こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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レウス亜種君誰と当てようかと思ったけど、格上と当たっても喜ぶ戦闘マシーンがいたので問題ありませんでした。

それではお楽しみください!



王ついばむ憎まれっ子

―そこは海を越えた先にある大陸。数多くの生物、古の龍達ですらその場所を目指し、まるで何かに導かれるかのように人間達もその原因を調べるべく海を渡り、その場所に上陸する。その名は“新大陸”。

 

 

そして新大陸を目指し、最初に目にすることになるのはこの場所だろう。天を貫くのではないかと思える程に伸びた巨大な大樹、その下に出来た大樹とまた別に生えてきた植物達で構築された巨大な森。それはそれはとても複雑に出来ていて、巨大な木と言うよりは、複雑な数十階建ての建物のようでもあった。

 

 

この場所の名は“古代樹の森”。新大陸で一、二位を争う程に住みやすい場所だろう。実際、植物は辺り一面に数え切れない程生えているし、草食種にとっては餌には困らないだろう。天候も、古の龍達が訪れない限り は、基本的に安定している。

 

 

だが、大人しい草食種が多く存在するということは、それを狙う捕食者達も数多く存在するということだ。実際、古代樹の麓、森に入って直ぐの辺りは、今は賊竜が子分達と共に縄張りにしているし、古代樹の中腹、複雑な段差が広がっている辺りは、野蛮な暴れん坊の蛮顎竜が縄張りにしている。だが、今古代樹の森の主と言えるものは彼しかいないだろう。

 

 

空をそのまま鱗や甲殻に落とし混んだとも思えるような深い蒼の体色、身体を覆えるのではないかと思える程の巨大な翼、そしてその翼膜は濃く、深い緑色に黒の模様が迸るように広がっている。その身体の形は世界で最も有名な飛竜の王の姿に似ているが、それを知る者は首を傾げる筈だ、ー赤い鱗と甲殻をしていなかったか?ーと。

 

 

だが、そう疑問に思う者がいるのも仕方ないだろう。何せその竜はモンスターを狩ることを生業としている者でも、滅多に目に掛かることがない竜だったからだ。“蒼天の王”とも言われるその竜の名は―

 

 

“蒼火竜”

“リオレウス亜種”

 

 

そう、蒼い甲殻が身体を覆う世にも珍しい火竜の亜種だ。なぜ火竜の亜種の甲殻が蒼いのか、生まれた時から蒼いのか、あるいは通常の火竜から亜種になれるのか、そうだとするならどういった条件下で変化が起こるのか、そういった亜種になるメカニズムなどは現在でも研究中だ。生態自体は通常種と大きな違いは無いとされているが、狩りを行う上で、蒼い甲殻が保護色の役割を果たし、獲物に気付かれにくくする役割があるとされている。そしてもう一つ、これは蒼火竜に限ったものではなく、亜種とされるモンスターの殆どに言えることではあるが―

 

 

―通常種を上回る実力を身に付けているということ。例えば蒼火竜ならば通常種以上の飛行能力と火力。通常種と同じ属性や戦闘スタイルを取るモンスターならば、通常種の強みを更に伸ばし、手強くなっているのが殆どだ。また、稀に通常種とは別の属性を操る種も存在するが、総合的な実力はやはり通常種を上回る。それどころか、長い年月を生き抜き、死線をくぐり抜け、歴戦と言われる程の力を付けた角竜と雷狼竜の亜種は古龍にすら対抗し得る程にまで強くなるという。

 

 

流石にこの蒼火竜はそれ程の力はないものの、それでも強者ひしめく新大陸でここまで生き残り、縄張りを維持できる程の力があるのは事実だ。実際、つい数日前は他所から来た迅竜を追い返して見せた。多少の手傷は負ったものの、大した傷ではない。

 

 

大型の飛竜すら追い返して見せた蒼火竜に勝てる可能性があるのは、古龍やそれに匹敵する力を持ったモンスターを除くと、大型飛竜クラスの実力者の亜種、そうでなければ幾度もの死線をくぐり抜け、長い年月を生きた相当な歴戦の強者でなければ、通常種の大型竜が対抗するのは難しいだろう。

 

 

正に古代樹の森は蒼火竜が支配していると言っても過言ではない。

 

 

当の本人である蒼火竜は古代樹の頂上、殆どの飛竜が巣とする場所で翼を下ろし、のんびりと休憩していた。隙だらけではないかと思う者もいるかもしれないが、蒼火竜は休憩していても、油断や慢心をしている訳ではない。それに気付くことなく愚かにも挑んだ者は、蒼火竜の炎で物言わぬ屍になったか、傷を負って追い返された。実際、実力差が分かっている蛮顎竜や賊竜はいついかなる時でも絶対に蒼火竜には挑まない。当然だ。誰が好き好んで挑む必要の無い死ぬ可能性のある格上に挑むというのか。

 

 

 

 

 

―そんな愚か者が

 

 

 

 

 

―世界に一種類だけ存在する

 

 

 

 

 

ドドドドン!

 

 

 

 

 

重い砲弾でも放ったのかとでも思えるような音が連続で聞こえ、蒼火竜は顔を上げると、複数の火球が目の前に迫っていた。普通であれば避けられないが―

 

 

 

 

 

「グオオン!」

 

 

 

 

 

―蒼火竜ならば避けられる。蒼火竜は横にステップを踏むように避けると、そのまま地を蹴り、空へ飛ぼうとするが、その時だ。

 

 

 

 

 

「ガルウウン!」

 

 

「グオオオ!?」

 

 

 

 

 

紫色の何かが蒼火竜の方へ突っ込んできた為、そのまま二匹は古代樹の中腹へもみくちゃになりながら落ちていく。

 

 

「ガルウウン!」

 

 

「グオオオオ!」

 

 

蒼火竜は目の前の何かに豪火球を放ち、引き離そうとするが、相手がしつこく顔を啄んで来る為、豪火球を放つことが出来ない。ーが、されるがままで終わる蒼火竜ではない。蒼火竜の攻撃手段は豪火球を放つことだけではないのだ。

 

 

「グオオオオオ!」

 

 

「ギャウウン!?」

 

 

蒼火竜は顔を啄まれながらも身を捩り、相手の身体が足の位置にあることを確認すると、一瞬身を引くと、そのまま勢い付けて相手を蹴り飛ばした。相手は驚いた声を上げながら、地面に叩き落とされたが、すぐさま体勢を整えて見せた。そしてまた蒼火竜も何とか空中で体勢を立て直し、滞空したまま襲撃者の姿を捉える。

 

 

そのモンスターは、全身が毒々しい紫色の甲殻に覆われ、身体の形は蒼火竜に近い形、一対の翼に二足の足で立つという姿勢を取っていた。だが明らかに違う点が顔だ。竜というよりは鳥に近い形で、薄紫の鋭い嘴を持ち、首元からは銀色のたてがみを短く生やし、紫色の耳を立て、無遠慮な視線を蒼火竜に向けている。この鳥竜が数多く存在するモンスターの中で唯一、“戦闘そのものを好む”という異質な生態を持つモンスター。

 

 

“黒狼鳥”

“イャンガルルガ”

 

 

黒狼鳥はギラついた目で蒼火竜を見つめ、内心で歓喜する。自分を楽しませることの出来る、自分と対等以上に戦うことが出来る相手と出会ったことで、黒狼鳥の昂りは凄まじいものになっていた。

 

 

その性質は明らかに異質なものだった。従来から攻撃性の強いモンスターや縄張り意識の高いモンスターはいても、戦いたいから戦うというモンスターは黒狼鳥しかいない。凶暴性の高いモンスターは金獅子や恐暴竜が有名だが、前者は過剰なまでの縄張り意識の高さから、後者は生きる為には食べ続けなければならないという生命維持の為だし、いくら古龍に引けを取らない強さを持つこの二匹でも、分が悪ければ退散するぐらいの頭は持ち合わせている。

 

 

だからこそ、この二匹より戦闘能力が低い黒狼鳥の命知らずとも言える無茶苦茶な生き方は全てのモンスター、古龍を含めても一際異常なものだった。

 

 

が、黒狼鳥からすればそんな自覚はない。ただ自身の感覚に従い、好きなだけ強いものを求め、己の強さを極める。

 

そしてそれは蒼火竜も同じ。自らの縄張りに入り込み、その上無謀にも自身に喧嘩を売ってきたのだ。そんなことをされて黙っていられる程、蒼火竜は甘くない。この生意気な侵入者には教えてやらねばねばならない。ーこの森の主の強さを

 

 

 

 

 

「ガルルオオオオオオ!!!」

 

 

「グオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

 

 

片や歓喜を、片や怒りを込めた咆哮を古代樹の森に響かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガルアア!」

 

 

黒狼鳥は我慢出来ないと言わんばかりに蒼火竜に飛び掛かった。蒼火竜と比べると細いその足からは考えられない位の速さだった。

 

 

「グオオン!」

 

 

蒼火竜はそれを横に飛翔しながら躱し、火炎放射状にブレスを放った。ブレスの軌道上に生えていた植物は一瞬で炭に変わった。黒狼鳥もブレスを食らい、怯むかと思われたが―

 

 

 

 

 

「ガルアア!」

 

 

 

 

 

―何と咆哮を上げながらブレスに向かって突貫し、その勢いのままに尻尾を振り上げてサマーソルトを仕掛けて来たのだ。蒼火竜はその一撃を顎に貰ってしまう―と思われたが、

 

 

 

 

 

「グオン!」

 

 

 

 

 

何と翼をはためかせ力を貯めながら後ろに下がり、紙一重で黒狼鳥のサマーソルトを躱すと同時に渾身の豪火球を打ち出したのだ。

 

 

「ガルアン!?」

 

 

まさか躱されると思っていなかった黒狼鳥は蒼火竜の豪火球をもろに食らってしまい、爆発と共に吹き飛ばされた。

 

 

蒼火竜は滞空したまま黒狼鳥から視線を外さない。そう、彼は戦いの経験から知っていたのだ。炎や雷を扱うモンスターは自身と同じように炎に耐性があると。それは以前ここに来た時に蛮顎竜を相手にした時に分かったことだ。そして蛮顎竜以上の実力を持つ黒狼鳥ならば、生半可な炎ではダメージになりにくいと考え、自身の全力の豪火球を叩き込んだのだ。あれでダメージを負っていないというのは考えづらいが、起き上がって来る可能性は高い筈だ。そのまま退散するのならば良いが…と蒼火竜が考えた次の瞬間―

 

 

 

 

 

「ガルルアアア!!」

 

 

 

 

 

―爆煙を突っ切り、身体から煙を上げながら黒狼鳥がこちらに向かって突進してきた。が、備えていた蒼火竜に動揺はない。突進を躱して今度は毒爪の蹴りを叩き込もうとする―

 

 

「ガルアア!」

 

 

「!?」

 

 

―前にこちらに突進して来ていた黒狼鳥が急に止まりバックステップして飛んだ黒狼鳥に、蒼火竜が驚いた次の瞬間―

 

 

 

 

 

ドドドドン!

 

 

 

 

 

―動揺した瞬間を狙って黒狼鳥が火球を乱射してきた。

 

 

動揺したものの身体は何とか反応し、火球を躱して次の一手に備えようと黒狼鳥の方へ目を向けると―

 

 

 

 

 

―黒狼鳥のサマーソルトが目の前に迫っていた。

 

 

 

 

 

「グオオオン!?」

 

 

その一撃は躱すことが出来ず、蒼火竜は悲鳴と共に吹き飛ばされる。

 

 

「ガルルオオオオ!!!」

 

 

全く戦意の衰えていない声で黒狼鳥が吼える。それはまるで、“まだ終わりじゃないよね?!”とこちらを楽しそうに挑発しているように聞こえた。

 

 

その咆哮に蒼火竜は怒りと共に僅かな恐怖を覚える。黒狼鳥の身体を見ると、最初に蹴飛ばした時の跡はちゃんと残っているし、所々まだ煙が出ている箇所があるのを見るに豪火球も全く効いていないという訳ではない。なのにどうしてそんなに生き生きとしているのか、蒼火竜には分からなかったが、だからといって退くわけには行かない。そう思い―

 

 

 

 

 

「グオオオオオオオオ!!!」

 

 

―その挑発に対する返礼とも思える咆哮を怒りの感情を込めて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―数時間後

 

 

「オオ…!、…グオオオオ!!」

 

 

「ガルアア!?」

 

 

蒼火竜が黒狼鳥の突進を食らい、カウンターとして毒爪の蹴りを叩き込んだ。黒狼鳥は蹴飛ばされ、また無視出来ないダメージを負った。もう倒れてもおかしくない、だが―

 

 

 

 

 

「ガルルアアア!」

 

 

 

 

 

吼え、即座に体勢を立て直すと、蒼火竜に飛び掛かる。蒼火竜は当然避けようとするが―

 

 

 

 

 

「――――――――!」

 

 

 

 

 

凄まじく甲高い声で叫び、高周波にも似た音を出す。

 

 

 

「…!、オオ…!」

 

 

その音を近距離で聞いてしまった蒼火竜は、堪らず怯んで動きを止めてしまう。そしてその瞬間、黒狼鳥が蒼火竜の頭部を足で掴み、逃げられなくした上で―

 

 

 

 

 

「ガルオオオオオオ!!」

 

 

「グオオオオン…!」

 

 

 

 

 

蒼火竜の頭部にサマーソルトを叩き込み、蒼火竜は地面に叩き落とされてしまう。

 

 

「グ…!、オオ…!」

 

 

蒼火竜はふらつきながらも立ち上がる。少し前からずっとこの調子なのだ。蒼火竜が怒り、第二ラウンドが始まってからしばらくは空中戦が黒狼鳥より強い蒼火竜が戦いを有利に進め、有効打をいくつも与えたのだ。互いにメインの火力に対して、耐性を持っていた為、決定打は与えられなかったが、それでも普通のモンスターなら間違いなく撤退を選ぶ傷を負っていた。だが黒狼鳥は、甲殻が傷つき、血を流しながらも、勢いは止まらず、輝きを増す目に比例して、動きがどんどんこちらの動きに適応し、鋭くなっていき、遂には疲労で蒼火竜の方が押し返され始めたのだ。

 

 

「ガルルアアア!」

 

 

そして今も、咆哮を上げながらこちらに突っ込んでくる。大きな傷を負っているにも関わらず、その目はギラギラと今までで一番輝いていた。蒼火竜はその目が心底理解出来なかった。どうして命の危機に瀕しているにも関わらず、そんなに楽しそうに戦えるのか。蒼火竜は気付けば、黒狼鳥に対する感情が、怒りよりも恐怖が大きくなりつつあった。

 

 

そして蒼火竜は“このまま戦えば、一生癒えない傷を負うことになる”と思い、この戦いからの離脱を選んだ。

 

 

「ガルルアアア!!!」

 

 

背後から黒狼鳥の怒号が聞こえたが、振り返ろうとは思わなかった。そしてやはり飛行能力はこちらが上なのか、遂には黒狼鳥の怒号は聞こえなくなったが、安心しきれなかったので、更に暫く飛んだ後、古代樹の森の深部に殆ど墜落するような形で降りた。

 

 

蒼火竜は来た方の空を眺めて、黒狼鳥を思い出し、様々な思いが込み上げたが、最後に残ったのは、“もう二度とごめんだ”という疲れきったの思いだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒狼鳥にとっては今日程楽しい日はなかった。あんなに攻撃を避けられたのも、当てられたのも初めてだった。こちらの攻撃は耐性があったのか、あまり効いていなかったが、蒼火竜の火力はこちらの耐性が機能しているのか疑いたくなるなるぐらい重く、強力だった。蒼火竜の動きを先読みし、手数とスピードで補っても、蒼火竜は有利に立ち回り続けた。そしてようやく互角に戦え始めたかと思うと、蒼火竜はうんざりしたのか、撤退を選んだ。どうにか追いかけて強引に続けようとも思ったが、元より空中での機動力は蒼火竜が上だったし、そこで自分がボロボロになっていて、立っているだけでもきついことが分かった。やや不完全燃焼感はあったが、それでも楽しかった。強力な気配を漠然と感じた為、勘に従ってたどり着いた大陸だったが、最初からこんなに歯応えのある敵と会えるとは思わなかった。これからが楽しみだ。

 

 

黒狼鳥はそう思いながらも、まずは次なる戦いの為に食事と休憩を取ろうと思い、その場を飛び立つ。小さな強者は新たな敵を求めて、この大陸での生活を謳歌していくだろう。




Q.どうしてガルルガちゃんはこんなにタフなんですか?

A.戦闘マシーンだからです。

いやー、自分で書いてて何だけど、ガルルガちゃん主人公過ぎてヤバい。

後蒼レウス君がこのままやり合えば負けるみたいな雰囲気になったけど、ガルルガちゃんが言ってた通り、最終盤以外はずっと蒼レウス君の方が有利だったし、受けたダメージの総量もガルルガちゃんの方が多かったので負けるとは決まってないです。ガルルガちゃんの精神が強すぎただけなので。

評価、感想もよろしければお願いします!

それでは次回もお楽しみください!

メインモンスター+αでコイツが好き

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