こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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一昨日番外編を昼に投稿したら夜中と比べ物にならない位伸びが良かったので試しで昼投稿。伸びが良かったらこれからは昼投稿にします。

自分がド派手な話見たいと思ってるから仕方ないけど、古龍や古龍級ばかりになるのどうにかしたい…

という訳で今回も古龍と古龍級です

それではお楽しみください!


ブチ切れ女房!

植物が少なく、砂が溢れ巨大な蟻塚がそびえ立っているこの地は“大蟻塚の荒れ地”

 

 

この地は何かと不可思議なことが起きやすい場所であり、乾燥地帯を好む強大なモンスターが集まりやすい場所でもある。そして今この場所はとある飛竜の番の縄張りになっている。

 

 

それこそ、今蟻塚群の中を歩いている飛竜、巨大な二本角を持ち、鎚のような尻尾を携えた、砂漠に住まうモンスターの代表格とも言えるモンスター。角竜、ディアブロスだった。角竜はとても縄張り意識が強く、草食でありながら凶暴なことでも有名だ。暴れれば国を守る防壁にすら風穴を開けるパワーを持つ。この強者ひしめく新大陸においても、大蟻塚の荒れ地の主とされているモンスターだ。

 

 

「ブオオ…」

 

 

だが今こうして歩いている姿はどこか小さい。身体のサイズが小さいという訳ではなく、どこか自信が無さげに見え、怯えているようにも見えた。本来古龍や古龍級以外のモンスターの中だとトップクラスの実力者であり、最終的には敗北してしまうとはいえ、恐暴竜にすら恐れず立ち向かう程の胆力なのだ。そんな角竜が怯えてしまうモンスターなど想像出来ない。そういう者もいるだろう。

 

 

だが、分かる者にとっては分かる筈だ。この世で一番怖いものは何か?と聞いた時に帰ってくる答えは人によって様々なものがあるだろう。ある者は気持ち悪い虫と答えるだろうし、モンスターにトラウマがある者は特定のモンスターの名を上げるだろう。だが、特定の者はこんな事を言う者もいるだろう。

 

 

 

 

 

―「怒った女房が一番怖い…」と

 

 

 

 

 

―その時だ。砂漠の地下、角竜の巣に通じている坂道からズシン…ズシン…と、何か大型のモンスターが近づいて来る足音が聞こえた。

 

 

「…!」

 

 

その足音を聞いた角竜はそそくさと退散する。自身にとって一番この世で恐ろしいものがやって来たからだ。そして角竜が立ち去り、足音の正体が現れる。

 

 

その姿は蒼火竜と同じように、通常種と姿形は変わらないが、体色が全身違う。真っ黒だ。二つ名である鏖魔とは違い、一部だけ濃紺色という訳ではなく、全身が真っ黒なのだ。そう、このモンスターが角竜の番の相手であり、角竜の亜種―

 

 

“黒角竜”

“ディアブロス亜種”

 

 

「ブオオ…!」

 

 

黒角竜は唸り、我が物顔で荒れ地を闊歩していた。番である筈の角竜がなぜ逃げ出したのか。それは黒角竜と戦わないようにする為だ。角竜の番というのは火竜と雌火竜のように夫婦同士の愛を感じさせるものではなく、あくまで縄張りに居座るのを許す程度だ。何なら用も無く長居するようなら排撃に打って出ることもある。

 

 

そして黒角竜というのは亜種と言われているものの、その正体は産卵期に入った雌個体の角竜であり、体色が真っ黒になるのは他の生物への警告も兼ねている。そして産卵期という時期である為非常に気が立っており、番の相手である角竜であっても(物理的に)襲われない保証はない。

 

 

何より戦っても勝てないどころか大怪我を負う可能性もある。亜種になって強大化しているのもそうだが、それだけではここまで怯える必要はない。亜種になっただけなら、厳しいがまだ勝負することは出来る。それすらしないのは、黒角竜が歴戦の個体だからだ。

 

 

亜種が歴戦の個体というだけで何かあるのか、と思う者もいるかもしれないが、何も他のモンスターの歴戦個体と何も変わらない。この地の養分をその身体に多く含み、死線を潜り抜けて来た個体というだけだ。

 

 

だが、亜種になるのと歴戦の個体になる事が重なると、それによる強大化の具合がバカにならない。幾度もの死線を潜り抜け、強靭になったその身体と、亜種になることで助長される凶暴性が合わさることによって生まれる戦闘力は、古龍にすら匹敵するものだ。

 

 

事実この黒角竜は、縄張りに侵入した恐暴竜を死闘の末に追い払っている。歴戦の個体というのはどのモンスターであっても手強いものだが、その中でも古龍に匹敵する戦闘力にまで至ると言われているモンスターは、古龍と古龍級生物を除くと、黒角竜に獄狼竜、そして氷牙竜の特殊個体だけだ。この数の少なさを見ると改めて古龍、及び古龍級生物の強大さと、それに匹敵する黒角竜達の強さを伺い知ることが出来る。

 

 

今大蟻塚の荒れ地で狼藉を働いた者は例外無く黒角竜に叩き潰された為、モンスター達は黒角竜を恐れて逃げ隠れてしまっている為、奇しくも古龍が出現した際と同じような状態に陥っていた。

 

 

 

 

 

―だが、怒れる女房は一匹だけとは限らない。

 

 

 

 

 

「ガウアアアア!!」

 

 

「!、ブオオ!」

 

 

 

 

 

空から爆炎を纏った影が黒角竜に向かって突っ込んで来る。だが黒角竜も危機を察知し、身を翻して躱して見せた。

 

 

「ガウウウ…!」

 

 

空中からの強襲は躱されたが、怯むことなく侵入者は黒角竜に向かって威嚇する。

 

 

鋼龍や冰龍と同じ、四本の足で地面を捉え、背中からは一対の巨大な翼を携えている。全身を美しい青い甲殻で覆われ、頭部からは凶悪な牙を覗かせると同時に、立派な鬣を生やしている。近付くことも躊躇う程の火力を発する蒼い炎をその身体に纏う古龍の名は―

 

 

“炎妃龍”

“ナナ・テスカトリ”

 

 

「ガウアアアア!」

 

 

炎妃龍は随分と気が立っているようだった。初撃で容赦無く黒角竜を仕留めるつもりで攻撃を放ったことと言い、その攻撃性は滅尽龍すら越えているかもしれない。新大陸の古龍は手を出されない限り基本的に静観している為、この炎妃龍のように邂逅してすぐに戦闘開始というタイプは珍しいのだ。

 

 

だが、これは炎妃龍の元々持っている性質という訳ではない。新大陸で確認される炎妃龍のほとんどが繁殖期で活動的になったものなのだ。例え普段は静観すると言っても、自身の子孫に関係するデリケートな話になれば、古龍であっても凶暴化するのだ。

 

 

「ブオオオオ!」

 

 

しかし凶暴性という点ならば黒角竜も負けていない。相手が怒れる古龍であっても、恐れず立ち向かうつもりだ。

 

 

そして―

 

 

 

 

 

「ブオオオオォォォォ!!!」

 

 

「ガウアアアアァァァァ!!!」

 

 

 

 

 

―世界一凶悪な女の喧嘩が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブオオ!!」

 

 

先手必勝と言わんばかりに飛び出したのは黒角竜だ。その攻撃は角竜種の代名詞でもある突進。単純な攻撃だが、歴戦の黒角竜が放てば古龍の甲殻すら貫ける攻撃となる。

 

 

「ガウアアア!!」

 

 

だが黒角竜の好きにさせる炎妃龍ではない。炎妃龍は羽ばたいて蒼い炎を地面から黒角竜に向かって延焼させる。

 

 

雄である炎王龍と炎妃龍に共通しているのは爆炎を操るという点だが、細かいところで違う点がある。それは炎王龍は粉塵からなる爆破を、炎妃龍は爆破を炎王龍程上手く操ることは出来ないが、その分炎はより温度が高く、細かく操ることが出来るのだ。

 

 

「オオオ!?」

 

 

その蒼炎が生み出す火力には、耐熱性が高い甲殻を持つ黒角竜であっても思わず止まってしまう。そしてその隙を炎妃龍は逃がさない。

 

 

「ガウアアアア!!」

 

 

「オ…!オオ…!」

 

 

怯んだ黒角竜に向かって、炎妃龍は蒼炎を纏って突進する。黒角竜は何とか押し止めることは出来たものの、炎妃龍の突進と纏った炎によって、黒角竜の身体を焼く。そのままじりじりと押されていると思われたが―

 

 

 

 

 

「ブ…!…オオオオォォォォ!!」

 

 

「ガウウン!?」

 

 

 

 

 

―何と黒角竜は蒼炎にその身を焼かれながらも、炎妃龍を押し返し、そのまま炎妃龍の身体を角で持ち上げて投げ飛ばし、地面に叩き付けて見せた。

 

 

「ブオオ…!」

 

 

黒角竜はあちこちの甲殻が蒼炎によって変形しながらも、それによるダメージを全く感じさせず、口から黒い煙のような息を吐き、その瞳から感じる殺気は鏖魔にも引けを取らない。そして―

 

 

 

 

 

「ブオオオオォォォォ!!!」

 

 

 

 

 

―耳をつんざくような咆哮を轟かせた。

 

 

 

 

 

「ガウ…!ウウ…!」

 

 

その様子を見た炎妃龍は、身体に刺さるような殺意を感じながらも、黒角竜を恐れることはない。だが確かな脅威を黒角竜から感じ、身体に纏う炎の火力を強める。

 

 

「ガウアアアア!!」

 

 

そして身体を震わせ、先程の延焼とは比べ物にならない火力で周りに蒼炎を拡散する。ハンター達の間では「フレア」と呼ばれる技だ。

 

 

「オオ…!」

 

 

いくら怒れる黒角竜と言えども、その火力とこれ以上のダメージを受けるのを嫌がったのか、今度は真正面から突っ込む真似はしなかった。その変わり―

 

 

 

 

 

「ブオオ…!」

 

 

「!」

 

 

 

 

 

―翼で地面を掘って潜り込んだ。流石に蒼炎も地面の下まで燃やすことは出来ない。熱は伝わるかもしれないが、多少熱の温度が上がった程度では常に高温地帯である荒れ地に住んでいる黒角竜にダメージを与えることは出来ない。

 

 

「ガウウ…!」

 

 

そこで炎妃龍は下手に動かず翼を展開し、蒼炎を自身の周りに広げて黒角竜の攻撃を待つ。

 

 

ズズ…ズズズズ…!

 

 

「!」

 

 

そして炎妃龍が地面から揺れを感じた瞬間―

 

 

 

 

 

「ブオオオオ!!」

 

 

「ガウアアアア!!」

 

 

 

 

 

―黒角竜が炎妃龍の真下から飛び出し、それを炎妃龍が飛び退いて躱して蒼炎を浴びせた。

 

 

「…!ブオオ!」

 

 

蒼炎が浴びせられ黒角竜は一瞬怯んだものの、攻撃の手が止まるのは不味いと考え、自身の身体が焼かれるのも厭わず炎妃龍に向かって突進する。

 

 

「ガウウ!!」

 

 

炎妃龍は黒角竜の動きを予想していたのか、驚いた様子は見せず、自身の身体から粉塵を撒き散らしながら、黒角竜の突進にぶつかるように真正面から受け止める。

 

 

「ブオオ…!」

 

 

「…ッ!、ガウウ…!」

 

 

受け止めることは出来た為、拮抗状態には持ち込めたものの、力比べだと黒角竜の方が上なのか、炎妃龍は苦しそうな呻き声を上げ、ジリジリと押され始める。だが当然、何の策もなく力比べに応じる程炎妃龍は考えなしではない。

 

 

「ガウウ…!」

 

 

「…?」

 

 

炎妃龍は押されながらも翼を震い、黒角竜の周りに粉塵を散らす。確かに炎妃龍は炎王龍程爆破を上手く扱えないが―それは使えないということではない。

 

 

そして炎妃龍がカチッ!という音と共に歯を噛み鳴らすと―

 

 

 

 

 

ボボボボンッ!!

 

 

「━━━━━━━━!?」

 

 

 

 

 

―凄まじい爆破音が連続で炸裂し、黒角竜の悲鳴を掻き消す。爆破によって荒れ地の砂が舞い上がる。そして舞い上がった砂塵が収まると―

 

 

 

 

 

「……!」

 

 

 

 

 

―黒角竜の姿がどこにもない。それが意味することはつまり―

 

 

 

 

 

「ブオオオオ!!」

 

 

「ガウアア!?」

 

 

 

 

 

―黒角竜が地中からの強襲が来ることを意味するが、炎妃龍も視界が確保出来ていなかった上、黒角竜からのダメージが少なからず残っていた為、強襲を躱すことが出来なかった。

 

 

強襲して来た黒角竜の様子を見ると、身体のあちこちの甲殻が焼かれており、酷い箇所だと甲殻が剥げて中の肉が焼け爛れているところもある。

 

 

「オオ…、ブオオ…!」

 

 

それだけの傷を負っている為、流石に息は上がっているものの、まだ戦うつもりのようだ。炎妃龍はそんな黒角竜に対して、苛立ちと共に僅かな感心を覚える。今まで自分と戦って、これ程の傷を与えてかつあれだけのダメージを負ってもなお戦意を折らない相手は始めてだ。最早この相手はただの「邪魔者」ではない、自身の全力を開放するに相応しい、「外敵」だ。

 

 

「ガウウアアアァァァァ!!!」

 

 

「!?」

 

 

そう黒角竜を認識した炎妃龍は、全力で吼え、纏う炎を最大出力まで引き出す。その姿はまるで炎妃龍自身が輝いていると思える程に明るかった。

 

 

そんな炎妃龍の様子を見た黒角竜は、僅かな畏怖の感情が芽生えたが、それを振り払うようにして身体を低くして構えて力を溜める。

 

 

「ブオオ…!」

 

 

 

黒角竜が全力で来ると感じ取った炎妃龍は、折角本気を開放したのだから、こちらも全力で応えることを選んだ。

 

 

「ガウウ…!」

 

 

炎妃龍は身体から大量の粉塵を撒き散らし、空中で舞を踊るように旋回する。まだ炎は放出していないというのに、感じられる熱量は凄まじいものだった。

 

 

そして炎妃龍が技を放つ前に、黒角竜は力を溜め終える。そして―

 

 

 

 

 

「ブオオオオォォォォ!!」

 

 

 

 

 

―凄まじい勢いで炎妃龍に向かって突進した。炎妃龍はまだ空中で粉塵を撒いている。そして着地し、黒角竜の角が身体を貫くまでの刹那の間に―

 

 

 

 

 

「ガウウアアアアァァァァ!!」

 

 

「ブオオォォォォ!?」

 

 

 

 

 

―咆哮と同時に凄まじい熱量の爆炎を拡散し、黒角竜を吹き飛ばした。その熱量は黒角竜を焼くだけでは飽き足らず、蟻塚を溶かし、乾いた砂が黒に変色する程に焼き付くした。そして―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━!!」

 

 

 

 

 

―更に凄まじい爆炎を放ち、周囲は地獄の有り様となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガウウ…」

 

 

大技を放ち終えた炎妃龍が周りを見ると、蟻塚は全て溶けきり、砂もほとんどが黒く変色し、最初とは景色が一変していた。だが、見える範囲に黒角竜はいない。溶けたとは考え難いので、おそらく地中を掘って逃げたのだろう。良い番に会う為にここを訪れたが、手傷を負わされたにも関わらず、どこか清々しい気分になった気もする。たまには力を振るうことも必要なのかもしれないと炎妃龍は新たな発見をして、自身の伴侶を求めてこの地を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブオオ…オオ……」

 

 

黒角竜は吹き飛ばされた直後に焼かれながらも何とか生き残り、第二波が放たれる前に急いで地中に避難することで命の取り留めたのだ。だが、ほとんど瀕死同然の状態だ。傷を癒す為に当分は休まねばならないだろう。そのことに苛立ちを覚えながらも黒角竜は炎妃龍を思い出す。あの凄まじい能力は間違いなくこれからも忘れることはない。最後の激突の瞬間に見た、地獄のような―しかしどこか美しさも感じられる光景を思い出しながら、黒角竜は眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに角竜も自身の妻と炎妃龍の激突には気付いていたが、上手く妻と連携出来る気がしなかったのと、下手すると普通に敵扱いされるかもしれないと思っていたので参戦はしなかった。妻の傷の療養の間は、サボテンや薬草を採ってくることで少しでも傷の治りが早くなるように努めていた。気苦労は多いが、良い角竜の旦那だった。




怖い鬼嫁二人のお話でした。

能力メインの古龍の描写結構難しいなぁ…どこまで誇張しても良いのかイマイチ掴みきれない…

他の人のバトル見たりして勉強します…

評価、感想もよろしければお願いいたします

それでは次回をお楽しみに!

メインモンスター+αでコイツが好き

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