それではお楽しみください。
“渓流”
紅葉と透き通った川。彩りに溢れたこの地には今、相応しいモンスターが川を覗いていた。
「クルルル…」
黄色の嘴に緑黄色の体色、非常に目立つ色彩のモンスターは―
彩鳥は身動ぎせずに川の水面をジッと覗き込んでいた。覗いている水の中には複数匹の魚が泳いでいた。彩鳥の好物は魚介類であり、好物が目の前にあるとなれば逃す手はない。確実に捉えられるよう、じっくりと機を伺っている。
「……クァァ―」
そしてタイミングを見計らい、いよいよ捉えようとしたその瞬間―
「ギャウッ!」
「!?」
―間に小柄な影が素早く割り込んだ。その正体は小型の鳥竜種であるジャギィ。その口には彩鳥が狙っていた獲物が咥えられていた。
「クルルル…!」
彩鳥は少し苛立ちを感じたものの、あまり引きずっても仕方ないと考え直し、残っている獲物に狙いを定める。そして機を待ち、今度こそ捉えたと思った瞬間―
「ギャウッ!」
「! クルッ、クルアアア!!」
―またもやジャギィが割り込み、横取りされてしまった。流石にこれにはかなり頭に来た為、軽く追い払うように威嚇する。そして次こそはと言わんばかりに残った魚に狙いを定める―が、何か嫌な予感がしたので横を向くと―
「「「………」」」
―まるで狙うのを待っているかのように複数匹のジャギィが彩鳥を見つめていた。二度目まではまだ許す事もできたが、流石に三度もやられるとなると本気で頭に来た為、彩鳥は本気で追い払う事を決めた。
「クオッ、クオッ、スウウ―」
そして彩鳥は身体を揺らしながら息を吸い込むと―
「グオオオオオン!!」
「ギャウ!」
「ギャウアア!」
―喉元の赤い鳴き袋と嘴をラッパのように膨らませ、尻尾を扇のように広げながら大きな声で吼えると、それは彩鳥が鳴いたものとは思えないような凶暴な飛竜の咆哮が響き渡った。
それを聞いたジャギィ達は怯えながら蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。ジャギィ達が逃げ去るのを見届けた彩鳥は、これでゆっくり食事ができると確信し、水面の魚に狙いを定めた。
―確かに彩鳥の咆哮は簒奪者達を追い払った。だが、それと同時に大声で咆えた事によって、自らの位置を教えてしまったという事でもある。当然彩鳥もそれを承知の上で自らの知る中で強力な飛竜の鳴き声を真似て可能な限り周辺のモンスターを追い払うようにしたのだが、一つ誤算があったとするならば―
「クエアアア!!」
「!」
大きな鳴き声と共に現れた存在に、彩鳥は思わず顔を上げる。そいつは彩鳥と同程度の体躯にピンクを基調とした体色、一対の翼に丸みを帯びた嘴と扇のように広がった大耳。多くのハンター達にとっても印象に残っている者が多いであろうモンスター。
「クエエエエ…!」
怪鳥は彩鳥に対して姿勢を低くして唸る。怪鳥は大型モンスターに数えられているが基本的に臆病であり、他の大型モンスターと遭遇した際には逃げる事の方が多い。
だが、当然例外もある。臆病でこそあるが、縄張り意識そのものはある為にハンター等小型の侵入者に対しては積極的に攻撃を仕掛けるし、爆音を聞いた際には聴力の高さ故に一時的に放心はするものの、その後は凄まじい激情を顕にして外敵に襲い掛かるのだ。
今回の場合は彩鳥の声マネが怪鳥にとっての“爆音”に当たった為、音源の彩鳥に襲い掛かって来たというわけだ。
「クルルルル…!」
彩鳥も怪鳥は流石に片手間で追い払う事のできる相手ではないと判断し、しっかりと向き直る。
そしてどうにか追い払う方法を考える。先程の声マネで逃げ出さなかったという事は飛竜の声マネをしても無駄である可能性が高い。そうなると後は実力行使しかないわけだが…彩鳥も真正面戦闘はあまり得意ではない。逃げ出す可能性に賭けて、自身の知る中で最も強いモンスターの声マネをする事に決めた。
「スウウ―」
そして大きく息を吸い込むと―
「ヴォアアアアアァァァァァァ!!!」
―身体を大きく動かし、思い切り吼えた。その咆哮は彩鳥が別の外敵と接敵した時に声マネに釣られてきた黒毛の獅子のもの。命からがら逃げおおせたが、未だにトラウマである。
だが、基本的にこの咆哮を聞いて怯まないモンスターはいない。以前に大型飛竜と相対した時でさえ、この声マネで切り抜けたのだ。怪鳥はどう見てもあの時の飛竜よりも弱い。もしまともに理性が働いているのであれば、ここで踵を返して逃げ出す筈だ。
「クエエエエエ!!」
「!」
だが、怪鳥は咆哮に怯んだ様子もなく口から火炎液を彩鳥に向かって放って来た。彩鳥は軽いステップで火炎液を躱した為ダメージは無かったものの内心驚いた。この咆哮を聞いてもなお引き下がらないという事は相当頭に来ているようだった。これは声マネでは撃退できないと、彩鳥は自ら戦う事を決めた。
「クオオッ、クオオッ」
そして彩鳥は独特の鳴き声を発しながら、翼の先端を器用に打ち付ける。よく見ると打ち付けた瞬間には火花が散っていた。そして―
「クオオオオオッ!!」
「クエエエッ!?」
―ステップと同時に怪鳥に向かって踏み込み、翼を打ち付けながら怪鳥に攻撃を叩き込んだ。打ち付けると同時に軽く爆発し、驚愕とダメージを受けた怪鳥は大きくのけ反った。
彩鳥の翼の先端は火打石になっており、打ち付ける事で火花が発生するのだ。それを打ち付ける事と火花による相乗効果によって生まれる威力は侮れないものだ。火に耐性のある怪鳥でなければもっとダメージがあってもおかしくない。
「クエエアアア!!」
「クオオオ!?」
裏を返せば、火に耐性のある怪鳥はある程度ダメージを軽減できるというわけだ。ダメージの余韻から抜け出した怪鳥は思い切り彩鳥を蹴飛ばした。
「クエエアアアッ!!」
「グッ…!」
そして怪鳥は蹴飛ばした彩鳥に飛び付き、執拗に嘴でつつく。威力そのものはそこまでではないが、頭部に衝撃を受け続けるのは人間の何百倍もの耐久力を持つモンスターであってもよろしくない。
特に彩鳥の嘴は戦闘においても生活においても重要な役割を果たしている為、傷を負ったり、破壊されるわけには行かない。
「━━━━━ッ!」
「クエッ!?」
彩鳥は翼を―正確には先端の火打石を突き出すようにして怪鳥の啄みを防御する。突然の行動に怪鳥は驚いて顔を引っ込めるが、すぐに気を取り直して自棄になったように火打石を砕こうと啄み続ける。
こうして見ると、一見形勢は変わってないように思える。だが、彩鳥としては
「スウウ―ウオッオッオッオッオッオッ!!」
「!」
啄みを防ぎ続けながら、彩鳥は声マネを発する。それは先程のような威圧感に溢れる咆哮ではなく、特徴的な通る声マネだった。怪鳥は驚きながらも攻撃を続行した。
が、二匹が争っている側にある茂みから、何かが近付いて来るような音が聞こえていた。そしてその茂みから顔を出したのは―
「ギャウ」
―ジャギィだった。一匹が顔を出すと、ひょこひょこと後に続くように複数匹現れた。そしてジャギィ達は怪鳥に襲われている彩鳥の姿を確認する。
「ウオッオッオッオッ!」
「「「!」」」
攻撃を防ぎ続けている彩鳥がもう一度声マネを発すると、ジャギィ達が一斉に反応し―
「ギャウッ!ギャウッ!」
「ギャウアアア!!」
「クエエエエエ!?」
―怪鳥に向かって襲い掛かった。一匹一匹の攻撃力は大した事はないが、怪鳥は大型モンスターの中ではそこまで体躯に恵まれていない事も相まって、複数のジャギィに組み付かれれば鬱陶しい事この上ない。
だが、気になるのはジャギィ達の動き。それは漁夫の利を狙って来たというよりも、彩鳥を守るような動きをしている。ジャギィは群れでの統率の取れた連携が強みである事は間違いないが、それは司令塔となる狗竜が居ての事。この場に狗竜が居ないにも関わらず、何故こんなにも鮮やかな連携が行えるのか、見る者が見れば疑問を抱くだろう。
それは先程彩鳥が発した声マネにある。先程の声マネは単なる狗竜の声マネではなく、ジャギィ達への攻撃命令も兼ねていた。ハンターからすれば同じような音に聞こえても、モンスター―それも綿密な連携が鍵になる鳥竜種の咆哮は、同じ鳴き声一つでも意味は大きく変わる。
彩鳥も意味が理解できるわけではないが、違いは分かる。実際に『見て』、『聞く』事さえできれば意味は分からずとも完璧に模倣できるあたり、彩鳥の声マネの精度の高さが伺える。
「ウオッオッオッ!!」
「「ギャウアア!!」」
そして怪鳥の拘束から逃れた彩鳥が立ち上がり、もう一度狗竜の声マネをすると、今度はジャギィ達と共に怪鳥へ襲い掛かった。
「クエエアアア!!」
しかし怪鳥も引き下がる事はなく迎え撃つ構えだ。怪鳥は口から火炎液を吐き出し、周囲にばら撒くように放つ事で近付いて来るジャギィ達への牽制にする。
「クルルル…」
火炎液の側にいたジャギィは、火炎液を見て怖がるように足を止める。ジャギィ達はハンターの持つ松明の炎でさえちらつかされると近付かなくなる程度には炎に弱い。怪鳥の放つ火炎液ともなれば当然ハンターの松明とは比べ物にならないサイズを誇る為、それを見たジャギィ達は動けなくなっていた。
「ギャウアアッ!!」
しかしそれでも全てのジャギィを足止めできたわけではない。火炎液の乱射を突破した個体は怪鳥に向かって飛び掛かり、牙を剥く。ダメージは小さいが、彩鳥も一緒に襲って来る事を考えると、一度劣勢に回ってしまうとそのまま押し切られてしまう可能性が高い。
「クエエエエエッ!!」
「ギャウッ!?」
劣勢な状況でも、怪鳥は慌てず対処する。まずは飛び掛かって来るジャギィからステップで飛び掛かりを躱すと、自分の目の前に来たタイミングで身体を回転させて吹き飛ばした。
「クエエッ!」
そして怪鳥はその場から羽ばたいて滞空すると、空中から火炎液を吐き出して更にジャギィを一掃する。怪鳥は臆病で戦闘力も低いが、それは知能が低い事にはならない。爆音という弱点こそあるが、一般的な飛竜と同じ骨格であるが故に肉弾戦そのものが不得手というわけではないし、火炎液も厄介だ。かけだしのハンター達からは最初の登竜門として扱われる事も多いモンスターなのだ。決して侮る事ができる相手ではない。
「クルル、クルル、〜〜〜〜〜♪」
ジャギィ達だけでは分が悪いと察した彩鳥は、ダンスするように身体を揺らすと、今度は声マネではなく、独特な鳴き声を発した。
「ギャオオオッ!!」
「クエエ…!?」
するとジャギィ達は突然パワーアップしたかのように一斉に凶暴化し、怪鳥へ襲い掛かった。
彩鳥ができるのは声マネだけではない。細かな声色の調節も可能である為に他の生物が聞けばパワーが上がるもの、身体が頑強になるものまで、様々な演奏が可能なのだ。
彩鳥もまた、ロックラック地方では最初の登竜門として扱われる事の多いモンスターだが、手強いとされている理由はこういった戦法の多彩さ故なのだ。
単体の強さのみならば怪鳥に軍配が上がるだろうが、声マネによる増援や演奏による自己強化など、器用さや多彩さで言えば彩鳥に軍配が上がる。実際同格に近い相手としては僅差で決まる差を縮める、あるいは上回る自己強化をしてくる彩鳥はやりづらい事この上ないだろう。
「クエエ…!」
ジャギィと彩鳥の連携を上手くいなしながらも、怪鳥は劣勢に陥っている。怪鳥も完全に解明したわけではないが、彩鳥の声マネによってジャギィ達が呼び寄せられたり、強化されている事ぐらいは分かっている。
「クエエッ!」
「!」
このまま戦ってもジリ貧だと感じた怪鳥は、空へ羽ばたいて撤退した。劣勢に陥っていたというのもそうだが、爆音によって頭に血が昇っていたのが時間の経過によって収まった事もある。
「クルルル…」
彩鳥は逃げた怪鳥を無理に追わず、完全に姿が見えなくなるまで目を離さなかった。そして姿が見えなくなると、身体の力を抜いた。
「ギャウウ…」
「!」
背後から聞こえた鳴き声に顔を向けると、ジャギィ達がいた。そう言えば彼らには救われたが、それはそれとして散々な目に合わされた。何もせずに見逃すのは少し虫の良い話だが、殺すのはやり過ぎのような気もする。悩んだ末に彩鳥が選んだのは―
「クオオッ、クオオッ、ッ!!」
「ギャウアア!?」
―火打石で軽く爆発を起こし、ジャギィ達を驚かせて追い払った。これから食事を行うので、また邪魔されてはたまったものではない。
「クルルル…」
そして彩鳥はじっと水面を見つめ、獲物を見定める。その光景は、まるで戦いなど無かったかのようだった。
ワイルズ発表されて結構モチベ上がった。早く今年終われ。
評価、感想もよろしければお願いします。
それでは次回をお楽しみに。
メインモンスター+αでコイツが好き
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