こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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50話まで後一話!頑張って走り抜けたい!

ちなみに今回の話からこの小説にとある変化があります。次話に関わることなのでよければ探してみて下さい。

それではお楽しみください。


海の深淵

 “大海原”

 

 どこまでも広がる蒼い海。この海原でも独自の生態系が築かれており、海原においても海竜など油断ならない強者が多く存在する。

 そしてそれは超常的な存在である古龍も例外ではない。どれだけ圧倒的な力を持っている古龍であったとしても、この世界に生きる生物である以上、自然に適応した進化の形を辿るものだ。

 唯一の例外があるとしたら、自らの力で都合良く生態系を創り変えることができる“古龍の王”たる赤龍ぐらいだろう。

 話が逸れてしまったが、とにかく古龍も環境に合わせた進化を辿るということだ。そしてこの海原において代表格ともされる古龍は、大海龍の名を冠するモンスター。

 

「グオオオオ…!」

 

 燦々と太陽の光が海面を照らし、そのすぐ下には全長60メートルを越える巨大な古龍が悠然とした態度で泳いでいた。

 白く発光する体表に顎下から胴体にかけて生えている豊富な髭、頭部から生える二本の巨大な角。

 伝承の中では“深海を彷徨う神”、“海に浮かぶ新月”、“深海に棲む光る巨人”等、モンスターというよりは神として捉えられているそのモンスターの名は―

 

“大海龍”

“ナバルデウス”

 

 大海龍は海面近くを悠然と泳ぎ、自身の住処である海底遺跡に向かっていた。大海龍は古龍としての特殊能力が他へ影響を与えるようなものではなく、暴れない限りは周囲への被害がほとんどゼロなのである。

 そして大海龍はゆっくりと自身の住処に繋がる海路を通って行こうとすると―

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―何か青黒い液体が大海龍は向かって吐き出された。大海龍がそれに驚き、視界が制限されると同時に何かが纏わり付いて来た。

 “何か”は大海龍よりも体躯は小さかったが、二本の腕を使ってしつこく大海龍に組み付いて来た。このままではマズいと思った大海龍は、口内に力を集約させる。そして―

 

 

 

 

 

「グオオオオォォォォ!!」

 

「キィィィィ!?」

 

 

 

 

 

 ―激流ブレスを放って強引に引き剥がした。相手は甲高い声を上げながら怯み、堪らず大海龍から距離を取る。それによって大海龍は襲い掛かって来た相手の姿を確認するが、その姿は異形と言う他なかった。

 

「キィィィィ…!」

 

 全身に大量の骨を纏い、胴体からは二つの首が伸びている。まるで二つの頭部を持つモンスターの死体がそのまま動いているかのようだった。“奈落の妖星”、“双頭の骸”、異名は様々であるが骸のような様相を指して名付けられたこのモンスターの名は―

 

“骸龍”

“オストガロア”

 

「キィィィィ…!」

 

 骸龍は二つの頭部を傾けて大海龍を睨む。完全に自身に有利な状態から不意打ちを叩き込んだというのに、強引に脱出してみせた。

 体躯でも劣っている上、ここが海中である以上取れる手段も限られている。知能にも優れた骸龍は、出し惜しみをせずに全力で戦うべきだと確信した。

 

「━━━━━」

 

「!」

 

 そして骸龍は180度転回し、背中側の巨大な骨塊の方を大海龍に向けたかと思うと―

 

 

 

 

 

「ギイイイイィィィィ!!!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―何と胴体だと思っていた骨の下から烏賊のような頭部が吼えながら現れたのだ。二つの頭部だと思っていたのは本体の操る触手であり、触手の光点も相まって龍の頭部に見えていただけだった。

 最早古龍どころか竜とも言えない外見だが、実力が侮れないものであることは相対している大海龍が肌越しに感じ取っている。

 事実骸龍によって確認された被害は相当なものであり、恐暴竜をも凌駕する食欲から、海沿いの村が老人一人を残して骸龍によって壊滅させられたという話もある。

 その異常な食欲と陸海空、全ての領域に攻撃手段があることから龍歴院では骸龍は最高級の危険度を持つモンスターとされている。

 

 先程までの状態は触手を使って獲物を捜索する索餌形態である。あくまで捜索の為の形態であり、本格的な戦闘にはあまり向いていない。大したことのない相手なら倒せるのだが、自身と同等以上の大海龍相手には分が悪い。

 それでも捕食の為だけに超大型古龍にまで戦闘を仕掛けるというのは間違いなく異常だが。骸龍は大海龍の幼体を食料と見做しているのは報告されたが、流石に成体となればそう簡単には行かないだろう。

 

「キィィィィ!!」

 

 だが、折角の大物だ。ここで逃さない手はない。自身の住処でない以上多彩な攻撃はできないが、海中なら海中での戦い方がある。

 

「キュイイイイッ!!」

 

「!」

 

 骸龍は身体の背部に存在する噴出口から水を噴射して高速で移動する。その機動力はとても40メートル近くのモンスターとは思えない程の速さだ。

 そして一瞬で大海龍の背後に回り込むと、自身の体内で圧縮した体液を大海龍に向かって放つ。

 

「グオオオオ…!」

 

 大海龍も泳ぎは得意だが、素早い報告転換や一気にトップスピードまで出せる訳ではない為、骸龍の攻撃をまともに食らってしまう。ジリジリと骸龍が距離を詰めて行き、大海龍が押されて行く―ように見えたが。

 

 

 

 

 

「グオオオオォォォォ!!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―次の瞬間大海龍はブレスをものともせずに突貫し、身体を回転させながら骸龍に突進した。骸龍は驚きながらも突進を躱したが、大海龍の身体がほとんど傷ついていないのを見て内心舌打ちを打つ。

 当然これで倒せるとは思っていなかったが、ノーダメージというのは流石に予想外だった。骸龍の想定ではここから一方的な攻撃でジワジワと追い詰めてやるつもりだったのだが、大海龍の防御力が想像以上のものだった。

 これでは大海龍を仕留める為には“奥の手”を切る他にない。正直奥の手はかなり消耗が激しく、命の危機に瀕しない限りは使いたくない大技だ。撃つなら一発までだろう。

 ならばやることは変わらない。牽制で動きを誘導しつつ、一発で仕留める。大海龍が何をして来るかは分からないが、幸いにも機動力だとこちらが上回っている。対応は可能だ。

 

「グオオオオン…!!」

 

「!」

 

 骸龍の考えがまとまるのと同時に、大海龍は大きく渦を描くように泳ぎ始めた。何を狙っているのかが分からず骸龍は一瞬混乱するが、自身の身体が引っ張られるような感覚で大海龍の狙いを理解する。

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴ…!!

 

 

 

 

 

 骸龍が周囲を見渡すと地鳴りのような音と共に大きな渦潮ができていた。これが大海龍の古龍としての特殊能力―という訳ではないが、その巨大さ故に一挙手一投足が災害になり得る。

 この大海龍とは別の個体だが、片角が以上に発達してしまった個体が視界の悪さに苛立ち、少し地盤の緩い島に頭を打ち付けただけでその上に位置する海沿いの村が地鳴りに悩まされたこともある。

 齎した被害こそとんでもないものの、大海龍本人としては、「前が見辛くてイライラした」というちょっとした理由なのである。超大型古龍というのは、そういった存在だ。

 そんな存在が相手を排除する為に意図的に引き起こす災害はどんな規模になるのか―

 

 

 

 

 

「グオオオオ!!」

 

「キィィィィ…!?」

 

 

 

 

 

 ―当然、抗えるようなものではない。大海龍の作った渦潮は相当な規模であり、骸龍は潮の流れに振り回されてしまう。

 大海龍は流れを完全に理解しており、その巨体から想像できない程の速さで骸龍に向かって突進して来る。骸龍も上手く流れを掴もうとはしているのだが、大海龍がそれをさせないように上手く妨害してくる。

 唯一勝っている点であった機動力すら上回られたとなれば、骸龍は敗色濃厚―下手をすればここで死ぬ可能性すらある。

 

「ギイイイイィィィィ!!!」

 

「!」

 

 骸龍は四の五の言ってられない状況だと言うことを理解し、怒りを込めて全力で吼えた。怒りによる影響なのか、触手を中心にある身体の光点が不気味に赤く光り始めた。

 大海龍は様子の変わった骸龍に警戒心は強めるものの、ここで臆しては意味がないと奮起し、最低限の警戒をしつつ骸龍に攻撃を加えようとする。

 

「ギイイイイ!!」

 

「!?」

 

 骸龍は触手を振り回しつつブレスを放ち、大海龍はそのブレスに思わず怯んで動きを止める。単に体液を放っただけなら特に驚くこともなかったのだが、そのブレスが龍属性となれば話は変わる。

 龍属性は一部を除いて大半の古龍に有効な属性である。大海龍も例外ではなく、最も苦手とする雷程ではないが、龍属性も十分に有効だ。

 ここに来て渦潮に翻弄されているのを思わぬ形で活かして来た。上下左右めちゃくちゃに動き回っているのでどこから攻撃が襲ってくるのか予想できない。

 だが、結果的に翻弄されていることに変わりはない。多少の手傷は覚悟した上で押し勝てば問題ない。

 

「グオオオオ!!」

 

 大海龍は力を溜める為にとぐろを巻き、思い切り骸龍に向かって突進する。周りの海流すら伴って威力を増したその一撃は骸龍が食らえば大ダメージとなるだろう。

 

 

 

 

 

「ギイイイイ!!」

 

「グオオオオン!?」

 

 

 

 

 

 だが、骸龍は向かって来た大海龍に合わせるようにして龍属性を纏った触手を叩き付けた。更に触手で大海龍の身体を搦め捕り、龍属性でジワジワと炙りながら何と大海龍の身体に噛み付いた。

 大海龍も逃れようと藻掻くが、激情によって力の増した骸龍の拘束を簡単に振り解くことができない。

 そして死への恐怖とダメージによる怒りによって、大海龍のボルテージも最大まで高まる。

 

 

 

 

 

「グオオオオォォォォン!!!」

 

 

 

 

 

 大海龍が吼えると同時に身体の発光がその怒りを示すかのように赤く染まった。

 

「グオオオオ!!」

 

「ギ…イイイイ!!」

 

 大海龍は更に激しく暴れて骸龍を振り解こうとする。先程までは意に介さなかった骸龍も、その暴れ様には少しキツく感じる。

 

「ギイイイイ!!」

 

 故に負けじと骸龍は更に龍属性と力を強く込め、大海龍の身体を意地でも離さない。大海龍が暴れる度に身体に纏った骨が砕け、体内すら軋むような感覚に陥るが、それでも離さない。

 このまま我慢比べかと思われたが―

 

 

 

 

 

「グオオオオ━━━━━」

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―大海龍が暴れるのを止めたかと思うと大きく身体を引き、周囲の海水が引き寄せられていく。間違いなく激流ブレスを放つ構えだが、最初と違うのは溜め時間。骸龍の龍属性に身体を炙られながらも、一切動じることなく力を溜めている。間違いなく、ここで骸龍を仕留める考えだろう。

 骸龍はこの距離では逃げられないし、躱すことも不可能だろう。下手に逃げれば後ろから狙い撃ちされる可能性もある。それならば―

 

 

 

 

 

「ギイイイイ━━━━━」

 

 

 

 

 

 ―こちらも同じ手で跳ね返せば良い。本来なら龍属性を使って徐々に溜めていく必要があるのだが、今まで散々使って来ていたお陰で威力としては十分なブレスが放てるだろう。

 骸龍は拘束を解いてある程度距離を取る。もしこれでお互いのブレスが相殺されてしまったらとんでもない余波が発生し、この威力なら下手すればそのままお陀仏だ。大海龍もそれは理解していたのか、骸龍の追撃はしなかった。

 

 骸龍の溢れ出る龍属性により、蒼く見える周囲が赤黒く染まる。そして互いの力が最大限まで高まった時―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 

 

 

 

 ―大海を裂くブレスが激突し、大爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「ギ…イイイイ…」

 

 余波の影響も薄まった頃、かなり吹き飛ばされた骸龍が起き上がった。身体に纏っていた骨は明らかに減っており、本体からは血が出ている。

 だが動けない状態ではなく、何とか帰還することも可能だ。大海龍はどうなったか…

 

 

 

 

 

「…オオオオ」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 そして見えた大海龍の姿に骸龍は驚く。余波によって確かに手傷は負っているのたが、怒りが収まっている様子はなく、身体の光点と周囲の空間は赤に染まったままだった。

 そして角で見えづらいものの、怒りの籠もった瞳でこちらを睨み付けている。

 

「キィィィィ!」

 

「!」

 

 それを確認した骸龍は水を噴射して高速で大海龍から距離を取り、そのまま逃走した。流石に奥の手である瘴龍ブレスすら倒し切れなかったとなれば、逃げるしかない。

 上物の餌を逃してしまったのは残念だが、帰りに海竜種の一、二匹程を捕獲すれば元は取れるだろう。

 波は揺られるように、骸龍は海中を漂って行った。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「グウウウウ…!」

 

 大海龍は怒り収まらぬ様子で骸龍の逃げた方向を睨み付ける。追おうにもあの機動力では追い付けない。

 勝手に仕掛けられて勝手に逃げられたとなれば、苛立ちも募るというもの。

 不完全燃焼感が燻ったまま、大海龍は住処に戻って行った。

 次の日、付近の海域では高波が確認されたという。




イカちゃんは竜ノ墓場じゃないとどうしても戦い方がガガガ…

ナバルは今の表現でリメイクしたらこのくらいはできそうかなと思ったので。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

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