ちなみに現在はリクエストの流れに沿って書いてますが、50話と51話は書きたいネタがあるのでそちらを書きます。申し訳ないです…
それではお楽しみください。
“渓流”
鈴虫の鳴き声が響き、夜空には美しい満月が浮かんでいる。ほとんどのモンスターが眠りに就き、静かな趣のある情景となっていた。
ふわりと、何か丸い影が月明りで写り込んだ。しかしその影は真っ黒な影ではなく、所々が透き通るような写り方をした影だった。しかもそれは数多くあり、不均等な間隔で宙を舞っていた。
そう、その物体の正体はシャボン玉だった。夜空の風景とシャボン玉が共にある情景はとても幻想的であったが、シャボン玉は明らかに何かの存在が関与している。子どもが遊びで飛ばすような可愛らしい大きさでもないことから、モンスターが生み出したことが予想できるが、泡を生み出すモンスターなど一種類しか存在しない。
「スー…スー…」
そのモンスターは身体からシャボン玉を生み出しながら気持ち良さそうに眠っていた。しなやかな身体に頭部と背中にヒレを持ち合わせているその姿は泡狐竜、タマミツネだが、美しいヒレが少し色褪せており、何より眼に深い傷痕があり、視力が機能しているとは思い難い。
元からある視力を失うというのは厳しい自然界においては大変な枷、というより遅かれ早かれ淘汰される存在だが、この泡狐竜はその弱点を克服し、むしろ更に力を付けた末にギルドから特殊な“二つ名”が名付けられた。視力を失ったことを物ともせず生物の位置を見通し、攻撃を仕掛けて来るその姿から名付けられた二つ名は―
明らかに通常種では生み出せない量の泡を周囲に展開しているのは、索敵の為である。視力を失った天眼がそれを補う為の手段は種として元から持ち合わせている泡である。
泡で索敵などできるのか、と思うかもしれないが、元から泡狐竜はある程度ヒレで泡を感知することができる。視力を失ったことで、その機能が更に鋭く研ぎ澄まされたという訳だ。
よって今の天眼の泡を割ろうものなら、眠っていようと即席に感知することができる。眠っているからといって寝込みを襲撃しようとした愚か者は全て目を覚ました天眼によって葬られてきた。天眼の強さが知れ渡った今では、天眼の泡を割ろうとする者はいない。
泡を割るとしたら、天眼の強さを知らぬ愚者か―
―知った上で割る恐れの知らぬ強者でだけだろう。
パチン!
「!」
そう遠くない位置の泡が割れるのを感じ取った天眼は、即座に目を覚まして周囲を警戒する。偶然かとも思ったが、一つ割れた後に立て続けに複数割れるのを感じ取った。まず意図的に侵入していると見て間違いないだろう。
「コオオオオ…!」
自身の縄張りだと知らずに迷い込んだ可能性もあるが、事態に備えて周囲に更に泡を展開する。侵入者は泡を割りながらズンズン進んで来ているのが分かる。
そして遂に前方数十メートル先の泡を割り、侵入者が現れる。
「ガルルルル…!」
「!」
唸りながら現れたのは、黄金の甲殻に覆われ、黄緑色の雷を纏った金雷公、ジンオウガだった。何を思ったのか通常種の時点で因縁のある天眼に喧嘩を売りに来たという訳らしい。
泡狐竜は雷狼竜の連続攻撃を寄せ付けない程の機動力を誇るというのは、ハンターの間でも有名な話。実際確認された争いでは、互角の勝負を演じたという報告だが、それが二つ名となれば―どうなるのかは分からない。
「コオオオオ…!」
天眼も周囲に泡を展開させつつ、金雷公の気配を感じ取る。眼が見えなくとも相当な実力であることは肌のヒリつくような感覚でよく分かる。どちらも引き下がる気はなく、むしろ来るなら来いという姿勢で待ち構える。
金雷公と天眼、双方共に上体を起こすと―
「コオオオオォォォォン!!!」
「ウオオオオォォォォン!!!」
―咆哮が響き、大量の泡と雷が落ちた。
「オオオオン!!」
金雷公は先手必勝と言わんばかりに天眼に飛び掛る。パワーで劣り、更に弱点である雷による攻撃を一撃でも食らえば天眼にとっては厳しくなる。つまり天眼が勝つには一撃も食らわずに攻撃を浴びせ続けることが必要になる訳だが―
「コオオオオ!!」
「ウオオオオン!?」
―天眼にとってはそんなこと苦にはならない。天眼は身体を捻りながら泡を生み出し、金雷公の攻撃を躱すと更に距離を取る。急に泡によって視界が利かなくなり、しかも着地した瞬間に泡に足を取られてバランスを崩してしまう。
「コオオオオ…オオ!!」
「ウオオオオ…!」
天眼はその隙を逃さず高圧の水ブレスを放って金雷公にダメージを与える。天眼はブレスを放ち続けることはせず、口を閉じて中断し、捕捉されないよう地面を滑るように泡をまきつつ移動する。
負ける気はないが、金雷公を侮りはしない。ブレスは相応に効いた筈だが、あの攻撃で追い返せると思える程自惚れてはいない。一撃入れたら即離脱のヒット&アウェイ戦法を徹底する。
だが―
「ウオオオオン!!」
「!?」
―その考えすら金雷公の前には自惚れに等しかった。金雷公は正確に天眼の位置を捕捉し、泡を突き破って突っ込んで来た。動くだけならともかく、まさか正確に位置を見抜いて来るとは思っていなかった天眼は、その一撃は躱せない。
「オオオオン!!」
バヂィ!!
「コ…オオオオ…!」
天眼は少しでもダメージを軽減する為に体表から泡を分泌し、攻撃されると同時に敢えて後ろに跳ぶことで衝撃を軽減した。相当対策したにも関わらずかなりの衝撃だったが、天眼はダメージに悶えることなくすぐに地面を駆け回る。
「グルルルル…!!」
金雷公は駆け回る天眼を見て追い掛けるのは厳しいと悟ると、身体を縮めて背電殻を活性化させる。天眼は何をするのかを予想し、じっとタイミングを見極める。
そして刹那の沈黙の後―
「ウオオオオォォォォン!!」
「ッ!!」
―金雷公が天に向かって吼えると、辺り一面に雷が降り注ぐ。そして降り注ぐ雷によって周囲の泡が次々と割られるが、天眼は紙一重で雷を躱し、金雷公に肉薄する。
金雷公も横目で天眼が迫っているのは確認している。そして互いに攻撃の射程内に入ると―
「ウオオオオン!!」
「コオオオオン!!」
―金雷公は横方向に薙ぎ払うように、天眼は縦方向にサマーソルトの要領で尻尾を振り上げた。威力自体は拮抗していたのか、どちらかが弾き飛ばされることもなく相殺する形になったが、しなやかな身体で素早く着地した天眼は、今度は尻尾を上から下に向かって叩き付ける。
「コオオオオン!!」
「グオオオオン!?」
着地して隙を晒していた金雷公は、頭部に天眼の一撃を食らってしまう。流石に頭部に食らってしまっては即座に反撃はできず、少しの間動きを止めてしまう。
「コオオオオン!」
天眼は反撃を警戒し、また地面を駆けて金雷公から距離を取る。結果としてチャンスを無駄にしてしまったが、近距離戦で劣勢になる以上、こうするしかない。
「オオオオ…!」
そして金雷公としてもこのままではまずい。いつまでものらりくらりと躱されては一方的に傷を負うだけである。せめてもう少し踏み込んで来てくれればやりようもあったのだが、分は弁えているのか攻め立てて来ない。
このまま劣勢でいる訳には行かない為、金雷公は切り札を切ることを決める。できることなら天眼の手札を見てから使いたかったが、もう贅沢は言ってられない。
「ウオオオオォォォォン…!!」
「!」
金雷公は天に向かって吼えながら周囲に雷の雨を降らせる。それと共に雷光虫が更に背電殻に集まって行く。そして輝きが最高潮まで達すると―
「グオオオオォォォォン!!!」
―黄金の落雷と同時に、金雷公が真帯電状態に至った。黄金の輝きを放ち、絶えず背中から放電音が聞こえることからいかに凄まじいエネルギーを扱っているのかがよく分かる。
姿が変わった金雷公を見た天眼は、その脅威を正確に感じ取っていた。この莫大なエネルギーは視力がなくともハッキリと感じられる。これはこっも出し惜しみしている場合ではない。
「コオオオオ…!」
「!」
天眼はその場で旋回し、大量の泡を生み出すと―
「コオオオオォォォォン!!!」
―それらを一気に舞い散らせると同時に、全力で吼えた。興奮によって頭部と背中のヒレが鮮やかな錦色に染まり、本来開く筈のない瞳からは蒼い炎のように蒸気が立ち昇っている。これは興奮によって体温が上昇した影響で水蒸気が立ち昇り、それによって瞳のように見えているのである。
この状態の天眼の感知能力はピークに至っており、視力がないことなど何の足枷にもならない。
「コオオオオン!!」
「!」
先程までとは立場が逆転し、今度は天眼が金雷公を攻め立てる。泡を活かして縦横無尽に駆け回りながら金雷公に接近する。
「ウオオオオン!!」
金雷公は天眼を迎え撃つように雷を纏わせた前足を振り上げる。纏わせた雷が相当なエネルギーを持っているのか、眩い光を放っている。互いのどちらが速く相手を捉えるか―
「コオオオオン!!」
「ウオオオオ…!?」
―と思われたが、天眼は寸での所で後方にバックジャンプしつつ蒼い炎を纏った泡を放つ。バクレツアロワナ等の爆発性の魚を主に食したことによって変化した泡は金雷公の眼の前で炸裂し、金雷公が目を逸らしたことによって攻撃が僅かに天眼から逸れる。
「コオオオオン!!」
攻撃を躱した天眼は背後で金雷が地面を穿つのにも構わず金雷公の側面を取る。そして―
「━━━━━━━━━━ッ!!」
「ウオオオオン!?」
―一瞬泡を生み出したかと思うと、凄まじい勢いで旋回しながら金雷公に突っ込んだ。いくらパワーで劣ると言っても、20メートル以上の巨体が突っ込んで来れば金雷公でも無傷とは行かなかった。
「コオオオオ!!」
金雷公を吹き飛ばした天眼は、折り返して更に追撃を仕掛ける。その機動力は明らかに通常時よりも向上しており、捕捉するのは難しい。だが―
「ウオオオオン!!」
「コアアアア!?」
―身体能力を向上させているのは金雷公も同じ。ダメージから立て直した金雷公は、振り向き様に前足を振り抜いて天眼を吹き飛ばした。
「ウオオオオン!!」
「コオオオオ…!」
そのまま金雷公は落雷を発生させつつ天眼に襲い掛かり、天眼は泡を活かして金雷公の攻撃をいなし続ける。泡と金雷が何度も交差し、静かな渓流に戦闘音が何度も木霊する。
「コオオオオ…!」
「ガルルルル…!」
一通り打ち合い、二匹は相手を睨み付けて唸る。天眼は攻撃を食らった数こそ少ないものの、攻撃を食らった箇所には大きな痕が付いており、金雷公は身体中に傷痕があるが、それでも戦闘は可能だ。互いの絶妙な相性故に千日手に近い状態に陥っていた。だが、どちらもこれ以上の引き延ばしは望んでいない。故にこれが最後だ。
「ウオオオオォォォォン…!!」
「コオオオオ…!!」
金雷公は天に向かって吼え、天眼は泡を生み出しながら周囲を駆け回る。超帯電状態を上回る落雷が降り注ぎ、泡を割るがそれと同時に泡もどんどん生み出されて行く。
「コオオオオン!!」
「! オオオオ!!」
天眼が落雷の中を縫うようにして水ブレスを放ち、金雷公は反応して躱すと、落雷を複数発落とす。天眼は恐らくあれをフェイントにして踏み込んでは来ない。必ず自身が隙を晒したタイミングで―
「コオオオオォォォォン!!」
「!?」
―来ると思っていたが、天眼はその予想を覆すかのように真っ直ぐに旋回しながら突っ込んで来た。天眼は二つ名として特異な個体ではあるが、それと同時に年老いた泡狐竜でもある。生きて来た分戦闘経験も相応にある為、相手の思考のトレースもある程度は可能である。それを利用して思考を誘導することも。
金雷公はまんまと天眼の罠に嵌り、思考を誘導されてしまったという訳だ。この至近距離、天眼の攻撃は躱せない。
ドッゴオオ!!
「グッ…オオ…!」
「!?」
だが、躱せないなりにできることもある。金雷公は激突寸前に上体を起こすと天眼の突進を受け止めてみせた。かなりの距離を後退し、受け止めた際に身体から鈍い音が聞こえたが、それでも天眼の動きを捉えられればそれで良い。
天眼もまずいと思って身を捩るが、もう遅い。
「ウオオオオォォォォン!!」
「━━━━━ッ!?」
金雷公が吼えると、凄まじい雷撃が身体を中心に放たれた。雷撃が天眼の身体を貫き、天眼は顔を歪めるが―
「━━━━━ッ!!」
「ウオオオオ!?」
―力を振り絞って水ブレスを放ち、金雷公の拘束を振り解くと、一目散に地面を駆けて逃走した。怯んでいた金雷公は天眼の思い切りの良過ぎる行動に面食らって追うことができなかった。
年老いているとは言え、種としての性質は大きく変わっていない。命の危険を感じればプライドなど放り捨てて即離脱する。
「…ガルルルル…!」
とは言え、金雷公にとっては不完全燃焼感が否めない。折角なら決着まで着けたかった所だが、今更追っても追い付けないだろう。金雷公も気持ちを切り替えて、まずは休息を取ることにした。
夜空には、一つの泡沫が月の光を反射して輝いていた。
今回はちゃんと金雷公の強さが描写できた…かな?
ミツネじっちゃんが強キャラ過ぎてヤバい…
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
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