く、豪快に羽ばたく。一撃でトドメを喰らわせるようだ。
『ひろがる!ウィングアタック!!』
怪物へと上昇する力を弱めず、寧ろ速度を上げて強めた状態で怪物に接近し、全身で攻撃を繰り出す。
まともに命中し貫かれた怪物は、大きな翼に包まれながらゆっくりと浄化していったのだった。
元の街並みが戻っていく。
人々は何が起こったのか分からないと困惑し、それでも自分達は助かったのだと活気を取り戻していた。
一方、
「これでツバサくんもわたし達の仲間だね」
「そして、わたし達のお友達でもあります!」
「はい!改めて、今後ともよろしくお願いします!」
街の危機を救った戦士達はその状態を解除し、新たに仲間が加入したと喜びを分かち合っている。
正しく、今回の戦いの終わりを迎えたということだ。
──いや、戦士という言葉はここでは誤りだ。
この場合、キュアウィングが名乗っていた"
プリンセス・エルを元居た場所であるスカイランドに連れて帰るまで守り抜く存在、それがプリキュアという騎士だ。
──彼女らの境遇は英霊に似ている。
何か不都合があった場合のみ呼び出され、その後始末をするだけの存在。
人の世の危機を救おうが、その功績は誰にも認識されない。
戦士、ナイト、英雄、ヒーロー、そして英霊──これら全ては所詮、守護者と呼ばれる都合の良い存在と同類だ。
なってしまったが最後、意思を剥奪され、永遠に人々の為に働き続ける掃除屋に過ぎない。
だがまあ、流石にあのような赤子に人を道具扱いするような行為が出来るとは到底思えないし、蓋を開ければ普通の少女である彼女らが自らの立場、その在り方を実感するのは難しい。
それでも、いずれ思い知ることになるだろう。
少なくとも、そこにいる半端者の魔術師は、誰よりも、強く──