青蘭学園にあるカフェテリア。
そこでオレは、とある人物と密会していた。
無論、甘味を取りながら。
「と、いう訳なんですよ」
「なるほどねぇ。にしても、レイジとブルーミングバトルか」
授業後に連絡先を教えて貰った琉花にクラス委員長を決めるのにブルーミングバトルをするという話をした。
しかも、期間は三日後である。
そして、少し考えた琉花が
「……まぁ、勝つのは無理だね」
その言葉を聞き、額をテーブルに打ちつけた。
「って、あぶなッ!」
その衝撃で注文しておいたチョコレートパフェ五個、苺パフェ三個、マンゴーパフェ三個、チョコバナナパフェ二個、ドラゴンフルーツパフェ一個、それぞれが容器ごと倒れそうになったのを寸前で止めた。
ふっ、甘味を無駄にするのは、オレが許さん!
「……噂には聞いていたけど、これはすごいね」
琉花が横に視線を向けたので、オレもそちらを向いた。
そこには、オレが特に意識もせずに積み重ねたパフェの容器やケーキの皿などが積み重なっていた。
その数はおよそ二十ほど。
「まだまだ行けるだろ」
「……」
何故だか知らないけど琉花が口を少し開けて呆然としていた。
「それよりどうするかな。プログレス」
「……はぁ、いいよ。やってあげるよ」
「え!?マジで!」
「そこまで露骨に言われたら断り辛いでしょ」
まぁ、確かに今の言い方ではやってくれと言っているようなものだった。
気をつけないといけないな。
「でも、琉花はいいのか?オレと組んで?」
「前まではいろんな人と組んでみてたけど、どうも相性が合わなくてね。これといった人がいなかったんだよ」
「へぇ、意外だな」
「プログレスとリンクするだけでも相性っていうのはあるからね。下手に合わないとリンクすることすらできないから」
「フム。なるほどなるほど」
「それで、今日の実践授業で君と組んでみて気づいたんだ。今までで一番いい相性かなってね」
「それじゃ、これからもオレと組んで言ってくれるってことか!?」
「そこまでは言っていないよ。けど、今度の試合で決めるかもね」
「よっしゃ!これで一人確保……とは言ってもまだ三人もいるんだよなぁ」
「そうだねぇ」
オレと琉花が二人してテーブルに肘をつきながら考え始めた。
「あ」
「ん?どうかしたの?」
「良さそうなのが一人いた」
「え?マジで?」
「と言っても、本人が了承するかだからねぇ」
「それでも話をしないよりはした方がいいだろう!……あ、すみません。パフェ追加でお願いします。……という訳で、すぐに案内頼む」
「まさか案内頼まれる前に追加注文されるとは思っていなかったよ」
嬉々と追加したパフェを食べるキリトを零弐が見たらおそらくこう言っているだろう。
「あいつ、絶対脳に糖分いってないよな」
ともかく、オレと琉花のお仲間探しが始まった。
「……で、その良さそうなやつってのはどこにいるんでしょうか?」
「たぶんこのあたりにいると思うけど……」
あの後、さらに追加しようとしたキリトに対して、さすがにキレた琉花の制裁で、仲間探しが始まった。
キリトが若干敬語なのに対して、琉花は特に気に留めた様子もなかった。
むしろ、キリトが水浸しなのに対しては、気に留めるつもりもないみたいだった。
「お~い、ウェンディ~。ど~こ~」
「いや、さすがにそれで出てくるとは思えないんだけど」
琉花が大声で、ウェンディと言う人物の名前を呼んだが、生憎とそれらしい人物は出てこない。
「てか、そのウェンディってどんなやつなんだ?」
「そうだなぁ……黒の世界出身の魔女で、獣耳を生やした女の子」
「は?」
「後、何時もオドオドしていて、からかいがいがあるかな」
「……大丈夫なのか?そいつ」
「大丈夫大丈夫。学末ブルーミングバトル試験で一緒のチームだったしね」
「まぁ、当の本人を見つけない限りは意味がなさそうだけどな」
と、言ったのはいいが探し始めて一時間が経ってみると……。
「何所にもいねぇじゃん!」
「あれ~、どこ行ったんだろ?」
もはやどこにいるのか皆目見当がつかなくなっていた。
唯、さっきから気になっていることがある。
「何故さっきっからあんまり場所移動してないんだ?」
そう。
探し始めてからというもの、探している範囲がいろいろな校舎と校舎の間を延々と探しているのである。
「だって、大体この辺りににいるし」
「それがいねぇんじゃん!」
ここまで探しても見つからないとなると、やっぱり他のところにいるんじゃないのかと思いだした時だった。
オレたちが丁度探していた頭上で鴉が数羽わめいていた。
正確には、オレたちの頭上にある太い木の枝の上にある何かに向かって鳴いたりして威嚇しているようだった。
「はわわわわ」
何やらそこから女の子の声が聞こえてきた。
そして次の瞬間、ズルッ、と何かが滑る音がした。
「きゃわぁぁぁぁ!?」
何かが滑ってから、悲鳴と共に何かが降ってきた。
それを見た俺は、こんなことを思った。
――空から女の子が降ってくると思うだろうか?――
マンガや映画の導入であれば、それは不思議なことが起こるプロローグ。
自分が正義の味方になって、悪と戦う。
はたまた、壮大な大冒険の始まり。
そしてそのまま、降ってきた女の子と仲良くなっていく。
普通はそんなことを考えるだろう。
しかし、オレは知っている。
既に物語が始まっていることを。
女の子が降ってきても、正義の味方になるわけでも、大冒険が始まるわけでもないことを。
だからこそ、降ってきたときはすでに別のことを考えていた。
何故なら、降って来た女の子がすでに目の前まで迫ってきたのだから。
普段のオレならば辛うじて避けることが出来ただろう。
だが今は、ほとんど意識しないで行動していた。
つまり、気づいたときには時すでに遅かった。
(あぁ、零弐みたいになるんだな)
一度聞いたことがある零弐と美海の交通事故?について。
それはもう、悲惨なものらしい。
それが今、自分に降り注いだ。
説明文にしたら簡単だろう。
女の子が目の前に降ってきた。
そのまま顔面に直撃した。
足を滑らせて、頭が下に来た。
その勢いのまま地面に頭が埋まった。
無論、その時には首や後頭部から嫌な音が聞こえたのは言うまでもない。
「って、キリトくんッ!?」
黒の剣士 シズト・キリサキことキリト 死亡
「って、勝手に殺すなぁぁぁ!!」
「あ、復活した。さっすがキリトくん!」
「心配されていなかった!?」
どこからか、オレが殺されたような言い方が聞こえてきて、怒りに任せて起き上った。
さすがに琉花でも心配しているのかと思ったら、復活してさも当然のような態度だった。
そんな琉花の後ろで隠れている存在に気付いた。
「琉花さん。もしかしてそいつが……」
「そ、ウェンディだよ」
「あ、あの、さっきはすみませんでした!体のほうは、大丈夫ですか?」
「伊達に鍛えてはいなかったから大丈夫だとおも……」
「キリトくんなら、レイジとブルーミングバトルをやれるくらいだから、大丈夫だよ」
「……う、って琉花さん!?何を怪我がなくてさも当然のように言っているんですか!?」
「え?実際に怪我してないじゃん」
さ、さすがにそこを突かれると何も言い返せない。
レイジも美海との交通事故?後は特に怪我はしていないらしいし……。
はっ!?まさか……。
「まさか、エヌドラなら怪我を軽減できる力があるのか!?」
「いや、ないでしょ」
琉花にバッサリと切られた。
そんな……バカな!?
「くだらないこと考えているようなら、また水鉄砲で撃つよ」
それは勘弁してほしいから、仕方なく本題に戻すことにした。
「それで、ウェンディだったっけ?」
「は、はい。わたしなんかにいったい何の用ですか?」
本当にビクビクしている様子を見て少し不安になったが、背に腹は代えられない。
「単刀直入に聞くけど、オレのプログレスになってほしい」
「ふぇっ!?」
「あちゃー。やっぱり言ったよ」
ん?俺、何か間違えたか?
「キリトくん。それ、意識せずに言っているでしょ」
「そりゃねぇ。実際にそうしてほしいわけだし」
「ふぇぇぇ!?」
何故かさっきから、ウェンディが顔を赤くしながら悲鳴を上げていた。
「あのね、キリトくん。今のセリフなんだけどさ」
「……何か間違ってた?」
「ある意味間違いじゃないんだけどさ。今のセリフ、ここだと完全にプロポーズだよ」
え?今、なんて言った?
「琉花さん。もう一度お願いします」
「今のセリフは、ここだとプロポーズになるんだよ」
「はぁぁぁぁいぃぃぃぃ!?」
「やっちまったな!!」
「誰だ、今の!?」
どこからともなく声が聞こえたが、声が聞こえたのは空から。
無論、誰もいない。
それはともかく、詳しく話を聞いたところ、青蘭島でプログレスが集められてからしばらくして、初めてのαドライバーが、のちに結ばれることになったプログレスに言った言葉で、プロポーズでもあるということで、今でもその話にもじって、告白やプロポーズではその言葉が使われているらしい。
因みに、逆の場合は『私のαドライバーになって』らしい。
それでウェンディが赤くなって悲鳴を上げたという。
「まぁ、とりあえずオレのチームに入ってほしいって意味ということで、一つお願いします」
「それは、わかりました。け、けど、なんでわたしなんか選んだんですか?もっとすごい人はいると思うんですけど」
「琉花に紹介されたから」
「そ、そうですか」
その一言に、何故かがっかりされた。
琉花もため息をついていた。
「それに、とりあえず四人集めないとまともに戦えないからな」
「さっきから思ったんですが、誰と戦うんですか?」
「レイジだよ。蒼薙零弐」
それを聞いたウェンディは固まった。
そして、フルフルと震えだしたと思ったら、悲鳴を上げた。
「無理ですぅぅぅぅぅ!レイジさんと戦うなんて無理ですぅぅぅぅぅ!」
「はいはい、落ち着いてね」
一目散に逃げようとしたのを琉花が止めてくれた。
何故逃げる?
「た、確かにレイジさんは優しい人なのは知っていますけど、あの人のチームと戦うなんて、わたしじゃ足手まといになるだけですぅぅ!」
何故ここまで拒否をするのか、さっぱりわからない。
そういう顔で琉花のほうを見たら説明してくれた。
「実はね、学末ブルーミングバトル試験で最後にレイジたちと当ったんだけど、最後の最後でウェンディが失敗しちゃって負けちゃったんだ。それで責任を感じているのと同時に、自分なんてって思っちゃっているってわけ」
「なるほど、そんなことが……」
地面に座って、涙目でフルフル震えるウェンディを見た。
どうやら、そのことは相当心に残っているみたいだった。
「なぁ、ウェンディ」
「な、何ですかぁ?」
「オレには、お前の力が必要なんだよ」
ウェンディの前に座って、話を始めた。
「このままだと、戦う前に負けちゃう。それはオレのプライド的に嫌なんだよ」
「でしたら、わたし以外の人を誘えばいいじゃないですか」
「オレには、お前が、必要なんだよ。もし、何か失敗しても、それはチームでの失敗だ。お前ひとりの責任じゃない」
ウェンディの肩に手を置きながら、促した。
「お前の力は、オレが使いこなしてやる。だから、俺のチームに入ってくれ」
いつになく真剣な顔をしているキリトに、琉花は意外そうに、そして自分の友達に勇気を上げてくれることに感謝し、どこか少しだけ不機嫌そうにしていた。
因みに、この時のキリトとウェンディの心の中を見てみると、こうである。
(ここで、一人でも多く仲間を確保しておかないと、オレの甘味を摂る時間が無くなってしまう!)
(わたしのことをここまで考えてくれるなんて……。この人なら、もしかして……)
正直、天と地ほどの差がある。
それくらい考えていることが違いすぎていた。
やはりキリトはバカだった。
「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします」
「そっしゃ!よろしく頼む!」
こうして、キリトは二人の仲間を手に入れた。
残りあと二人。
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