それではお楽しみください。
“砂原”
水分がほとんどない過酷な大地。淡白な砂色の中に、目立つ赤黒い色の一団がせわしなく歩いていた。それは特別大きい赤黒い糸を纏った蜘蛛と、それの子と思われる小さな影がトコトコと着いていた。
このモンスターは妃蜘蛛と臣蜘蛛―の亜種―
「キシキシ…」
「キュアッ!キュアッ!」
熾妃蜘蛛が軋むような鳴き声と共に歩を進め、衛蜘蛛が応援するように元気な鳴き声を上げる。本来溶岩洞、城塞高地が生息地の筈のこのモンスターがここにいるのかと言うと、昨今の状況が大きく関係している。
溶岩洞では砕竜と怨虎竜の激突を筆頭に、
本音を言うともう少し様子を見たかったのだが、やはり慣れない環境に身を置くと身体―特に衛蜘蛛への負担が大きく、そこの改善の為にも戻ることにしたのだ。不安がない訳ではないが、折角なら子どもの好きなように生活させてやりたい。外敵がいたとしても自分が撃破すれば良い話だ。古龍やそれに匹敵するモンスターとなると分が悪いものの、大半のモンスターなら追い返すことぐらいは可能な筈だ。
事実ここまで何頭かのモンスターが戦闘を仕掛けて来たが、熾妃蜘蛛と衛蜘蛛の連携攻撃によって全て追い返して来た。溶岩洞では並のモンスターの中だと主として扱われる程の実力を持つ妃蜘蛛の亜種となれば大抵のモンスター相手には有利が取れる。
だが、過酷な環境なのはここ砂原も同じ。熾妃蜘蛛でも油断ならない強者も存在する。
ズドンッ!!
「! キュアア!!」
ボンッ!!
「キュアア!キュア!」
熾妃蜘蛛は自分に向かって飛んで来た“何か”に気付くと、熾妃蜘蛛の腹部から衛蜘蛛が飛び出して爆発することで凌いで見せた。爆発に巻き込まれた衛蜘蛛は息絶えることなく着地すると、素早く地面に潜り込んだ。
「フシュウウウウン…!」
「ギチギチ…!」
「!」
重機のような鳴き声と、顎を開閉させる鳴き声の方に熾妃蜘蛛が振り抜くと、そこには二匹のモンスターがいた。
一匹は重厚感のある巨体から四本の足と、長い尻尾に先端からは大きく発達した鋏のようなものが開閉し、砂色の甲殻に身を包んでいる。
もう一匹も甲殻の色は同じだが、体躯は相方よりも小さく、翅が生えている。頭部からは二本の角が生えており、巨大な鍬形虫を連想させた。
この二匹の甲虫種は熾妃蜘蛛と衛蜘蛛のように成体と幼体の関係ではないものの、同じように連想した戦うモンスターである。
この斧甲虫と砲甲虫は、連携して戦うと言っても関係は対等ではなく、主従関係にある。その関係は非常に分かりやすいものであり、砲甲虫が主で、斧甲虫が従者という関係だ。
砲甲虫は縄張り意識が強く、あまり強いとは言えない甲虫種の中でも頭一つ抜けた強さを持つ為、原種である重甲虫には“重量級の女帝”という異名が名付けられる程だ。
「キュイイイイ…!」
そしてその強さは熾妃蜘蛛も感じ取っている。できることなら戦いは避けたい所だが、簡単に逃がしてくれるような気配じゃないし、あちらには飛行が可能な斧甲虫もいる。逃げた所で追われるだけだろう。
「━━━━━ッ!!」
「キュイッ!」
「キュアッ!」
「「!」」
熾妃蜘蛛は素早く糸を張り、衛蜘蛛を配置する。我が子を戦わせるのは少々心苦しいが、自分だけでは二対一の構図になってしまう以上厳しい戦いを強いられる。
衛蜘蛛もやる気十分と言った様子であり、自身よりも圧倒的に巨大な斧甲虫と砲甲虫に威嚇している。
「キュアアアアァァァァ!!!」
「キュアアアア!!!」
「フシュオオオオォォォォン!!!」
「キシャアアアアァァァァ!!!」
蜘蛛の親子と女帝とその臣下が激突した。
―NowLoading―
「フシュオオオオ!!」
「キシャシャシャシャシャ!!」
砲甲虫が大地を踏み鳴らしながら突進し、斧甲虫が空高く飛び上がって旋回し、熾妃蜘蛛の背後から突進する。
単純ながら対処が難しい挟み打ちだが、熾妃蜘蛛からすれば驚くことでも何でもない。
「キュアアアア!!」
「「キュアッ!!」」
熾妃蜘蛛が吼えると衛蜘蛛がその場に四匹飛び出し、更に熾妃蜘蛛の側面の遠方に数匹飛び出した。何をするのかと思いきや―
「「キュアッ!!」」
「「!?」」
―衛蜘蛛が吼えると同時に、熾妃蜘蛛がスーッと平行移動して斧甲虫と砲甲虫の挟み打ちからいともたやすく抜け出した。
しかもよく見るとその場に残した衛蜘蛛と熾妃蜘蛛は糸で繋がれている。
「キュアアアア!!」
「「!」」
そしてその糸に熾妃蜘蛛は爪を打ち付けると、糸が発火して導火線のように高速で衛蜘蛛の元に向かって行く。ここまで来れば砲甲虫達も何が起きるのか予想できるが、もう距離が近過ぎる。
「━━━━━ッ!!」
ドッゴオオオン!!
火種が衛蜘蛛まで辿り着くと同時に四匹全てが爆発を引き起こし、砲甲虫達を吹き飛ばした。
衛蜘蛛の膨らんだ腹部には高熱のガスを溜め込み、当然火の気に晒されれば爆発を引き起こす。熾妃蜘蛛はその性質を完全に理解し、糸を利用して先程のような時間差攻撃を可能とするのだ。衛蜘蛛も爆発に巻き込まれるが、爆発性のガスを扱う以上、爆発には耐性を持っている為、瀕死でもない限りは爆発によって衛蜘蛛が死ぬことはない。
糸によって複雑な移動、トラップも設置できる為、連携するモンスターの中でも熾妃蜘蛛と衛蜘蛛のコンビネーションは随一と言っても良い。
「フシュオオオオン!!」
「キシィィィ…!」
だが、異名に重量級と名付けられる程の砲甲虫の甲殻は相応の硬さを誇り、先程の爆発も大きなダメージにはならなかったようだ。体躯で劣る斧甲虫もダメージはあるものの、まだ戦闘不能になる程ではないようだ。
「キュアアアア!!」
「「キュイッ!!」」
二匹がまだやる気なのを察した熾妃蜘蛛は、二匹の背後まで衛蜘蛛を配置する。衛蜘蛛を利用しての爆破か、自身が引っ張られることで突進を狙うか。砲甲虫達は二択を迫られるが―
「キシィィィィ!!」
「キュアッ…!?」
―斧甲虫が高く飛び上がると、腹部から黄色の液体を衛蜘蛛に発射した。糸を張っていた為にもろに食らってしまった衛蜘蛛は、身体をガクガクと痙攣させて動きを止める。
斧甲虫から発射された液体は麻痺性の強い毒であり、小型モンスターである衛蜘蛛が耐えられる筈もなかった。
「フシュオオオオン!!」
「キュオオオオ!?」
衛蜘蛛の動きが止まったことで、素早い移動が不可能になった熾妃蜘蛛目掛けて砲甲虫は糸を踏み潰しながら跳ね飛ばした。体躯としてはどちらも大した差はないが、身体の重量だと砲甲虫の方が圧倒的である為、熾妃蜘蛛でも受け止めることができなかった。
「キュオオオオ…!」
熾妃蜘蛛は全身を駆け巡る軋むような痛みを感じながらも立ち上がった。一撃食らっただけでもあれ程のダメージ。ここからは一撃でも食らう訳には行かないだろう。
「フシュウウウウ…!」
砲甲虫は立ち上がった熾妃蜘蛛を見て考える。先程の一撃は大きいだろうが、恐らく同じ手は通用しない。半端な連携はむしろ利用されるだけだろう。ああいった搦め手を多く使うタイプには、真正面からのゴリ押しの方が良い。
「フシュオオオオン!!」
「!」
砲甲虫が悪臭を放つフェロモンを放出すると、空中にいた斧甲虫が吸い寄せられるように砲甲虫の頭上まで移動する。砲甲虫は頭上で止まった斧甲虫ががしりと尻尾で捕縛すると―
「フシュオオオオォォォォン!!!」
―斧甲虫と合体するように抑えつけ、荒い息を吹きながら地面を踏み鳴らして威嚇する。縦の大きさがそこまででなかった砲甲虫に斧甲虫が重なることで相当な大きさになったように感じる為、まさに戦車のような威圧感を放っている。
「キュイイイイ…!!」
「!?」
何をしてくるのかと熾妃蜘蛛が警戒を強めていると、斧甲虫が鳴き声を上げながら翅を動かしたかと思うと、何と砲甲虫の身体が宙に浮いたのだ。浮いている高さは一メートルもない為に飛ぶというよりはまさに浮いていると言うのが正しいが、あの体躯で砲甲虫を持ち上げるというのは凄まじい。
「キュイイイイィィィィ!!」
そしてただ持ち上げただけで終わる筈もなく、低空姿勢を維持したまま熾妃蜘蛛に向かって突進する。
「━━━━━ッ!!」
流石に推進力を味方に付けた砲甲虫の突進は受け止めきれないと判断した熾妃蜘蛛は、衛蜘蛛に引っ張ってもらうことで突進を躱した。
「キュアアアア!!」
「!?」
熾妃蜘蛛に突進を躱された瞬間、斧甲虫は飛行を止めて砲甲虫を地面に降ろすと、砲甲虫が頭を下げて斧甲虫の角を地面に突き刺し、猛スピードで熾妃蜘蛛に向かって突進する。
その速さは圧倒的で、熾妃蜘蛛が衛蜘蛛に引っ張ってもらうことで躱すには僅かに時間が足りない。熾妃蜘蛛自身が方向転換して躱すことなど不可能である。
そして斧甲虫の角が熾妃蜘蛛を貫く―
「キュアッ!!」
「フシュオオオオ…!?」
―前に、熾妃蜘蛛が首を真後ろに向けて炎のブレスを放った。まさか完全に後ろを取ったのにも関わらず反撃が来るとは予想しておらず、ブレスをまともに食らって動きを止めてしまう。
「キュアアアアア!!」
「キュオオオオ!?」
そして熾妃蜘蛛は灯腹を地面に降ろすと、突き出してそのまま勢いよく突進して砲甲虫達を吹き飛ばした。そのあまりの威力に砲甲虫の上に乗っていた斧甲虫は衝撃で離れてしまった。
「キュアッ!!」
「「キュイッ!!」」
「!」
その瞬間を見逃さなかった熾妃蜘蛛は衛蜘蛛を素早く斧甲虫に纏わり付かせた。斧甲虫は何を狙っているのか気付いて藻掻くが、砲甲虫も突進によってダメージを負い動けない状態だった為、熾妃蜘蛛の攻撃を妨害できる者はいない。
「キュアアアアア!!」
ボボボボボンッ!!
熾妃蜘蛛が爪を打ち付けて衛蜘蛛を起爆すると、連鎖的な爆発が斧甲虫を襲った。そして爆煙が晴れると―
「………」
―斧甲虫の身体があちこちが歪み、部位のいくつかが完全に吹き飛んでおり、どう見ても生きているとは思えなかった。
「キュアアアア…」
「………」
熾妃蜘蛛が砲甲虫の方を振り向くと、砲甲虫は何も言うことなく斧甲虫の屍を見詰めていた。やはり長く付き従って来た相方が死んだとなるとある程度ショックを受けたのだろう。
熾妃蜘蛛も殺し合うことが目的ではない為、機動力を失った砲甲虫はこちらを追うことはできないと判断し、視線を逸らして移動しようとする。
「フシュオオオオン!!」
「!?」
突然砲甲虫が吼えて地面に尻尾を突っ込む。怒りで自棄になったのかと熾妃蜘蛛が呆気に取られていると―
「キュイイイイ!!」
「フシュオオオオン!!」
「!?」
―何と新たな斧甲虫を地面から掘り出して強引に自身と合体させた。情を微塵も感じさせない暴挙に熾妃蜘蛛は啞然とする。
砲甲虫の放出するフェロモンには、異性である斧甲虫を引き寄せる効果がある。そしてフェロモンの放出には特にデメリット等はない為、放出しただけ斧甲虫を呼び寄せられる。つまり使い捨ての兵隊程度の認識でしかない。
「フシュウウウウ…!!」
「ギチ…!ギチ…!」
砲甲虫は尻尾で斧甲虫を抑えつけると、口内に体液を集約させる。明らかに大技の気配だ。
「ギシャアアアアァァァァ!!」
「キュアッ!!」
「キュイッ!!」
熾妃蜘蛛もこれまでよりも一際大きい咆哮を放ち、大量の衛蜘蛛を呼び出して周囲に散開させる。衛蜘蛛一匹につき一つの爆発が起こると考えると、数十匹以上の衛蜘蛛が引き起こす爆発の規模は想像がつかない。
「ギチ━━━━━」
斧甲虫から軋むような鳴き声が止まり―
「キュアアアア━」
熾妃蜘蛛が糸に爪を打ち付けると―
「━━━━━━━━━━!!」
―斧甲虫が発射されると同時に、衛蜘蛛を中心に大爆発を引き起こした。
―NowLoading―
「フシュウウウ…」
爆発の際に巻き起こった砂煙が収まり、砲甲虫が周囲を確認すると、熾妃蜘蛛と衛蜘蛛の姿が消えていた。この辺りで見なかったモンスターであることから、通り掛かっただけである可能性が高い。
できることなら食糧として捕獲したかったが、逃してしまった以上は仕方ない。
「フシュオオオオン!!」
「キュイイイイ!!」
砲甲虫はフェロモンを放出し、斧甲虫を呼び寄せる。そしてジッと斧甲虫を見詰める。その無機質な瞳が何を考えているかは分からない。だが、砲甲虫と斧甲虫は決して対等な関係ではなく、主と従者の関係にある。そして砲甲虫は雑食であり、何でも食べる。
「フシュウウウウ…」
この先に何が起こるのかは、皆の想像にお任せするが…自然界は厳しい、ということをよく覚えておいて欲しい。
―NowLoading―
「キュアアアア…」
無事に逃げ切った熾妃蜘蛛は、疲れたようにため息を吐いた。単純に砲甲虫が強かったのもそうだが、最後の一撃、あの瞬間砲甲虫は体液と一緒に斧甲虫まで発射してきた。
自分が強く言えた口ではないが、まさか身内の死を厭わず容赦なく砲弾にしてくるとは思わなかった。
「キュイッ!キュイッ!」
「キュアア!」
「!」
熾妃蜘蛛がげんなりしていると、衛蜘蛛が熾妃蜘蛛を労うように元気に飛び跳ねる。そんな衛蜘蛛達を見ながら熾妃蜘蛛は全身の糸を整え、より大事に育てて行こう、と思うのだった。
ヤツカダキの咆哮は自分の子を戦わせることへの嘆き…ってどっかで見た気がするけどなんだったっけ…
亜種は砂原に出ないけど折角なら亜種は同士の戦いにしたいと思って亜種同士にしました。
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
メインモンスター+αでコイツが好き
-
リオレウス
-
イャンガルルガ
-
クシャルダオラ
-
エスピナス
-
ティガレックス
-
ナルガクルガ
-
ラギアクルス
-
ジンオウガ
-
ブラキディオス
-
ゴア・マガラ
-
セルレギオス
-
四天王
-
双璧
-
ネルギガンテ
-
イヴェルカーナ
-
マガイマガド
-
メル・ゼナ
-
今回の司会ちゃん