こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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アイボーの資料集買いました。想像以上のボリュームにびっくりしました。これからの参考にしていきたいと思います。

それではお楽しみください。


頽廃の虚城

 “砦跡”

 

 その名の通り風化した城壁やバリスタ、撃龍槍までもが放置されているが、砦と言える程の形は保っておらず、壁が残っているのは僅かで見渡す限りはほとんど白い砂漠のようになっている。

 砂原や旧砂漠のようにジリジリと肌を焼くような熱波はないものの、白い砂が常に舞い上がり、陽の光が降り注ぐことすら難しい場所である。

 

ゴゴゴゴ…!!

 

 突然、地面が大きく揺れ始める。地平線の彼方に、小さな影が見えた。それはゆっくりと進行しているようだった。その影の正体は―

 

 

 

 

 

「ゴオオオオン…!!」

 

 

 

 

 

 ―超大型古龍と同等以上の体躯を持ち、龍と言うにはあまりに不自然な金属でできた身体。あちこちから火花を散らし、四つの足を中心に所々から黄金の糸のようなものが見える。頭部に当たる部位から軋むような唸り声を上げているそのモンスターにも、ちゃんと名は付けられている。

 

“アトラル・ネセト”

 

 ネセトは砦跡に向かってゆっくりと進行している。周囲の砂塵を物ともせず進み続けるその様はまさに圧巻だった。

 

ズズン…!

 

「!」

 

 その時、ネセトはそう遠くない場所で何か大きな振動を感じ取った。ネセトは()()()()()()()()、縄張りへの侵入がありえなくはないのだ。当然常に砂塵が起こっている為意図的に侵入するモンスターは多くないが、古龍種のように別格の存在感を感じ取って縄張りを迂回することはない。

 

「ゴオオオオン…!」

 

 ネセトは振動の正体を調べるべく進路を変え、唸り声を上げながらゆっくりと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グオオオオ…」

 

 ネセトの位置から少し離れた場所、白い砂の上に降り立っているのは重油のような黒い液体を絶え間なく滴らせている巨戟龍、ゴグマジオスだった。

 巨戟龍は周囲を見渡し、自身の目的である火薬や硫黄が近くにないことを悟る。時間は掛かるが、また別の地に移動するしかない。そう思い、地面に潜ろうとした時―

 

 

 

 

 

「ゴオオオオン…!」

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―けたたましい駆動音と足音が聞こえ、巨戟龍が振り返ると、そこには自身と同程度の体躯をしたネセトが佇んでいた。

 巨戟龍は今まで自身と並び得る生物を見たことがなかった為、その大きさに驚いた。

 

「グオオオオン…!!」

 

「! ゴオオオオ!!」

 

 ネセトは巨戟龍を見るや否や巨大な前足を巨戟龍に向かって振り抜く。巨戟龍は驚いたものの反応し、鋼鉄に覆われた前足を受け止めた。

 

「ゴ…オオオオ…!」

 

 だが、想像以上のパワーに巨戟龍は少し後退する。動きこそ鈍いが文字通り鉄の塊で殴り掛かっている為に超大型古龍である巨戟龍と言えども相応のダメージを受ける。

 

「グオオオオ…!!」

 

「!」

 

 ネセトが唸ると、身体から軋むような音を上げて、巨大な槍が出現した。

 その名は撃龍槍。巨戟龍にとっても縁がある対モンスター、それも古龍やそれに匹敵する生物に対して扱われる人類の叡智を結集した切り札である。

 そんな代物を何故ネセトが所持しているかは分からないが、何より重要なのは巨戟龍にもダメージを与え得る攻撃手段をネセトが持っているということである。巨戟龍は悪寒を感じて距離を取ろうとするが、もう遅い。

 

 

 

 

 

ズドン!!

 

「グオオオオン!?」

 

 

 

 

 

 ネセトの身体から撃龍槍が発射され、巨戟龍の身体を突き穿つ。人類が扱うように装填式ではなく使い捨ての弾丸のような使い方であるものの、その威力は本家本元に勝るとも劣らない。

 巨戟龍の身体から重油と共に血も流れ出し、相応のダメージを食らったことがよく分かる。

 

「グオオオオ…!」

 

「!」

 

 だが、この程度では巨戟龍を倒すことなどできない。突然の襲撃と初見殺しの攻撃に思わぬ大ダメージを食らってしまったものの、このままで済ませる程甘くはない。

 

「グオオオオ━━━━━!!」

 

「!!」

 

 巨戟龍は口内を明るく染め上げたかと思うと、重油ブレスを放った。単なるブレスではなく、持続的に重油という質量のあるものを放つ為にネセトも勢いに押されて後退するが、強靭な足で何とか踏み留まって耐える。

 だが、重油が黒色から赤く染まったこと思うと―

 

 

 

 

 

ドッゴオオオオン!!

 

 

 

 

 

 ―凄まじい大爆発を引き起こした。巨戟龍は単に重油を放つだけでなく、自身の体温を向上させることによって、時間差で爆発を引き起こすことができるのだ。巨戟龍の身体から出る重油は、性質まで重油に近い代物である為、引火性も高いのだ。

 巨戟龍が確認されたのは最近の話だが、この巨体でありながら見つからなかったのは、金獅子と同じように確認した者達を連絡が不可能となる程に殲滅したからなのではと囁かれている程である。

 話が逸れてしまったが、とにかくそれ程に巨戟龍の殲滅力は高い為、まともに食らってしまったネセトも勿論タダでは済んでいない筈である。

 爆煙が徐々に晴れ、ネセトのシルエットが浮かび上がってくると―

 

 

 

 

 

「グオ…オオオオン…」

 

 

 

 

 

 ―身体の原型は保っていたものの、まともに受けた頭部は完全に吹き飛び、主に前半身は圧倒的な熱量によって融解している箇所もある。どう考えても戦闘の続行は不可能であり、事実もう地に伏すことしかできていない状態である。

 巨戟龍は完全にとどめを刺すべく口内に力を集約させようとすると―

 

 

 

 

 

ガシャ…

 

ガシャン!ガゴン!グゴゴゴ!ガシャン!ギギギ!ズズン!ガシャアアアア!!

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―何とネセトの身体が見る見る内に()()()()()()()()()()。その様子には巨戟龍も驚いて攻撃を中断する。今まで生物として相対していた敵がいきなり身体が崩れ去るなど普通はあり得ないことだ。いくら超常的な力を操る古龍種と言えども自らの身体をバラバラに分解するモンスターなど存在しないし、生物としてあり得ない。

 

 ―それが()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 完全に身体が崩れ去り、砂煙の中に薄っすらと影が見えた。その中から現れた正体は―

 

 

 

 

 

「キュアアアア…!」

 

 

 

 

 

 10メートルにも満たない身体に黄金の外殻、感情を感じさせない紫の瞳に、忙しなく動く六つの足と一対の鎌。巨戟龍の十分の一程にか満たないこのモンスターは―

 

“閣螳螂”

“アトラル・カ”

 

「キュイアアアアァァァァ!!!」

 

 閣螳螂は自身の何倍もの体躯を持つ巨戟龍に対して臆することなく威嚇する。体格差を筆頭に、閣螳螂が勝る要素は何一つないように思えるが、閣螳螂は全モンスターの中でも屈指の武器がある。

 

「キュイイイイ!!」

 

「!」

 

 閣螳螂は地面を掘ると、巨大な車輪を掘り出すと、背中に背負い込んだ。どういう風に扱うのかと言うと―

 

 

 

 

 

「キュアアアア!!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―何と車輪を転がして自身はそれに掴まることで高速移動した。巨戟龍に捕捉されないよう細かく縦横無尽に動き回る。巨戟龍は閣螳螂の動きを追おうにも中々追い付けない。

 

「キュイアアアア!!」

 

 巨戟龍を撹乱して上手く背後に回った閣螳螂は、腹部から糸を出して周囲に張り巡らせると、地面から複数の撃龍槍を掘り起こした。そしてまるで指揮棒のように鎌を振り回すと―

 

 

 

 

 

「キュイアアアア!!」

 

「グオオオオ!?」

 

 

 

 

 

 ―無防備に背中を晒している巨戟龍に向かって撃龍槍を射出し、更に間髪入れずに糸を張り直して今度は巨戟龍の頭上に巨大なガラクタの塊を固定する。

 

「キュイイイイ!!」

 

「グオオオオ…!」

 

 そして鎌で糸を断ち切ってガラクタを巨戟龍に向かって落とす。その戦い方はモンスターというよりは使える物を全て使うハンターの戦い方に近い。

 実際ここまでの戦い方からも分かるが、閣螳螂は全モンスターの中でも屈指の頭脳を持つ。ネセトという虚城も巣や戦力の補強だけでなく今まで見てきた中で最も強そうだと感じたモンスターを再現したものであり、構築に鉄や兵器を使っているのもそれらが硬く、効率的な使い方を理解しているからである。

 こういった優れた知能から、閣螳螂は素の戦闘力は精々大型飛竜と同程度だが、砦を襲撃することや、それによって加速度的にネセトが強大化する為に龍歴院には最大級の危険度を持つモンスターとされている。

 真っ向勝負ではどう足掻いても勝ち目がない巨戟龍を相手にここまで大立ち回りができているのも、大量の武器が周囲に埋まっているのと、優れた知性故である。

 

「グオオオオ!!」

 

「! キュイイイイ!!」

 

 だが、そのまま優位を許す程巨戟龍は甘くない。巨大な翼脚を薙ぎ払い、閣螳螂も巻き込もうと狙う。閣螳螂はまた車輪を活かして器用に躱して行くが―

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―突然動きが鈍る。完全に停止する程ではないが、明らかに車輪の動きが遅くなっている。何事かと閣螳螂が足元を見ると、辺りは巨戟龍の重油塗れになり、車輪が絡め取られていた。

 

「グオオオオ!!」

 

「! キュアアアア!!」

 

 そしてその隙を逃さず翼脚を振り抜いて来た巨戟龍を見て、閣螳螂は一瞬で車輪から飛び降りて寸前の所で翼脚を躱した。巨戟龍の翼脚は鋼鉄でできた車輪をあっさりと粉々にした。

 ここまで閣螳螂は無傷で巨戟龍の攻撃を凌いで来たが、このまま戦いを続けるのは相当リスクが高い。繰り返すが閣螳螂がここまで戦えているのは周りから武器が補給できる巣であるからであり、別の地で戦えばあっさりと打ち砕かれるのは間違いない。

 閣螳螂本体の耐久性もそこまで頑丈とは言えず、一撃でも貰えばその時点で敗北確定だろう。せめて大型古龍であればまだ糸で拘束も可能なのだが、流石にここまでのサイズが相手では通用しない。

 どうにか巨戟龍を相手に勝つには、ネセトという切り札を切るしかない。

 

「グオオオオ!!」

 

「!」

 

 だが、ネセトは先程完全に分解して地面に埋めてしまった為、もう一度引っ張り出さねばならない。が、巨戟龍がそんな隙を見逃す筈もない。

 

「グオオオオ━━━━━」

 

「!」

 

 巨戟龍は確実に閣螳螂を葬るべく、口内を明るく染め上げる。先程車輪は捨ててしまった為、防御する手段がない。閣螳螂はそれを理解した上で地面に潜り込む。

 巨戟龍は逃げたとも思ったが、この一撃は多少潜った程度で逃れられるものではない。どちらにしろ放てば終わりだ。そう考えて巨戟龍は必殺の一撃を―

 

 

 

 

 

「グオオオオン!!」

 

ズゴォン!!

 

「グオオオオ!?」

 

 

 

 

 

 ―放つ前に、ネセトが飛び出して来た。しかも巨戟龍の上にのしかかるようにして飛び掛かって来た為、巨戟龍は地面に押し倒されるような形になってしまう。いくら超大型古龍と言えども自身と同程度の体格、それも鉄の塊でできている相手にのしかかられては簡単にに脱出できない。

 その上これでは重油ブレスも放てない。この距離で無理に放てば自分まで巻き添えを食らってしまう。引火性が高いのは身体全体を覆っている重油も同じなので下手をすれば相打ちになりかねない。

 だが、ネセトも巨戟龍のブレスで相当ガタが来ているのか、あちこちがツギハギのような状態になっている。のしかかっただけでは巨戟龍は倒せない。一体どうするつもりなのか―

 

 

 

 

 

 

「ゴオオオオン…!!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―巨戟龍は脱出しようと藻掻いていると、ネセトの融解した頭部が開き、その奥には撃龍槍が装填されていた。この意味が分からない程巨戟龍も馬鹿ではない。

 ネセト―閣螳螂はこのままゼロ距離で撃龍槍を発射して決めるつもりである。しかも撃龍槍がこの一発のみとは限らない。あれだけ使って来るということはまだ相当な数を隠している可能性もある。

 

「ゴオオオオ━━━━━」

 

「!」

 

 ギュイイイイイと、凄まじい音を立てながら撃龍槍が回転する。もう一刻の猶予もない。

 

「グオオオオ━━━━━ッ!!」

 

 巨戟龍も覚悟を決め、撃龍槍に向かって重油ブレスを発射する。圧倒的な熱量により、撃龍槍が徐々に融解し始めるが、それでもネセトは撃龍槍を発射し、重油ブレスの熱も頂点に達すると―

 

 

 

 

 

ドッゴオオオオォォォォン!!

 

 

 

 

 

 ―凄まじい大爆発を引き起こし、巨戟龍もネセトも爆発に飲まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グオ…オオオオ…」

 

 巨戟龍は身体から黒煙を吹き上げてよろめきながらも何とか立ち上がった。その身体には火傷と思わしき傷はいくつも確認できるが、貫かれたような痕は見られない。

 最後の激突の瞬間、ブレスの熱によって撃龍槍をほぼ無力化できたのは良かったのだが、やはり大爆発による被害は免れず、ここまでの傷は代償として支払うことになった。

 

「………」

 

 巨戟龍は周囲を見渡すが、吹き飛んだガラクタや融解した部品等は確認できるものの、閣螳螂の死体らしきものは確認できない。ひょっとしたら爆発で跡形もなく消し飛んだ可能性もある。何故なら周囲の景色は一変し、僅かに残っていた砦跡は完全に無くなり、ずっと曇天だった空には輝かしい太陽が見える。

 閣螳螂の生死は少し気になる所だが、例え生きていたとしても、もう戦う余力など残っていないだろう。

 

「グオオオオ…」

 

 唸りながら巨戟龍は方向転換し、何処へともなく歩き始める。そしてその場には、少しのガラクタと重油しか残っておらず、砦跡があった証拠などどこにもなかった。




書く前は難しいかなと思ってたけど書いてみるとわりとサクサク書けた。

わりとカマキリ君強めに書いちゃったけど頭良いからできそうってのとこうでもしないとマジオス君が圧勝しそうだったから…

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

メインモンスター+αでコイツが好き

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