こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

21 / 72
UA5000件突破ありがとうございます!

一つの区切りまでのラストスパート!手を抜かずにちゃんと描写して行きたい!

それではお楽しみください!


冰龍を歓迎せし龍光

新大陸から別の大陸に繋がる海の海上。一匹の古龍が飛んでいた。その古龍の周りの空気は少し冷え、僅かながら結晶が舞っていた。その古龍は幻の古龍である冰龍だった。

 

 

だが、その身体には細かい切り傷のような痕がいくつかあり、激しい戦闘であったことが伺える。実際、この冰龍は元居た生息地で歴戦の鋼龍に敗れ、傷を癒した後、自らを鍛える為に故郷を飛び出し、強力な力を感じる方へ向けて移動していたのだ。故郷に居たモンスターも弱くはなかったが、自らに対抗し得る程のモンスターはいなかった。

 

 

故により強くなる為に、厳しい環境で己を鍛えようと新天地を目指していた。そして遂にその地が見える。

 

 

 

 

 

あらゆる環境が一個の地に集まり、強大な力に魅せられた数多くのモンスターが集まる地―“導きの地”だ。

 

 

「キュルルル…」

 

 

冰龍は割と広い範囲で生存が可能だが、自分にとっても過ごしやすい氷雪地帯に根付くことを決めた。

 

 

「キュオオオ…」

 

 

冰龍は翼をはためかせ、雪の積もった地面に降り立つ。こうして立ってみると、改めてこの地がエネルギーに満ちていることが分かる。何もしていなくとも、どこか居心地が良い。

 

 

だが、あまりゆっくりしていられない。この地にいる強者はおそらく冰龍であっても油断ならない。下手をすると冰龍が敗北したあの鋼龍と同等以上の強者がいてもおかしくないのだ。

 

 

「…!」

 

 

冰龍が辺りを見回していると、地面の一点に目が止まる。冰龍がそこに近付いて見てみると―

 

 

 

 

 

バチッ…バチチ…!

 

 

 

 

 

―赤黒い光が弾ける僅かな体毛がそこにあった。冰龍はなんとなく、その光に嫌悪感を感じていた。そして冰龍は嫌な想像が頭をよぎる。ひょっとしてこの辺りは既に―

 

 

 

 

 

「!!」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

―冰龍が何か気配を感じて後ろを振り向くと、一匹のモンスターがこちらをじっと見詰めていた。その姿は雷狼竜と同じだが、体色が違う。黒銀の甲殻に覆われ、細かな体毛を生やしている。身体に迸るような赤いラインが走っている。雷狼竜は気高き狩人という様相だったが、こちらはまるで―地獄の門番とも思える様相だった。

 

 

“獄狼竜”

“ジンオウガ亜種”

 

 

「キュオオオ…!」

 

 

冰龍はいつ戦闘になっても良いように、威嚇しながら氷の鎧を纏う。冰龍は鋼龍に敗れてから、相手を良く観察するようになった。この獄狼竜を見て感じるのは―相当な実力者だ。あの鋼龍とも戦うことが出来るだろう。業腹だが、今の自分では苦戦を強いられることになる。

 

 

「……」

 

 

だが、獄狼竜は全く動かない。冰龍が臨戦態勢になっているにも関わらず、じっと冰龍を見詰めている。油断している訳ではないようだが、何だか冰龍を見極めているようにも見える。

 

 

「オオオ…!」

 

 

冰龍は迷う。このまま引き下がるか仕掛けるか、ひょっとすれば戦意を収めれば見逃されるかもしれない。戦ったとしても勝てる確証はない。どちらを選ぶか―

 

 

 

 

 

「キュオオオ!!」

 

 

バキィ!!

 

 

「!、ウオオン!」

 

 

 

 

 

―冰龍は巨大な氷柱を生成することを答えとした。生き残るという視点ならば、あのまま去ることが正解だったのだろう。だが、冰龍は強くなる為にこの地を訪れたのだ。ならば勝てるか分からない強者だからといって逃げる訳にはいかない。むしろそういった者にこそ立ち向かい、勝たねばならないのだ。

 

 

「グルルル…!」

 

 

獄狼竜も冰龍の戦意を感じ取ったのだろう。先程までとは打って変わり、鋭い殺気を冰龍に向ける。冰龍はその殺気を直に受け、思う―やはりこの獄狼竜は自身より格上だと。だだの竜であるにも関わらず、発する気配は古龍にも引けを取らない。

 

 

それもその筈、冰龍は知らないことだが、この獄狼竜はこの氷雪地帯において最も広範囲を縄張りとしているモンスター、主と言える存在だ。その実力は歴戦の古龍にすら匹敵するもの。発する気配も当然―竜と言えども侮れるものではない。

 

 

だが―越える。冰龍は強い決意と共に、冷気の力を高める。

 

 

獄狼竜もまた、訪れた新参者に洗礼を与えるべく、全身に力を入れる。

 

 

 

 

 

「キュオオオオォォォォ!!!」

 

 

「ワオオオオォォォォン!!!」

 

 

 

 

 

猛者溢れる地にて、新参者の冰龍と主である獄狼竜が激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キュオオオ!!」

 

 

冰龍が吼え、力を解放して空中に氷塊を生み出し、獄狼竜に向けて射出する。

 

 

獄狼竜が何をしてくるのかは分からないが、古龍でない以上、不可思議な力を操ることは出来ない。つまり冰龍の氷塊を相殺するようなことは難しく、自身で回避しなければならない。氷塊を回避して隙が出来たならその隙を突けば良いし、出来なくとも次の攻撃に繋げることも出来る。どちらを選んでも冰龍の有利となるような攻撃だった。

 

 

「ウオオオ!!」

 

 

だが、その程度の攻撃は下克上を繰り返して主の座を勝ち取った獄狼竜にとっては既知の攻撃だった。

 

 

獄狼竜は冰龍に向かって最低限の氷塊を回避しながら突進し、それと同時に蝕龍虫を集結させながら龍雷を発生させ、冰龍に牽制の攻撃とした。

 

 

雷狼竜は雷光虫と共生することで力を得るが、獄狼竜の場合は蝕龍虫と共生し、龍属性を主に扱う。そして龍属性の原理はよく分かっていないが、ほとんどの古龍が忌み嫌う属性だということと、他の属性攻撃を無効化することは分かっている。

 

 

「キュオオオ…!」

 

 

そしてそれは冰龍も例外ではない。一番の弱点は炎熱だが、次点で龍属性を嫌う。獄狼竜の放った龍雷を滞空しながら回避し、ブレスを獄狼竜の足元に放ち、獄狼竜の足を止めることを狙った。

 

 

「ウオオオン!!」

 

 

獄狼竜は足を止めることが目的だと一瞬で察すると、蝕龍虫を自身の足元に集め、冷気を遮断する。そして集めた蝕龍虫を前足の鋭い爪に移動させると―

 

 

 

 

 

「ワオオオ!!」

 

 

ザグッ!!

 

 

「キュオオオ!?」

 

 

 

 

 

―凄まじい脚力で跳躍し、龍雷を纏った爪で冰龍の胴体を切り裂いた。冰龍も直前で躱す動きを見せた為、深手を負った訳ではないが…

 

 

「キュオオオ…!?」

 

 

龍属性を纏った攻撃を食らったことで、傷口が蝕まれるような痛みを発する。歴戦の獄狼竜と共生してきた蝕龍虫は、普通の蝕龍虫よりも強く発達していた。

 

 

「ワオオオン!!」

 

 

空中で怯んだ冰龍を叩き落とすべく、獄狼竜は尻尾を振るった。

 

 

「キュオオオ…!」

 

 

冰龍は痛みに悶えながらも尻尾を躱し、即座に鋭利な尻尾での刺突による反撃を行う。

 

 

「ウオオオン!!」

 

 

ギャギィ!!

 

 

しかし獄狼竜は着地直後の攻撃を強靭な前足の爪で冰龍の尻尾を受け流す。そしてそのまま前足を振るおうとするが―

 

 

 

 

 

「キュルオオオ!!」

 

 

「!!」

 

 

ズドォ!!

 

 

 

 

 

―冰龍がカウンターも兼ねた氷の壁を生み出し、獄狼竜の攻撃を防ぐ。獄狼竜は間一髪で離脱し、冰龍の攻撃を回避した。

 

 

冰龍も今の攻撃が当たるとは思っておらず、仕切り直しの意味で氷の壁を作った。冰龍は獄狼竜について思い直す。身体能力や蝕龍虫も当然厄介だが、規模としては以前戦った鋼龍に劣る。だが何よりも扱って見せる獄狼竜の技量が凄まじい。

 

 

鋼龍は能力をフル活用して相手を翻弄し、戦いの流れを掴むことに長けていたが、獄狼竜は相手の攻撃を見切り、自身の攻撃を確実に叩き込む対応力が高い。鋼龍とはまた違った戦闘経験の多さ、以前までは古龍に敵わなかったからこそ出来る動きだろう。

 

 

「オオオ…」

 

 

氷の壁が破壊される様子はない。逃げたということはない筈だが、何もしないようなことを獄狼竜が選ぶだろうか?だが、いつまでも睨み合う訳にはいかない。手数と攻撃範囲はこちらが上回っているのだ。ならばそこを活かして勝ちに行くしかない。

 

 

「キュオオオ…!」

 

 

冰龍は能力をフル活用し、後方に羽ばたくと同時に自身の前方と空中に氷塊を生み出して獄狼竜の接近を牽制する。そして氷の壁目掛けてブレスを放つ。

 

 

ミシ…ミシ…!バギィン!!

 

 

ブレスを食らった氷の壁は砕け、ブレスと共に氷の礫として飛散する。獄狼竜は―

 

 

 

 

 

「ワオオオオン!!」

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

―凄まじい勢いで駆け、蝕龍弾で氷塊を砕きながら冰龍に向かっていく。その速さは先程までの比ではない。冰龍はその速度に驚き、獄狼竜の接近を許してしまうが、即座に尻尾によるカウンターを放つ。

 

 

だが、そんな苦し紛れの攻撃が獄狼竜に通用する筈もない。

 

 

「ワオオオン!!」

 

 

右半身を僅かに引き、刺突を躱すと、身体を引いた勢いを利用して冰龍の頭部目掛けて龍雷を纏った前足を叩き込む。

 

 

「ギュアアアン!?」

 

 

まともに食らった冰龍は頭部から血を流しながら吹き飛ばされる。

 

 

「グルルル…!」

 

 

唸る獄狼竜は、先程までとは見た目が変わっていた。角から背中にかけての甲殻が展開し、赤黒い龍雷を纏っていた。これが獄狼竜の真骨頂、「龍光纏い状態」だ。この状態の獄狼竜の猛攻は、他の地帯の主すら手を焼く。ましてやまともに一撃を食らった冰龍は―無事ではいられない。

 

 

「キュオ…、オオ…!」

 

 

冰龍は頭部から血を流しながらも立ち上がったが、その足取りは覚束ない。古龍の嫌う龍属性を纏った攻撃もあり、力も上手く制御出来ない。

 

 

「ワオオオン!!」

 

 

だが獄狼竜は攻撃の手を緩めない。蝕龍弾を発生撒き散らしながら前足に龍雷を纏わせ、冰龍に叩き込もうとする。

 

 

「キュ…オオオ…!!」

 

 

冰龍は安定しない力をどうにか振り絞り、地面にブレスを放ち、獄狼竜の進行を阻もうとする。

 

 

「オオオン!!」

 

 

しかし、一度対応出来た攻撃が獄狼竜に対応出来ない筈がない。龍雷を纏い、冷気を無効化しながら冰龍に突貫する。

 

 

「キュオオオ!!」

 

 

だが、躱されることなど冰龍も想定済みだ。安定しない力を全力で解放する。それも氷塊や氷柱ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

パキィン…!!

 

 

 

 

 

獄狼竜が反応する間もなく、一瞬で氷像が出来上がる。

 

 

冰龍は今の実力で獄狼竜に深傷を与えるのはおそらく不可能だと考え、躱すことが出来ない冷気による凍結が最も効果的だと判断した。おそらく氷像や氷柱では蝕龍弾などを活かして無効化すると考えた為、この一瞬が勝負だった。

 

 

「ゼェ…キュオオ…」

 

 

だが、勝利の代償もまた大きい。体力もほとんど尽き、冷気を操る力はもう使えない。獄狼竜を凍らせる為にそれ程の力を使ったのだ。龍属性を纏う獄狼竜を凍らせる為には、後先考えることは出来ないと判断した為だ。後は氷像を貫いて砕けばおしまいだ。そう思い、動こうとした時―

 

 

 

 

 

ピキ…ピシッ…!

 

 

「!」

 

 

 

 

 

―獄狼竜の氷像からヒビが入るような音が聞こえた。驚いて冰龍が氷像に目を向けると―

 

 

 

 

 

パキィ…!ビシィ…!

 

 

「!、キュオオオ!!」

 

 

 

 

 

―明らかにヒビが入り、しかもそれが大きくなっている。それを見た冰龍は傷付いた身体に鞭打って尻尾による刺突を行う。刺突が氷像に直撃する寸前―

 

 

 

 

 

パキィ…!バリィン!

 

 

「ワオオオン!!」

 

 

ズドォ!!

 

 

「ギュアアアン!?」

 

 

 

 

 

―氷像が一気に砕け、獄狼竜が冰龍に向かって突進し、冰龍が吹き飛ばされた。

 

 

「グルルル…!」

 

 

獄狼竜は大きなダメージを負ってはいるようだが、まだ戦うことは出来そうだ。冰龍の後を考えず力を出し切ったのは賢明だったが、龍属性をその身に宿し、かつ主に数えられる程の実力者だったのが不運だった。他の主であれば倒せずとも戦闘不能までは追い込めたかもしれない。

 

 

しかし、獄狼竜はここまで手傷を負ったのは久しぶりだった。これ程までの実力を見せた冰龍に敬意を表し、自身の全力で打ち倒すことを決める。

 

 

「ウオオオォォォォン!!」

 

 

「!、キュオオオ…!」

 

 

獄狼竜は吼えると同時に蝕龍虫を周囲にばら撒き、力を溜める。冰龍は何とか回避しようと獄狼竜を睨み付ける。そして―

 

 

 

 

 

「グオオオオ!!」

 

 

ズドン!!

 

 

「…!、オオオ…!」

 

 

 

 

 

―獄狼竜が回転しながら龍雷を纏い、冰龍に向かって突進する。そして傷付いた冰龍がそれを避けられる筈もなかった。突進をもろに食らい、氷の鎧も溶けて側にあった崖の下に落ちていった。

 

 

「……」

 

 

獄狼竜が崖を覗き込むも、冰龍の姿は確認出来なかった。だが、おそらく生きている。直感ではあるが、確信に近いものだ。

 

 

主として古龍の相手もしたことがあるが、あの冰龍は敗北を一度は経験している古龍だ。おそらく強くなる為にこの地を訪れたのだろう。獄狼竜も以前は氷雪地帯を支配していた古龍を越える為に戦いに明け暮れていた時がある為分かる。

 

 

きっとこれからもあの冰龍は苦汁を飲まされる経験を積むだろう。今回全力を解放してなお獄狼竜を越えられなかったように、主を除いてもあの冰龍と戦える強者もいくらか存在する。

 

 

それでも冰龍は諦めることはない。必ず生き残り、いつか獄狼竜に挑みに来るだろう。その時は全力で相手をする。主として、何よりも―同じ強さを求めて這い上がって来た者として。獄狼竜は冰龍に期待する。

 

 

だがまずは―

 

 

 

 

 

「グオオオ…!」

 

 

「…!」

 

 

 

 

 

―面倒な大喰らいをやり過ごさねばならない。

 

 

獄狼竜は若き古龍への期待を胸に、次なる戦いへと身を投じて行った。




はい、ファンの方には申し訳ないですが、カーナちゃんは今回も敗北です。分かりづらいですが、オウガ亜種も凍結した時点で大ダメージは受けてます。

閑話を挟んでそろそろ禁忌級の争いになると思います。

評価、感想もよろしければお願いいたします!

それでは次回をお楽しみに!

メインモンスター+αでコイツが好き

  • リオレウス
  • イャンガルルガ
  • クシャルダオラ
  • エスピナス
  • ティガレックス
  • ナルガクルガ
  • ラギアクルス
  • ジンオウガ
  • ブラキディオス
  • ゴア・マガラ
  • セルレギオス
  • 四天王
  • 双璧
  • ネルギガンテ
  • イヴェルカーナ
  • マガイマガド
  • メル・ゼナ
  • 今回の司会ちゃん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。