それではお楽しみください。
“密林”
鬱蒼とした樹々が乱立し、水辺の近くでちょこんとした影が見えた。その影はピョコピョコと動く二つの耳を持ち、人間の子どもぐらいの身長だったが、身体からツヤの良い体毛を生やしているのは人間ではない。
だが、この世界では人間と同じぐらいメジャーな存在だ。その名もアイルー。獣人種に属する立派なモンスターではあるが、言語を解する上に社交性も高く、人間を過剰に恐れる訳でもない為、人間やハンターと協力して生活するアイルーも多い。
このアイルーは自然の中で生きることを選んだアイルーだ。腐ってもモンスターであるが故、自然の中で生きる術も身に付けている。
「ニャ〜…中々釣れないニャー〜…」
そのアイルーは食料を求めて釣りをしていた。猫に似ているだけあって魚が好物なのだが中々釣れないようだった。
「釣り場所を変えてやってみるかニャ〜…ニャ?」
ため息を吐きながら空を見上げると、ピカッと何かが光ったように見えた。更にジッと目を凝らすと―
「ギシャアアアア!!」
「ガルオオオオ!!」
―青く輝く飛竜と、それよりもやや小柄の鳥竜が空でぶつかり合っていた。
「…これは逃げた方が良さそうだニャ!」
アイルーは釣り竿を素早く回収すると茂みの方へ駆け出した。基本的にアイルーは狩りをするとしても集団で行う種族であり、単独では小型モンスターを相手にするのが精々だ。大型モンスターを相手に逃亡を選ぶのも当然と言える。
「ガルアアアア!!」
「ギャルルルル!!」
そしてアイルーが姿を消すと、その後すぐに二匹のモンスターが地面に降り立った。体格が劣るにも関わらず、飛竜を相手に臆することなく威圧するそのモンスターは隻眼、イャンガルルガだった。
隻眼は強大な二つ名個体とされているモンスターであり、それを相手に対等に立ち回れている相手も、また強大なモンスターだ。
「ギュルルルル…!」
頭部の鶏冠に刺々しい身体、雷を迸らせるその姿は電竜だが、纏う雷が明るい黄緑色ではなく透き通るような蒼い雷だった。鶏冠や主な武器となる翼などはより刺々しくなっており、通常種より強大化していることがよく分かる。
その蒼い雷を迸らせ、敵を容赦なく屠るその強さから、この電竜もまた二つ名を与えられた存在―
「ギュルアアアア…!」
「ガルルルル…!」
偶然空で出会った二匹は威嚇を挟むことすらなく戦闘に突入した。二つ名として強大化しても種としての過剰なまでの排撃性は変わるどころかより強くなっていると言える。
「ギュルアアアア!!」
「ガルオオオオ!!」
青電主が鋏のような尻尾を隻眼に向かって突き出すと、隻眼は横に飛びつつ躱して火球ブレスを乱射する。
「ギュアアアア!!」
青電主は火球を躱すことなく翼を薙ぎ払うことで相殺すると、そのまま隻眼に向かって突っ込んで行く。
「ガルアアアア!!」
そして隻眼も望む所だと言わんばかりに青電主に向かって行く。青電主は翼を振り上げ、隻眼は姿勢を低くして激突する―
「ガルアアアア!!」
「ギュオオオオ!?」
―寸前に隻眼が一気に飛び立つことで青電主の翼撃を躱すと、そのままの勢いで尻尾を振り下ろした。諸に食らった青電主は地面に叩き付けられる。
「ガルアアアア!!」
「! ギュオオオオ!」
隻眼はそのまま飛び立って火球で追撃を試みるが、青電主も体勢を立て直すと空へ飛び立つことで火球を躱す。
「ギュルルルル…!」
「………」
互いにまた空中で睨み合う形になった。青電主は攻撃されたことに対して怒りの表情で隻眼を睨み付け、隻眼は片方しかない目で青電主を冷静に観察する。
隻眼は二つ名になっても黒狼鳥としての性質は変わっていない、つまり戦闘そのものを好むという性質もそのまま据え置きである。怒れば逆に冷静になるという性質も。
隻眼は青電主と空中で戦う間に相手が自分よりも格上だと気付いていた。凄まじい電力から成る破壊力、身体の部位を活かした連続攻撃は、隻眼の実力を以ってしても格上だと認めざるをえない強さだった。
だからこそ、楽しい。楽しいからこそ、徹底的に、本気で殺しに行く。それが隻眼の―否、黒狼鳥の在り方だった。
「ガルアアアア!!」
隻眼は今度は自分が攻め立てる側に回った。縦横無尽に飛行しながら火球を乱射する。
「ギシャアアアア!!」
だが、空中での機動力で“空の王者”と称される火竜にも対抗し得る電竜の二つ名が簡単に当たる筈もなく、縫うようにして火球を躱して行く。
「ガルオオオオ!!」
「!」
隻眼は急接近する青電主に臆することもなく真っ直ぐに向かって行く。
「ギュルルルル━━━━━!!」
青電主は隻眼が躱す動きを見せないと判断すると、鶏冠に電力を集中させる。すると限界まで集中させた電力は鶏冠に収まりきらず、まるで天を分かつ大剣と錯覚するような巨大な雷の刃となる。
この攻撃はハンターの間で最も警戒されている攻撃である。この攻撃を食らったが最後、影のみを残して消却されると言われる程の威力であり、古龍種であろうと雷に弱ければ絶命に至らしめることができるだろう。
隻眼は雷に極端に弱い訳ではないが、食らえばその時点で大幅な不利を強いられ、遅かれ早かれそのまま敗北するだろう。
「ギュアアアア!!」
青電主は渾身の力と共に刃を振り下ろす。その軌道上には隻眼が収まっており、何もできなければそのまま両断されるのがオチだろう。
「━━━━━ッ!!」
ならば食らわなければ良い。そう言わんばかりに隻眼は僅かに身体を傾け、ダメージを翼の先端のみに留める。そして攻撃直後で隙だらけの青電主に―
「ガルアアアア!!」
「ギッ…!」
―渾身のサマーソルトを食らわせた。そしてかち上げられた青電主の頭部のさを今度は叩き付けるようにして尻尾を振ろうとすると―
「ギュルアッ!!」
「ガッ…!?」
―何と頭部をかち上げられた青電主はその勢いのままに人間で言う所のバク転の要領で体勢を立て直しつつ、隻眼に向けてブレスを放った。
体勢を立て直すにしてもここまで素早く立て直すと思っていなかった隻眼はブレスを躱すことができずそのまま食らってしまう。
「ギシャアアアアァァァァ!!」
「ガッ…!」
そしてブレスによって怯んだ隻眼に向けて渾身の力で翼を叩き付けた。これもまともに食らってしまった隻眼は凄まじい勢いで地面に叩き落される。
「━━━━━━━━━━ッ!!」
「ッ…ガルオオオオ!」
青電主は地面に墜落した隻眼に容赦なく追撃を仕掛けるが、間一髪の所で隻眼が躱した。
「ギュルルルル…!」
青電主は仕留め損ねた隻眼を恨めしそうに睨み付けるが、口からは濁った血を流している。複数回隻眼の尻尾に含まれる劇毒を食らっていた為、動きが多少鈍っているのだ。青電主自身の凶暴性と、青電荷によるエネルギーの供給によって誤魔化していたが、ここに来て遂に影響が出始めた。
「ガルルルル…!」
だが、それは隻眼にとって大きく有利になる要素ではない。正確に言えば、優位に立てる程隻眼にも余裕がない。先程の一連の攻撃によって隻眼は相当なダメージを食らってしまった故に、もういつも通りの動きはできない。
劇毒も相応の効果は発揮するだろうが、青電主は電荷した部位からのエネルギーの供給がある上、一撃の火力が非常に高いが、隻眼は体格で劣る以上どうしても決定打に欠けてしまう。劇毒による体力の消耗を狙った持久戦を仕掛けるのが良いのだが、青電主相手には効果が薄い。
どこまで甘く見積もっても良くて劣勢、普通に考えれば敗色濃厚である。
「ガルアアアア!!」
「ギシャアアアアァァァァ!!」
隻眼は身体の痛みを物ともせず突貫し、青電主も迎え撃つ為に口から血を流しながらも翼を振り上げた。青電主も全く退くつもりはなく、雄叫びを上げて威嚇する。
「ギュアアアア!!」
「ガルオン!!」
翼を振るって来た青電主に対して縄跳びのようにタイミングを合わせて跳ぶことで頭部に尻尾を振り下ろす。
「ギシャアアアア!!」
「! ガルアアアア!!」
だが戦いを通して青電主も隻眼のやり方を理解したのか、翼を叩き付けた後即座に身を翻して雷を纏った尻尾を突き出し、反応した隻眼の尻尾と激突する。隻眼は体格で劣る都合上、すぐに離脱しようとしたが―
「ギュルルルル!!」
「ッ!?」
―青電主が離脱するよりも速く鋏のような尻尾を閉じて隻眼を捉える。そしてそのままで終わらせる筈もなく―
「ギシャアアアア!!」
「━━━━━ッ!!」
―尻尾から放電して隻眼の身体を焼く。単に攻撃に当たるだけでなく、凄まじい電撃を流し続けている為、隻眼の全身が焼け焦げて行く。
「ギュルアアアア!!」
青電主は容赦なく更に地面に叩き付けて止めを刺そうとする。事実隻眼の身体は黒く焦げており、最早生きているかも怪しい。
だが、青電主は絶対に相手が死んだと確信できるまでは攻撃は止めない。生まれた瞬間から独り立ちを強要されるが故に学んだ、生き残る上での防衛法である。
「ガルアアアア!!」
「ギュオオオオ!?」
しかし地面に叩き付けられる寸前で隻眼が目を開くと、自身を拘束している尻尾に噛み付くとゼロ距離で火球を放って更に追撃として蹴り飛ばして脱出した。
青電主はあまりの衝撃に尻尾の青電荷が解除されてしまった。
「ギュルルルル…!」
「ガルルルル…!」
脱出して体勢を立て直した隻眼と、思わぬダメージを食らって立て直す時間が欲しかった青電主は再び睨み合う。
青電主としては隻眼の姿勢は少々理解しかねていた。隻眼の身体は黒焦げであり、所々の甲殻が吹き飛んで痛々しい傷が垣間見えている。今まで青電主が戦って来た相手はここまでの傷を負えば逃げようとするものがほとんどだった。
極端なまでの排撃性を持つ電竜だが、それはあくまで自身を守る為の防衛本能から成る行動であって、戦闘そのものを好んで行っている訳ではない。
故に自身の生存が脅かされるとなれば撤退も視野に入れるし、本当にまずいと感じれば逃走する。だからこそ隻眼の徹底抗戦が理解できないのだ。
「ガルアアアア!!」
「!」
こうしてまるでダメージなど無いかのように、何度も立ち上がって畳み掛けて来る。その姿勢が、青電主は理解できない。
「ギ…シャアアアア!!」
青電主は一瞬怖気付いたかのように後退ったが、後少しだということを思い出し、決着を着ける為に素早く滑空して隻眼に向かって翼を叩き付ける。
「オオッ━━━━━!!」
「!?」
隻眼は翼が叩き付けられる加速して速度を上げると一瞬で青電主の懐に潜り込んだ。そして驚いた青電主に隙ができる。翼を叩き付けた瞬間のほんの僅かな隙だが、隻眼にはそれで十分。
「ガルオオオオ!!」
「ギッ…!」
そして渾身のサマーソルトを叩き込み、遂に頭部の青電荷を解除した。圧倒的な攻撃力と引き換えに防御力を犠牲にした青電荷状態の頭部に劇毒を打ち込んだという事実は大きい。
「ガルアアアア!!」
そしてその勢いで青電主に向かって行く。今までのダメージと劇毒の蓄積で体力は相応に削った。このまま押し切ることができれば―
「━━━━━━━━━━ッ!!」
「ガッ…!」
―隻眼の思考は、突然飛んで来た翼撃によって吹き飛ばされた。怯んだ青電主が即座に体勢を立て直し、カウンターとして翼を叩き付けたのだ。
確かに、青電主から見ても隻眼の行動は異常だ。理解できない部分が大きいことも。
だが、思えばそんなことは関係ないのだ。自分がやることは何も変わらない。相手が死ぬまで戦うのみ。
「ギシャアアアアァァァァ!!」
「…ッ!」
吹き飛んだ隻眼を追うように青電主は飛行し、容赦なく隻眼に翼撃のラッシュを食らわせた。身体が限界だった隻眼に回避することはできず、諸に食らってしまう。
「ギュルルルル…!」
「……………」
そして一連の攻撃を終えると、隻眼は黒ずんだ肉塊同然になっていた。雷撃によって甲殻の防御力も落ちており、そこに青電主の渾身の連撃を食らえば身体の原型を留めておくことすら叶わなかった。
だが…青電主からしてみればこんな相手は始めてだ。自身の生存すら度外視して相手を倒そうとする生物など異常にも程がある。体格や火力等、こちらが上回っている点が多かったからこそ良かったものの、もし隻眼が一撃で大ダメージを与えられるような手段があれば、負けていたのはこちらだった可能性が高い。
隻眼の思考はともかく、戦い方は参考にできる点が多かった。より確実に生き残る為にも、隻眼との戦いは実に充実したものだったと言える。
「ギュルルルル…」
青電主はまず身体を休めようと、密林の洞窟を目指して飛び立った。明日も、生き残る為に。
中盤の展開はちょっとダレた感じになっちゃったな…
後中々勝率が悪いガルルガですが、正直勝てはしなくても古龍だろうとどんな相手でも一定の傷は残しそうな気がします。
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
メインモンスター+αでコイツが好き
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リオレウス
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イャンガルルガ
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クシャルダオラ
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ティガレックス
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ナルガクルガ
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ラギアクルス
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