こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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もうすぐ今年も終わりますねー。ところでワイルズ発売まだ?(早い)

それではお楽しみください。


黄金の嵐

 “龍結晶の地”

 

 古龍のエネルギーが収束する地。古龍に限らず強者が非常に集いやすいこの地には“主”というものができづらい。古代樹の森の火竜や大蟻塚の荒れ地の角竜のように、通常のフィールドで“主”となる事ができる実力でも、龍結晶の地では務まらない。

 滅尽龍、鋼龍、炎王龍と言った古龍だけではない。金獅子、恐暴竜、爆鱗竜、その特殊個体…古龍やそれに匹敵するモンスターが頻繁に出現する影響で余程強力なモンスターが現れなければ環境が安定する事はない。

 

 だが、今の龍結晶の地は非常に落ち着いていた。日常的に起きる火山活動を除外するとそよ風が吹いているだけだ。以前まで聞こえていたモンスター達の争いの戦闘音や咆哮も今は多少威嚇し合うのが聞こえるだけで、本格的な争いは一切起こっていない。

 それは何故か。理由は今の龍結晶の地の“主”にあった。

 

「グルルルル…」

 

 巨大な龍結晶が一望できる高台。そこには一頭の古龍が座していた。龍結晶の反射を受けてより強い輝きを放つ甲殻を持った鋼龍だった。

 それも、ただの鋼龍ではない。悠久の時を生き、極限まで身体に力を溜め込み、その上で“古龍の王たらん者”のエネルギーを直に受けて寿命が限界突破した、“歴戦”の古龍の“王”に立つ存在―“歴戦王”と謳われる存在である。

 今の龍結晶の地は鋼龍の統治下にある。ここまで静かなのも鋼龍の好みに仕上げたからだ。新大陸に訪れる古龍はほとんどが死に場所を求めている。そして歳を取ると動く気が無くなるからなのか、新大陸住まいの古龍は非常に穏やかだ。凶暴性で知られている炎王龍ですら、本格的に攻撃しない限りは見逃す。滅尽龍や炎妃龍と言った例外も存在するものの、他の大陸の古龍と比較すると中々異端な性質と言える。

 

 だが奇しくもその性質に救われて龍結晶の地は非常に穏やかになっていた。当然鋼龍が訪れたばかりの頃は荒れ気味だったが、その時に最も強かった冰龍を追い出し、それ以外のモンスターの縄張りにも訪れ、“危害を加える気はない。そちらから手を出さなければこちらも何もしない”というスタンスを示した事と、他のモンスター同士で争っていても仲裁に向かった事によって、“争いをすると、鋼龍の機嫌を損ねる事になりかねない”と学び、争いそのものが無くなった。なお、その際に愚かにも鋼龍に歯向かったモンスターは例外なく粉々にされた。

 その努力の甲斐あって、鋼龍本人(龍)にとっては理想の余生を送る事ができていた。鋼龍自身は知らぬ事だが、ここ最近の異変に振り回されていた調査団にとっても、鋼龍が龍結晶の地の治安を守ってくれている事に対しては非常にありがたく思っており、調査員の中には“鋼の皇王”と名付けて慕っている者もいる。鋼龍も調査に訪れるハンターの事は“小さな余所者”程度にしか認識しておらず、互いの領域を侵さない事で疑似的な共存関係を築けていた。

 

 だがそんな平穏が、いつまでも続くとは限らない事を、鋼龍も調査団もよく理解していた。

 

「!」

 

 ふと、鋼龍が空を見上げる。しかし空には何も飛んでいない。火山から噴き出る噴煙が上がっているだけだ。だが確かに、鋼龍は空の先を見つめていた。すると―

 

 

 

 

 

 ゴオオッ!!

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―曇天の空を突き破り、風の弾丸が鋼龍を襲った。鋼龍はその威力と速度に驚きながらも背後に飛ぶ事で攻撃を躱す。

 

 ビュオオッ!!

 

「! ガオオン!!」

 

 しかし相手も回避する事は織り込み済みだったのか、タイミングをズラしてもう一発風の弾丸を撃ち込んで来た。だが歴戦王に至るまでに膨大な戦闘経験を積んできた鋼龍はそれすらも躱して見せる。

 

「ガアアアアアン!!」

 

「ッ!!」

 

 その時、回避した鋼龍の背後に回り込むようにして奇襲を仕掛けて来た影があった。突っ込んで来た影に対し、鋼龍はブレスを放ちながら旋回し、即席のカウンターを叩き込む。

 

「ガッ…!」

 

「グッ…!」

 

 防御しながらカウンターを叩き込む事に成功した鋼龍だが、相手の突進の威力の高さに驚いた。

 “鋼龍”の異名の通り、全身が鋼でできている鋼龍の防御力は並ではない。そこいらの鉱石よりも余程頑丈だ。歴戦王となるまでに質の良い鉱石を摂取し続け、膨大な戦闘によって鍛え上げられたこの鋼龍の防御力はまさに鉄壁。同じ“歴戦王”の古龍でもない限り、金獅子や恐暴竜ですら傷を付ける事は簡単ではないだろう。

 しかしこの相手はブレスの防御もあったというのにダメージを与えて来た。以前の冰龍との戦いでも手傷こそ負ったが、あれは本当に軽傷、しかも不意を突いてやっと負わせられた程度だ。戦闘開始から早々に傷を負わされるのは、本当に久し振りだった。

 

「グルルルルル…!」

 

 そして襲撃者の姿が露わになるが―そこにいたのは鋼龍(同胞)だった。ただ、自分とは少し違う見た目だった。

 鈍くとも重厚感溢れる甲殻は黒ずみ、見方を変えると錆び付いているようにも思える。鋼龍は時期によって古い甲殻が錆び付き、気性が荒くなる時があるが、それとはまた違うようだ。

 

 だが、歴戦王の鋼龍が危険視するのはその出力だ。見た限りだとこの鋼龍は自分よりも若いようだが、力の出力は歴戦王である自分にも匹敵する。

 歴戦王は自分が最強だとは考えていないが、それでも自分に比肩し得る強者は少ない事、己の強さに自信は持っている。だがこの鋼龍は間違いなく今の自分でも油断ならない強敵だ。

 

 久し振りの強敵に内心心を踊らせながら―しかしその高揚感に呑まれる事はなく歴戦王は鋼龍を見据える。鋼龍も歴戦王が一筋縄では行かない強敵である事を感じ取ったのか、翼をはためかせて風を纏う。

 

 

 

 

 

「「ガアアアアアァァァァァン!!!」」

 

 

 

 

 

 双方同時に鋼を叩いたような咆哮を響かせ、開戦の合図とした。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「ガアアアアア!!」

 

 鋼龍は小手調べとして複数発のブレスを放ち、竜巻を発生させる。竜巻は蛇行しながら歴戦王に迫り、逃げ道を封じるように近付いて行く。

 小手調べでこそあるが規模や出力は相当なもの。歴戦王と言えどもまともに食らえばただでは済まない。

 

「ガオオン!!」

 

 しかしそれは当たればの話。歴戦王は鮮やかな動きで竜巻を躱すと鋼龍に接近する。

 

「ガアアン!!」

 

 だが、それは鋼龍にとって予測済み。竜巻はダメージ目的ではなく接近の誘発。避けられなければそれで良いという儲けもの程度の認識だ。

 鋼龍は足に龍属性を纏わせると、歴戦王に向かって蹴りを放つ。確実に痛手を負わせられる龍属性を纏っての攻撃、鋼龍は実力だけでなく戦術眼も鋭いと言えるものだ。

 

「━━━━━ッ!!」

 

「!?」

 

 だが、戦術の読み合いという点において歴戦王の右に出る者はいない。歴戦王は寸前で後退しながらブレスを放って攻撃を相殺すると、一気に離脱して姿を晦ます。

 そして姿を見失った鋼龍が歴戦王の姿を探していると―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 ドガン!!

 

「ガアアン!?」

 

 

 

 

 

 ―一瞬で鋼龍の上空に移動した歴戦王は意趣返しのように龍属性を纏った蹴りを叩き込み、鋼龍を地面に叩き落とした。

 

「ガアアア…!」

 

 鋼龍は立ち上がりながらも血を吐く。同じく鋼の身体を持っていると言えども、弱点の属性を纏った攻撃はかなり効く。

 

「ガオオン!!」

 

「!」

 

 そしてわざわざ復帰するのを歴戦王が待ってくれる筈もない。ブレスを放って追撃しにかかる。しかも単純に鋼龍を狙ったものだけでなく、絶妙に逃げ道を封じるようにして動きを制限して来る。

 

「ガアアアアア!!」

 

 鋼龍は逃げた先での待ち伏せを警戒し、強力なブレスを放って竜巻の包囲網に穴を開ける。だが包囲網を抜けた先には歴戦王はいない。鋼龍がその事に嫌な予感を感じて力を開放し、風の鎧を纏うと―

 

 

 

 

 

 ズドォン!!

 

「ガッ…!」

 

 

 

 

 

 ―凄まじい風の砲弾が鎧の防御を物ともせずに突破し、鋼龍を吹き飛ばした。ブレスの発射元である高高度には、歴戦王が堂々とした風格で滞空していた。

 

「グッ、グ…!」

 

「!」

 

 吹き飛ばした鋼龍がまだ立ち上がろうとしている事に歴戦王は驚く。今の一撃は間違いなく勝負を決めるつもりで放ったのにも関わらず、まだ立ち上がれるとは思わなかった。

 一つ一つの攻撃に対しても思ったが、この鋼龍は生きてきたであろう年月に対して地力が高過ぎる。寿命を限界突破した自身に攻撃の出力が匹敵するというのに、その力に振り回されている様子がない。幸いにも経験値が大幅に勝っているお陰で大きな手傷を負わずに済んだが、何か一つの要素が掛け違えば勝敗がひっくり返る可能性もあった。

 

「グルルルル…!」

 

 そんな事を考えながらも歴戦王は鋼龍に対して軽く威嚇する。それはここで退けば命までは取らないという脅しに近い取引。徹底抗戦されても負ける気はないが、そうなるとこちらも相応の覚悟を決める必要がある。老体にこれ以上鞭を打つのは歴戦王としては御免だった。

 

「グルルルル…!」

 

「!」

 

 それに対して鋼龍は軽くふらつきながらも立ち上がり、唸り返した。その様子に鋼龍は驚きながらも覚悟を決めたと見なし、勝負を一瞬で決するべく最大出力のブレスをチャージする。

 

「グ、グギギ、グ…!!」

 

「!?」

 

 すると鋼龍は少し苦しそうにしながら何かの力を溜め始めた。歴戦王は鋼龍の身体から漏れ出る力の出力に驚く。それは自身と同等どころか、凌駕さえしかねないもの。その確信をした瞬間、最早その果てに何が起こるのか確かめたい好奇心すら捨て去り、全力のブレスを放った。

 そしてブレスが着弾する寸前―

 

 

 

 

 

「ガアアアアアァァァァァン!!!」

 

 

 

 

 

 ―鋼龍が大きく咆哮すると同時に風の力を一気に解放し、歴戦王のブレスを相殺した。

 その様子は大きく変わっていた。頭部の角や翼や尻尾の先端と言った部分が明るい橙色に染まり、歴戦王も纏う風の鎧は黄金に染まっていた。

 これこそがこの鋼龍の真価を発揮した姿。その姿を見た歴戦王は何時ぶりかも分からない緊張が走る。それは鋼龍から感じる事のできる力が自身をも上回っているものだったからだ。一体何処でこんな力を得てきたかの疑問は浮かんだが、それは一旦頭の片隅に追いやり、今の鋼龍にどう対処するかを考える。

 歴戦王が知らないのも無理はない。この鋼龍は()()()()()()()()()()()が暴走し、自らの力を狙って来たのだが、見事その内に宿していたエネルギーを我が物とし、本来傀儡となる毒を克服した鋼龍―

 

 

 

 

 

“傀異克服クシャルダオラ”

 

 

 

 

 

 その爆発的な力の向上具合は凄まじく、歴戦王すら凌駕する程のもの。“傀氣脈動状態”と呼ばれるこの状態は身体にある程度の負担も掛かるが、その程度の負担は歴戦王を倒す上では必要なものだと、鋼龍は割り切ったのだ。

 

「ガアアアアアァァァァァン!!!」

 

「!」

 

 その二つの意味での強さを感じ取った歴戦王は、迷う事なく自らの全力を解放し黒風の鎧を纏った。いくら経験値で勝るとは言え、単純なカタログスペックで自らを上回った時点で余裕などない。全身全霊を以って相手をするべきだと即座に判断した。

 

 傀異克服と歴戦王。力の根本こそ違えど種の頂点に至った者同士が、激突した。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「ガアアアアア!!」

 

 最初に仕掛けたのは鋼龍。出力が更に上がった風の力を活かし、凄まじい勢いを得た滑空で歴戦王を強襲する。通常の金獅子や恐暴竜であればパワー負けする程の威力だろう。

 

「オオッ!!」

 

 迫り来る突進を歴戦王は鮮やかな動きで躱すと、お返しと言わんばかりにブレスを複数発放つ。しかもその後に後退すると、大きく身体を起こして強力なブレスを放った。小技を陽動にした上での、本命の大弾の二段構え。強引に突破するようならその隙を突く、容赦のない攻撃だった。

 

「━━━ッガアアアアアン!!」

 

 しかし鋼龍は、その猛攻を上回る。

 鋼龍が大きく吼えると、巨大な竜巻が複数出現し、歴戦王の竜巻の群れだけでなく、その背後から迫っていた大弾まで相殺して見せた。

 

「ガオオオオオ!!」

 

「!」

 

 しかしそれすらも歴戦王は織り込み済み。傀氣脈動状態に至った時点で、自らの攻撃は全て力業で対処されるつもりでいた。

 歴戦王は更にブレスを乱発して鋼龍を対処に追わせる。決定打は与えに行かない。焦れったい展開だが、歴戦王にとってはこれで良い。

 重要なのはとにかく鋼龍に攻勢に回らせない事。歴戦王の最大の強みは悠久の時の中で得た経験値と、凄まじいタフネスだが、鋼龍の火力はそれらを突破しかねない怖さがある。だからこそこちらが一手先を行き続け、鋼龍を“対応させる側”に回らせる。

 

「ガアアアアアン!!」

 

「!」

 

 鋼龍は迫り来る竜巻を巨大な竜巻を生み出して相殺した。鋼龍としてもいつまでも歴戦王にペースを握らせるつもりはないらしく、複数の竜巻を放ち、その中を器用に蛇行して歴戦王に迫る。

 

「━━━━━━ッ!!」

 

「! ガアアアアア!」

 

 凄まじい勢いで迫って来る鋼龍と竜巻にまともにやり合えば分が悪くなると判断した歴戦王は、即座に翼をはためかせて高高度―すなわち空中戦に誘い込む。鋼龍は一瞬追うのを躊躇ったが、小細工は力業で喰い破ってやると意気込み、後を追った。

 

「ガルルンッ!!」

 

「! ガアアアアア!!」

 

 かなりの高度にまで到達し、雲の中に突っ込むと歴戦王は旋回し、鋼龍はその後をブレスで追撃しつつ追う。しかも歴戦王はただ逃げるだけでなく能力を使っているのか、雲が邪魔して中々追い辛い。

 そして段々と距離が離されて行く。このままではマズいと、鋼龍は直感的に判断した。歴戦王が定期的に起こしている風によって雲が纏わり付くように邪魔をしてくる影響で、歴戦王の姿を見失いそうになる。このまま姿を晦まされては、また面倒なゲリラ戦が始まるだけだ。

 

「! ガルルルルル…!」

 

 そんな中、鋼龍はこの状況を打開する一つの策が思い浮かんだ。善は急げと言わんばかりに、鋼龍は行動に移した。

 

「━━━━━……」

 

「!」

 

 鋼龍の行動に、歴戦王は驚いた。鋼龍は突然進行方向を変え、雲の中に姿を消したのだ。

 とは言えこれも想定していなかったわけではない。攻勢を逆転させようと思うのならこちらに“攻めさせる”ように仕向けるのは当然の事だ。

 そしてその事が分かっていた歴戦王が何の対策も打っていない筈がなかった。

 

 

 

 

 

「ガオオオオオン!!」

 

 ゴオオオオオッ!!

 

 

 

 

 

 歴戦王が雲の中で吼えると、空気が渦巻いて竜巻となった。隠れたのなら、炙り出せば良いだけの話。何を考えていようとも、竜巻を食らうとなれば防御せざるを得ない。そのまま削り殺せるのならそれで良し、回避して姿を見せるのならその隙を突けば良い。

 先程の追う姿を見ても飛行能力ならこちらの方が上手だ。動き回っていれば大技を当てることは難しい筈だ。歴戦王は万全の状態で、鋼龍を待ち構えていた。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「……………」

 

 しばらく待ち構えている歴戦王だったが、鋼龍は中々出て来ない。変わらず竜巻による索敵と炙り出しも行っているのだが、それに引っ掛かる様子もない。まさか逃げたのだろうかと思っていると―

 

 

 

 

 

 ビュオオオオオ…!!

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―急に風向きが変わった。ただ変わっただけでなく、明らかに一定方向に引き寄せられるような感覚。細かい居場所は分からないが、能力が使用できるという事はこちらの攻撃の射程内でもある。全力で、この場に引きずり出す。

 

「ガオオオオオン!!」

 

 ドゴオオオオオ!!

 

 歴戦王は一気に能力を解放し、夥しい数の竜巻を生み出した。そして風が引き寄せられる方向に向かって竜巻を突っ込ませる。

 能力を行使する際は、自身の身体を中心にして発動される。その事を歴戦王は自身の経験則で理解していた。それもこれ程の規模の能力行使、鋼龍の力の底が見えないとしても、根本を覆す事はできない筈だ。

 

 

 

 

 

「ガアアアアアァァァァァン!!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 その時、雲の彼方から咆哮が響いた。すると周囲の雲が一気に吹き飛び、隠れていた鋼龍の姿が露わになった。

 しかし歴戦王にとって予想外だったのは、鋼龍との距離が想像以上に離れていた。歴戦王から見ても鋼龍はかなり小さく見えており、攻撃が届くまで相当な時間が必要だ。それまでに十分回避も可能である事から、実質的に射程外であると言える。

 

「ガルルルルル…!」

 

 だが、鋼龍の眼を見ると、とても逃げる為だけにこんな事をしたとは思えない。こちらに勝つ為の策があるような表情だった。

 

「━━━━━ッ!!」

 

 それを一瞬で感じ取った歴戦王は一気に加速し、鋼龍との距離を詰める。こちらを倒そうとするなら確実に一撃の威力が高い大技だ。今はこちらの攻撃の射程外である上、鋼龍の大技発動前に仕留める。

 

「━━━━━」

 

 迫って来る歴戦王に対し、鋼龍も逃げずに迎え撃つ構えを取る。鋼龍を中心にして吹く風は未だに続いており、むしろ段々と強くなっている。

 向かって来る歴戦王は無駄に蛇行したりはせず、最短最速で詰めて来ている。コースを一直線に絞り、回避しやすくするつもりのようだ。

 だが、鋼龍は内心でほくそ笑む。それで良いと。鋼龍としては距離を取られる方が当て辛くなる。この距離ならどう動こうと()()()()()()()()

 

「━━━━━━━━━━」

 

「━━━━━━━━━━」

 

 双方共に互いの姿を見据える。歴戦王は来るなら来いと、鋼龍は確実に仕留めると確固たる意志をもって相手を睨み付けた。

 

 

 

 

 

「━━━ッガアアアアアァァァァァン!!!」

 

ドッゴオオオオオン!!!

 

「!?」

 

 

 

 

 

 鋼龍渾身の咆哮から放たれたのは単純なブレス。しかしその規模は今までとは比較にならず、下手をすれば嵐龍の大技に匹敵するのではないかと思える程だ。

 歴戦王の判断は悪いものではなかったが、鋼龍の力の底を見誤っていた。今まで攻勢であり続けた事が裏目に出たとも言えるが、こればかりは仕方ないだろう。

 それに見誤っていたのは()()()()()()()()、悪い事ばかりではないだろう。

 

 

 

 

 

「━━━ッガオオオオオォォォォォン!!!」

 

「ガァッ…!?」

 

 

 

 

 

 凄まじい竜巻の中から身体中に傷を作った歴戦王が足に龍属性を纏わせ、鋼龍を蹴り飛ばした。

 そして地面に向かって墜落して行く鋼龍を凄まじい勢いで歴戦王が追う。

 

「ガオオオオオ…!」

 

 追う途中に歴戦王は纏っている風の鎧の出力を更に高め、歴戦王自身の顔に見立てる。

 

「━━━ッガアアアアアァァァァァン!!」

 

 しかし鋼龍もただでは終わらせないと言わんばかりに吼え、竜巻とブレスで迎え撃つ。

 互いの大技が激突し、空には嵐が吹き荒れた。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「ガルルルルル…」

 

 風が止み、周りの龍結晶が砕け散っている中、歴戦王はゆっくりと降り立つ。身体中に傷が目立ち、息も上がっているその姿はまさに満身創痍だった。

 まともに傷を負うことはもちろん、全力を出した事自体が久しい歴戦王は油断なく鋼龍を行方を探していた。最後の激突で互いに吹き飛んだ為にどこに行ったのか見失っていたのだ。もう逃げた可能性もあるが、あれ程の相手がまだいるかもしれない事を考えると、安心する事はできない。

 

「ガ…ウウウ…」

 

「!」

 

 そうして辺りを探し回っていると、うめき声が聞こえた。歴戦王は聞こえた付近に急行すると、血みどろとなって息も絶え絶えとなった鋼龍が辛うじてその場に立っていた。血に塗れたその身体からは輝きは失われ、一見すると錆びているようにも見える。

 

「……………」

 

「!」

 

 歴戦王が近付くと、鋼龍も気付いて顔を上げる。その表情は心底腹ただしいと言った様子だ。

 それも当然ではある。手傷こそ負っているものの戦闘自体は可能な歴戦王に対し、既に傀異氣脈動状態が解かれ、風の鎧を纏う事すら叶わない鋼龍。どちらの勝利なのかは言うまでもないだろう。

 鋼龍も抵抗はするつもりだが、厳しい戦いと言わざるを得ない。歴戦王の挙動に警戒を強める中、歴戦王のとった行動は―

 

 

 

 

 

「━━━━━」

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―翼を広げて頭を軽く下げ、まるで祈りを捧げるように目を閉じたのだ。鋼龍は驚いたように目を見開き、歴戦王はそれだけすると踵を返して空へ羽ばたいた。

 空の彼方へ飛んで行く歴戦王を鋼龍は眺め続ける。その姿は強く、彼女の心に刻まれていた。




ひっさびさに筆が乗った…最後の歴戦王側の心情は敢えて想像にお任せします。(これ以上伸ばせなかったとも言う)

ま、メリークリスマスってことで。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

メインモンスター+αでコイツが好き

  • リオレウス
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