それではお楽しみ下さい。
“地底洞窟”
神秘的な雰囲気に包まれる地底の世界。深部は光が届き辛い為に適応して棲まうモンスターは限られているが、それでもいないわけではない。主クラスの強力なモンスターが訪れる事は少ないが、鬼蛙や奇怪竜と言った、ユニークなモンスターが棲み着いている。
そう言ったモンスターと並んで、このフィールドを住処としているモンスターが存在する。
そのモンスターは洞窟の中層部を主に縄張りとし、その証として粘着性の強い糸で立体的な足場を作り出していた。そしてフィールドの端には哀れにも餌食となってしまったモンスター達の亡骸が糸で吊るされている。
「キシキシ…」
そんな不気味な光景の中、カサカサと聞いただけで鳥肌が立つような音を立てながら忙しなく移動する影が一つ。
白い甲殻の上から外套のようにゴム質の皮を纏い、背中からは毒々しい色の結晶ができている。二対の足を忙しなく動かし、輝く瞳からは感情が読めない。八本の足でこそないが、その姿は蜘蛛を思わせる。
「キシイイイイイ…」
影蜘蛛は何かを引き摺りながら糸の足場を歩いていた。その引き摺っているモノは影蜘蛛より少し小さな体躯と一対の翼、そして頭部には鶏冠と思われる部位があった。
そのモンスターは毒怪鳥、ゲリョス。不運にも影蜘蛛に狙われて逃げ切る事ができなかったようだ。
影蜘蛛にとって毒怪鳥は特上の獲物であり、餌としてはもちろんだが、装備としても活用している。影蜘蛛が最も苦手とする属性は雷なのだが、毒怪鳥の皮はゴム質であり、絶縁体の性質を持つ。その性質を理解している影蜘蛛は毒怪鳥の皮を剥いで自身の身体に纏う事で苦手な雷属性をカバーしている。しかも毒を扱う毒怪鳥は皮にまで毒液が染みており、毒に耐性のある影蜘蛛はそれを武器として扱う事ができる。
これらの要因から影蜘蛛にとって毒怪鳥は捨てる所のない格好の獲物なのだ。
「キシキシ…」
とは言っても、すぐに活用するわけではない。自身の身体に纏う分には一頭が精々だし、ゴム質という事もあって打撃に耐性があり、中々に丈夫だ。その為使用可能期限は長く、その間に獲った毒怪鳥は非常食兼装備のストックとして糸に吊るして保存しておく。素材の性質を理解し、それを武器とするだけでなく保存方法まで確立させているあたり影蜘蛛の知性の高さが伺える。
「!」
その時だ。影蜘蛛は音を聞き取り顔を上げる。ただの物音ではなく明らかに何か巨大な生物が歩く足音。戦闘に発展する可能性を考慮し、影蜘蛛は糸を伝って身を隠した。
―NowLoading―
「ギュウウウウウ…」
「「キュアッ!キュイアッ!」」
洞窟の奥、暗闇の中から唸るような声と小さな高い声が響き渡る。そして暗闇の中で白い影が揺らぎ、ウエディングロードを歩く花嫁のように現れたのは白い糸を全身に纏ったモンスター。傍らには小さなモンスターを引き連れ、大きなモンスターの方が煩わしげにしておらず、むしろ微笑ましげに見ているようにも見えている事から親子の関係なのだろう。
「ギシギシ…」
妃蜘蛛は首を伸ばして周囲を見渡す。つい最近カムラの里付近で確認されたばかりの種でありながらバルバレ地方付近のこんな所まで来ているのは種としての適応力か、目撃されていなかっただけでわりと広く生息しているのか。どちらかは分からないが、興味深げに周囲を見渡している事から新たな住処を求めてやって来たのは間違いないらしい。
「「キュアアア…!」」
「ギュウウウ…」
臣蜘蛛は忙しなく動き回っており、早く洞窟から出たがっているようにも見える。そんな臣蜘蛛達の様子と周囲を見渡した妃蜘蛛は少し疲れたようにように息を吐いた。どうやら地底洞窟の環境はあまりお気に召さなかったらしい。妃蜘蛛だけが気に入らなかったならともかく、
妃蜘蛛は臣蜘蛛達に鳴き声を上げ、自身に戻るように呼び掛ける。この時素直に戻る個体が半数、少しやんちゃに動き回って軽く遊ぶ個体が半数。妃蜘蛛としてもこの程度は可愛い個性として受け入れている。今は
―しかしそれこそが暗殺者の狙いだった。
「「キュアッ!?」」
「!?」
突如上から音もなく伸びて来た糸によって臣蜘蛛の一頭が一瞬で拘束され、終わりの見えない天井に消えた。突然の襲撃に妃蜘蛛は臣蜘蛛達を自身の身体に全て匿い、周囲を警戒する。よく耳を澄ませると、何かが細かく動き回っているような音が天井から聞こえて来る。妃蜘蛛は注意深くその音を追い続ける。今は攻撃の射程外である為手が出せないが、射程内に入った瞬間撃墜するつもりだった。
「━━━━━」
「! ギュアアアアア!!」
そして遂に暗闇の中から一つの影が壁に着地した。それを見た妃蜘蛛は即座に炎のブレスを放った。着地とほぼ同時に放った攻撃。確実に当たると妃蜘蛛は確信した。
「!?」
しかし影はまた暗闇の中に消え、放ったブレスは虚しく暗闇を照らすだけだった。
だがその炎のお陰で、襲撃者の姿を僅かだが捉えられた。襲撃者は着地するとすぐに空中に向かって飛び出し、糸を放って振り子のように揺れながらブレスを回避した。
「キシャアアアッ!!」
「!?」
そしてまた暗闇の中に襲撃者は身を隠した。しかし逃げたわけではないらしく、動き回る足音が聞こえる。しかも上からは毒液が降って来る。
「キュアアアアア!!」
「「キュアッ!!」」
だがいつまでも好き放題を許す妃蜘蛛ではない。臣蜘蛛達を放って引っ張ってもらう事で大きく迂回しながら移動し、ブレスを放ちながら首を回して襲撃者を捉えようと狙う。
ブレスによって周囲に吊るされていた毒怪鳥の死体が糸ごと焼かれ、次々と落ちて来る。
「キシャアアアッ!」
そして暗闇の中から鳴き声が響き、影が落ちて来た。そして露わになった襲撃者―もとい影蜘蛛。
「キュルルルルル…!」
遂に姿を現した影蜘蛛に向かって妃蜘蛛は唸る。小さく脆い故に死んでしまう事は珍しい事ではないが、だからこそ敵や獲物は確実に仕留めるし、意図的に子を狙った外敵を見逃す程妃蜘蛛は甘くない。
「キシイ…」
影蜘蛛はあくまで冷静に妃蜘蛛と相対する。妃蜘蛛は単体でも自分よりも強い。その体躯と威圧感から影蜘蛛はそれを感じ取っていた。雷の次に苦手な火属性の攻撃が主である事もあり、真正面から戦えば確実に敗北する事を影蜘蛛は理解した。
「キュアアッ!!」
「ギュアッ!?」
ならば正面から戦わなければ良いだけの話。影蜘蛛は尻の先から粘着糸を妃蜘蛛に向かって放つ。これ程の体躯、糸で拘束するのは少し難しく思えるが、影蜘蛛が狙ったのは妃蜘蛛ではなく―
「「キュアアアア!?」」
―妃蜘蛛の身体に潜んでいた臣蜘蛛達だった。
暗闇の中から妃蜘蛛を観察していた影蜘蛛は先程の攻撃を見て学んだ。妃蜘蛛の耐久力と火力はとても自身が抗えるものではない。
しかし機動力という点では鈍く、臣蜘蛛達の力を借りねば小回りの利いた動きはできないと見抜いたのだ。故にまずは足である臣蜘蛛の動きを制限する。彼らの力が十全に発揮される状態になればまず手も足も出ないと影蜘蛛は確信していた。影蜘蛛の糸は粘着性が強く火に弱い為、妃蜘蛛が縦横無尽に動き回ってブレスを放ち続ければそれだけで自分は負けると考えていた。
事実それは間違っていない。単純な番付けであれば影蜘蛛が妃蜘蛛に敵う筈もなく、完全に上下関係では圧倒されていた。
「ギュアアアアア!!」
「!」
しかし、知性を活かして立ち回ればいくらでも生き残れる事を影蜘蛛は知っていた。子の動きを封じられ怒りに燃えた妃蜘蛛が前足を振り上げて影蜘蛛を叩き潰そうとするものの、自重故にその動きは鈍く、影蜘蛛にとっては十分に対処可能な攻撃だった。
「キュアッ!」
影蜘蛛は糸を壁に放つと自分の身体を引っ張り、バネの要領で思い切り吹っ飛び妃蜘蛛の攻撃から逃れ、その勢いのままに背後に回り込み、完全に後ろを取った。
「ギュオオオ…!」
そして影蜘蛛の顎が大きく裂けると長い鋏角が飛び出した。かなりグロテスクな絵面だが、その鋏角からは明らかに危険な色をした液体が滴り落ちている。影蜘蛛はその鋏角を大きく開き、妃蜘蛛の足を挟むような位置に着くと―
「ギュオオオッ!!」
バヂィン!!
「ギュアアアアア!?」
―鋏角を勢い良く閉じて妃蜘蛛の足を思い切り挟み込む。鋏角による攻撃は影蜘蛛の中で最も高い攻撃力を持つ。妃蜘蛛の身体を守るように纏っている糸も十分過ぎる程に丈夫だが、流石に身体を覆う甲殻には強度は劣る。猛毒が付着した攻撃をもろに食らった事で妃蜘蛛は体勢を崩してしまう。
「ギュオオオッ!!」
ドスッ!!
「ギュオオ…!?」
影蜘蛛は尻の先から針を出して妃蜘蛛に突き刺す。すると妃蜘蛛の動きが鈍くなった。
影蜘蛛の尻の先にある針は昏睡作用の毒がある。人間であれば数秒もすれば眠ってしまう程の毒だが、大型モンスターである妃蜘蛛相手には精々動きを鈍らせる程度が限界だ。
「ギュオオオオオ!!」
しかし影蜘蛛にとってはそれで十分。影蜘蛛の戦闘スタイルは背後からの不意打ち、あるいは毒、糸、睡眠、自身の状態異常を駆使した持久戦だ。一撃で倒す事は端から考えていなかった。故に焦る必要もない。折角見つけた上物の獲物なのだ。まずは失敗しない事を優先にする。
影蜘蛛は糸を放ち、妃蜘蛛とその周囲に設置する。影蜘蛛の放つ糸は対象に当たらずに地面に滞留し、標的が踏むと付着して動きを阻害する。
毒と睡眠毒によって動きを鈍らせ、糸で更に行動範囲を縮小させ、動き辛くさせる。その戦い方はまさに暗殺者であり、格上である妃蜘蛛を追い詰める程に研ぎ澄まされていた。
この影蜘蛛は、格上すら喰いかねない実力がある。それは揺るぎない事実である。
―それ故か、影蜘蛛は僅かに油断していた。決して舐め切っていたわけではないが、策が上手く行って上機嫌になっていた。
それを知ってか知らずか、妃蜘蛛は勝負を仕掛けた。
「ギシイイイイイ…!!」
「!」
突然妃蜘蛛が独特な鳴き声を発し、身体を不自然に震わせる。影蜘蛛は悪寒を感じ、距離を取る事で自らの安全を優先した。
「━━━━━━━━━━ッ!!」
ゴオオオッ!!
そして妃蜘蛛は身体を大きく揺らし、身体から火炎ガスを発する。影蜘蛛は距離を取った事でダメージは無かったが、身体や地面に付着していた糸は全て焼き払われてしまった。
「ギュアアアアアァァァァァ!!!」
そして自由の身となった妃蜘蛛は身体を毒に侵されているにも関わらず、全力で吼えた。影蜘蛛が距離を取り、こちらが自由になった以上わざわざ構う必要もなくなったが、子が犠牲になっているというのに一撃も与えずに逃げ帰るわけには行かない。
「ギュアアアッ!!」
「「ギュアッ!!」」
妃蜘蛛の戦意に当てられたのか、臣蜘蛛達もやる気十分と言った様子で威嚇する。
そして妃蜘蛛は臣蜘蛛を
「ギュアアアアア!!」
「ギュオオッ…!」
壁に張り付いた妃蜘蛛がブレスを放ち、影蜘蛛は天井に糸を放つ事でそれを回避する―が、それが決定的な隙となった。
「「ギュアッ!!」」
「!?」
「━━━━━━━━━━ッ!!」
ゴオオオッ!!
そして放たれたブレスは寸分の狂いもなく影蜘蛛を撃ち抜いた。雷程ではないが苦手な火属性の攻撃をもろに食らった事で一瞬で全身が燃え上り、その命は尽きた。
「ギュウウウ…!」
きっちり子の仇を討てた妃蜘蛛は満足気に唸り声を上げる。
だが、それと同時に自身の油断が招いた事態でもある。影蜘蛛は今まで会った事のない戦い方をしていたのもあって、格下でありながら苦戦を強いられた。より子を守れるように影蜘蛛の戦法を参考に成長しなければならない。
「「ギュアッ!ギュアッ!」」
「!」
妃蜘蛛が色々と考えていると、臣蜘蛛達が「休め」と言わんばかりに飛び跳ねる。タフネスで誤魔化していたが猛毒と睡眠毒を食らっていた事に変わりはないのだ。
親思いの子達に感謝しながら、妃蜘蛛は休息を取るのだった。
後半雑になったけど元々力の差があるタイプだったからユルシテ…
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
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