それではお楽しみください。
“古代林”
他のフィールドに比べて背丈の高い植物が多く、まさに太古の時代から切り抜かれ、そのまま現代まで存続してきたかのようなフィールド。比較的平坦な地形が広がる上層と、特徴的な植物や胞子で溢れる下層に分けられる。下層は生い茂る植物によって日の光がほとんど届かない程に暗いが、胞子やキノコが発する光によって夜でも明るく、神秘的な雰囲気に包まれている。
そんな下層で、一際明るい光を放つ存在が闊歩していた。
「ブルルル…!」
光が無くとも白く輝く体毛に、白銀の鬣、頭部には蒼白の一角が常に僅かに放電している。
浮き世離れした容姿のこのモンスターの名は幻獣、キリン。
古龍は皆神出鬼没な生物だが、幻獣はその異名通り幻の存在であり、突如現れては気付いた時には姿を消すという古龍の中でも群を抜いて得体の知れない存在だ。翼も持たない事から空を飛んだりしているわけではない筈だが、各地を点々とする幻獣を追跡できた事は一度もない。雷を操るメカニズムも未だに不明であり、かなり古い時代から確認されていながら未だに謎が多く古龍の内の一体である。
「……………」
古代林を訪れたのも気まぐれか、あるいは何かしらの目的があったのか。それは幻獣にしか分からない事だ。幻獣は上層を目指して壁を駆けて行った。
―NowLoading―
「ガルルルルルル…」
空には満月が浮かび、星が輝く夜空の下、月明かりよりも強い輝きを放つ一体のモンスターが月を見上げて座り込んでいた。
金色の雷を纏い、通常種よりも太く捻れた角を戴くそのモンスターは雷狼竜の中でも特別な“二つ名”を持つ存在、“金雷公”、ジンオウガだった。
とある地方に伝わる伝承だと“千光を操り、万雷を放つ”、“雷狼竜の王”とまで謳われる存在だ。その力は伝承故の誇張表現などではなく、龍歴院で定められている金雷公の危険度は古龍にも迫る程だとされている。
だが雷狼竜の種としての性質まで変わっているわけではないらしく、怒りを買うと手が付けられないものの、縄張りに侵入したりこちらから戦いを仕掛けない限りは金雷公も無闇矢鱈に暴れる事はない。
「……………」
金雷公は月を見上げて座り込んだまま動かない。新大陸においても満月の夜には月に向かって遠吠えする姿が雷狼竜及び獄狼竜に見られたそうたが、その行動を行う理由は未だに解明されていない。
雷狼竜は人目の届かない領域で群れで子育てを行い、成長すれば親元を離れて過ごす為、何処かで生きている家族を思っての行動…なのかもしれない。
「━━━━━」
「!」
それでも、音も無く背後に立った
金雷公が悪寒を感じて振り返ると、そこには幻獣が佇んでいた。金雷公を映す真っ赤な瞳からは何を考えているのか全く読み取る事ができない。
「ガルルルルル…ワオオン!」
金雷公は幻獣の出方を探る意味も込めて軽く威嚇する。戦う事になったとしても負ける気はないが、古龍である以上一筋縄ではいかないだろうし、互いの扱う属性が同じである為泥試合になる可能性が高い。縄張りはともかく場所を譲る程度なら金雷公は全然構わなかった。
「ヒィィィン!!」
ドオオン!!
「!」
だが、その望みは白雷によって断たれた。金雷公の威嚇に対する幻獣の返礼は嘶きと共に落とされた白雷だった。金雷公も警戒を怠っていかなかった為攻撃を躱す事はできた。
しかし、ここで気になるのは幻獣の目的。何故わざわざ金雷公に戦闘を仕掛けるのか、という事だ。接敵した時点で気が立っていたのなら様子見などしてくる事もなくすぐに襲い掛かって来た筈だ。あり得る可能性としては金雷公に威嚇された事で一気に怒髪天に至った事だが―
「ブルルル…!」
―その事を考えるのは追い返した後だろう。とにかく今は幻獣の相手をしなければならない。
「ワオオオオオォォォォォン!!!」
金雷公は天に向かって吼え、帯電している雷光虫を一気に活性化させる。
常に超帯電状態に至っている金雷公だからこそ可能な、さらにその先の領域―“真帯電状態”。
普段の黄緑色の雷から眩く黄金の雷を纏い、その二つ名通りの見た目となった金雷公は、先手必勝と言わんばかりに攻撃を仕掛ける。
「オオオオオ…ッ!!」
身体の姿勢を低くして前足を後ろに引くとバネの要領で思い切り振り抜く。すると鋭い剛爪から黄金の雷を纏った衝撃波が放たれる。大地を抉りながら迫る衝撃波はまともに食らえば古龍ですらダメージを負うだろう。それこそ、雷に耐性がある幻獣ですら例外ではない。
「…ッ!」
故に幻獣は真正面から攻撃に対抗せずに軽やかなステップで攻撃の間を縫うようにして回避する。力比べという点では確かに他の古龍、古龍級生物に一步劣るものの、小回りや俊敏性という点において幻獣に比肩し得る存在はそう多くない。
「ヒィィィン!!」
そして一気に金雷公の懐まで潜り込んだ幻獣は角を起点として
「グオオオオオ!!」
金雷公は身を翻して雷が掠る程度でやり過ごし、被害を最小限に抑えた。さらに周囲に雷光虫をばら撒き、幻獣の接近を牽制する。
通常種がばら撒くような雷光虫とは違い、幻獣に向かって飛んで行くわけではなく、低速で不規則に空中を漂っていた。
「━━━━━ッ!!」
幻獣はそんな状況でも一切臆する事なく駆ける。縦横無尽に駆けながら雷光虫は落雷で処理する。落雷が雷光虫を貫く事によって発生する光が連鎖する中、接近する幻獣を金雷公は迎え撃つ。
「グオオオオオ!!」
「ッ!」
金雷公は雷を纏った前足を叩き付けるが、幻獣はそれを横に飛ぶ事で躱す。金雷公は叩き付けた前足をそのまま横薙ぎに払うが幻獣は上に跳躍する事でそれすら躱す。
「ワオオオオオォォォォォン…!!」
だが、足場の無い上空に追いやる事ができた。金雷公は背中の雷光虫にありったけの電気を流し込み、空中にいる幻獣を睨み付けると―
「グオオオオオォォォォォン!!」
ドッゴオオオオオン!!
―金雷公の背中から空に向かって
かなりの電力を消耗してしまった事によって真帯電状態が解除されてしまったものの、超帯電状態は維持できている為、まだ戦う事になったとしても問題はない。空中にいた幻獣にはほぼ間違いなく直撃させられた筈だが、どれだけダメージがあるかは正直金雷公は予想が付かなかった。
「グルルルルル…」
慎重に周囲を見渡すが、幻獣の姿は見当たらない。あまりの威力に消滅した、という可能性は全く考えなかった。いくら小柄な幻獣と言えども自身の扱う属性の攻撃を食らって消滅したというのは考え難い。
「……………」
「!」
そうしている内に背後から何とも言えない気配を感じて振り返ると、先程まで何もいなかった筈の場所には幻獣が立っていた。まるで最初に出会った時と何も変わっていないようにも見えるが、よく見ると幻獣の息が少し上がっており、鬣と角から常に青白い放電が起こっている。
先程の攻撃は効果はあったようだが撤退に追い込む程ではなかったらしい。幻獣の赤い瞳は何を考えているのか分からないが、その小柄な体躯には見合わない程の敵意と殺気が金雷公の身体を貫いている。金雷公は改めて気を引き締め直し、四肢に力を入れると―
「━━━━━」
「!?」
―金雷公が地面を蹴るよりも速く、幻獣が目の前まで迫っていた。驚いた金雷公は後ろに跳んで距離を取ろうとするが―
「━━━━━━━━━━ッ!!」
「グオオオオオン!?」
―落雷と共に幻獣の姿が消えたかと思うと一瞬で金雷公の背後に移動し、迸る雷と共に金雷公を貫いた。
「グオオオオオ!!」
だが、怯んで隙を晒すのはマズいと考えた金雷公はなんとか堪えて反撃として前足を振り下ろす。
「━━━━━」
「!?」
確実に捉えたと思った金雷公だったが、幻獣に向かって落雷が発生すると同時に幻獣の姿が消えた。
「ヒヒィィィン!!」
「グ…オオオ…!」
そして金雷公から少し離れた場所に現れたかと思うと一際強く嘶き、金雷公に向かってあらゆる角度から雷が襲い掛かった。
塵も積もれば何とやら。いくら雷に耐性のある金雷公であっても文字通り雨あられのように何十発と叩き込まれては無事では済まない。
「ヒィィィン!!」
「グッ…!」
しかも幻獣本体も隙を見計らって攻撃してくる。金雷公が逃げるような動きを見せる度に角や後ろ足で蹴りつける事で金雷公をその場に留め続ける。
このままではマズい。金雷公は必死で頭を回す。とは言っても動けない上に機動力では幻獣に劣っている以上できる事が少な過ぎる。雷の雨は絶えず金雷公を穿ち続けており、蓄電行動を行う間もない。
「!」
そこで金雷公は一つの策が思い浮かんだ。かなり賭けの要素が強く、成功したとしてもどうなるかが想像が付かない程の策だが、もうここまで追い込まれた状況では頼らざるを得ない。金雷公は覚悟を決めた。
「オオオオオ…」
そして金雷公は姿勢を低くして背中に集っている雷光虫に一つの信号を送る。
「! ヒィィィン!!」
幻獣は金雷公の不審な行動を目敏く感知し、四方八方から雷で金雷公の身体を貫く。すると―
「グオオオオオォォォォォン!!」
「!?」
―蓄電行動をする事もなく一気に真帯電状態に至った。幻獣の落雷から真帯電状態に至るまでのエネルギーを得た上で上手く自身の物に変換するというかなり綱渡りな荒業だったが、なんとか実現させる事ができた。
「ブルルル…!!」
幻獣は金雷公の奇策に面食らったものの、気を取り直して雷を撃ち出す。何も超絶パワーアップしたわけではなく、あくまで既存の限界までというのならやる事自体は今までと何ら変わりない。一撃の威力を警戒して立ち回れば幻獣の機動力なら避けられるし、倒すには大技が必要だ。
そして当然大技を放つ暇など与えない。このまま削り倒す勢いで幻獣は果敢に攻め続ける。
「オオオオオン!!」
「!?」
そして金雷公の取った行動で幻獣は驚いた。今までのダメージもあって攻撃は回避すると思っていたが、実際はその逆、真正面から攻撃を受けながら突っ込んで来たのだ。
「グオオオオオ!!」
「…ッ!!」
幻獣は金雷公の猛攻をなんとか躱す。どうやら金雷公はダメージ覚悟で勝負を決めに来たらしい。その甲斐あってか少し余裕はなくなったものの、どうという事はない。あちらから突っ込んで来てくれるのなら、こちらはその分一步引いて戦えばいい。負ったダメージだと金雷公の方が多いのだ。焦る事はなくじっくりと相手すればいい。
「ヒィィィン!!」
幻獣は回避重視の戦い方に切り替えて金雷公に雷を叩き込む。金雷公はとにかく攻撃を仕掛けて来る為、牽制用の落雷は最小限にして、正確性重視で確実に削る。
「ワオオオオオォォォォォン…!!」
「!?」
すると金雷公は力強く吼え、周囲に雷光虫を一気にばら撒く。まさか今まで対応し続けて来た幻獣もここで大技を放つとは思っておらず、目を見開いた。
「ッ!!」
それでも結局金雷公本体の攻撃さえ躱してしまえば問題ないと冷静に考え、金雷公から距離を取った。だが―
「グオオオオオォォォォォン!!」
「!?」
―見誤ったのは、金雷公の攻撃の規模と威力。渾身の咆哮から放たれた落雷の雨は以前に放ったものとは格が違った。
それもその筈。金雷公は二度目の真帯電状態に移行した後幻獣に猛攻を仕掛けながら雷光虫に指示を出していたのだ。
“可能な限り、同胞を集めて来い”と。
金雷公に限らず、雷狼竜と共生している雷光虫は通常の雷光虫よりも強力な電気を放っている。当然一匹が放つ量は大型モンスター相手に痛手を負わせるには到底足りないが、それが何百、何千と集まり、更に金雷公自身の電気によって強化されればどうなるか。例え強固な甲殻に守られていたとしても、侮る事ができない威力となる。
だが、だとしても今回金雷公が操っている雷光虫の量は異常だろう。いくら通常種より強くなっていると言えども、到底不可能だと言える程に。
金雷公自身もそれは分かっていた。故に取った方法は、
慣れないマルチタスクによって身体には相応の負担が掛かったものの、その成果は大きい。
ゴガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!
「ッ…!」
まさに雷雨。圧倒的な火力と手数によって幻獣は身動きが取れずにいた。
「ブルルル…!」
幻獣は低く呻いて頭部の角に雷を集中して纏わせる。周りがとんでもない事になっている中でのこの行動は中々に大胆と言えるが、幻獣がこんな行動を取った事には当然理由がある。それは―
「グオオオオオォォォォォン!!」
―こうして金雷公が大技で決めに来る事が分かっていたからだ。
前足どころか全身に黄金の雷を纏った金雷公は確実に幻獣を倒すべくして突っ込んで来た。
「ッ!!」
それを確認すると同時に幻獣も駆け出す。回避などは一切考えず、金雷公を貫く為だけに最短距離を駆け抜ける。
その姿はもはや蒼白の雷が地面を迸っているようであり、自然の猛威たる古龍の強大さを示しているようでもあった。
そして黄金の雷狼竜と蒼白の幻獣は眼前まで迫り―
「━━━━━━━━━━ッ!!」
―数瞬後には轟音が響き渡った。
―NowLoading―
「グルル…ウオン…」
激突の中心地。地面が焼け焦げ、炭となった大地では金雷公がふらつきながらも確かに立っていた。無茶な蓄電と放電を繰り返した事によって甲殻は焼け焦げ、幻獣の角が貫いたのか胸部には痛々しい傷痕ができていた。
その向かい側に、幻獣はいない。攻撃を当てた手応えはあったのだが、衝撃で互いに吹き飛ばされて姿を見失ってしまった。そこから周囲を警戒して雷光虫で索敵したものの、幻獣らしき気配は見当たらず、完全に姿を晦ましていた。
「……………」
ふと、金雷公は周囲を見渡す。焼け焦げ、凄まじい戦闘があったと伺い知る事ができるが、幻獣がいたと証明できるものは何一つ残っていなかった。
それによる苛立ちは不思議と湧いて来ず、なんだか誰かに化かされたような、夢を見たような感覚に陥った。
しかしいつまでも呆けているわけにも行かないので、とにかく傷を癒そうと、深い樹の森に戻っていく。
夜空の月の下で、なんだか嘶きが聞こえたような気もしたが、金雷公は振り返らなかった。
ひっさしぶりにこんな長く書いたかも…描写が上手く行ったかは分からんけど…
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
メインモンスター+αでコイツが好き
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リオレウス
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