キリトと親睦を深め合った次の日。
この日から通常通りのカリキュラムが始まる。
基本的なカリキュラムは決まっているが、プログレス用やαドライバー用、さらに俺専用とされていたN・αドライバー用といくつか必修のものまである。
教室に入ると、意外や意外すでにキリトが来ていた。
ただし、団子を食いながら。
「オッス、キリト。今日は早いな」
「フッフッフ、聞いてくれ、今日オレは誘惑に勝ってきた!」
「ほぉ~。一体何の誘惑に勝ったんだ?」
「もちろん甘味さ!」
とても清々しいイイ笑顔をして親指を立ててきたが、どう見たら誘惑に勝ったのかわからない。
「それのどこが甘味の誘惑に勝ったんだよ?」
「それはもちろん……いつもなら最低一時間は甘味を味わうところを、串団子十本に押さえて来たのだから!!」
「「それはむしろ負けてるだろ(わよ)!!」」
いつの間にか隣にいたソフィーナと共にツッコミが入ったが、キリトは疑問符を頭に浮かべていた。
こいつの基準がわからん。
「あ、レイジくん、ソフィーナちゃん、キリトくん、おはよー」
「おはようございます、マスター」
「あら、おはようございます、皆さん」
途中で教室の扉から美海、セニア、アウロラが入ってきた。
それによって、俺とソフィーナは驚愕の表情を浮かべた。
「バ、バカな!?美海が遅刻ギリギリじゃないだと!?」
「えぇ~、私だってたまには早起きするよー」
「セニア!今すぐ青蘭島付近で異常気象ないし超常現象が起こる予兆はないか調べて!」
「えぇ!?私が早起きするのがそんなに信じられないの!?」
「すでに調査済みです。幸いなことに予兆はありませんでした」
「そう、よかった~」
「良くないよね!?むしろ私信用されてないの!?」
危なかった~。
まさかあの美海が、登校しても遅刻ギリギリか空から窓に突撃、あるいは完全に遅刻するあの美海がこんな時間に登校してくるなんて世界崩壊の予兆かと思ってしまった。
「ほ~ら、あなたたち。ホームルーム始めるから席に着きなさい」
いつの間にか環先生が教壇に立っていた。
「とりあえず全員居るわね。今日から授業始まるけど、一時間目は毎年恒例の授業だからね。今回は私が担当するからよろしくね」
教室のあちこちから声が上がった。
すると案の定、昨日入ったばかりのキリトが質問してきた。
「なぁなぁ、レイジ。毎年恒例の授業ってなんなんだ?」
「毎年恒例の授業は、ここにいたら誰もが知っていなきゃいけない基本中の基本、“
「世界接続?」
「まぁ、知らなくてもしょうがないよね。私も詳しいことはここに来てから知ったくらいだしね」
キリトの疑問に美海も同調した。
確かにそれに関することは島の外ではあまり知られていない。
知っていても名前くらいだというのが多いだろう。
そんなことを話していると、当たり前のように環先生から注意を受けた。
「ほ~ら、そこの三人!私のありがたい解説を始めようって時になにくっちゃべっているのかしら?それくらい余裕があるなら説明してもらおうかしら、そこの優等生!」
「え?オレ?」
「あなたには聞いてないわよ。厨二の甘味バカ」
キリトは机に突っ伏し静かに涙していた。
キリト、撃沈。
「え?じゃあ、私?」
「あなたが優秀なのはブルーミングバトルでしょ!」
続けて美海までもが机に突っ伏し静かに涙した。
美海、撃沈。
となると残りは……。
「ほら、さっさと説明しなさい、優等生の蒼薙くん」
やっぱり俺ですよね。
てか優等生って柄じゃないんだが。
「え~っと、世界接続は文字通り四つの世界が繋がってしまった“事件”のことで、その象徴とされているものが、青蘭島上空にある各世界へと繋がる三つの
「よし、さすが優等生。いい答えね。さっき説明が会った通り、世界接続とは……」
「へぇ、そう言うことだったのか~」
「お前、それぐらい知ってろよ」
「いやぁ~、オレ頭使うのは苦手でさ」
はははと乾いた笑いをするキリトに少し呆れた。
まぁ、実際にここに来てから世界接続について詳しく知ったという奴は多いので何も言わなかった。
「さて、それじゃあ、今度は各世界についてそれぞれの代表者に説明してもらおうかしらね。ついでに、世界水晶がどのように管理されているのかも説明してもらいましょう」
また、無茶苦茶なことを言い出した環先生にクラスのみんながブーイングを始めた。
「まぁ、この世界についてはあまり説明しなくても大丈夫ね。何せ自分たちが住んでいるところですもんね」
確かに、四つの世界の中心としてプログレスおよびαドライバーの育成機関は俺たちのいる青の世界《地球》で、世界水晶も学園の地下にあるって話だからな。
「それじゃ、まずはソフィーナさん。黒の世界についてお願いね」
「はい。黒の世界《
「うん。いい答えね。それじゃ次は、アウロラさん。赤の世界についてお願いね」
「はい。赤の世界《テラ・ルビリ・アウロラ》では、天使の子や妖精が住んでいて、金色の海にプレート状の大地が浮かぶ、明るさに満ちた世界と言われています。その世界で7人の女神たちが統治、世界水晶の管理をして、祈りが人々の原動力とされています」
「どうもありがとうね。それじゃ最後は、セニアさん。白の世界についてお願いね」
「はい。白の世界《システム=ホワイト=エグマ》、通称《SWE》は科学が発達した高度な文明を持つ世界で、そこを統治するシステム『E.G.M.A.』によって、人工生命体やアンドロイド、機械生物が開発されています。世界水晶もE.G.M.A.が管理しています」
「はい。以上が四つの世界についてね」
「……意外と深いんだな」
「いや、基礎知識だろ」
またしてもキリトの無知っぷりが露わになった。
こいつ本当に勉強をしないやつだな。
「後話すことは……プログレスとαドライバーについてね。じゃ、誰に説明してもらおうかしらね」
環先生が、クラスのみんなを見渡して、ある一人と目を合わせた。
キリトだった。
「それじゃキリサキくん、説明お願いね」
「わかりません!」
パァン!!
と盛大に何かが炸裂いた音と共に、立ち上がったキリトが後ろに倒れ込む音が聞こえた。
音の原因は、キリトの額に直撃したチョークだった。
勿論そのチョークを投げたのは、教卓にいる環先生本人である。
「まったく、こっちに来る前に参考書は渡したはずなのに……。なら、代わりに日向さん。お願いできる?」
「あ、はい。え~っと、プログレスは
「はい、模範的な答えをありがとう。でも、それじゃまだ合格点はあげられないわね。蒼薙くん、悪いんだけど補足お願いできる?」
また俺か、と言いたいがここで文句を言えば何をされるかわかったものではないので仕方なく補足説明することになった。
「まず、基本的なことは美海が話したとうりですが、それらは全て世界接続が起きたことによって劇的に出現してきたとされています。特にαドライバーも世界接続が原因とされていますが、主だった理由は未だに不明です。それに、プログレス自体も今まで確認されていた数が極少数だったため、その存在が知られていなかっただけで、存在自体はしていたとされています」
「さすがね。ありがとう。だけど、ひとつだけ忘れているわよ」
「忘れてるって何がですか?」
「N・αドライバーの説明よ」
その言葉に、少し驚いた。
確かにN・αドライバーはαドライバーの進化型とされているが、それとはまた別物である。
なんせ、N・αドライバーとはプログレスとαドライバー、両方の役割を持った存在で、プログレスのような異能を持ち、αドライバーのようにプログレスの力を引き出せるというとんでもなく希少性のある存在である。
それに、今確認されているのは俺だけのはずなので、説明も何もないはずである。
「まだ話していなかったけど、蒼薙くんとキリサキくん。いくら今年の高等部一年のαドライバーの数が少ないからって、このクラスが二人だけっていうのはおかしいと思わない?」
「……まさか」
「そのまさか。キリサキくんは、蒼薙くんに次いで発見されたN・αドライバーよ」
「へ、オレ?」
あまりに衝撃的なことに、クラスのみんなが唖然としているなか、キリトだけは気の抜けた声で疑問符を頭に浮かべていた。
「まぁ、話すべきことは話したし、この時間の授業はここまでね。ちなみに、午後はブルームングバトルの実践授業があるから、忘れず遅れずにね」
ある意味、新たな波乱の予感を思わせる授業になってしまった。
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