アンジュ・ヴィエルジュ ~新たな可能性~   作:ゼロ・ツー

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まさか、この一話を書くために四か月もかかるとは思わなかった。

あまりに忙しかったので投稿が遅れてすみませんでした。

忙しかったのは、主にバイトや学校やサークルなどでした。

とりあえず、気楽に見ていってください。


試合後の様子

目を覚ますと、目の前に白い天井が映った。

青蘭学園に来てから何度か世話になった医務室の天井だった。

ブルーミングバトルの後に倒れた俺を誰かがここに連れて来たのだろう。

まぁ、誰なのかは予想できるが。

倒れた原因はよく分かっている。

使用した能力の負担が予想以上に大きかったことと、その状態を維持していた時間が長かったことである。

さすがに負担が大きい能力を使うだけでなく、今までになかった光速に近い速度での行動がさらに負担になっていた。

 

「まだまだ、使い慣れないか」

 

「だからといって、あんな使い方をしていては体を壊してしまいますよ」

 

横から声が聞こえてきて、視線を向けた。

そこにいたのはアウロラだった。

 

「なんだ、いたのか」

 

「はい。いましたよ」

 

「他の奴は?」

 

「美海さんたちは、飲み物を買いに行っていますよ」

 

「そうか……」

 

右腕を顔の上に乗せ、深く溜め息を吐いた。

 

「……気分が優れないのですか?」

 

「……いや、少し昔のことを、思い出していただけだ」

 

「何故、そんなことを?」

 

「昔に比べて、ずいぶん変わったと思ってな」

 

「確かに私たちと出会ったころに比べたら、ずいぶんと変わりましたね」

 

そんなことを話していると、部屋の外の方から話し声が聞こえてきた。

声からして飲み物を買いに行っていた美海たちだろう。

 

「あ、やっと起きたんだ」

 

「まったく、いきなり倒れるから心配したわよ」

 

「異常はありませんか?マスター」

 

「あぁ、悪かったな。調子も何時も通り、特に問題なし」

 

身体を起こしながらそう答えると、三人とも安心した様だった。

 

「それじゃ、はいこれ。みんなからの奢りー」

 

「お、悪いな。サンキュ」

 

美海から渡されたのは紙パックのジュース。

おそらくさっきまでこれを買ってきていたのだろう。

美海たちも自分の買ってきたジュースを持っているし、アウロラの分も買ってきていたみたいだ。

美海やソフィーナ辺りがいたから、果実ジュースか紅茶系かと思いつつ、どんなものを買ってきたのか見てみた。

が、それを見た瞬間に固まった。

 

「……なぁ、これ選んだの誰だ?」

 

「ん?私だよ」

 

「あぁ、それは美海ね」

 

「美海さんです」

 

「だったら美海、……なんだこれ?」

 

「え?私のオススメ?」

 

「絶対違うだろ!明らかな失敗作だろ!」

 

俺に渡されたジュースは『元気百倍!焼肉ジュース』と書かれた紙パックジュースだった。

 

「完全に地雷臭しかしないだろ!しかも選んだ本人が疑問形じゃ絶対にオススメじゃないだろ!」

 

やめてくれよ!俺はツッコミじゃないんだから!なんでこんなにツッコミ入れてんだよ!

 

「まぁまぁ、騙されたと思って飲んでみようよ」

 

「ッち。たく、今回だけだかんな」

 

このセリフを言うのはいったい何度目だろうと思いつつ、紙パックにストローを挿して飲んでみた。

 

「ん~、食感ベタベタ、喉越しドロドロ。甘すぎず辛くもないたれの味と風味、焼いたときにできる焦げ目と肉の味わいが何とも……ゴハァ!?」

 

「わぁ!?れ、レイジくん!?」

 

「ちょっと、大丈夫なの?」

 

あまりの味に思わず口の中のジュースをわずかだが吐き出した。

そして、力なく答えた。

 

「あ……あぁ、大丈夫だ。……問題ない」

 

「そうですか」

 

「……あの川を渡ればいいんだよな」

 

「マスターのバイタルに異変を確認」

 

「それ、渡っちゃいけない川だよ!」

 

「ちょ、しっかりしなさい!」

 

あ、あぁ、死んだ爺ちゃん婆ちゃんが見えるぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、まさか、たったあれだけで三途の川を見ることになるなんて……」

 

「そ、そうだね。まさかそんなことになるなんて私も思っていなかったよ」

 

「さっきのブルーミングバトルの時のダメージの所為じゃないかしら」

 

「むしろそれだけの要因で死ねるんだったら、俺どんだけ貧弱なんだよ」

 

「別にマスターが貧弱という訳ではないと思います」

 

「確かにこのジュースはすごいですね」

 

焼肉ジュースなる化学兵器の所為で死に掛けた俺は、必死の救命処置によってなんとか生きながらえた。

むしろこれだけのことができるこの焼肉ジュースすげぇな。

誰が考えたんだよ。

 

「何やってんの?おまえら」

 

「ん?何だキリトか。もう歩けんのかよ」

 

「当たり前だ!オレを誰だと思ってる!」

 

「厨二剣士(笑)」

 

「だから、厨二じゃねぇ!」

 

俺たちのいる部屋の外から声を掛けてきたのは、先ほどまで戦っていたキリトだった。

おそらくその後ろには琉花たちもいるのだろう。

 

「てか、何しに来たんだよ?」

 

「いや、ただ単に顔出しに来ただけだ」

 

「あっそ。なら、これくれてやるよ」

 

そう言って俺は手元にあった飲みかけの焼肉ジュースをキリトに向かって放った。

さっきまでの戦いのダメージの所為か、少し危なげに取ったキリト。

手元に来たものを見て、嫌そうな顔をした。

 

「なんだよ?これ」

 

「見たまんまだ。試しに飲んでみろよ」

 

「なんだよ一体?」

 

「あ!?それは!?」

 

「ちょ!口付けちゃ……」

 

キリトの後ろの方にいた琉花たちは何なのかよく分かっていないようだったが、美海たちはさっきのこともあり、慌てて止めようとしたが、その前にキリトが口を付けた。

何故か焼肉ジュースを飲むのを止めるというよりは、飲み物に口を付けることを止めているようだったが、気のせいだろう。

 

「ん~、食感ベタベタ、喉越しドロドロ。甘くなく辛すぎるたれの味と風味、焼いたときにできる焦げ目と肉の味わいが何とも……ゴハァ!?」

 

「え?ちょっと、キリトくん!?」

 

「はわわ!キリトさん!?」

 

焼肉ジュースを飲んだキリトは、案の定というかやはりそうなったかという感じで、ジュースを吐いた。

 

「な……なに、大丈夫だ。……問題ない」

 

「そう。よかった」

 

「……あの川を渡ればいいんだよな」

 

「マスターのバイタルに異変を確認」

 

「それは、渡っちゃいけない川よ!」

 

「しっかりしてください!キリトさん!」

 

何だろう。俺の時もこんな感じだったのだろうか。

目の前で繰り広げられている救命活動を眺めながらそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイジ!この野郎!」

 

復活したキリトは即座に俺に掴みかかった。

 

「なんてもの飲ませやがる!危うく川渡って死ぬところだったわ!」

 

どうやらキリトも俺同様川の向こうからお呼ばれされたらしい。

しかも死んだ両親から。

 

「どう落とし前付けてくれるんだ!」

 

「俺に言うな!美海に言え!」

 

キリト御一行が美海の方を向いた。

美海もさすがにたじろんでいた。

 

「え、えへへ。いやぁ、ゴメン。……うん、本当にごめんなさい」

 

さすがの美海も頭を下げて本気で謝る状態だった。

 

「ってかよ、こんなもの良く売ってたよな」

 

「確かにそうよね。こんなもの売る気にはならないわよ」

 

美海の詳しく聞いてみたところ、購買の自販機に飲み物を買いに行ったところ、その一角に珍しいジュースを集めた自販機があったらしい。

 

「珍しいジュースというより珍味ジュースの間違いじゃなのですか?」

 

「てか、それだと他にもあるってことだよね」

 

「え~と、たしか他には『火を通してもカレーに戻るわけではなくマズイ汁ができるだけ』がキャッチコピーの『冷やしカレードリンク』とか、それに似た『冷やしラーメンドリンク』に『冷やしすき焼きドリンク』、それと同じところが作った『そうめんジュース※そうめん入り』に『すこんぶジュース※こんぶ入り』とかあったけど……」

 

「明らかに地雷臭しかしない」

 

「よし。教務課と風紀委員に報告だな」

 

後日、その自販機は廃止され、新しい自販機が入ってきたのは別の話。

 

「で、結局何しに来たんだ?」

 

「いや、帰ろうと思ったから顔を出しただけだけど?」

 

「あぁ、なら帰るか」

 

「そうね。さすがに日が傾いて来たしね」

 

窓の外を見ると、夕方独特の日の光が見えていた。

青蘭島は一応日本国土だが、本土に比べて日が長い。

けど、さすがに今の時間では帰らなくてはいけないだろう。

だから、何の他愛もない話をしながら帰った。

キリトに島のことを教えるためにゴールデンウィーク一日を潰して島の案内をする計画などを話した。

そして、正門前の昇降口から外に出ると誰かに呼ばれた。気がした。

 

「……日向美海!!」

 

と思ったら呼ばれたのは美海の様だった。

声の方を見ると、そこにはつい先日ブルーミングバトルで叩き潰した二人がいた。

 

「やっと見つけたわ!この前の雪辱、晴らさせてもらうわ!」

 

「え~、この間やったばかりじゃん」

 

「それに負けっぱなしじゃない」

 

「うるせぇ!今度は負けねぇよ!」

 

αドライバーの方がそう言ってくるが、どうもおかしい。

プログレスが一人しかいない上に、まるで負けることがありえないような言い方である。

 

「……悪いが、今日はやらん。疲れた。俺たちがブルーミングバトルやってきたの知ってんだろ」

 

「そう、やらないの。なら、やらなきゃいけないようにしてあげる!」

 

「αフィールド、展開(セットアップ)!」

 

その言葉と共に、フィールドが展開された。

そして、フィールドが展開されたことに俺たちは驚いた。

もともとαフィールドは島全土で発生させることはできる。

ただし、その展開を行うためには教員または特定の委員会などの許可が必要で、許可がない場合ではすぐに風紀委員会に知らせが届き、風紀委員が来る。

そんなことも分からずにやっているとは思えない。

けれどもそんなことよりも重要なことがある。

何故、展開されたフィールド内に残っているのが俺と美海だけなのかだ。

他のみんなはフィールドに阻まれたようにαフィールドの外にいた。

 

「おい!無事か?」

 

「こっちは大丈夫よ!そっちは?」

 

辛うじて外には声が届くし、赤く染まったフィールドからも外が見えていた。

いくらなんでも異常である。

 

「テメェら。どういうつもりだ?」

 

「あら、まだわからない?あなたたちを倒すためよ!」

 

「んなことどうでもいいんだ!いくらなんでも異常だろ!自分たちがやっていることわかってんのか!」

 

「そうだよ!こんなのおかしいよ!」

 

「うるせぇ!勝てばいいんだよ!」

 

「だからって、こんな……」

 

抗議を続けようとした美海の肩に手を置き、やめさせた。

今の言葉で大体わかった。

もう、言葉じゃ止まらない。

なら、拳で止めるしかないと。

 

「……やるぞ、美海」

 

「でも!」

 

「でもじゃない!それしかないんだ。今のあいつらの目を覚まさせるには」

 

「……わかったよ。信じていいんだよね?」

 

「当たり前だ。どれだけお前と組んでいると思ってんだ?」

 

「そうだよね。じゃ、行こう!」

 

そうして、俺たちはブルーミングバトル形式で構えた。

 

「お話は終わり?だったら、今度こそ、今度こそ倒してあげる!」

 

「やれるなら、やってみろ!」

 

その言葉の刹那、美海と相手のプログレスが駆けだした。

 




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