こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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TGSでも新作の発表なかったね…まあ20周年の記念ムービーかっこよかったからどうでもいいや。

それではお楽しみください。


底なしの執着

 “大社跡”

 

 遠い昔、神龍の災害によって人から棄てられた領域。今では狩猟フィールドとして扱われている場所だが、数多くあるフィールドの中では比較的気候も安定している為、カムラの里近辺では新人ハンターでも狩猟が許可されているフィールドである。

 しかし侮ってはならない。いくら気候が安定していると言っても、“人が棄てた”という事は“棄てざるを得なかった”という事である。時と場合によっては、古龍ですら姿を現す事があるのだ。間違っても観光地のような扱いはできない。そして実際、今の大社跡には古龍に勝るとも劣らない程のモンスターが幅を利かせている。

 

「ゴルルルルル…!」

 

 赤く罅割れたような傷痕が目立ち、尻尾と前足から生えた刀のような部位―異常発達した腕刃から桃色の鬼火を滾らせ、頭部には大きな傷痕とそれによって歪んでしまった角、隻眼となって残った片目からヒシヒシと怨嗟の念を感じる事ができるそのモンスターの名は、怨虎竜の特殊個体、“怨嗟響くマガイマガド”だった。

 

 怨虎竜は縄張りを広げ続け、その中で複数の雌を住まわせる―いわゆるハーレムを築く生態を持ち、当然安定した生活を送る為には広大な縄張りが必要だ。

 怨虎竜は元から強大なモンスターだが、縄張りを広げる過程では当然同格に近い実力を持つ相手や、時には格上―古龍と相対する事もある。牙竜種でありながら空中戦すら可能にする独自の戦闘スタイルで古龍に一矢報いる事もあるものの、やはり基本的には劣勢に追い込まれる事が多い。

 そして頭部―角に傷を負ってしまうと怨虎竜の雌は雄に一切の魅力を感じなくなる。どれだけ広大な縄張りを持っていても、古龍と対等に戦う事ができる程の強さだったとしても、角が折れているだけで全ての雌が見向きもしなくなる。

 その底なしの怒りで半ば自棄になり、縄張りの執着のみに固執して自殺行為とも言える程の戦闘を制し続けた個体が至るのが、怨虎竜の特殊個体である。

 生への執着をかなぐり捨て、目に映るもの全てに戦いを仕掛ける怨虎竜の特殊個体の戦闘力は古龍を含めても群を抜いて強力だ。怨虎竜本人からしてみれば、今更強くなったとしても何の意味もないのだが。

 

 話が逸れてしまったが、とにかく今の怨虎竜は大型古龍相手でも互角以上に戦う事ができる。生への執着がもうない、文字通り“殺す為”に襲い掛かって来る為、土壇場での勝負強さも凄まじい。今の怨虎竜との勝負を制する事は簡単ではない。

 

 

 

 

 

「グルルルルル…!」

 

「!」

 

 

 

 

 

 だが、同じように箍が外れたモンスターならば、その限りではない。森の奥から木々をへし折って現れたのは、恐暴竜、イビルジョー―なのだが、少々様子がおかしい。

 全身の筋肉が隆起し、頭部から胴体にかけて赤く染まっている。この状態は本来興奮した際にしか起こらない現象である為、平常時からこの状態というのはあり得ない話だ。

 だからこそ、この個体は通常の恐暴竜とは区別され、特殊個体として扱われる。満たされぬ飢餓に苦しみ、恐怖を覚える程獲物に執着する恐暴竜。その名は―

 

“怒り喰らう”イビルジョー

 

 聞いただけでも危険さが伝わるが、その異名は伊達でも何でもない。基本的にクエスト中の乱入したモンスターの狩猟―所謂フリーハントはその場のハンター達の判断に委ねられる。つまり逃げるのは当然、できると思ったのなら狩猟しても構わないのだ。だがほとんどのハンターはそこまでできる余力はない為、基本放置、狩猟できたとしても正式な報酬が払われるわけでもない為、こやし玉で追い払うのが普通だ。

 だが、この恐暴竜に関しては“遭遇次第即撤退”がギルドから徹底されている。こんな対応が義務付けられているのはこの個体だけであり、同格として語られる事が多い金獅子、爆鱗竜の特殊個体であってもこんな対応は決められていない。それ程までにこの個体が持つ危険度というのは高いのである。

 

「グルルルルル…!」

 

 恐暴竜は明らかに強い怨虎竜に対して怯える事もなく唸る。

 この個体が生まれるメカニズムは、その生態故に短命である事が多い恐暴竜がその強さと運の良さで獲物を喰らい続けた事で年老い、体内で増え過ぎた龍属性エネルギーが暴走した事で食欲のリミッターが外れ、食欲>生存本能という思考になってしまったのである。

 

「ゴルルオオオオオォォォォォ!!!」

 

 だが、互いにイカれてしまった者同士、生きる事にすら頓着しなくなったモンスターが今更恐怖などする事もない。

 怨虎竜は腕刃を振り上げて恐暴竜に飛び掛かる。異常発達した腕刃の切断力は相応であり、古龍の甲殻だろうと斬り裂ける。全身筋肉の塊で生半可な攻撃だと弾いてしまう恐暴竜の防御力であったとしても、傷を負うのは避けられないだろう。

 しかも恐暴竜はその体躯故に小回りが利かない。瞬発力はあるのだが、金獅子のように素早く行動する事はできない。怨虎竜の飛び掛かりを躱す事は難しい。

 

 

 

 

 

「オオッ!!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―結果として、恐暴竜は躱さなかった。代わりに怨虎竜の腕刃に噛み付いて受け止めた。勢い余って怨虎竜の身体が激突したものの、大して揺らぐ事もなくダメージを受けた様子も無かった。腕刃は鬼火も纏っており、口内が火傷してもおかしくない筈だが、恐暴竜には一切そんな様子は見られない。

 

「グオオオオオ!!」

 

「ゴッ…!!」

 

 そして恐暴竜はそのまま怨虎竜を地面に叩き付けて引き摺り回す。20メートルを越える体躯だが、特に重さを感じている様子もない。信じられない顎の力と筋肉だが、新大陸で確認された争いでは金獅子や滅尽龍の特殊個体すら抑え込んで引き摺り回す程のパワーなのだ。この程度は造作もないと言える。

 

「ゴルルルルル…!」

 

 

 だが、怨虎竜も好き放題されるがままでいる筈もない。

 怨虎竜が低い声で唸ると背中から赤黒い鬼火が滾り始める。その鬼火の量が最高潮まで高まると―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

ドンッ!!

 

「グオオオオオ!?」

 

 

 

 

 

 ―大爆発を引き起こし、恐暴竜を吹き飛ばした。

 爆炎が晴れると、その先には随分様子が変わった怨虎竜が佇んでいた。背中で中心として噴出していた鬼火は腕刃と尻尾のみから噴出が抑えられていた。

 見た目の派手さこそ失ったものの、これが怨虎竜の全てを解放した形態、“二極鬼火状態”だ。

 

「グオオオオオ…ッ!!

 

ズバン!!

 

「グオオオオオ!?」

 

 怨虎竜が鬼火を集中させた腕刃を振るうと、圧縮された鬼火が斬撃のように恐暴竜を斬り裂いた。並のモンスターであれば甲殻の防御ごと両断されてもおかしくない威力だが、恐暴竜の筋肉の鎧によって表面を斬り裂くだけで済んだ。

 

「ゴルオオオオオ!!」

 

 怨虎竜は恐暴竜が怯んだのを見るや否や鬼火を炸裂させて宙を駆け、縦横無尽に駆け回る。そして一気に恐暴竜の背後まで回り込むと、尻尾を回しながら振り上げて鬼火を集約させる。

 

「グオオオオオ!!」

 

「ゴルオオオオオ!!」

 

ドッゴオオオオオン!!

 

 そして恐暴竜が振り向くと同時に龍属性のブレスを放ち、怨虎竜が尻尾から放った鬼火を纏った突きが激突し、大爆発を引き起こした。

 

「グオオオオオ…!」

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 爆発によって発生した風圧と衝撃で恐暴竜は嫌がるように顔を振るが、怨虎竜は煙を利用して即座にその場から離脱し、今度は逆に恐暴竜から距離を取る。

 

「ゴルオオオオオ!!」

 

「グッ…!」

 

 そして尻尾を振って鬼火の弾幕で恐暴竜を攻撃すると、恐暴竜が怯んだ隙を狙って恐暴竜に鬼火の炸裂で急接近し、腕刃で斬り付ける。

 

「グオオオオオ!!」

 

「ッ!」

 

 恐暴竜もどうにか怨虎竜を捉えようと顎を開くが、その動きを見せると怨虎竜はすぐに距離を取って決して恐暴竜の間合いで勝負しようとしない。飛び掛かって拘束しようにも怨虎竜は常に駆け回っている為そもそも狙いが定まらない。

 

「ゴルオオオオオ!!」

 

「グッ…オオオオオ…!」

 

 そして怨虎竜の怒涛の攻撃によって恐暴竜の身体には傷が刻まれていく。圧倒的な筋肉によって致命打こそ受けないものの、それでもダメージが積み重なれば体力は削られていく。

 この圧倒的な窮地に立たされて恐暴竜が感じるのは死への恐怖―

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

 ―ではなく、飢餓感と苛立ち。

 繰り返す形になるが、この恐暴竜はもう精神が崩壊しており、意味もなく獲物を求めて彷徨い歩き、喰らう。それが生態だ。

 そんな恐暴竜にとって獲物が目の前にいながら喰らう事ができないというのは何よりの苦しみとなる。

 積み重なる飢餓感と苛立ち。それが頂点に達した時、恐暴竜はその壊れた本能を剥き出しにする。

 

 

 

 

 

「グオオオオオォォォォォン!!!」

 

「!」

 

 

 

 

 

 恐暴竜が天に向かって吼えると口元から龍属性エネルギーが溢れ、それによって顔が覆い尽くされる。

 

「グルルルルル…!」

 

 そして恐暴竜の視線が怨虎竜を捉える。

 その瞳は最早生物の物とは思えない輝きを放ち、赤黒い煙の中で赤い光点が二つ光っているようにも見えた。

 

「ゴルオオオオオ!!」

 

 だが、どれだけ様子が恐ろしく変化しようとも怨虎竜が恐れる事はない。鬼火を滾らせ、恐暴竜を殺す為だけに向かって行く。

 鬼火の炸裂によって生まれる機動力は恐暴竜では追い付けないものであり、姿を変えてもそれは変わらない。ダメージは十分に与えた。次の一撃で殺すつもりで、怨虎竜は鬼火のガスを撒き散らしつつ駆け出した。

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 ガスの煙幕に紛れつつ、一瞬で背後に回り込むと怨虎竜は恐暴竜の首を狙って腕刃を振り抜く。振り抜いた腕刃は寸分違わず恐暴竜の首を捉え、そのまま首を―

 

 

 

 

 

「オオオオオ!!」

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―斬り落とす事ができなかった。

 恐暴竜は凄まじい勢いで振り向くと、怨虎竜が腕刃を振り抜くよりも速くその強靱な顎で咥えて受け止めてしまった。

 

「ゴルルルルル…!!」

 

 怨虎竜はならばこれでどうだと言わんばかりに腕刃の鬼火の火力を高め、恐暴竜の顎を吹き飛ばそうとするが―

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―何故か鬼火の操作ができない。

 腕刃をよく見ると、常に滾っていた筈の鬼火が不自然に消えており、恐暴竜から溢れ出している龍属性エネルギーにまとわり付かれていた。

 龍属性はあらゆる属性、状態異常を無力化する。それの効果は怨虎竜の鬼火に対しても例外ではなく、恐暴竜の頭部付近は完全に属性攻撃をシャットアウトする状態となっていた。

 

「グオオオオオ!!」

 

「ゴッ…!」

 

 そして恐暴竜は怨虎竜を咥え込んだまま振り回し、地面に何度も叩き付ける。その威力は最初の叩き付けの比ではなく、怨虎竜の鎧のような甲殻にヒビが広がっていく。

 何度も叩き付けた後、恐暴竜はそのまま怨虎竜を大きく振り回すと、壁に向かって投げ飛ばした。

 

「ゴルオオオオオ!!」

 

「グウウ…!」

 

 だが怨虎竜は空中で体勢を立て直し、足元で鬼火を炸裂させて恐暴竜に向かって突っ込んだ。恐暴竜は強靱な脚力で受け止める事はできたものの、流石の威力にカウンターを放つ事はできなかった。

 

「グオオオオオ!!」

 

「ッ!!」

 

 受け止めた恐暴竜は怨虎竜に噛み付こうとしたが、怨虎竜はその前に素早く恐暴竜の懐から脱出して距離を取った。

 

「ゴルオオオオオォォォォォ!!」

 

「!」

 

 そして一際大きく吼えると一気に駆け出し、大量の鬼火を撒き散らしながら恐暴竜の周囲を駆け回る。

 

「オオオオオ…!」

 

 本能で怨虎竜が大技を放って来るのを感じ取った恐暴竜は、口内に体内の龍属性エネルギーを集中させる。

 互いに放つのは自らへの影響を度外視した大技。勝利と自らの命を天秤に掛けても、両者共に迷いなく勝利を選んだ。

 

「オオッ!!」

 

「━━━━━」

 

 そして怨虎竜は空へ跳躍し、恐暴竜は龍属性を溜めきった頭部を怨虎竜に向ける。両者の視線が、刹那の狭間で交差する。

 

 

 

 

 

「「━━━━━━━━━━ッ!!」」

 

 

 

 

 

 そして怨虎竜は一気に急降下して恐暴竜に向かって突進し、恐暴竜は渾身の龍属性のブレスを放った。

 性質は違いながらも、幾重もの命を重ねた一撃が激突するが、威力が拮抗しているのか両者共に一歩も譲らない。それでも押し切ろうと怨虎竜は鬼火で加速するが、恐暴竜も負けじとブレスの出力を更に高める。やはり拮抗し、互いの龍属性が最高潮まで高まると―

 

 

 

 

 

ドッゴオオオオオン!!

 

 

 

 

 

 ―凄まじい閃光と共に龍属性の爆発が起こり、二匹を呑み込んだ。巻き込まれた二匹はどうなったか…

 

「グ…オオオオオ…」

 

「ゴル…オオオオ…」

 

 流石はタフネスに長けるというべきか、恐暴竜も怨虎竜も生きていた。

 だが自らに負担を掛ける技を放った事もあり、全身血みどろで身体の部位も破損しているところが多かった。

 

「グオオオオオ…!」

 

「ゴルルルルル…!」

 

 それでも二匹は立ち上がって相手を殺そうと睨み付ける。その精神性はやはりイカれているものとしか思えなかった。

 遂に決着を着けようと最後の力を振り絞る。

 

 

 

 

 

ザン!!

 

 

 

 

 

 その時、一瞬風が吹き抜けたかと思うと、何かを斬り裂く音が響いた。そして―

 

 

 

 

 

「…オオオオオ…」

 

「ゴ……………」

 

 

 

 

 

 ―恐暴竜と怨虎竜は血を吹き出してその場に倒れ伏した。何故急に絶命したのか、それはいつの間にか二匹の背後に立っていた。

 

「クオオオオオ…」

 

 その古龍は穢れなき純白の甲殻に覆われ、槍のような尻尾と強靱さを感じる翼が目を惹く、まるで聖騎士のようにも思える古龍だった。

 

「……………」

 

 その古龍は仕留めた二匹を憐れむような目で見つめると、空へ飛び立ってその場を後にする。

 大社跡には、哀れな二匹の竜の屍だけが残った。




モンスターは強いのに文字数ガガガ…マジで20周年でなんか新しいニュースないとモチベがヤバい…

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回もお楽しみに。

メインモンスター+αでコイツが好き

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