アンジュ・ヴィエルジュ ~新たな可能性~   作:ゼロ・ツー

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キリトの一人称を俺からオレに変更しました。

直っていないと思われる所がございましたら、ご指摘ください。


零弐VSキリト 後編

「おぉぉぉぉぉぉッ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁッ!」

 

レイジとキリトの二人が同時に駆け出し、それぞれの武器を振りかざした。

 

「だらぁッ!」

 

先に攻撃したのはレイジだった。

だが、キリトは体を逸らしてそれを避けたことで、レイジの拳は当たらなかった。

 

「はぁッ!」

 

そしてキリトも躱すと同時に剣を突きだした。

が、レイジも身を屈ませて、それを避けた。

二人が交差するように互いを抜け、すぐさま転身、攻撃に転じた。

互いの攻撃は同時。そのため防御も同時だった。

レイジの拳を攻撃していない剣でキリトが防ぐ。

キリトの剣を攻撃していない腕でレイジが防ぐ。

 

「やるな」

 

「そっちこそ」

 

束の間の均衡。

だがすぐに、お互いに距離を取るように後ろに跳んだ。

 

「(さすが、黒の世界で魔女王に認められているだけのことはあるな。能力的にはソフィーナとかウェンディの方が上なんだろうけど、その差を上回るほどの戦闘能力か……やばいな)」

 

「(まさか、青の世界にここまでの実力者がいるなんてな。正直驚きだな。体術だけみたいだけど、それだけでオレ以上の実力だな……やばい)」

 

僅かなやり取りの中で、相手の実力をある程度分析する両者。

その実力に驚きはしているが、どちらも余裕そうにしていた。

 

「(キリトの利点は速さか。なら、パワーで押し切る!)」

 

「(レイジの利点はパワー。てことは、速さで押し切れる!)」

 

互いに考えていることが似ているようで反対のことを考えているところを見ると、ある意味相性がいいのだろうか。

そしてまたしても同タイミングで駆けだした。

 

「おぉぉぉぉぉぉッ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁッ!」

 

ぶつかり合う様にして挌闘戦を始めた両者。

拳が、剣が、蹴りが飛びかい、互いの身体を掠めた。

いや、むしろ互いに最小限に避けているからこその結果ともいえる。

一方の拳が振られれば、体勢を低くして避け。

一方の剣が突き、切り払われれば体を捻って避け。

両方の蹴りが出れば、互いに交差するようにしてぶつかり合う。

そんな攻防が繰り広げられた。

が、それもそう長く続くことはなかった。

 

「ッ!?しま……」

 

「もらったぁ!」

 

「ガァッ!」

 

一瞬バランスを崩したキリトの隙を逃さずに、レイジが腹に拳を叩き込んだ。

すぐに防御したキリトだったが、防御しきれずフィールドの端近くまで飛ばされた。

飛ばされる途中で体勢を直したキリトでも、さすがの一撃に腹部を手で押さえていた。

 

「どうしたよ、キリト。まさかその程度がお前の実力とかいうんじゃないよな?」

 

「はッ。だったらどうなんだよ?」

 

「張り合いがねぇな。こんなのが俺のライバルになるって思うとなぁ。むしろ、奥の手の一つや二つは隠し持ってるもんだと思ってたけどな」

 

レイジの言う通り、キリトは奥の手を持っている。

それも一つではなく。

レイジもそれを予想しつつ、自身が奥の手を持っていることも含めた上で挑発をした。

それにはさすがのキリトも気づいていた。

さらに、レイジが考えている意図にも。

 

「ふ~ん。奥の手ね。……あぁ、いいぜ。見せてやるよ!オレの、奥の手ってやつをな!」

 

     ―――「疾風雷迅(タービュランス)」―――

 

刹那、フィールドで雷鳴が鳴り響いた。

それと同時に嫌な予感を感じたレイジは脇に跳んだ。

その次の瞬間にはレイジの脇腹が斬られた。

それほど深い傷ではないが、反応が遅かったら一瞬のうちに戦闘不能になっていただろう。

 

「良く避けられたもんだ。初見であれを避けられたのはさすがだ」

 

声のする方を見ると、体に雷撃を纏い、黄金色に光っているようにも錯覚させられる姿をしたキリトだった。

 

「オレの奥の手『疾風雷迅』は、オレが唯一扱える魔法だ。能力はいたってシンプル。雷を纏い、身体能力を上げる。それによってもとから速い俺の脚は音速を超え、光速に限りなく近い速度を出すことが可能になった。といっても、まだまだ制御しきれていないのが難儀だが」

 

「まさか、こんな奥の手だったとはな。正直驚きだな」

 

「まぁな。さて、さっきの続きと行こうか!」

 

「ッチ」

 

光速に近い速さで動くキリトに対してレイジは防戦一方となった。

腕をクロスさせて、頭を守る様にした。

だが、それで防げるような攻撃でもなく、体中の至る所に切り傷が出来ていった。

 

「ほらほら、どうした?さっきまでの威勢が無くなってるぜ!」

 

「クッソが!……ガァッ!」

 

反撃のために拳を振るうが、キリトに当たることはなく、逆に背中を斬りつけられた。

倒れずに踏みとどまったが、わずかに体がふらついていた。

 

「どうだ、ここまで好きにやられた感想は?」

 

「正直に言う。すっげぇムカつく」

 

「あ、やっぱり。いっつもバカにされてるからな。お返しだよ」

 

笑いながらそう言ったキリトに、レイジは拳を震わせていた。

が、すぐに何時も通りになり、一度深く呼吸し直した。

 

「……悪いな、キリト。正直、厨二のお前を少し見下してた」

 

「だから厨二違うわ!」

 

「だけど、今度はこの試合の相手として……」

 

レイジは左の袖をまくり、左手に嵌めていたグローブと巻いていた包帯を外した。

そこには右腕と同様に禍々しい痣があった。

 

「……俺も今出せるだけの全力でやってやるよ!」

 

そのセルフと同時に、観客席からの歓声が大きくなった。

レイジの能力発動だ!これは見逃せねぇ!きっとすげぇことになるぞ!などという声にキリトは驚きつつも疑問を抱いた。

 

「我望むは終焉。我願うは終末」

 

だが、その疑問はレイジの左手を前に突き出すような体勢によって理解できた。

キリト自身も、その力の一部を見た事があるのだから。

それが……。

 

「巡り廻れ、終焉の焔!」

 

それこそが、レイジの奥の手であるのだと。

左腕の痣から燃え上がった紫色の炎は腕全体にまとわりつくように燃え盛っていた。

 

「それがおまえの奥の手か?」

 

「あぁ、『原初と終焉の焔』。時間の巻き戻しと加速をすることが出来る、俺の能力(ちから)だ。お前も力の片鱗なら見ただろ。あのときのは原初、つまりは時間を戻すことが出来たが、今回は終焉、つまりは……」

 

「時間を進めるってことか」

 

「ご名答。時間を進めることが出来るってことはだ、こういったこともできるってことさ!」

 

するとレイジの左腕の焔が右腕を除いた全身を包みこんだ。

その数瞬後には、焔の勢いが収まった代わりに、全身の傷が完治し、全身が僅かに焔と同じ色に輝いていた。

 

「……なるほど。時間を進めて、傷を治したってことか。だが、それだけじゃさっきみたいに一方的にやられて、また傷が出来るだけだぞ」

 

「甘いな。気づいていないんだったら、このままやってみな」

 

「後悔すんなよ!」

 

『疾風雷迅』によって加速したキリトが先ほど同様に駆け出した。

左から斬りかかったキリトは、先ほど同様にレイジの身体を斬りつけようとした。

捉えたと思ったと同時に、寒気と嫌な予感を感じ取った。

戦いの中で鍛えられた剣士としての勘が、自身の危機を感じ取り、すぐさまその場から飛び退いた。

それと同じくして、何かがキリトの髪を掠めた。

直感で分かった。

レイジの拳であると。

体勢を立て直そうと着地したと同時にまたしても危機を感じた。

回避は間に合わないと判断したキリトは、すぐさま両腕で防御姿勢を取った。

その直後、その両腕に衝撃がきた。

その勢いによって、数メートルほど飛ばされた。

両足で踏ん張ったことでそこまで飛ばされなかったが、無防備でくらえばアリーナの外まで飛ばされていた可能性もあった。

そして、そんな攻撃をしてきた人物を見た。

相手はもちろんレイジ。

だが、驚くべきはその速さ。

光速に近い速度で動くキリトと同等に近い速度で動いていたからだ。

 

「驚いたか?俺の『終焉の焔』の能力『加速する終(アクセル・ブリッツ)』は文字通り、対象の時間を進める能力。そいつを使えば、相反する能力の宿る右腕を除いた自身の体の傷の治癒速度を速めることもできる。そして、それを応用して、神経伝達や筋肉の運動速度を速めれば、お前と同じ速さで動くのは造作もねぇよ」

 

「っは、まさかそんな隠し玉があったなんてな。だけど、そんな力を使ったら体の負担はデカいんじゃねぇのか?実際、額から冷汗流してるぜ」

 

キリトの言う通り、レイジの『加速する終』を使用した動きは肉体や精神への影響が大きく、長時間の使用はできないどころか、使用するだけで、どんな後遺症が出るかわかったものではない力でもある。

普段のレイジもそれを知っているため、このような使い方をすることは無いに等しい。

が、今回はそうもいっていられない。

何せ、相手がキリトであるからだ。

 

「確かにこの状態は疲れる。けど、ソフィーナに魔力の使い方を教えてもらって、ある程度の肉体強化を施して使用しているんだよ」

 

「生きているものならば誰もが持っている潜在的な力を扱えるようになっているなんてな」

 

「それによ、辛いのは俺だけじゃなくてお前もだろ。さっきから肩で息しっぱなしだぜ」

 

キリトの魔法『疾風雷迅』もまた、それを扱うにあたり魔力と精神力を使う。

そんなものを長い間扱うほどの力をキリトはまだ身に付けておらず、その結果レイジと同じく限界が短いのである。

数瞬の静寂後に、二人は何かを決意したようにそれぞれの拳を、剣を構えた。

 

「「キリト(レイジ)、悪いが次で決めさせてもらうぜ(もらうぞ)ッ!!」

 

その叫びの直後に互いに駆け出し、最後の殴り合い、斬り合いに臨んだ。

 

「だぁぁぁぁぁぁッ!」

 

「つぁぁぁぁぁぁッ!」

 

サシの勝負を始めた最初と変わらず、互いに殴り、斬り、蹴り飛ばす。

始めと違う点といえば、その行われている戦闘の速さだろう。

観客にはその速さから何が起きているのかがわからない。

だが、そこにいる二人にはわかる。

むしろ、そこにいる二人だけが、二人だからこそわかるのかもしれない。

 

「つぁぁぁぁぁぁッ!」

 

「ック」

 

キリトの渾身の蹴りがレイジに当たり、両者の距離が開いた。

それと同時に、レイジの強化能力が消えた。

限界を迎えたのだろうと思われた。

そこに出来た隙をキリトは見逃すことはなかった。

 

「今だぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

雷鳴と共に突進をかけ、その身に纏った雷の一部が、カタールの刀身へと集まった。

雷でできた高電圧の剣。

これが、キリトの持つ最高にして最大の切り札。

 

「はぁぁぁぁぁぁッ!―――『総てを切裂く雷閃(ライトニング・ブレイク)』ッ!!!!」

 

その二振りの剣をクロスするようにして、レイジの身体へと振り抜いた。

二振りの雷の閃撃は、隙のできた無防備なレイジへと向けられた。

 

「……そう来ると思っていたぜ、キリト」

 

が、放たれた直後にレイジが動いた。

 

「これが俺の、全力だぁぁぁぁ!!―――『終向けし紫焔の拳(フォーブス・ガンド)』ッ!!!!」

 

「なッ!?」

 

無防備だと思われたレイジからの左ストレートの一撃。

それは、レイジの持つ最強の切り札。

公の場で使用されたことが無く、その技を知るのはパートナーのプログレスたちと一部の委員会や教師のみだった。

誰も知らない故に最強。

 

「っく、あぁぁぁぁぁぁッ!」

 

「くらい、やがれぇぇぇぇぇぇッ!」

 

レイジとキリト、二人の切り札がぶつかり合い、フィールドを爆発でできた黒煙が覆った。

 

「レイジくん!」

 

「レイジ!」

 

「レイジさん!」

 

「マスター!」

 

「キリトくん!」

 

「キリトさん!

 

「キリト!」

 

「マスター!」

 

二人の戦いを見守っていた美海、ソフィーナ、アウロラ、セニア、琉花、ウェンディ、ルビー、テルルが叫ぶように名前を呼んだ。

観客もざわついていた。

数秒後、黒煙が薄れた。

そこに移っていたのは、片膝をつくレイジとわずかにふらつきながらも立っているキリトの姿だった。

誰もがキリトの勝利だと思った。

 

「……オレの、負けか」

 

キリトが前のめりに倒れるまでは。

そして、黒煙が晴れたことではっきりと判明した。

キリトの張ったαフィールドが消えていることに。

 

「シズト・キリサキのフィールド消失を確認。勝者、零弐チーム!」

 

環先生の宣言と同時に歓声が上がった。

 

『決まりましたぁぁぁぁ!勝ったのは、零弐チームです!』

 

『ふむ、キリトチームもいいところまで持って行ったからね。なかなかいい試合でしたよ』

 

解説席からも歓声が上がり、ブルーミングバトルが終わった。

 

「あー、負けちゃったか」

 

「まぁしょうがないわね」

 

「そうですね。って、はわわ、キリトさんが気を失っていますぅ」

 

「急いで運びます」

 

キリトチームがキリトを慌てて医務室へと運んで行った。

 

「……勝った、のか?」

 

「やったよ、レイジくん!勝ったよ!」

 

「ちょっと、美海!いきなり抱き着いてるんじゃないわよ!」

 

「お疲れ様です、レイジさん」

 

「マスター、体は大丈夫ですか?」

 

美海が後ろから抱き着いてきたことでバランスを崩しそうになったがなんとか踏みとどまったレイジ。

 

「そうか、……勝った、の、か」

 

「って、レイジくん!?」

 

「ちょ!?急いで医務室に運ぶわよ!」

 

最後まで全力を出したレイジとキリトは最終的に互い気絶して医務室に運ばれて、今回のバトルは幕を閉じた。

 




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