専属メイド・ターニャ大佐   作:ヤン・デ・レェ

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自主規制 C

坊ちゃまご乱心。

 

「あの、坊ちゃま本気なのでございますか?」

 

ターニャの言葉は尤もだった。

 

「あの、本気で軍のブートキャンプに参加されるので!?」

 

ターニャの愛しのご主人様は言った。

 

「勿論だ!僕は一兵卒として、ヘッケン・ウルフ二等兵として正規の訓練を受けた上で従軍するんだ。じゃなきゃ不公平じゃないか!」

 

ご主人様の言葉も尤もだったが、しかしターニャは言わずにはいられない。

 

「い、いいえ!そんなことはございません!ご家族のことも考えてください!皆様、貴方が従軍されることには納得されましたが、それでもブートキャンプではなく、我が家の子飼いの教官団による特別演習を経て、軍に配属されるべきだと、そのように仰っておりました。」

 

「しかしだなぁ…」と煮え切らないご主人様にターニャは吼えた。

 

「考え方を変えるのです。坊ちゃま!坊ちゃまは戦火に苦しむ人々を侵略者から救うために戦地へ赴かれるのですよね?」

 

「うん!その通りだ!」

 

ターニャは思った。「しめたッ」と。

 

「ならば、一人でも多くの敵を倒し、一日でも長く戦場で戦い続けるためにも、特別な訓練が必要なのです!そのための特別メニューが坊ちゃまには待っているのです!」

 

「おぉっ!!」

 

「ご納得いただけましたか?」

 

「納得したぞ!ターニャ!流石は僕のターニャだ!」

 

愛するご主人様からの褒め殺しにターニャは顔を赤らめた。頬に桜色を灯して内股でしおらしく成ったターニャ。彼女が新しい扉を開きかけた時であった。

 

「ふ、不束者ですが…。」

 

「じゃぁ、ターニャも特別メニュー頑張ってね!」

 

「………へ?」

 

ターニャは思った。「何それ聞いてない」と。

 

ターニャの疑問はすぐさま氷解した。ヘッケンが目くばせで爺に扉を開かせると、ぞろぞろと巌のように屈強な男たちが入室してきたのである。

 

「ほらコレ、じいじがターニャが喜ぶだろうって、お手紙だよ。」

 

「お、お手紙、ですか…。」

 

ガチムチ集団に完全包囲されたターニャとヘッケン。自然体のヘッケンの心臓には毛でも生えているのだろうか…そんなことを思いながら、彼女は震える手でヘッケンから手渡された手紙の封を切った。

 

内容はこうである。

 

「いきなり佐官は無理だわ。でもあと三か月しかないからターニャ嬢にも頑張ってもらわなきゃね♪じゃぁ、私の軍の知り合いをまとめて送っておくから安心して鍛えられてください。因みに内容は以下の通りです。士官学校のお勉強(三年分を三か月で!お得だね!)、飛行訓練(普通の人は慣れるまで三か月かかるってさ!)、語学(ベルンでヘッケンがお土産を買う時に重宝します。好感度アップに利用してどうぞ。)…エトセトラエトセトラ…。追伸 みんなガチムチだけど子供には優しいから安心してね♪じいじ。」

 

「おッひゃぉッ!?お、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?あの爺いぃいいぃぃぃ!?」

 

「大丈夫かい?ターニャ?」

 

「あ…失礼いたしました。私はこれで…えっと、あ、あのキッチンの掃除がまだでしたので!」

 

心の中で絶叫しつつ、スッと気配を消してその場を辞さんと先手を打つターニャ。しかし、彼女の肩をガシリと掴む者がいた。

 

「ターニャ嬢…キッチンは私にお任せあれ、貴方は坊ちゃまと一緒に特別メニューを。」

 

「じ、爺やぁぁぁぁッ!?」

 

ターニャは内心で一人阿鼻叫喚を演じながら、錆びたブリキのようにぎこちなく頷いた。

 

この日から三か月間、二人はそれぞれの分野…ターニャは士官としてヘッケンを支えるために必要な技能と知識を、ヘッケンは生き残るために必要な技能と知識を…で大陸派遣軍への従軍に向けての準備を整え始めたのである。

 

 

 

 

三か月後…。

 

「ターニャ・フォン・デグレチャフ君、君を空軍特務大尉に任命する!わが軍の先鋒として精鋭偵察部隊を組織せよ!貴官の部隊は本軍に先行して敵地に夜間突入する!本国時間早朝に貴官は500名を率いて敵国上空に到達、順次展開し橋頭保確立のための戦略地図作成に励むように!現地協力者との折衝は部隊長である貴官に一任する!以上!」

 

「貴様らは!このクソ合州国ライフル師団の誇るクソスナイパー共だ!貴様らのクソ勇敢さとクソ忍耐強さは教官である俺が保証する!存分にクソ帝国のクソゾルダート共の頭にその(自主規制)を(自主規制)してこい!クソ共の中でも最高のクソマークスマンが貴様だッ!ヘッケン・ウルフ・モルガンJr、前へ!貴様はクソ金持ちであるために、また途中参加の尻の青いクソ新人編入組であったがために!このクソブートキャンプの中では周回遅れの(自主規制)だった!しかーしッ!貴様はあろうことか、そのクソ努力とクソ根性で一週間と経たずに栄えある我らがクソ合州国のクソ狙撃手記録を三度塗り替え!今やこの俺の愛らしいクソダメでもダントツのクソ首席に登りつめた!そこでだ、貴様のクソ実績とクソ努力を考慮して本来なら二等兵、良くても一等兵の所を、上等兵としてクソ大陸に送り込んでやる。クソ大陸のありとあらゆる(自主規制)を(自主規制)出来るように精一杯(自主規制)してこい!」

 

 

 

 

 

 

 

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