ずっと新作の方に掛かりっきりになっていまして、全く手が付けられていませんでした。ここからぼちぼち再開して行きますので、応援よろしくお願いいたします。
前回の戦いから大きくレベルは下がりますが、まあ初心に帰ってと言った感じで。
それではお楽しみください。
人間の手が届かない場所というのは、この世界に多くある。例えば溶岩流れる火山地帯、絶対零度の氷雪地帯、これらのような極地は、その代表例とも言えるだろう。極一部の例外は、それらの場所でも竜を打ち倒したりするが、大半の人間は、そんなことは不可能だ。
だが、そんな極一部の例外すら届かない場所がある。
それは―空だ。
こればかりは人間という生物の身体構造上、仕方のないことだ。それを補う為の方法として、飛行船なども開発されている。
だがやはり、空は飛行能力のある生物の世界であり、人間の手が出しづらい場所であることに違いはない。
そして空で強い生物と言ったら―大型の飛竜が挙げられる。
その中でも特に有名なモンスターと言ったら、やはり“空の王”という異名でも知られている火竜だろう。火竜の持つ空戦能力は飛竜の中でもずば抜けて高く、機動力の高さで知られる迅竜を捉えることが出来る程なのだ。空中で火竜と戦って勝てる生物は、古龍や古龍級生物でもなければ厳しいだろう。
だがやはり、どんなことでも例外という者は現れるものであり、火竜に襲い掛かる程凶暴で、火竜に勝ち得る程の空戦能力を持つ生物も―僅かだが存在する。
今密林の上空を飛行している飛竜、千刃竜はその例外の内の一匹だ。千刃竜の空中での機動力と、発達した脚から繰り出される蹴りの威力は、火竜であっても侮ることが出来ないものだ。
そして本来火山地帯や砂漠地帯を縄張りとすることが多い千刃竜がそのどちらとも違う密林の上空を飛行している理由だが、千刃竜は適応力の高い種であり、とある騒動の際に千刃竜が本格的に現れた時には、氷海などの寒冷地帯でも出現が報告されたのだ。縄張りを探していた為とはいえ、一時的になら寒冷地帯でも生息を可能にする程、千刃竜の適応力は高いのだ。
それからは騒動も収まり、千刃竜達も定住する縄張りを決めた為、火山地帯や砂漠地帯での出現がほとんどになった。
ならば何故今更になって縄張りを持たない千刃竜がいるのか?その答えは単純、この千刃竜は放浪癖を持っていたからだ。
モンスターごとにも性格はあり、凶暴性で知られている種でも、それぞれで個体差もある。例えば霞龍は滅多に姿を現さない程に温厚な個体もいれば、街を進んで襲撃するような凶暴な個体もいる。
「ピィィィ…」
千刃竜は眼下の密林を眺めて目を細める。中々良い場所だ。千刃竜は縄張りに選ぶ場所の性質上、海はほとんど見る機会がない為、一種の感動を覚えた。やはりたまには遠出をすることも悪くない。
千刃竜は満足し、踵を返して帰ろうとした時―
「ギシャァァァ!!」
「ピィィィィ!?」
―けたたましい咆哮と共に千刃竜に影が襲い掛かる。
「ギシャァァァ!!」
影は翼で千刃竜に殴り掛かる。並の飛竜種ならばこの時点で墜落、あるいはバランスを崩して劣勢は避けられないだろう。
「ピィィィィ!!」
だが、千刃竜は並の飛竜ではない。
千刃竜は敢えて後方に身を引いて敵対者の翼擊を避けると―
「ピィィィィ!!」
「ギャイイン!?」
―一瞬で加速し、敵対者を蹴り飛ばした。
流石に千刃竜の蹴りは効いたのか、敵対者も悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。
「ギシャアア!」
だが相手もただ者ではなく、落ち着いて体勢を立て直して見せた。その相手は―
―全身を刺々しい甲殻に覆われた電竜だった。
「ギュルルル…!」
電竜は千刃竜に唸り掛ける。その刺々しい身体と同じように、凄まじい殺意を千刃竜に向かってぶつけてくる。
電竜の凶暴性は全モンスターの中でも屈指のものであり、その性質は“超攻撃的生物”とも呼ばれるかの金獅子にも並び得る程のものだ。戦闘力の点では金獅子に一歩劣るものの、自然界における強者であることに変わりはない。
「ピィィィィ…!」
だが、千刃竜もただ押されるだけではない。放浪癖という変わった点はあるものの、元々持っている攻撃性まで失っている訳ではない。相手から喧嘩を売られて黙っていられる程腑抜けてはいない。
そうして互いに空中で睨み合い―
「ギシャアアアアァァァァ!!!」
「ピイイイイィィィィン!!!」
―空の王にも抗う二匹の反逆者達が激突した。
「ギシィィィ!!」
電竜は先手必勝と言わんばかりに電気を纏った鍬形の尻尾で千刃竜を貫こうとする。
「ピィィィィ!!」
千刃竜はその攻撃をあっさりと躱すと、意趣返しと言わんばかりに尻尾を振るい、鋭い刃鱗を飛ばす。攻撃直後の電竜に回避は難しいと思われたが―
「ギシャアア!!」
―電竜は翼を振るい、刃鱗を弾き飛ばした。
この武器になる部位が多いのは、電竜の強みの一つだ。本来飛竜種―というより飛行能力を持つ生物にとって翼というのは生命線である為、非常にデリケートな扱い方が基本だ。
そんな中で翼を主な武器として扱う電竜は異端だ。他にも鍬形の尻尾、頭部の鶏冠も電気を纏わせれば立派な武器となる。この武器の多さが電竜の強さの一端を担っていることには違いない。
「ギシィィィ!?」
だが、武器を持っているのが電竜だけとは限らない。
刃鱗を弾いた電竜の翼には、細かい切り傷が出来ていた。これは先程千刃竜の刃鱗を弾いた際に出来た傷だが、武器として扱っても問題ない程に丈夫な電竜の翼に傷を付けるのは、相当の切れ味がなければ厳しい。
だが千刃竜の鱗は刃鱗と言われるだけあり、相当の鋭さを誇っている。少し触れるだけでも、複雑な傷を付けてしまうのだ。
「ピィィィィ!!」
千刃竜は今度は頭部と身体の鱗を逆立たせ、刃鱗を射出して電竜を狙う。
「ギシャアア!」
だが、同じ攻撃を何度も食らう程電竜も甘くはない。受けるとマズイなら、全て躱してしまえば良いだけの話だ。
電竜は千刃竜に向かって突貫し、刃鱗を素早く躱した後、翼の振り上げる。
「ピィィィィ!!」
しかし千刃竜も刃鱗が何度も通用するとは思っていなかったのか、少し後ろに身を引き、脚を構える。
そして互いの攻撃圏内に入った瞬間―
「──────────!!」
―ズドン!!と、電気を纏った翼と爪を立てた脚が激突した。一瞬拮抗したようにも思われたが―
「─ッ!」
―雷が弱点であったことが優劣を決めたのか、千刃竜が僅かに後ろに下がった。そしてその隙を電竜が見逃す筈もない。
「ギュアアア!!」
電竜は下がった千刃竜に対してブレスを放ち、何度も攻撃したことで電荷した翼を振り上げて千刃竜に襲い掛かる。
「ピィィィ…!」
千刃竜はブレスを回避することは出来たものの、続く電竜の猛攻には劣勢を強いられる。自身の弱点である雷を纏っているのが厳しい。これが炎や他の属性だったなら、多少のダメージを気にせず反撃する選択肢もあっただろうが…
「ギシャアア!」
刃鱗を飛ばして応戦するも、雨あられのように飛ばせるのならばともかく、一定箇所にしか飛ばせず、追尾する訳でもない飛び道具で電竜が止まる訳もない。必要最低限の動きで躱し、千刃竜に迫って行く。そして遂に―
「ギシャアア!!」
「ピィィィン!?」
―電竜の翼が千刃竜を捉えた。殴り飛ばされた千刃竜は落下して行き、電竜は止めを刺そうと千刃竜に迫る。
だが、その一撃が千刃竜に一線を越えさせることになった。
「ピィィッ!」
「!?」
千刃竜は錐揉み回転していた体勢を立て直す。電竜がその様子を見て驚いたその刹那―
「──────ッ!!」
「ギュアアン!?」
―千刃竜が急加速し、電竜の頭部を一瞬で蹴り飛ばした。その身体の鱗はほとんどが逆立ち、威圧感のある様相になっている。だが胴体には、先程の電竜の一撃の痕が残っていた。
千刃竜は先程の電竜の一撃を食らった時点で、このままでは劣勢を覆すことが出来ないことを察し、全力で電竜を相手にすることを決めた。出来ることなら、今の一撃で手打ちにしたいのだが…
「ギシャアア!」
電竜は恐れることなく、むしろ怒りの乗った瞳で千刃竜を睨み付けて来る。その身体は全ての部位が電荷していた。まだ戦い続けることを主張するかのように。千刃竜にとっては面倒だが、ここまで来た以上中途半端には終わらせられない。かなりのダメージを負う覚悟で相手をしなければ、下手をすると命を落としかねない。全力で迎え撃つ。
そうして空のギャングは向かい合い―
「ギシャアアアァァァァ!!!」
「ピイイイイィィィィン!!!」
―ドッグファイトならぬドラゴンファイトが始まった。
「ピィィィィッ!!」
最初に仕掛けたのは、先程とは変わって千刃竜だった。身体を振るわせ、刃鱗を電竜に向かって飛ばす。
「ギュルアア!」
だが何度も見ている以上、電竜は簡単に躱して見せる。もう余程のことでは刃鱗が通用しないこと位、千刃竜自身も分かっている筈だが…
だが、今の千刃竜にとってはその
「─────!!」
「ギュアアン!?」
千刃竜は電竜の回避を見た瞬間、先程までとは比べ物にならない速さまで加速し、電竜に強襲を仕掛けた。電竜は何とか直撃は避けたものの、千刃竜の身体がカスってしまい、バランスを崩してしまう。
「ピィィィィン!!」
「ギュアア…!」
そして更に出来た隙に刃鱗を飛ばし、電竜に回避を強要させ、先程までとは逆の立場、千刃竜が仕掛け続け、電竜が劣勢に追い込まれた。
千刃竜は飛竜種としては珍しく、何の属性も持たない。だが、危険度としては電竜や火竜と同等として扱われている。その理由は今電竜が劣勢になっていることからも分かる通り―
―千刃竜の飛行能力は、電竜や火竜と比べても更に秀でたものだからだ。
千刃竜の刃鱗がかなりの速度で飛んで行くことからも分かる通り、刃鱗そのものはあまり重くないが、堅牢さも兼ね備えた優秀な素材だ。
そのお陰で体重もわりと軽いのか、千刃竜の普段の飛行速度は電竜や火竜と同等だが、圧倒的な急加速が可能なのは千刃竜の特権だ。
「ギュルルル…!」
電竜は攻め立てられていることに屈辱を覚えるが、何とかそれを飲み込み、逆転の術を考える。まず最も手堅いのはカウンターだが…おそらくそれは難しい。
千刃竜もそれは考えているだろうし、それをさせない為に多角的な攻撃を行っているし、接近するのも基本的に一瞬だ。身体を使ったカウンターはどうしても前動作が生まれてしまう為、千刃竜にはそれを悟られてしまう可能性が高い。
ならば―それを利用するのが良いだろう。電竜は内心でほくそ笑んだ。
千刃竜は一方的に攻め立てていた。電竜も時折カウンターの動きを見せたが、千刃竜は紙一重でそれを躱し、電竜に傷を与え続けることに成功していた。
が、油断はしない。電竜が凶暴なのはこれまでの戦いの中で分かっていたが、考え無しだとは思っていない。でなければここまで生き残れていないからだ。だからこそ、油断なく、確実に仕止める。
「ピィィィッ!!」
何度目かの攻防、電竜に向かって突貫すると同時に身体を旋回させて刃鱗もばらまく。どちらかに対応しようとすれば確実に食らってしまう。刃鱗か蹴りか、電竜が選んだ方は―
「─────!」
―蹴りの方だった。刃鱗は真っ直ぐにしか飛ばない為、対処が楽だと踏んだのだろう。実際その選択は間違っていない。―千刃竜に予想されていなければの話だが。
「ピィィィ!!」
電竜が蹴りを躱したと思った瞬間、千刃竜はカーブして電竜を追った。
千刃竜の飛行能力の優れた点は、急加速だけでなく、空中での小回りが効きやすいことだ。咄嗟に完璧な動きをすることは難しいが、予め予想していれば、他の飛竜種にとって難しい動きでも、千刃竜ならば可能となる。
完全に千刃竜が電竜の上を行った。だが、予想しろというのが無茶振りに等しいものだ。
―それは、
「ギシャアアアア!!」
「ピィィィン!?」
千刃竜の蹴りが電竜に直撃する寸前に、電竜は翼を起点として放電を放ち、千刃竜はそれをもろに食らい、大ダメージを受けてしまう。
電竜も千刃竜の動きを予想していたのだ。千刃竜ならば何かしらの方法で自身に攻撃を当てて来るだろうと―それがまさか急カーブするという力業だとは思わなかったが、近付いてくれればそれで良かった。
翼を起点とした放電も初めての試みだったが、今までも全力の攻撃と同時に放電が出来ていた為、放電の感覚自体は知っていたのだ。
さて、これまで好き放題された分の借りは返せたが、まだ息がある。生かして返すつもりはない。ここで確実に死んでもらう。
「ギシャアアアア!」
電竜はその決意を抱き、傷付いた身体に構わず千刃竜に向かって突貫する。
「…!」
放電によって大ダメージを受けた千刃竜は傷付きながらも殺意を衰えさせることなく向かって来る電竜を視界に捉える。その過剰な姿勢に半ば感心しながらも思う―ここが潮時だと。
「─────!」
「!ギュルルルアア!」
千刃竜が電竜に背を向けて飛び立ち、電竜はそれを追うように後を追いかけるが…
「ギュルルル…!」
やはり飛行能力自体は千刃竜の方が上手なのか、追い付くことは出来なかった。
電竜は逃がしてしまったことに苛立ちながらも、自身も傷付いていたことを思い出し、追撃を諦める。今回は逃がしてしまったが、放電という攻撃法を閃いただけ収穫はあっただろう。もっと深掘りするのも良いかもしれないと、凶暴ではあるが、強さに対して生真面目でもある電竜であった。
「ピィィィ…!」
千刃竜は放電に焼かれた身体を庇いながら空を飛んでいた。実は今回のように放浪先でその地のモンスターとかち合ったのは初めてではない。電竜程手強い相手は珍しいが、その手間を考えても放浪を止める気にはなれなかった。
むしろそういった戦闘も放浪の醍醐味として捉えている。流石に毎度殺し合いはごめんだが、他の土地のモンスターを見るのも悪くない。
そうした思いを抱き、千刃竜は次なる未知に心を踊らせるのだった。
空の王にも抗う者達は、今日も自らの意思のままに生きている。
はい、屈指のドッグファイトが期待できる組み合わせでした。
よろしければ新連載の方もご一読ください。
↓
https://syosetu.org/novel/320109/#
評価、感想もお待ちしています。
それでは次回をお楽しみに。
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