それではお楽しみください!
しとしとと雨が降る密林。今この場所には小型モンスターのほとんどが姿を消していた。それはとあるモンスターが密林一帯のモンスターを全て殺害してしまったからだ。その中には強大な大型飛竜クラスの実力者も含まれている。にも関わらず、それらのモンスターですらそのモンスターには敵わなかった。それもその筈、そのモンスターは世界に数多く存在するモンスターの中でも、数少ない“例外”とされるモンスターだ。
―黒い体毛に頭部からは立派な二本の角、筋骨隆々なその身体。下半身は細くスリムだが、上半身は剛腕で力強さを感じさせる。四足を地面に付けて闊歩するその牙獣こそ、世界で初めて発見された、古龍に対抗し得る力を持ったモンスター―
そう、金獅子こそ古龍を除いた生物の中で、古龍に対抗出来る戦闘力を持った“古龍級生物”と呼ばれる例外だ。
「ヴルルル…!」
金獅子は密林を闊歩し、地面を軽く殴り付ける。これは縄張りを主張する行為だ。金獅子はとても縄張り意識が強く、もし他の生物が縄張り内に居れば、威嚇を挟むこと無く即座に戦闘状態に移行し、相手に敵意が無かったとしても、関係無く殺害する。その存在が確認されて間もない頃は、その戦闘力の高さととある性質から、古龍に分類されていた時期もあったが、少しずつ研究が進み、牙獣種に分類されるに至った。
だが、研究が進んでもその存在が軽視されることはない。何せ金獅子の目撃例が少ないのは、目撃した人物のほとんどが金獅子に殺害されてしまう為、生きて帰ることが出来ない為に、結果的に目撃例が少なくなっていると言われているのだ。
僅かだが古龍との縄張り争いでも互角に争っている姿が確認されており、古龍級生物の名に恥じない戦闘力を持っている。その戦闘力から密林の生物は皆すっかり怯えてしまい、金獅子の近辺には一切の生物が存在しない状態となっていた。正に今の密林においては、金獅子は最強と言えるだろう。
―だが、忘れてはならない。金獅子は確かに強いが、それは決して無敵であることと同義ではない。古龍に対抗出来る程の戦闘力を持っているのは確かだが、裏を返せば、古龍ならば勝てる可能性もあるということだ。
「キュルルル…」
「ヴォル!?」
急に聞こえた何かの鳴き声に金獅子は驚き、振り返るが、そこには何もいなかった。だがどこか妙な気配を感じる。
―気付けば雨と共に霧まで出始めていた。
「キュルルル…!」
「ヴォォ!?」
妙な違和感に警戒していた金獅子は、何かに殴られて吹き飛ばされる。即座に体勢を立て直し、何かが攻撃して来た方を見るが、そこには何もいない。
「ヴォルルル…!」
だが、直接攻撃されれば流石に気のせいでは済まされない。金獅子は少しずつ移動しながら、全方位を警戒する。襲撃者の姿が見えない上、心なしか音も聞こえづらい。おそらく襲撃者は位置を移動しながらこちらに仕掛けて来ている。攻撃して来た直後にカウンターを叩き込まなければ、雲隠れされて逃げられてしまう。そう思い、金獅子は神経を研ぎ澄まして攻撃のタイミングを待つ。そして―
ビュンッ!!
「ヴォォン!!」
―見えない何かが空を切る音を聞き取ると、金獅子は横にステップして何かを躱すと―
「ヴォアア!!」
「ギュルアア!?」
―何かがいると思われる場所に拳を叩き込むと、これまで姿が見えなかった何かが遂に姿を見せた。
鱗や甲殻ではない、皮の質感が強い紫色の皮膚。背中からは鋼龍や滅尽龍と比べるとやや小さい羽根が生えている。尻尾は扇のように横に広がっており、先端はゼンマイのように渦を巻いた変わった形をしており、頭部から覗く瞳は何を考えているか分からないギョロっとした瞳が覗いている。頭部から伸びる角は白く、透き通ったような色をしている。骨格は鋼龍と同じだが、庶民的な例えで言うとカメレオンのような見た目をしたその古龍は―
「キュルルル…!」
霞龍は考えの読めない瞳で金獅子を見つめて首を傾げている。それは一見金獅子を舐めているようにも見える行動だが、霞龍は割と素でこういった行動を取る。縄張り意識も強い訳ではない為、古龍の中でも特に温厚な種なのだ。ただ好奇心が強く、口に入る物ならばどんな物でも食べたりちょっかいを掛けたりする為、極稀だが行商人が積み荷ごと襲われることもある。
今回もおそらく初めて見た金獅子に対して好奇心が疼き、ちょっかいを掛けてしまったのだろうが…まさか相手が消えた自分に反撃が叩き込める程の強者だとは思わなかったのだろう。そして消えた自分を特定出来る程の強者な時点で、今逃げても追われるだろう。ある程度痛め付けて、それから離脱するのが良いだろうと、霞龍は考えを纏める。
そして金獅子も相手が古龍であろうとも見逃すことも、逃げ出すことも無い。縄張りに入った時点で生かして帰すつもりが無いし、手を出した相手など議論の余地も無い。容赦なく粉砕する。
そうして金獅子はひたすら獰猛に、霞龍はマイペースに―
「ヴォアアアアア!!!」
「キュオオオオオ!!!」
―金獅子は咆哮し、霞龍は霧を散布した。
「ヴォアア!!」
まずは金獅子が先手必勝と言わんばかりに跳躍し、霞龍にラリアットを仕掛ける。その動きはほとんど前動作が無く、予測することが難しい攻撃だったが―
「キュルルル…!」
―霞龍は緩急の付いた動きでその攻撃を躱す。そして―
「キュオオ!!」
―金獅子に向かって紫色の毒々しい色の毒弾を吐き出す。その動きは先程までの緩慢な動きとは違い、素早くハキハキした感じの動きだった。
「ヴォオオ!」
だが金獅子も毒を食らうのは不味いと思ったのか、素早くステップして毒弾を躱す。そして霞龍に向かって突進し、接近戦に持ち込もうとする。
「キュオオ!!」
だが霞龍も決して接近戦が出来ない訳ではない。堅牢な甲殻などで覆われておらず、一目で強いと分かるような見た目ではない為、イメージし難いが、霞龍も立派な古龍の内の一種なのだ。そこいらの竜では相手にならない程、身体能力は高い。身体を使って周囲を薙ぎ払い、金獅子を吹き飛ばそうとする。
「ヴオオオ!!」
「キュルアアン!?」
が、金獅子は霞龍の攻撃を軽々と躱し、霞龍の頭部を殴り付ける。確かに霞龍の身体能力は高い。だが金獅子は古龍のような特殊能力無しに古龍に匹敵する戦闘力を有している。それはつまり、肉弾戦ならば古龍以上の身体能力を発揮することを意味する。
「ヴォアア!!」
「キュルアアン!?」
頭部を殴り付けられて怯んだ霞龍を、金獅子は身体を回転させて吹き飛ばす。吹き飛んだ霞龍に更に追撃を仕掛けようと金獅子は地面を駆ける。
「キュルアア!!」
「ヴオオオ!」
だが、霞龍もされるがままでは無い。金獅子の接近を拒むように、毒のブレスを放射状に放つ。金獅子はそれを跳躍して霞龍から距離を取ることで躱す。だが―
「キュルルルル…!」
「!」
―それは霞龍の行動を妨害出来ないことを意味する。霞龍は唸り、霞に溶け込むように姿を消す。金獅子は消えた霞龍を追跡出来る術は持たない為、下手に動かず、攻撃して来た瞬間に反撃を叩き込むのを狙う。
少し時間が空き、中々行動を起こさない霞龍に金獅子が苛立ちを感じ始めた時―
パシャッ
「ッ!ヴォアア!!」
―これまで聞こえなかった水が跳ねる音が僅かに聞こえ、金獅子は即座にその場所へ飛び掛かり、拳を振り下ろす。
「!?」
―だが振り下ろした拳から手応えは感じず、虚しく空を切り、地面を叩くだけだった。
「キュルオオ!!」
「ヴォオオン!?」
そして金獅子が拳を空振った瞬間に、金獅子からやや離れた虚空から毒弾のブレスが放たれ、攻撃直後の金獅子は躱すことが出来ずに食らってしまう。
そう、霞龍は敢えて消えて金獅子が苛立つよう時間を稼ぎ、自分とは別の水場に向かって舌を伸ばし、音を立てて金獅子の動きを誘導し、その隙を狙ったのだ。霞龍の知能の高さが伺える攻撃だった。
「キュルオオ!!」
「ヴォアア!?」
そして更に霞龍は毒で動きの鈍った金獅子に舌を振り回しながら突進し、金獅子を吹き飛ばした。金獅子は地面を転がり、霞龍は再び虚空に消える。
「ヴォォ…!ァァ…!」
金獅子はダメージと毒の影響で悶える。五感がおかしくなり、目もぼやけ、鼻も効き難い。耳もどこか遠く聞こえる。これは先程食らった毒弾の影響ではなく、霞龍が撒いていた霧の影響だ。霞龍の撒く霧には五感の働きを鈍らせる効果がある。それと光の屈折率を下げることで透明化を成しているのだ。
霞龍は鋼龍や炎王龍と並んで語られることが多いのだが、爆炎や風を操る他二匹と比べると、毒を吐いたり、霧を散布するだけの霞龍は下に見られることが多い。だが、今の金獅子が劣勢に追い込まれていることから分かるように、透明化や毒もバカには出来ない。どれ程操る力が癖があったり、一見矮小なものに見えても、相手は自然の猛威を操る古龍なのだ。一見強大に見えない霞龍もその内の一種だ。侮ることなど出来はしない。
「キュルルルル…!」
霞龍は徹底的に金獅子の間合いには入らなかった。一撃を貰った時点で、接近戦はあちらの方が有利だと分かった。距離を保っていれば、不測の事態にも対応しやすい。そう思っていると―
「ヴォルルル…!」
―金獅子が動くのを止め、身体を伏せる。そして―
「ヴォアアアアァァァァ!!!」
―黒かった体毛を金色に変え、頭部から背中にかけての体毛は鬣のように逆立った。
そう、これが“金獅子”という異名の所以であり、一時期古龍ではないかと議論になっていた理由だ。鬣が翼と勘違いされており、変身する能力を持っているのだと言われていたのだ。そして姿を変えた以上、戦闘力が据え置きである筈もない。
「キュルルル…!」
だが、何もしなければ始まらない。霞龍は様子を見る為に、毒のブレスを放射状に放つ。横にも躱し難い為、反撃を食らう可能性も低い。どう動くか慎重に見極めるが―
「ヴォル!」
「キュル!?」
―金獅子は上空へ高く跳躍して回避する。そして霞龍の方を向くと―
「!!」
「キュアアアン!?」
―何と身体を丸め、霞龍に向かって突進して来た。霞龍はその文字通りぶっ飛んだ攻撃を躱せず、まともに食らって姿を現してしまう。そして金獅子は霞龍の首根っこを掴むと―
「ヴォルアアアア!!」
「キュルアアン!?」
―何と霞龍の身体を人間で言う背負い投げの要領で投げ飛ばして地面に叩きつけて見せた。もう一度投げ飛ばそうと腕を振り上げようとするが―
「キュルオオオ!!」
「ヴォルオオオ!?」
―霞龍が毒弾を放ち、金獅子を怯ませて拘束を振りほどく。そして双方ともに向かい合う形になった。
「ヴォルルル…!」
「キュルルル…!」
金獅子は殺気を隠さない視線で霞龍に向かって威嚇し、霞龍は相変わらず何を考えているか分からない顔をしていた。すると突然、霞龍が身体を息を吸うように大きく引くと―
「キュウウウ…!オオオオ!!」
「ヴォルオオン!?」
―大量の毒弾を辺りに撒き散らし、更に金獅子に向かって直線状のブレスを放つ。金獅子は驚きつつも躱すが、毒がかなり体内で回っている為に、躱すのがかなり辛そうだ。
「ヴオ…!オオ…!」
金獅子は毒のブレスを躱し切ったが、元々毒が回っている上に更に体力を酷使する興奮状態に突入した為、身体の負担が大きく、膝を付いてしまう。その様子を見た霞龍は―
「キュルルル…!」
「!」
―虚空に姿を消した。金獅子はその様子を見て、また奇襲を仕掛けて来るつもりかと、疲弊した身体に鞭打って周囲を警戒する。
―数分後
中々仕掛けて来ない。だが先程は苛立ちを逆手に取って攻撃された為、油断は出来ない。体力も回復出来る為、動かない方が得策だと判断し、金獅子は警戒を続けた。
―更に数分後
「……」
霧は掛かったままだが、全く仕掛けて来ない霞龍に、金獅子はそろそろ我慢の限界が近づきつつあった。興奮状態は解除されて、毒の消耗も残ってはいたが、かなり体力は回復している。それでもずっと気を張ったままなのは精神衛生上良くない。というかここまで来ると霞龍はまさか…と、金獅子の頭に嫌な想像がよぎった時―
―密林を覆っていた霧が、不自然に晴れていった。空はまだ曇ってこそいたが、小雨も止み、霧など発生しそうにはなかった。というより、霧は霞龍の能力で発生させていたものだ。それが晴れたということはつまり…
「ッ~!…!」
自身が不毛な時間を過ごしたことを悟り、溜まりにたまった苛立ちを発散するように地面を殴り付ける。勝ったと言えば勝ったのだろうが、最初におちょくられた事と言い、どうにも勝った気がしない。暴力に物を言わせて暴れていた金獅子の自業自得と言えばそうなのかもしれないが、相手側から喧嘩を売られたにも関わらず、相手側が勝手に打ち止めた上に、無駄な時間を過ごしたともなれば、流石に災難だった。金獅子は不機嫌のままだったが、まずは身体を休めることにした。
「キュルルル…」
霞龍は密林から抜けて、透明化を解除する。金獅子が姿を変えてから、相手にするのは不味いと思った霞龍は、大技を放って隙を作って逃げることを決め、金獅子の隙を作ってどうにか逃げることが出来た。透明化してから追って来るかは賭けだったが、毒で体力を消耗していたのと、勝手に警戒して金獅子が動かなかったのは幸いだった。
「キュルルル…」
霞龍は疲れたような声を上げる。初めて見る相手だった為にちょっかいを掛けてみたが、あれ程までに強いとは思わなかった。逃げ切れたから良かったが、出来ることなら二度とごめんだ。そう思い、霞龍は決意する。
―次はもっと上手く隠れてちょっかいを掛けようと。
反省しているようでしていない霞龍は、どこまでも霧のように掴み所がなかった。
はい、イタズラ好きなナッチーと、災難に振り回された大団長でした。
ナッチーがドス古龍トリオの中で一番好きなので、強さと可愛さをアピールしてみました。(なお文字数)
本音を言うと、前回のメインモンスター争い終了でちょっとモチベが落ちてしまいまして…
書き手になってから感想や評価、お気に入り登録の偉大さを思い知りました。
乞食になってしまいますが、余裕のある方は評価や感想をよろしくお願いします…
それでは次回もお楽しみに!
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