一作品目の方も、ぜひ読んでください。
プロローグ
ある日、世界は“連結”した。
突如開いた“
その影響により、10代の少女たちは身体能力の飛躍的な向上や超能力じみた不思議な力など、様々な『
しかし、時を同じくして世界の均衡を司る『水晶』にも異変が生じ始めた。
それは滅びの始まり。
異常気象や超常現象といった謎の現象が四つの異世界それぞれで起こり始めたのである。
そして、それが滅びに向かっていると結論付けた四つの異世界は手を組み、世界を救う鍵であろうとされる異能に目覚めた少女たち『プログレス』の保護と育成に励むこととなった。
その中で、プログレスたちの持つ可能性を引き出す存在が現れ始めた。
異能に目覚めた少女たちよりも少ない希少な存在である『αドライバー』と呼ばれる少年たちである。
プログレスとαドライバー、この二つの存在を保護、育成し、可能性を開花させるための施設。
太平洋上に浮かぶ孤島、『青蘭島』。そこに設立されたのが『青蘭学園』であり、みんながささやかな日常を送り、来るべき危機に向けて日々鍛錬していく場でもある。
これはそんな学園で、世界の滅びを止めるために奮闘する少年たちとその周りに集まる可能性の少女たちの物語である。
四月上旬。
桜が舞い、入学シーズンのこの時期。
青蘭学園でも入学式が行われる日。
俺、蒼薙零弐は自身の家から何時も通りに学園に向かった。
青蘭学園に入って二年目に入った今年は、高等部の入学式である。
学園に近づくにつれ、生徒の数が増えて行った。
共通しているのは青蘭学園の制服を着ている事だけで、その容姿はさまざまである。
普通の人間と変わらない者から角の生えている者、翼の生えている者からヘットギアのようなものをつけている者までいる。
ここに通っている生徒は四つの異世界で保護されたプログレスとαドライバーのみであるが、慣れればこの光景も違和感が無くなる。
実際一年ほど通っていても、人種の違いや文化の違いで抗争が起こることはあっても規模はとても小さい。
それほどまでにそれぞれの世界の住人がそれぞれの世界を尊重している証拠でもある。
そして学園に着くと新しいクラスを報せる張り紙が張りだされ、その付近には人がごった返していた。
そんな集団の外側の方で見知った顔ぶれを見つけた。
「オッス、ソフィーナ、セニア」
俺が声を掛けると、向こうもこちらに気づいた。
「二人だけなんて珍しい組み合わせだな」
「あら?レイジ。別にセニアとはそこで会っただけよ」
「おはようございます。マスター」
ソフィーナとセニア。
俺が青蘭学園に来てから知り合った友人である。
ソフィーナは四つの異世界の一つである黒の世界《
去年はその調査の手伝いをよくさせられたのはいいのか悪いのかわからない思い出である。
セニアは四つの異世界の一つである白の世界《システム=ホワイト=エグマ》出身で、Dr.ミハエルという人物が造ったアンドロイドである。
その人物に頼まれて、当初、無知で感情に乏しかったセニアの世話をしたのが俺であり、その頃にマスターと呼ばれるようになった。
「にしても、こんなに人がいると見に行くのも苦労するな」
「それなら、もう確認したわよ」
「あれ?そうなのか?」
「はい。私が確認を取った結果、皆さん一緒のクラスでした」
「お!そりゃ偶然にしてはいいことだな。だけど、何で他の奴まで調べてんだ?」
「ソフィーナさんに頼まれました」
「ちょ!?セニア!」
セニアの言葉にソフィーナが顔を赤くして、止めようとした。
が、すでに遅いので、何故かこちらを睨んできた。
「べ、別にレイジと同じクラスになれたか気になってみてもらったわけじゃないわよ!勘違いしないでよね!」
「うん。王道なツンデレだな」
「ツンデレですね」
「ツンデレじゃない!って、だから違うって言ってるでしょ!」
ソフィーナが胸の前で腕を組み、顔を逸らしながら言ったが、俺とセニアのツンデレ発言に両腕を振りながら否定してきた。
「で、ソフィーナの理由はわかったが、セニアは何でだ?」
「私は確定なの!?」
「私はマスターと一緒に居たいと思ったからです」
「なるほど、昔よりはいい傾向になってるな」
「私は無視なの!?」
ソフィーナが終始うるさかったので、仕方なくこの話は終えて、教室に向かった。
教室ではすでにほとんどの生徒が来ていた。
まぁ、そうすぐでホームルームの始まりなので当たり前と言えば当たり前である。
教室に入ると、黒板に席表が張り出されていた。
席は基本的にランダムで決められる。
「おっしゃ!窓側後方いただき!」
「私は廊下側の後ろみたいね」
「ちょうど真ん中あたりみたいですね」
さすがに同じクラスでも席が近くなることまではなかった。
とりあえず、決められた席に行こうとしたら、これまた知り合いの顔があった。
「あれ?アウロラじゃん。今日は遅刻しなかったんだな」
「あら、レイジさん。こんばんは」
「あぁ、こんばんは。じゃねぇよ!今はおはようだ!」
アウロラもここに来てから知り合った友人である。
赤の世界《テラ・ルビリ・アウロラ》出身で、よく島中をフラフラしていることが多い。
去年はその天然っぷりに振り回された。
「貴女、まさか昨日の夜からここにいるの?」
「はい。クラスを見に来たら、みなさんと同じクラスになれるみたいでしたので、うずうずしてしまって、気づいたらここにいました」
「相変わらずのド天然ね」
「だな」
アウロラの行動はいつもこんな感じでよくわからない。
とりあえず決められた席に座ると、タイミングよく携帯にメールが来た。
送り主もまた、ここに来てから知り合った友人で、内容は少し遅れそうだからそいつのクラスを教えてほしいとのことだった。
同じクラスなので、自分のいるクラスを教えて数分。
ホームルームが始まる直前にそれは起きた。
メールの返信も来ないため、何もすることが無く窓を開けて、春の心地のいい陽気を受けながらまどろんでいた。
「ち~~~こ~~~く~~~だ~~~!?」
「ん?」
若干寝ぼけていたために状況判断能力が落ちていた。
それが致命的なミスとなった。
窓の外からスゴイスピードで何かが突っ込んできるのがわかった。
そして、それが何かわかった瞬間には遅かった。
「どいて~~~!!」
次の声が聞こえた瞬間には、顔面に何か硬いものが激突した。
そのまま、横の列の机を巻き込みながらツーバウンドほどして壁に激突した。
激突の際、首やら全身から嫌な音が聞こえた気がする。
幸い他のクラスメイトが巻き込まれなかったのでよかったが、ぶつかった本人も頭をぶつけ、蹲りながら頭を押さえていた。
因みに、クラスメイトのほとんどが、あぁ、またやっているよ、的な顔をしていた。
「うぅ~、頭痛いよ」
「おまえより俺の方が痛みを伴っているわ!特に首が!」
机の下敷きになっていた俺が机を払いのけて、叫んだ。
「あ、レイジくん。おはよう。さっきはありがとうね」
「おう、どういたしまして。じゃねぇよ!何度俺に激突すれば気が済むんだ、美海!」
「は、ははは。ゴメン」
苦笑いをしながら謝ってきたのは、先ほどメールしてきた日向美海であった。
俺と同じ青の世界《地球》出身で、ここに来てから最初にできた友人である。
遅刻ギリギリなことの多い美海は自身の異能で窓から教室に入ってくることが多々あり、そのたびに俺に激突していた。
その光景はすでにこの学園の名物の一つになっている。
とりあえず、巻き込んだ机を直して席に座ると予鈴がなった。
美海は俺の前に席だったのか俺の前にいる。
「はーい。ホームルーム始めるわよ」
予冷より少し遅れて教室に入ってきたのはこのクラスの担任だという安堂環だった。
俺がここに来てから色々と世話になった先生である。
入学式前に出席を確認していくと、一人いないことがわかった。
「シズトくん。シズト・キリサキくん。……まったく、初日から遅刻なんて、後でお話しなくちゃいけないわね」
聞いたことない名前だったから、高等部からの入学生だろう。
しかし、この後入学式だというのに遅刻とは根性があると思った。
とりあえず遅刻者は放置して、入学式の会場に向かった。
初等部から中等部、高等部とエスカレーター式のこの学園では、入学式は一緒に行われるため、会場はそこそこ広い。
その会場で、みんなが近くに集まるというのはなかなかない確率である。
「そういえば、さっき先生が言っていたキリサキってのはどんな奴なんだ?」
「情報がないため、わかりません。マスター」
「私は知っているから教えるわ。黒の世界では名の知れた剣士らしくてね、使える魔術が一つしかないけどその実力はへたなプログレスと渡り合えるほどらしいわ」
「へぇ~、そうなんだ」
どうやら、その人物についてはソフィーナは知っていたらしく解説してくれた。
「あと、極度の甘党らしいわ」
「なるほどねぇ。でも、初日から遅刻とはやるなぁ」
「そうですね。あまりいい行いだとは言えませんね」
「「おまえ(貴女)が言うな!」」
アウロラの発言に、俺とソフィーナが同じツッコミを入れた。
「あ!そういえば」
「どうかしたのか、美海?」
「実は学校に来る途中でね、ものすごーい勢いで風見屋に入っていく男の子を見たんだけど……人違いだよね?」
「「……」」
「あらあら」
「間違いないですね」
美海の言葉に、俺とソフィーナは絶句し、アウロラは口元に手を当て笑みを浮かべ、セニアはどこか納得のいった顔をしていた。
だが、まぁ人違いであってほしいと願う今日この頃である。
この後、入学式にもかかわらずそんな話をしていた俺たちは環先生に呼び出されてお説教を受けたのは言うまでもない。
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