「「エクシード・リンク!」」
駆け出した二人に対して、同時にリンクがされた。
「やぁぁぁ!」
「っふ!」
美海のレイピアと相手の拳がぶつかり合った瞬間に驚かされた。
「……嘘だろ。パワーなら美海の方が遥かに上だったはずだ」
「これが本当の力さ」
相手の余裕な表情に対して、内心で舌打ちをした。
どうやら今回は今までのような無策な戦いはできないみたいだ。
さらに、先ほどのぶつかり合いに比べて美海が防戦一方になっていた。
確かに美海はパワーとスピードがある。
だがそれはエクシードによって操作した風の力を利用しているからに過ぎない。
つまりは、速く動いているようだが細かい動きはそこまで速くない。
それによって美海が防戦一方になっているのだろう。
「キャァ!」
攻撃を受けて、俺の方に飛ばされた美海を受け止めた。
「大丈夫か?」
「う、うん。なんとか……」
そこである違和感に気づいた。
攻撃を受けたプログレスのダメージは本来であればαドライバーにフィードバックされるはずである。
にもかかわらず、俺自身にはダメージが無く、美海の方にはダメージがあるようだった。
美海のようにダメージ遮断能力を越えることはあるが、αドライバーにダメージが一切ないのはおかしい。
そこにきてあることに気づいた。
が、それと同時に相手が拳を振りかざしているのに気づいた。
「ッち!」
「え?レイジくん!」
防御しようとした美海を弾き飛ばした直後、相手の拳が脇腹に突き刺さった。
「ッガハ」
先ほどの美海と違い、完全な無防備で受けた一撃は予想以上の威力だった。
勢いあまりフィールドの端まで転がるように飛ばされた。
「(……やっぱりか。遮断能力が機能してねぇ)」
俺が気づいたのはαフィールドの遮断能力の皆無だった。
そして予想通りそれは存在せずに、結果フィードバックが起きなかった。
「レイジくん!無茶しちゃダメだよ!」
「あぁ、悪いな美海。だけど、確認したいこともあってな。(てか、肋が一、二本いったか)」
すぐに駆け付けた美海にそんな言葉をかけながらも自分の身体の把握をした。
『レイジ!聞こえる!』
「ソフィーナか!」
『外からじゃこのフィールドへの侵入は無理!攻撃も全然効かない!』
「嘘だろ!Sクラスのエクシード持ちが数人いてでもか!」
ソフィーナの言葉に現状の厳しさを再認識した。
外にソフィーナたちがいるならば、フィールドのことはどうにかなると思ったが、このフィールドは今までのフィールドとは勝手が違ったみたいである。
「どうした?もう終わりか?」
「クソ……。だいたい、テメェは何所でそんなものを手に入れやがった!」
「何言ってんだ?」
「ふざけるなよ。特定委員会でもないお前が何でそんな腕章を持ってるんだって聞いてんだよ!」
俺の問いかけに僅かに反応を見せたのを見逃さなかった。
確かにフィールドの展開は何所でもできる。
それらを展開する許可も必要になる。
そして特殊なフィールド生成は普通はできない。
まして展開する許可を出せる風紀委員や教務課でさえ、正式な手順でやらくてはならない。
そんな手順をこいつらが踏んでいるとは思えない。
つまり、怪しいのは相手のαドライバーの着けている腕章になる。
「さすが優等生。これに気づくとは」
「はッ、はなっから隠す気もねぇもんを見せておいてよく言う」
「風紀委員会に入ったとは思わないのか?」
「それこそありえねぇな。風紀委員会の腕章は緑色だ。お前の腕章は黒色だろ」
「まぁ、これが違うものなのは普通にわかるか。特別に教えてやるよ。これはもらいものさ」
ありえない。
αフィールドを発生させ、特殊なフィールド形成を可能とする物など普通はもらえるわけがない。
だとすれば、それを渡したやつに別の意図があると考えられる。
「こいつをくれたやつが言っていたのさ。これを使えば、おまえを倒せるってな」
「ふざけんな!テメェら
俺の言葉に美海も、フィールドの外にいたソフィーナたちも驚いていた。
「さぁ、どうだろうな?」
「ざっけんじゃねぇぞ」
頭に血が上り始め、前に出ようとした時に周りがざわめき始めた。
『これは一体どういうことだ?』
『あなた、クラリス』
どうやら風紀委員会が異変に気づいて駆け付けたようだ。
そのことに気づいたことで、少しずつ冷静になれた。
「っち、風紀委員が来たならさっさと終わらせないとな。おい」
「……」
αドライバーの言葉にプログレスは反応を示さなかった。
反応を示さなかったのではなく、気づいていなかったようにも見えた。
「おい、どうしたんだよ?」
「……ダ」
「は?一体何だっていう……」
「ワタシガサイキョウダァァァァ!!」
そして急に叫び声を上げたと思ったら、こちらに突進してきた。
なんとかそれを俺が防ぐも、あまりに様子が変貌しすぎている。
「おい!何しやがった!」
「ち、違う!何もしてねぇよ!」
αドライバーの方も何が起きているのかわからず混乱しているようだった。
さらに最悪なことに、リンクまで行われた。
「クソ、何でだよ?何で勝手にリンクすんだよ!」
「レイジくん!あれって……」
「あぁ、腕章が原因だろう」
原因と思う腕章からは案の定黒い何かが湧き出ているようにも見えた。
「ク、ア、アァァァァ」
そして最後にはαドライバー自身が苦しみ始め、プログレスにも黒い何かが覆い始めた。
このままではまずい。
『レイジ!あれはまずいわよ!このままだと生死にかかわるわ!』
「そんなことはわかってる!」
リンクはプログレスとαドライバーの特殊な脳波を同調させるものであり、波長の合わないものや長時間の強制的なリンクはその脳波に悪影響をもたらし、最悪生死にかかわる。
「なんだってこんなもんを渡しやがったんだ」
「……レイジくん」
「なんだ?」
「……助けよう!」
恐れくこの状況を作りだす原因の一旦であろうファントムに対して苛立ちを覚えているなかで、美海の言葉に目を見開いた。
「確かにあの人たちは手を出しちゃいけないものに手を出しちゃったのかもしれない。けど、それでもそれは助けてあげない理由にはならないよ!」
「……美海、お前」
「だから、私に力を貸して。レイジくんが嫌なら、私一人でもやるから。今までどんなことがあったとしても、困っている人を助けてあげられないほうがきっとつらいよ!」
「……はぁ、たく。だったら、あいつらをぶん殴ってでも止めるぞ!二人で!」
「うん!」
美海が頷くと同時に、俺たち二人は構えた。
それと同時に相手もこちらへと向かってきた。
突っ込んできたところを俺が受け止め、抑え込んだ。
「美海、今だ!あいつの腕章をぶっ壊せ!」
「うん!やぁぁぁぁ!」
風の勢いを乗せ、αドライバーの方へと突っ込んだ美海。
勢いよくその手に握るレイピアを振り下ろした。
「うぅ……キャァ」
が、それは結界のようなシールドによって弾かれた。
それに気を取られた俺も殴り飛ばされ、美海の近くまでいったん下がった。
外からフィールドに対して攻撃が行なわれているため、恐らく今のやり取りは外には見えていないだろう。
「ダメか。無策に攻撃しても通じないか」
「どうする?レイジくん」
「……あれしかないか」
「あれ?」
「……美海、俺が抑えるからタイミングを見て、もう一度腕章に攻撃しろ。今度は攻撃するまで力を貯めて、全力で攻撃しろ」
「で、でもそれじゃ、レイジくんが……。それにあの人たちだって」
「やれるさ。おまえは俺のプログレスなんだからな」
「……わかったよ。信じているからね、私の、私たちのαドライバー」
「あぁ!」
美海が力を籠めはじめると同時に俺が駆けだした。
それと一緒に右腕に巻いてあった包帯、手に嵌めていたグローブを外した。
「我願うは原点。我望むは起源。廻れ巡れ、原初の焔!」
露わになった右腕の痣から燃え上がった蒼色の炎は腕全体にまとわりつくように燃え盛っていた。
「レイジくん!それは……」
「今は目の前のことに集中しろ!」
俺の使う『原初と終焉の焔』は一日に違う焔の使用、または長時間の使用は未だに体に多大な負担が掛かる。
そのため、違う焔を使うことは今までほとんどなかった。
だが、今はそんなことを気にしている暇はない。
「いい加減に、大人しくしてろ!」
「アァァァァ!!」
二つの拳がぶつかり合い、周囲に衝撃が広がった。
「ワタシハ、ワタシハ、ツヨク、サイキョウニナラナキャイケナイ。ワタシハ!」
「そんな紛いもんの力使って強くなったって、何の意味もないだろぉが。強くなりたきゃ、そんなもんに頼ってんじゃねぇよ!」
殴り合い、蹴り合いの中で必死に説得するように叫んだ。
「おまえもそうだ、そんなところで寝そべってんじゃねぇ!立ち上がって、腕章を掲げるくらいしてみろ!」
「……無理だ、不可能だろそんなこと!」
「無理とか、不可能とか、そんなことはやってみてから言え!やってもいないのにそんなこと言ってんじゃねぇぞ、腰抜けが!」
αドライバーにも、説教をするようにして叫んだ。
それに感化されるように、崩れそうになりながらも立ち上がろうとする姿が見えた。
そして、俺の蹴りがクリーンヒットし、プログレスが飛ばされたタイミングで呼んだ。
「今だ!美海ぃぃぃぃ!」
「やぁぁぁぁぁぁ!」
再び駆け出した美海は先ほどよりも明らかに速く、レイピアに風を纏わせていた。
「エクシード・ブーストリンクゥゥゥゥ!!」
俺の脇を抜けたタイミングで美海に対してリンクを行った。
キリトとの試合で見せなかった切り札の一つ。
プログレスの持つ可能性を最大限以上に引き出し、一時的に通常のリンク以上の状態を生み出す。
これを行えるのは特定のプログレス限定だが、その能力は爆発的に上昇される。
その名も覚醒。
これが、俺個人ではなく、みんなの切り札といえる。
「いっけぇぇぇぇぇぇ!美海ぃぃぃぃぃぃ!」
「いっけぇぇぇぇ!ウィンド・スラァァァァァァッシュ!!」
美海の技はシールドを切裂き、そのまま腕章を叩き斬った。
「ガァァァァァァ!」
腕章が壊れた事で、プログレスを覆っていた黒い何かが飛び出し、空中にとどまった。
それは一見黒い霧のようだが、まるで悪魔のようにも見える形をしていた。
だが、このままではまた誰かにとりつく可能性がある。
だからこそ、このときを待っていた。
俺は右手に覆わせておいた蒼い焔を拳に集中させた。
『原初の焔』の能力、対象の時間を巻き戻す『
それを利用した奥の手。
「これで、終わりだぁぁぁぁぁ!!―――『
俺の技が直撃した瞬間、爆発が起き周辺に爆風と黒煙が舞った。
数秒もすればそれは晴れ、周りを見るとフィールドが解除されているのがわかった。
「はぁはぁ、ッく」
戦い終わったことで安堵した瞬間、溜まっていた負担と疲労感によって片膝をついた。
「レイジくん!」
「レイジ!」
「レイジさん!」
「マスター」
みんなが俺に駆けより、アウロラが肩を貸してくれた。
相手のプログレスとαドライバーは風紀委員会に連れて行かれていたが、どうやら意識はないようだった。
「すまない。ちょっといいか?」
「クラリスか」
声のした方を見ると、駆けつけてきた時にいた風紀委員会副委員長であるクラリスだった。
「ファントムに接触したであろう二人は別室で話を聞くとして、今回の騒動の当事者である君と日向には風紀委員会室に来て、事情聴取を受けてもらいたい。大丈夫か?治療をしてからでも大丈夫だが……」
「いやいや、今戦っただかりのレイジがそんな……」
キリトが反論しようとしたが、俺は手で制止した。
「悪いけどみんなは先に帰っていてくれ。美海とソフィーナは悪いけど付き合ってくれ」
「うん。わかった」
「わかったわ。私も聞きたいことがあるしね」
「という訳で、悪いが頼むわ。今度なんか奢ってやっからよ。クラリス、治療は大丈夫だ。話が先の方がいいだろ」
「わかった。済まないが同行願う」
琉花たちにも説得されて、しぶしぶながらもキリトたちは帰ったのを見送り、俺たちは風紀委員会室に向かった。
風紀委員会室で今回の騒動についていろいろと話をし終えたころには外は暗くなっていた。
そこまで遅い時間ではないが生徒のほとんどはもう残っていないような時間だろう。
「遅くなっちゃったね」
「そうだな。あいつも心配してんだろうな」
「連絡入れなかったの?」
「時間がねぇだろ」
そんなことを話ながら風紀委員会室を出ると、意外な人物たちがいた。
アウロラとセニアだ。
「おまえら、帰ったんじゃなかったのか?」
「レイジさんが心配だったので」
「何言ってんだよ?別に心配するようなことはねぇだろ」
「ならマスター、身体スキャンをさせてください」
セニアの言葉に一瞬言葉を詰まらせそうになった。
「え?レイジくん、怪我してるの?」
「大丈夫だって。怪我なんかしてねぇよ」
「あら?そうなの。じゃあ、これは一体何かしら?」
そう言ったソフィーナがいきなり脇腹を叩いた。それも勢いよく。
それを食らった場所も場所で、攻撃を食らって肋がやられた個所だった。
「ッ?!」
あまりに突然のことで、身構える時間すらなく叩かれた個所を手で抑えた。
「まったく、怪我してるのに見えを張らないでよ。心配するじゃない」
「なんだよ?心配してくれんのかよ」
「当たり前でしょ!パートナーなんだからそれぐらい当然よ!」
「そうだよ!仲間なら隠し事は無し!私が隠し事嫌いなの知っているよね?」
「私はマスターが怪我をしている状態でいてほしくないです」
「そうよ。みんなレイジさんのことはわかっているんですから」
「ったく、おまえらは」
まったくもって頼りになるもんだ。
「さ、私の工房に行きましょう。そこなら落ち着いて治療できるでしょ」
「そうだね。行こう!」
「行きましょう。マスター」
「えぇ、行きましょう」
そう言ってきたみんなに手を引かれて、俺は歩き出した。
これからも不定期更新になりますがよろしくお願いします。
何時も通り、誤字脱字がございましたら、ご報告お願いします。
感想も、気楽にどうぞ。
参戦キャラ、タグ等の意見もお待ちしています。