こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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ハーメルンのマイページの自己紹介欄のコメント(?)的なやつってずっと小説更新してなかったりイジってなかったら削除されたりする?それとも本人がイジらない限りはそのまま?

それではお楽しみ下さい。


爵銀の矜持

 “城塞高地”

 

 昼間は趣きのある古城と言った雰囲気だが、夜になると朱い夜空も相まって途端に雰囲気が変わる。そして今の城塞高地が異様な光景で溢れており地上、夜空問わず紅く小さな光が舞っている。

 

「キュイイ!キュアア!」

 

 しかしその光はよく見ると小さなモンスターだった。確認できる限り翼と口しか部位を持たず、異形と言える姿形をしたモンスターだった。

 このモンスターの名は噛生虫キュリア。現在巷を騒がせている現象を引き起こした元凶のモンスターである。真の主を失ってしまったものの、生き残った一部の強靭な個体が未だに強く根付いている。

 そして、キュリアを従えられるモンスターが現在一種存在する。

 

 

 

 

 

「クオオオオオ…」

 

 

 

 

 

 そのモンスターは爵銀龍、メル・ゼナ。キュリアの真の主と並んで唯一キュリアを従える事ができるモンスターだ。キュリアを克服したモンスターとしては傀異克服古龍が挙げられるが、彼らはキュリアの毒を克服しただけであって従える事はできていない。

 キュリアを従えて操る事は、爵銀龍と真の主にしかできない芸当なのだ。

 

「クオオオオオ…♡」

 

 キュリアから養分を受け取った爵銀龍は自らの身体が更に満たされた事に恍惚の表情を浮かべる。

 爵銀龍は自らの力に酔っていた。最初に纏わり付かれた時には鬱陶しいと感じていたが、いざ従えてみると想像以上に気分が良い。扱いに慣れれば外敵との戦いでも有用な為に正直受け入れない理由がないぐらいだ。

 爵銀龍はキュリアの力を器用に扱い、変わらず城塞高地の主として君臨していた。

 

 

 

 

 

 ―だが、爵銀龍は気付いていない。

 

 

 

 

 

 ―今の自身の姿や思考がかつてより変わり果てている事を。

 

 

 

 

 

 しかしそれを知る者は誰もいない。もし知る者が今の爵銀龍を見れば「堕落している」と評してもおかしくないが…生憎それが的を得ていたとしても止められる者はいない。

 自らの快、不快のままに行動する今の爵銀龍は堂々たる領主などではなく、皮肉にも残虐に振る舞う暴君のようだった。

 

 

 

 

 

「グオオオオオ!!」

 

「!? クオオオオオ!!」

 

 

 

 

 

 その時、銀の影が爵銀龍に向かって疾駆する。その速さに爵銀龍は驚きながらもすぐさま身を翻して攻撃を躱す。

 

「クオオオオオ…!」

 

 攻撃を躱された事に苛立ちを感じさせる声を聞き、襲撃者の姿を捉えた爵銀龍は目を見開く。

 

 月明かりを受けて輝く白銀の甲殻、しなやかでありながらも強靭さを感じさせる翼、どんなものでも貫けそうな槍を思わせる尻尾、優雅さと堂々たる風格が感じられるその立ち姿は―爵銀龍と瓜二つだ。

 しかし、違う点もいくつかある。通常の爵銀龍の甲殻が鈍い銀色なのに対して、この爵銀色は白銀と言える程明るい色だ。他にも翼の甲殻の厚みが明らかに分厚かったり、全体的な体格も爵銀龍を上回っているように見える。

 

 

 

 

 

 何よりの特徴として―キュリアを従えていない。

 

 

 

 

 

 

 この爵銀龍の周囲にはキュリアが一匹たりとも飛んでいない。その佇まいは孤高の騎士のようにも思える。

 この爵銀龍は通常の爵銀龍とは異なる個体―などではなく、こちらこそが()()()()()()()姿()()。付近の王国ては“鬼神”とも謳われ、地上に滅浄の裁きを下すとも伝えられている始まりの個体。

 

“原初を刻む”メル・ゼナ

 

「クオオオオオ…!」

 

 原初の爵銀龍は鬼気迫った表情で爵銀龍を威嚇する。キュリアを従えてこそいないが、その堂々たる風格は爵銀龍に劣るものではなく、むしろ上回りかねない。

 何せこの爵銀龍こそが、50年前にキュリアの真の主―冥淵龍と互角の争いを繰り広げたのだ。相性や目的の差異があったとは言え、超大型古龍と争い生き残るどころか、地上への進出を阻み、留める事に成功している。キュリアを従えていないからと言って、爵銀龍より劣るとは限らない。

 

「―ックオオオオオォォォォォン!!!」

 

 しかしそれだけの理由で引き下がる程爵銀龍の矜持は薄くない。同胞であるとは言え、縄張りに入り狼藉を働いた以上生かして帰すつもりはない。その意思を咆哮に載せて吼える。

 

「クオオオオオォォォォォン!!!」

 

 そして抗戦の意思を示されれば、原初の爵銀龍としても戦うしかない。同胞であり、元の関係を辿れば被害者でもあるが、だからといって見逃すわけには行かない。せめて戦いの中で介錯してやろうと、原初の爵銀龍は誇りを持って吼えた。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「クオオオオオッ!!」

 

 最初に仕掛けたのは爵銀龍。翼を槍に見立て、原初の爵銀龍に向かって突き出す。キュリアから力を受け取った際の苛烈さが注目されがちだが、それを抜きにしても爵銀龍の身体能力は古龍の中でも抜きん出ている。正面からの真っ向勝負で攻守速全てバランス良く備わった爵銀龍相手に上を取るのは難しいだろう。

 

 

 

 

 

「オオッ!!」

 

 ガィィンッ!!

 

「!?」

 

 

 

 

 

 しかし原初の爵銀龍は攻撃を躱す事なく爵銀龍の翼撃を自身の翼で()()()。ほとんどノーモーションで繰り出された攻撃に対してあまりにも自然な流れで対処して見せた。

 そして攻撃が弾かれたという事は、爵銀龍の身体が無防備になる事を意味する。

 

「クオオオオオ!!」

 

「グッ…!?」

 

 そして原初の爵銀龍が同じように翼を突き出し、爵銀龍は咄嗟にもう片方の翼を盾にして防御するが、あまりの攻撃の重さに揺らいでしまう。

 

「クオオオオオ!」

 

「!」

 

 力比べでは業腹ながらも不利だと判断した爵銀龍は翼をはためかせ、空中戦を仕掛ける。原初の爵銀龍はすぐには追わず、用心深く観察する。

 

「クオオオオオン!!」

 

 原初の爵銀龍が追って来ないのを視認した爵銀龍は、キュリア達を集め、弾幕にして原初の爵銀龍に向かって放つ。

 

「━━━━━ッ!!」

 

 迫って来た弾幕を原初の爵銀龍は翼をはためかせて上手く躱し、そのまま振り切って見せた。

 

「━━━━━」

 

 しかしその背後には既に爵銀龍が回り込んでいた。キュリアの弾幕を躱された事に内心驚きながらも、原初の爵銀龍を仕留めるべく中距離からブレスを放つ。

 

 

 

 

 

「━━━━━ッ!」

 

 ガガガガガ!!

 

「!?」

 

 

 

 

 

 躱せない間合いで放ったつもりだったが、原初の爵銀龍はとんでもない反応速度で振り返ると、その勢いで翼を自身の前に翳すと、なんと爵銀龍の放ったブレスを見事に防いで見せた。

 

「クオオオオオ!!」

 

 ドガン!!

 

「グッ…!!」

 

 そのままブレスを防ぎながら爵銀龍に向かって突進し、離脱しようとする爵銀龍を逃さず翼を上から下に振り下ろし、爵銀龍を地面に叩き落とした。

 

「ガッ…グオオ…!」

 

 爵銀龍はダメージによる苦痛はもちろん、今起こった事が信じられないと言った様子で呻く。

 パワー、スピード、テクニック。決して多くはない打ち合いの中で、自分が原初の爵銀龍に全て劣っている事を理解した。プライドの高い爵銀龍にとって、それは何より認め難い事だった。

 

「クオオオオオ…!」

 

「「キュアア!!」」

 

「! グオオオオオ!!」

 

 爵銀龍が怒りの籠もった声で唸ると、空から多くのキュリア達が集まる。それを確認した原初の爵銀龍は突然明らかに憤怒の感情を顕わにしてキュリアに襲い掛かる。しかしいくら原初の爵銀龍がキュリアを仕留めたとしても、全てのキュリアを倒し切るのは流石に現実的ではなく、次々と爵銀龍の身体に纏わりついていく。そして―

 

 

 

 

 

「グオオオオオォォォォォン!!!」

 

「…ッ!」

 

 

 

 

 

 ―キュリアから力を受け取った事で姿が変わり果てた爵銀龍が吼え、原初の爵銀龍が悔しげに表情を歪める。キュリアの影響で黒い靄のようなものが頭部と尻尾付近に掛かり、翼と瞳が深紅に染まっている。高貴な姿から一転して残忍さや狂気性を感じさせる姿に変わった爵銀龍を、原初の爵銀龍は憐憫を込めた視線を向ける。それは同胞である原初の爵銀龍だからこそ分かる事なのだろう。

 

「クオオオオオ…!」

 

 ドォン…!

 

「!」

 

 しかし、そんな事は爵銀龍にとっては関係ない。翼で全身を覆い隠すと、キュリアから生み出される波動を利用し、一瞬で原初の爵銀龍の背後で回り込む。原初の爵銀龍もこれには反応が遅れ、翼を翳して咄嗟に防御する。

 

「グオオオオオ!!」

 

「グッ…!」

 

 だが更に強化された爵銀龍の翼撃を余裕を持って受け止める事はできず、衝撃によってかなりの距離を後退してしまう。

 

 ドォン…!

 

「グオオオオオ!!」

 

「クッ…オオオ…!!」

 

 ガギィン!!

 

 更に爵銀龍は間髪入れずに瞬間移動で距離を詰め、翼を原初の爵銀龍に向かって振り下ろす。先程とは違い体勢が崩れかけた状態で受け止めた為、身体が軋むような音を上げる。

 

「キュアア!キュアア!」

 

「!」

 

 その時爵銀龍に纏わり付いていたキュリアが何匹か原初の爵銀龍に纏わり付く。爵銀龍が命じたのか、キュリアが独自の判断で狙ってきたのかは分からないが、原初の爵銀龍に惹かれるものがあったらしい。

 

「―ッ! グオオオオオッ!!」

 

「!」

 

 それを見た原初の爵銀龍は凄まじい嫌悪感と共に爵銀龍の翼を押し返した。突然力が向上した事に爵銀龍は驚きながらも押し返す事ができず、完全に弾き返される前に後退する。

 

「グオオオオオ…!」

 

 後退しながら爵銀龍は考える。何故これ程までに身体能力が向上したのかを。

 原初の爵銀龍の身体にキュリアがいないのを見るに、今の自身のようにキュリアを利用した弾幕や身体能力の向上は不可能と見るべきだ。にも関わらず、あのパワーの向上ぶりには今の爵銀龍としても油断ならない。

 

「グオオオオオッ!!」

 

 そしてあまり長々と考えている時間はない。原初の爵銀龍は今までどこかあった余裕のある雰囲気をかなぐり捨て、猛然と爵銀龍に襲い掛かる。

 

 ドォン…!

 

「!」

 

 しかしこれまで散々痛い目を見せられて真っ向勝負に拘るわけもない。瞬間移動で原初の爵銀龍の側面に移動すると、尻尾を一瞬叩き付けてから突き出す。

 

 ガギィン!!

 

「グオオオオオ!!」

 

「…ッ!グオオオオオ!」

 

 原初の爵銀龍は爵銀龍の攻撃を翼を薙ぎ払う事で弾くと、カウンターでもう片方の翼を突き出すが、爵銀龍は攻撃が弾かれると同時に身を翻して空中へ躱す。

 

「グオオオオオ!」

 

 それを見た原初の爵銀龍は今度は様子を見るような素振りは見せず、すぐさま翼をはためかせて爵銀龍を追う。

 

「グオアアアアア!!」

 

 爵銀龍はキュリアから供給されるエネルギーを活かしてブレスを放ちながら弾幕を原初の爵銀龍に向かって放つ。

 

「━━━━━ッ!!」

 

 原初の爵銀龍は弾幕は翼や尻尾で薙ぎ払って最低限打ち消し、ブレスは全速力で旋回しながら避け切り、そのまま爵銀龍に向かって突貫する。

 

 ドォン…!

 

「グオオオオオ!!」

 

 爵銀龍は原初の爵銀龍をギリギリまで引き付けると、翼で全身を覆い隠して瞬間移動で潜り抜け、攻撃行動に入っている原初の爵銀龍に翼を振り下ろす。確実に捉えた。爵銀龍はそう確信した。

 

 

 

 

 

「━━━━━ッ!!」

 

 ガギィン!! ズドッ!!

 

「…ッ!?」

 

 

 

 

 

 爵銀龍が攻撃を繰り出すと同時に原初の爵銀龍は後ろを振り向きもせずに尻尾を薙ぎ払う事で爵銀龍の翼を弾き逸らすと、そのままの勢いで翼を振り上げ、顔を逸らした爵銀龍の顔に僅かに傷を刻む。

 

「…ッグオオオオオ!!」

 

 本気中の本気を出しているにも関わらず、相手にはダメージを与えられず、自分だけがダメージを受けてしまった事は爵銀龍の矜持を深く傷付けた。

 爵銀龍はその苛立ちのままに原初の爵銀龍に猛攻を仕掛ける。瞬間移動を繰り返し、翼に尻尾、キュリアの弾幕やブレス。自身の持つ力、武器を全て使って原初の爵銀龍を討ち倒すべく力を使う。

 

「グオオオオオ…!!」

 

「ググ、グ…!」

 

 互いの部位を打ち付け、生物の肉体がぶつかり合っているとは思えないような金属音が何度も響き渡る。しかしその全てが原初の爵銀龍の身体に大きな傷を負わせる事はなく、爵銀龍の方が傷の増えるペースが早かった。

 

 爵銀龍は全てが解せなかった。攻撃力、パワーでは拮抗しているが、スピード、手数ならば間違いなく爵銀龍の方が勝っている。

 瞬間移動に追い付くようなスピードで追っては来ないし、攻撃速度も全く対応できないという程ではない。

 

 ただ―戦い方が抜群に上手いのだ。

 原初の爵銀龍はブレスは放てるが、爵銀龍のように弾幕を放つ事はできない。爵銀龍の猛攻を冷静に見切り、堅牢な翼を盾にして防御し、的確にカウンターを叩き込む。相手の持ち得ないもので叩き潰す戦闘スタイルを取る爵銀龍からすると相手の攻撃を受けるなど到底許容できない。だが、原初の爵銀龍の戦い方は何か惹き付けられるものがあった。

 

「―ッグオオオオオォォォォォ!!!」

 

 だからこそ認めないし、腹立たしい。爵銀龍は決して原初の爵銀龍を認めず、憎悪の念が籠もった瞳を向け続けるのだった。

 

 

 

 

 

「……………」

 

 猛攻、憎悪の念を浴びせられても、原初の爵銀龍は爵銀龍に対して憎悪の念を抱く事はなかった。当然攻撃自体は油断ならないし、気も抜けない為上手く凌ぎ続けている。

 しかし爵銀龍の変わり果てた姿を見ると、哀れみを抱かずにはいられない。人間から見ればしなやかで美しいと感じる身体も、爵銀龍から見ればキュリアによって弱々しくなってしまったようにしか見えず、凶暴性を剥き出しにして襲い掛かって来る姿も全てキュリアの所為だと思うと、あまりに居た堪れない。

 総じて今の爵銀龍の状態を言い表すと“堕落している”としか思えなかった。

 

「グオオオオオ!!」

 

 そんな風に思われているとは知らず、爵銀龍は吼える。そんな思いを知った所で変わらないだろうし、理解もできないだろう。むしろキュリアの素晴らしさが分からないのかと、原初の爵銀龍を下に見るまである。

 

「―ッグオオオオオォォォォォン!!!」

 

 そうだとしても。キュリア(害虫)に犯されている同胞を放っておく事はできない。決意と怒りを載せて吼える。爵銀龍のような派手な変化こそないが、発する威圧感はまさに“鬼神”と呼ばれるに相応しい。

 

「「━━━━━━━━━━」」

 

 そして二頭は睨み合い、緊張感がピークに達する。爵銀龍の身体から血が一滴流れ落ちると―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 

 

 

 

 ―原初の爵銀龍が最速の突きを繰り出す。が、その攻撃は手応えがなかった。原初の爵銀龍はまた瞬間移動で背後に回られたと予測し、切り返すようにして翼を振るう。

 

「!?」

 

 振り向くと確かに爵銀龍はいた。だが予想外だったのは原初の爵銀龍との距離。ブレスや翼で攻撃して来ると原初の爵銀龍は考えていたのだが、実際には目の前。ほぼ眼前まで移動していた。

 

「オオ―」

 

 そして爵銀龍は唸ると同時に身体を縮こませる。するとその身体から凄まじい龍属性エネルギーが溢れ出す。原初の爵銀龍がマズいと感じ、その場から退避するよりも速く―

 

 

 

 

 

「グオオオオオォォォォォ!!!」

 

 ズドオオオオオン!!!

 

 

 

 

 

 ―爵銀龍が吼え、龍属性の大爆発が起こった。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「グ…オオ…!」

 

 爆発により、巨大なクレーターができた城跡。赤黒い龍属性が残穢のように残る中、爵銀龍は立ち上がった。キュリアによる強化状態は解除されており、積み重なったダメージも相まって疲労困憊と言った様子だった。

 

「━━………」

 

「!」

 

 そんな中、爆発の中心地で一つの影―原初の爵銀龍がムクリと起き上がった。全身から血を流しているものの、ハッキリと意識は残っているようでその佇まいは独特な魅力があった。

 

「ググググ…!」

 

 原初の爵銀龍はボロボロの爵銀龍にとどめを刺す事はなく、立ち上がるのを待っていた。爵銀龍はそんな情けともとれる行動に憤りを感じつつも、逃げる選択肢は取らずしっかりと向き合う。最早能力が介入する余地のない、シンプルな早撃ち勝負のような状態だ。

 

「「━━━━━」」

 

 刹那の合間二頭の視線が交差する。

 

 

 

 

 

「「━━━━━━━━━━ッ!!!」」

 

 ズドッ!!!

 

 

 

 

 

 翼が交差し先に相手を貫かれたのは―

 

 

 

 

 

「ガッ…!」

 

 

 

 

 

 ―爵銀龍だった。勝負を決めたのはダメージの差と元の身体能力。キュリアを全て消耗してしまった爵銀龍が原初の爵銀龍を上回る事はできなかった。

 

「グオ…オオ…」

 

 爵銀龍は完全に致命傷を受けて尚自身の敗北が信じられないと困惑している様子だった。最後の局面、いつもの自分なら真正面から勝負せず何かしらの技術を用いた筈だ。だが、できなかった。

 

 何より解せないのはこの満更でもない気分だ。爵銀龍にとっては敗北は死と同義だったし、自然の絶対者たる古龍とは言え自然界において天寿を全うできる保証などどこにもない。

 間違いなく本気で戦った。生き残るつもりで戦った。満足できる戦いができればそれで良いなどとは思っていなかった。それでも―気分は充実している。何とも言えない気持ちに、今際の際だと言うのに冷静に現実を享受している自身に爵銀龍は困惑していた。

 

「━━━━━」

 

「!」

 

 そんな風にぼんやりと考えていると、原初の爵銀龍が近付いて来た。戦闘中に少し見せていた憐憫の表情は見せず、無表情で爵銀龍を見つめていた。

 

「クオオオオオ…!」

 

「!」

 

 そして僅かに唸ると同時に翼を広げる。丁度晴れ間が見えてきたのもあって、傷がありながらも輝く甲殻は戦闘中とは違う―まるで領地を守護する聖騎士のようだった。

 

「…クオオ…」

 

 その姿を見納めた爵銀龍はどこか懐かしげな表情を浮かべて目を閉じた。その表情を見届けた原初の爵銀龍は、少しだけ表情を柔らかくする。

 

「―クオオッ」

 

 そして原初の爵銀龍は空へ飛び立つ。いつか必ず、全ての大地を滅浄することを誓いながら。

 

 その後の城塞高地には、新たな領主たる古龍が住み着いたという。




書いてて思ったけどやっぱりメルゼナ薄い本適正高いな…?

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

メインモンスター+αでコイツが好き

  • リオレウス
  • イャンガルルガ
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