こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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また急に伸び始めた。ただ今回で原因はほぼ分かったね。

多分10点評価ですね。またランキングに載ってありがたいことこの上ないです。

それではお楽しみください。


聖冰の降る夜に

 “導きの地・氷雪地帯”

 

 激しい戦闘の跡が垣間見えるこの地帯では、また大きな動きがあった。少し前に森林地帯の主である金獅子の特殊個体と氷雪地帯の主である獄狼竜が激突し、その最中に冰龍が乱入。冰龍は戦うことなく金獅子と獄狼竜の争いを仲裁、その後獄狼竜と共に何処かに姿を消した。

 以前にも獄狼竜と冰龍の間には因縁があった為、その決着を着けに行ったものかと推測されていたが、調査団の目が届かない奥地まで進んだ為、追跡は断念された。そして数日前―

 

 

 

 

 

「キュオオオオ…」

 

 

 

 

 ―傷だらけの身体になった冰龍のみが確認された。このことは調査団にも大きな波乱と憶測を読んだものの、状況から見て冰龍は一騎討ちで獄狼竜を打ち破ったと見られる為、自然と氷雪地帯の主は冰龍になる。

 そして歴戦の古龍とも戦える獄狼竜を打ち破ったこと、理性が崩壊したも同然の激昂した金獅子を一睨みで追い返したこと等、明らかに古龍の主である霞龍や溟龍と比べても異様である為、この冰龍は“歴戦王”と呼ばれる個体なのではないかという推測もされている。詳しい調査が待たれる所であるが、現在の調査団は人員不足である為、もどかしく思いながらも調査は見送られている。

 とにかく、この冰龍は今の導きの地の主の中だと頭一つ抜けた存在と言える。

 

「……………」

 

 当人ならぬ当龍は切り出した崖の側から空に浮かぶ満月を眺めている。その場所はいつも獄狼竜が遠吠えをする際に座っていた場所。獄狼竜を越え、同じ立場に至った今、冰龍が何を思うのか―それは当龍しか分からないことである。

 

 

 

 

 

 ピシィ…!

 

「!」

 

 

 

 

 

 ふと、背後から何かにヒビが入るような音が冰龍が背後に振り向くと、そこには黒いモンスターが佇んでいた。

 紫色の角と鬣に小柄な体躯、周囲の空気が白く染まり常に冷気を発しているそのモンスターは幻獣、キリンの亜種である。

 この幻獣は少し前に金獅子と渡りの凍て地にて激突し、そのまま勝利を収めた個体である。その後姿を消して行方知れずとなっていたが…豊富な養分に惹かれたか、あるいは気紛れか、ここまで辿り着いたようだ。

 

「キュオオオオ…!」

 

 冰龍はゆっくりと立ち上がり、翼を広げて冷気を放出する。立ち去れば見逃すが、戦うというのなら容赦なく叩き潰すという意思表示だ。以前の冰龍ならば確実に売り言葉に買い言葉で応戦していたが、今の冰龍は随分と落ち着いているようだった。

 

「ヒイィィィン…!」

 

 だが、幻獣も退く気はないという意思を示すかのように嘶き、周囲の冷気を更に強める。幻想的な見た目に反して幻獣はわりと好戦的なタチであり、多少の格上だろうと臆することはない。

 

「…………!」

 

 パキィ…!ピシィ…!

 

 そして冰龍も流石に抗戦の意思を見せられて見逃す程甘くはない。氷の鎧を纏い、臨戦態勢を取る。

 

 

 

 

 

「キュオオオオォォォォ!!!」

 

「ヒヒイイィィン!!!」

 

 

 

 

 

 二匹が吼えた瞬間、吹雪が吹き荒れた。

 

 

 

 

 

 ―NowLoading―

 

 

 

 

 

「ヒイィィィン!!」

 

 幻獣は小手調べとして冰龍の下から氷柱を発生させる。ほぼ予備動作のない、並のモンスターならこの攻撃で仕留められるが―

 

 

 

 

 

「キュオオオオ!!」

 

バギィン!!

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―この冰龍は歴戦王と推察される程の実力者。簡単に仕留められる相手ではない。

 冰龍は氷柱が身体を貫く前に身を翻しながら尻尾で薙ぎ払い、ブレスを放って幻獣への反撃を行う。幻獣はその動きに驚きつつも、空中で氷柱を生み出して冰龍に向かって射出する。

 

ガガガガッ!!

 

「!」

 

 上手く隙を突けたと思ったが、時間差で発生した氷塊によって氷柱は防がれた。偶然かとも思ったが、あの一連の動きからして恐らく想定内である。

 最初から小手調べのつもりではあったが、この冰龍は思った以上に手強い。先程の攻撃は別に仕留めるつもりはなく、冰龍の思考と出力が見られれば良かったのだが、冰龍は上手く手札を隠したまま攻撃をやり過ごした。これは想像以上やり手のようである。

 

「ヒイィィィン!!」

 

「!」

 

 だからといって、退くつもりはないが。

 幻獣は今度は冰龍に向かって駆け出す。冰龍は体格で劣る幻獣が自ら接近戦を仕掛けて来ると思っていなかったのか、驚いたように目を見開くが、焦ることなく少し後ろに身体を引いて首を傾けてブレスを放つ。

 

「ッ!!」

 

バギィン!!

 

 幻獣は角に冷気を纏わせ、冰龍の放ったブレスに合わせるように角を振り下ろす。極低温同士がぶつかり合い、圧縮された空気が一気に破裂したような音が響き、凄まじい量の冷気が溢れ出た為に辺りが真っ白に染まる。

 

「━━━━━!!」

 

「!」

 

 幻獣はその環境を活かして一気に氷柱を生み出して冰龍の周囲を囲うように射出する。どう足掻いても無理をせざるを得ない攻撃、冰龍であっても少しは食らう筈―

 

 

 

 

 

「キュアンッ!!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―だが冰龍は頭を地面に向けるようにして尻尾を薙ぎ払いつつ、地面に向かってブレスを放って地面から氷の壁を生み出す。冰龍の対応によってまたもや幻獣の攻撃は防がれた。

 

「ブルルルル…!」

 

「……………」

 

 幻獣は苛立ちを隠さず嘶き、冰龍はもう終わりかと問うような表情で幻獣を見下ろす。事実これまで冰龍は幻獣の攻撃を凌ぐばかりで自分から攻めることはほとんど無かった。属性の相性が意味を成さず、互いに問答無用で凍結させたりはできないとは言え、それでも相手のペースに合わせたまま互角に戦うのは簡単ではない。

 というより、同じ冷気を司る力だが融通は幻獣の方が利きやすい。冰龍は過冷却水から成る冷気を、幻獣は冷気そのものを操る為、二匹の操るものは似て非なるものなのだ。身体能力は冰龍に分がある為、どちらが上かは断言できないが…実力の底を見せぬまま戦い続ける冰龍は恐ろしいと言う他ない。

 奇しくもその戦い方は、以前の主であり冰龍の一つの目標でもあった獄狼竜と同じ。相手の攻撃を全く寄せ付けないその姿はまさに王の風格と言える。

 

「キュオオオオ…!」

 

「!」

 

 幻獣の実力を見切った冰龍は、今度は自分が攻めに回ることにした。遂に冰龍が動き出すことに幻獣は身体を硬くし、いつでも対応できるように身構える。そして―

 

 

 

 

 

「━━━━━ッ!!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―ブレスを放って氷の壁を作り出す。これだけならまだ驚くことでもなかったのだが、問題はその壁が―あまりにも大き過ぎた。

 冰龍どころか超大型古龍でも破壊に苦労するのではないかと思える程の大きさに、幻獣は一瞬動揺してしまう。

 

バキバキバキバキ!!

 

「!?」

 

 壁に気を取られていると、周囲から地面を砕き割りながら、氷塊が迫って来た。幻獣は力を行使し、壁を作り出した。一瞬押し切られるかと壁が軋んだものの、何とか留まらせることに成功した。

 

 

 

 

 

バギィ!!

 

「!!」

 

 

 

 

 

 だが、留めたと思った次の瞬間、巨大な氷塊が壁を突き破って来た。流石の巨大さだが、氷の壁を貼った時にこの事を予想していた幻獣は動揺することなく角に冷気を纏わせて氷塊に向かって突っ込み、強引に氷塊を砕いた。

 だが―

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―氷塊を放った筈の冰龍の姿が見当たらない。まさか冰龍に限って逃げたということはあり得ない。ならば次に起こり得るのは―

 

 

 

 

 

「キュオオオオ!!」

 

「ッ!!」

 

 

 

 

 

 ―幻獣は最早反射で角を振るい、その延長線上にあるものを薙ぎ払うが、特に手応えはなく、その攻撃の隙間を縫うように翔けた冰龍の尻尾に幻獣は斬り付けられた。

 

「キュオオオオ!!」

 

「!」

 

 冰龍はそのまま止まることなく空中に向かってブレスを放ち、鋭利な棘のような氷塊を生み出し、同時に雹のようなものも降らせ、物理的に視界を封鎖する。

 

「ヒイィィィン!!」

 

 幻獣は周囲の様子が見えず、冰龍の動きが捉えられないと判断すると、嘶いて自身のから一定の範囲を白く染め上げる。よく見るとその空間内には極小の氷の礫ができており、それが光を反射していた。

 絶対零度空間。幻獣の力が極致に到達した証拠の内の一つである。空間に氷の礫ができてることからも分かる通り、この空間内では()()()()()()()()

 冰龍が空間から氷を生み出すのは、過冷却水を操り空中で冷却し、結果的に空間から生み出してるだけであり、幻獣のように空気を凍らせている訳ではない。

 しかしいくらこの低温でも冰龍を氷漬けにすることはできない。だが重要なのは、この空間内だとあらゆるものが()()()()ことである。動くものは運動エネルギーを持ち、エネルギーというのは熱を持つものである。そして絶対零度空間内では極低温、つまり熱が奪われるのだ。熱を奪われれば動くことができなくなる。この空間は謂わば攻撃を感知する為の領域である。

 

ドドドドドドッ!!

 

「!」

 

 凄まじい量と勢いで氷塊が飛んできたが―

 

 

 

 

 

ビシィ…!バキバキ…!

 

 

 

 

 

 ―絶対零度空間に入った瞬間に急激に勢いを落とし、幻獣に届く前に完全に停止した。

 

「ブルルルル…!」

 

 未だに真っ白に染まったままの周囲を見渡しつつ警戒する。今のは絶対零度空間の性質を調べる為の牽制。冰龍本体が攻め込んで来なかったことから間違いない。必ずもう一度仕掛けに来る。その時に決定打を叩き込めるかが勝負だ。

 

「………」

 

 幻獣は猛吹雪の中佇み、ただひたすらに待つ。その光景はまるで黒い影が実現化して佇んでいるようだった。そして―

 

 

 

 

 

「キュオオオオ!!」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 ―遂に冰龍が仕掛けて来た。冰龍は極低温のブレスを放つが、幻獣が反応してブレスを躱す。返しの攻撃として幻獣は複数の氷塊を生み出して射出するが、冰龍は吹雪に紛れて姿を隠す。

 幻獣が思うに、冰龍の追い詰め方は吹雪に紛れて牽制し、それでできた隙に決定打を叩き込む。悪くない策だし、冰龍の身体能力ならばそれを可能とするのだろうが、この空間を突破することはできない。これは自惚れでも過信でもなく、単なる事実だ。単発の攻撃ではこの空間は絶対に突破できない。焦って無理をした所にカウンターを叩き込むことができれば、自身の勝ちだ。そう思っていると―

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―急にフッと吹雪が止んだ。明らかに不自然な現象。だが、幻獣は吹雪が止んで目の前にあった光景に絶句した。

 

 

 

 

 

「キュオオオオ…!!」

 

 

 

 

 

 空中にいる冰龍とその周り―否、全方位に在る埋め尽くす程の氷塊。幻獣はしまったと思い、急いで空間を解除しようとするが、もう遅い。

 

 

 

 

 

「キュオオオオォォォォ!!」

 

ズゴゴゴゴゴン!!

 

 

 

 

 

 冰龍が思い切り吼えると、全方位の氷塊が一斉に幻獣に向かって降り注いだ。氷塊は幻獣の姿を完全に覆い隠し、中の幻獣の様子は確認できない。

 

「━━━━━ッ!!」

 

 そこに冰龍は追撃として更に巨大な氷塊を叩き込んだ。一見オーバーキルとも思える攻撃だが、絶対零度空間の性質を見るとここまでしなければダメージは与えられないというのが冰龍の考えだった。

 まず、一見絶対零度空間を展開している幻獣は平常時から強化されたのはそうだが、攻撃の手数はむしろ減った状態だった。あらゆるものを強制的に停止させるという破格の力だが、それ程までに古龍としての力を使って他のことにまで手が回る筈もない。

 普通に考えれば、あの空間を維持したまま手数で押して来るのが一番効果的な戦い方だ。幻獣に近付こうにも凍らされ、その上で氷柱や氷塊を潜り抜けて行かなければならないのだからたまったものではない。

 それをせずにカウンターの構えを取ったということは自分から攻める手段が少ないからに他ならない。だからこそ冰龍は幻獣の勝負に乗ったと見せ掛けて物量で押し潰したのだ。

 

「……………」

 

 冰龍は静かに地面に降り立つ。策が嵌まったのは良いが、一番の問題は幻獣がどうなったかだ。あれ程の攻撃を受けてノーダメージとは思い辛いが…

 

 

 

 

 

ピシ…パキ…

 

「!」

 

バリィン!!

 

「ヒヒイイイィィィン!!」

 

 

 

 

 

 氷塊に僅かなヒビが入ると、氷塊の山を一気に突き破って幻獣が嘶きながら現れた。あれ程の攻撃を受けながら生きてるだけ大したものだと冰龍は瞑目する。

 

「ブルルルル…」

 

 だが、決して無事とは言えない。全身から血を流し、角にも少しヒビが入っている。心なしか幻獣の息も上がっているように見える。

 

「キュオオオオ…!」

 

 冰龍は翼を広げ、冷気を放出しながら幻獣を威嚇する。ここで手を引けば見逃してやるという意思表示だ。

 

「……………」

 

 幻獣は冰龍を忌々しげに見詰めるも、自身の劣勢は認めているのか、その場に僅かな霜だけを残して消え去った。

 

「…キュオオオオ」

 

 冰龍はその様子を見届けると、翼を少しはためかせて身体の汚れを落とす。ダメージはほとんど受けていないが、かなり動いたのでこうしなければ落ち着かない。

 そしてまた元いた場所に座り込み、空に浮かぶ満月を感慨深そうに見詰める。氷の鎧を纏ったままだった為、その光景は傍から見るととても美しかった。

 

 こうして、幻とも思えた戦いが終わりを告げた。




こう見るとキリン亜種ってめっちゃ強いねんな…

あ、補足しとくとこのカーナ歴戦王です。作中だとぼかされてますが。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

メインモンスター+αでコイツが好き

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