こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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はい、遅くなってすみませんでした…仕事とアプデによる周回に明け暮れていました。

今回はリクエストからの組み合わせです。

それではお楽しみください。


死の国

 新大陸には、他の大陸にはない環境がいくつか存在する。代表的なものと言ったら“陸珊瑚の大地”が挙げられる。本来なら海に発生する筈の珊瑚とそれを取り巻く環境がそのまま陸に上がったかのような、幻想的な環境が出来上がっている。

 

 

 

 

 

 だが、表があれば裏があり、美しい場所の裏には…薄汚い穢れた場所もある。

 

 

 

 

 

 陸珊瑚の大地の丁度真下、下層に位置する場所には、幻想的とは真逆の環境が広がっている。

 

 

 生物の骨や死体、腐肉で溢れ、それらが腐ることによって有害な瘴気を放ち、更に下層に降りると死体や瘴気は少なくなるものの、今度はほとんどの生物が溶かされる強酸の池が広がっている。その名も“瘴気の谷”まさにあの世とも思える光景だが、新大陸の環境を維持する上でなくてはならない場所だ。

 

 

 何故なら新大陸のほとんどの生物、それこそ古龍ですらこの地を死に場所として目指すからだ。この地は大昔に複数の超大型古龍の死体から発生したエネルギーを基に創られ、その影響なのか、生物が惹き寄せられる性質がある。そしてこの地の最下層から地脈にダイレクトに繋がっている為、この地で息絶え、分解された生物のエネルギーは、地脈を通って新大陸全体に浸透し、各地を豊かにするのだ。

 

 

 そしてこの瘴気の谷の主とも言える古龍が存在する。

 

 

「オオオ…」

 

 

 その古龍は谷の中層部を練り歩いていたが、その姿を見ると誰もが驚くだろう。全身を赤黒い腐肉で覆い、頭部からは黄色い眼光が覗いている。一見すると、古龍の骨格の死体が動き出したようにしか見えない。

 

 

 だが良く見ると腐肉は表面上だけであり、その下には銀色の甲殻が見え、一見瞳にも思える黄色い眼光も本当の瞳ではなく、その下に僅かに覗く赤い瞳が本当の瞳だ。

 

 

 この古龍こそが、瘴気の谷を牛耳る主─

 

 

“屍套龍”

“ヴァルハザク”

 

 

「オオオ…」

 

 

 屍套龍は周囲の瘴気を吸収しながらゆっくりと歩き回っていた。屍套龍の古龍としての力は“微生物を操る力”であり、この地に満ちている瘴気も微生物である為、屍套龍はその微生物から養分の吸収し、自身のエネルギーにしているのだ。

 

 

 そして屍套龍は新大陸になくてはならない存在でもある。瘴気の谷から新大陸全体に繋がる地脈が流れているが、それはこの地が瘴気に飲み込まれ、谷が滅んでしまえばその影響は新大陸全体に及び、新大陸も滅んでしまうことを意味する。そこで瘴気から養分を吸収する屍套龍の存在で、瘴気が増えすぎてしまうことを結果的に防いでいるのだ。

 

 

 容易く生物を滅ぼすことの出来る能力を持った古龍であろうとも、自然のサイクルの一部なのだと感じることが出来る代表格だろう。

 

 

─その滅びもまた、自然のサイクルであるのだが。

 

 

 

 

 

「ゴオオオ…!」

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 屍套龍の背後に、白い闇が舞い降りた。

 

 

 その生物は屍套龍とは真逆に美しい白い甲殻に覆われ、翼と前足の役割を兼ね備えた翼脚で地面を捉えていた。そしてその身体からは、瘴気にも似た黒い靄のようなものを放出していた。

 

 

 その生物は天を廻り還る龍─天廻龍だった。

 

 

「ゴオオ…!」

 

 

「!」

 

 

 天廻龍は周囲を見渡して屍套龍を確認すると、威嚇してウイルスを散布する。どうやら死期を悟ってこの地を訪れた訳ではなく、単純に惹かれ、縄張りにしたいだけのようだ。

 

 

「ウオオオ…!」

 

 

 だが屍套龍は立ち退くつもりはない。余所者がそんな態度を取ったこともそうだが、そもそも屍套龍の能力の都合上、瘴気の谷以上に適した環境がないのだ。屍套龍自身は好戦的ではないとはいえ、こんな状況になれば戦わざるを得ない。

 

 

 互いに相手が逃げないと分かったのか、屍套龍は上半身を持ち上げて、天廻龍は翼脚で強く踏みしめ─

 

 

 

 

 

「ウオオオォォォォン…!!!」

 

 

「ガアアアアァァァァ!!!」

 

 

 

 

 

─谷中に咆哮を響かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガアアアア!!」

 

 

 天廻龍は咆哮すると即座に翼脚を振り上げて、屍套龍を叩き潰そうと狙う。実際天廻龍の翼脚の威力は地面を砕き揺るがす程であり、同じ古龍といえども食らえばただでは済まない。

 

 

「ウオオン…!」

 

 

 だが屍套龍はその見た目とは裏腹に素早い動きで翼脚を躱すと、瘴気を集めたブレスを放った。谷に充満している瘴気とは違い、屍套龍の能力の影響を受けた瘴気なら、並の生物であれば一瞬で動けなくなる程の力だ。古龍であろうとも食らえば劣勢になるのは避けられない。

 

 

「ガアアアア!!」

 

 

 天廻龍は迫ってくるブレスに対して、対抗するようにブレスを放った。すると─

 

 

 

 

 

「「─────!!」」

 

 

 

 

 

─互いのブレスが相殺し合い、爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

「ガアアアア!!」

 

 

 天廻龍は爆煙が収まるのを待たず、奇襲しようと屍套龍が居るであろう場所に飛び掛かった。

 

 

「!?」

 

 

 だが振り下ろした翼脚は瘴気の煙を裂いただけで、屍套龍はその場に居なかった。何処に行ったのかと天廻龍が周りを見渡すと─

 

 

 

 

 

「ウオオオ…!!」

 

 

「ガアアア!?」

 

 

 

 

 

─瘴気の幕を破り、屍套龍の突進が天廻龍を襲った。側面からの攻撃には天廻龍も即座に反撃は出来ず、吹き飛ばされる。

 

 

「ウオオン…!」

 

 

「!」

 

 

 吹き飛ばされた天廻龍が体勢を立て直して屍套龍の姿を捉えると、屍套龍は上半身を持ち上げて吼えていた。すると辺りの瘴気がまるで意思を持っているかのように動き、竜巻のように渦を巻く。そして─

 

 

 

 

 

「ウオオオオン…!!」

 

 

「ッオオ…!」

 

 

 

 

 

─屍套龍がより強く吼えると、瘴気の竜巻は炸裂し、天廻龍をも巻き込んだ。瘴気に飲み込まれた天廻龍は、自身の体力が奪われていくのを感じていた。

 

 

「ゴオオオ!!」

 

 

「!」

 

 

 それでもまだ戦えることを示すかのように、天廻龍は翼脚で周囲を薙ぐと、その軌跡が狂竜ウイルスによって炸裂し、辺りの瘴気が晴れた。

 

 

「オオオ…!」

 

 

「…!」

 

 

 だが再び屍套龍が吼えると、また何処からともなく瘴気が辺りに漂い始めた。

 

 

「……」

 

 

 やはりか、と天廻龍は察する。屍套龍が操ることが出来るのは、自身に取り込んだ瘴気だけでない。文字通り()()()()()を操ることが出来るのだと。

 

 

 そして周囲の全てが瘴気に包まれているこの地は生活面だけでなく、戦闘面でも最高という訳だ。別の地ならば天廻龍の狂竜ウイルスがもう少し効果を発揮したかもしれないが、屍套龍の領域であるこの地においては能力の比べ合いだと向こうの方が上回っており、ウイルスもそこまで機能しておらず、精気を奪われ、弱体化してしまっている。

 

 

 だが裏を返せば─この優位さえ無くしてしまえば、まだ勝ち目もあるということ。普通のモンスターならば不可能だが、天廻龍は自然の猛威の化身、古龍だ。当然その術も持っている。

 

 

「オオン…!!」

 

 

「─ッ!」

 

 

 屍套龍が瘴気を操り天廻龍を飲み込もうとするが、天廻龍は素早く飛翔して回避し、そのまま空中で静止すると─

 

 

 

 

 

「ゴアアアアァァァァ!!!」

 

 

 

 

 

─周囲の瘴気を上回る程の狂竜ウイルスを放出しながら、翼脚を広げて吼えた。屍套龍は力を全て解放した天廻龍を警戒し、様子を伺っていると─

 

 

 

 

 

ドンッ!!

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

─すぐ側の地面が炸裂し、狂竜ウイルスを撒き散らした。周囲を見回すと、あちこちで同じ現象が起こっていた。屍套龍はこのままでは天廻龍の力に飲み込まれてしまうことを危惧し、こちらも全力を出すことを決める。

 

 

 

 

 

「ウオオオォォォォン…!!!」

 

 

 

 

 

 屍套龍が上半身を持ち上げて吼えると、ウイルスに飲み込まれかけていた瘴気が一気に勢いを取り戻し、ウイルスを押し返した。

 

 

「…ゴオオオ…!」

 

 

「…オオオン…!」

 

 

 二匹は改めて向かい合い、威嚇する。黒いウイルスの中で輝く天廻龍の身体と、薄汚れた瘴気の中に佇む屍套龍の対峙は、とても不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

 

「ゴアアア!!」

 

 

 天廻龍が翼脚を振り上げ、屍套龍を八つ裂きにしようと狙う。しかも周囲にはウイルス炸裂の前兆も見えており、逃げることが難しい状態だ。全方位の逃げ場が塞がれた状態で屍套龍は─

 

 

 

 

 

「オオオ…!!」

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

─何と瘴気で炸裂を最小限に抑え、敢えて天廻龍に向かって突進した。

 

 

「グッ…!」

 

 

「…ッ、オオ…!」

 

 

 天廻龍の翼脚と屍套龍の突進が激突し、互いの身体から不穏な音が聞こえたものの、拮抗状態にもつれ込んだ。

 

 

「ゴ…オオオ!!」

 

 

「ウオオオ…!?」

 

 

 だが単純な身体能力なら天廻龍の方が勝るのか、天廻龍は屍套龍の身体をずらし、地面に叩き付けることに成功した。

 

 

「オオオ…!!」

 

 

「ゴオオオ…!?」

 

 

 だが屍套龍もただでは起きない。叩き付けられた瞬間にブレスを天廻龍に向かって放ち、天廻龍が怯んだ隙に脱出した。

 

 

「ウオオオ…!!」

 

 

 そしてそのままの勢いで屍套龍は空中へ飛翔する。全力を解放した天廻龍もやはり手強いが、あの厄介な地雷のような炸裂は地上でしか起こらないことが分かった。ならば当然、それを活かさない手はない。完全に優位を取れるとは言い切れないが、予期せぬ不意打ちを気にしなくて良いだけ十分だ。

 

 

「ゴオオオ!!」

 

 

 だが天廻龍も多少武器を封じられた程度で臆する訳もない。躊躇いを感じさせない勢いで屍套龍を追って飛翔すると、ブレスを連射して屍套龍を狙う。

 

 

「オオオン…!!」

 

 

 屍套龍はブレスを上手く躱すと、自身の周りの瘴気を更に濃く纏い、それに伴って瘴気が霧のように広がっていく。

 

 

「ゴアアアア!!」

 

 

 天廻龍は瘴気で自身の体力が奪われていくのも厭わず、ブレスを球形ではなく鱗粉のようにして放ち、瘴気の影響を最低限に抑えながら屍套龍に突貫する。

 

 

「ゴオオオオ!!」

 

 

「オオオン…!!」

 

 

 互いに空中で激しくぶつかり合うが、中々決定打を打ち込めない。しかしウイルスと瘴気によって体力は消耗していく。

 

 

「オオオオ…!!」

 

 

「ゴ…オオオ…!」

 

 

 だが、徐々に戦況が屍套龍の方に傾いてき、天廻龍が劣勢になり始めた。屍套龍は周囲の瘴気で少しずつでも回復出来るのに対して、天廻龍はそういった回復手段を持たない。ウイルスで瘴気の働きはある程度抑制出来るものの、それでも無効化出来る訳ではないし、屍套龍の影響を濃く受けた瘴気の谷の環境を強引に変えることなど、それこそ力量で完全に屍套龍を上回ってなければ不可能だ。このまま続けても状況が悪化するだけだろう。

 

 

 ならば─一か八かに賭けて大技で決める。

 

 

 

 

 

「オオオ…!」

 

 

「!」

 

 

 天廻龍が翼脚を広げて口内に力を収束させる。屍套龍は感じる力の大きさから大技で勝負を決めるつもりだろうと察する。

 

 

「ウオオ…!」

 

 

 屍套龍も同じように周囲の瘴気を吸収し、口内に収束させる。

 

 

 そして二匹の力が極限まで高まり─

 

 

 

 

 

「「──────────!!」

 

 

 

 

 

─あらゆる生物を死に至らしめる攻撃が激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オオン…」

 

 

 爆煙が少し収まり、屍套龍が顔を上げると天廻龍はそこにいなかった。警戒して瘴気で索敵するが、本当に気配は感じない。倒せないと分かっていたのか、あるいは別にこの地に拘る必要がなかったのかは分からないが、大技を放ってすぐに逃げたようだった。

 

 

「…オオオン…」

 

 

 屍套龍は少し気を抜き、周囲を見渡してため息を吐く。辺りには天廻龍の残したウイルスが残穢のように漂っていた。時間をかければ元に戻すことは全然出来るだろうが、相当面倒だ。だが、戻さねば屍套龍にとっても死活問題になる為、戻さなければならない。天廻龍が去った為、惨爪竜が襲ってきた時にはその対処もしなければならない。問題が山積みであることを認識しもう一度ため息を吐き、身体をまずは身体を休めることにした。

 

 

 

 

 

─この選択が更なる問題に繋がることを、この時の屍套龍は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴオオオ…」

 

 

 瘴気の谷を去った天廻龍は、傷付いた身体で新大陸の空を飛んでいた。大技を放ち、屍套龍がどうなったかを確認せずに離脱したが、十中八九生きているだろうと天廻龍は考えていた。あの地で屍套龍を仕止めようと思うなら、完全に力量で上回ってなければ不可能だろう。

 

 

 敗走に近い形になってしまったのは少々不服だが、最低限の目的は達したし、住処に関しても別の地にしても良い。折角この瞳で世界を感じることが出来るようになったのだ。自身の好きなように生きねば勿体ない。他の何にも干渉されることなく…

 

 

 あらゆる生物の敵とも言える力を司る天廻龍は、一切の悪意も害意も無く、大空を駆けて行った。




はい、間違いなくテロが起こりそうな組み合わせでした。

折角リクエストしてくれたのに5000字行かなくて申し訳ありません…次はもっと頑張ります…

皆さんもよろしければリクエストどんどん送ってきてください。

評価、感想もよろしければお願いいたします。

それでは次回をお楽しみに。

メインモンスター+αでコイツが好き

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