それではお楽しみ下さい。
“海底遺跡”
モガの村の下に位置する大昔に沈んだ遺跡。陽の光が僅かしか届かない最奥部には古代人が利用していたと思われるバリスタや撃龍槍が放置されており、古代文明の技術の高さが伺える。
その遺跡の中、とぐろを巻いて眠っている巨大な影が一つ。
「グルルルルル…」
赤い瞳に身体の甲殻は漆黒に染まり、甲殻同士の繋目からは深い蒼色の光を放っている。その風体は“大海の王”と謳われる海竜と瓜二つだが、体躯が倍以上ある。
海竜は永く生き長らえると、規格外の体躯となる。その自重から地上での生活は難しくなり、常時水中で生活するようになる。そこで更に成長を続け、より効率的に狩りをするべく背電殻も発達し、無尽蔵と思える程の電力を生み出せるようになった。
ごく僅かな海竜のみが至る事のできる領域、その希少性から古文書の中で存在が語られ、“冥府の王”、“海神の化身”とも言い伝えられている。
水中のみでの生活が強いられる冥海竜は通常種や亜種よりも深い位置での生活を余儀なくされる。海原にいるエピオスのような手頃な獲物は多くないが、深海に棲まう小型の魚類を渦潮を発生させて捕獲している。特に不都合などはない。
「…!」
その時、眠っていた冥海竜がふと目を覚ます。そしてこの場所に続く遺跡の入口に目を向けるが、そこには何もいない。
しかし冥海竜は確実に何かの存在を感じ取っていた。水中では音が反響して聞こえやすくなる為、身を隠すのは難しい。何より冥海竜の縄張りであるこの場所にはそもそも他のモンスターが近付かない上に、感じられる大きさは冥海竜をも凌駕する程のもの。少なくとも迷い込んでしまったモンスターの線は薄そうだ。
ゴゴゴゴゴ…!
「!」
そして侵入者と思わしき存在が遺跡の入口手前辺りまで到達した時、冥海竜は引っ張られるような感覚を覚えた。すぐに踏ん張って耐えたが、周囲の海水は相変わらず栓を抜いた排水溝に吸い込まれるかのように引っ張られていた。
その感覚がしばらく続いた後にふと、引っ張られるような感覚が消えた。それと同時に冥海竜は悪寒が走り、全速力でその場から離脱した。すると―
ズドゴオオオオオ!!
―冥海竜を丸ごと呑み込めるような大きさのブレスが冥海竜のいた場所を貫いた。間一髪で躱した冥海竜だったが、もし食らっていたら無傷では済まなかっただろうと肝を冷やした。
「ゴオオオオオ…!」
「!」
そして入口からは重々しい唸り声が響き、侵入者がその姿を現す。
真っ暗な水の中でもはっきりと分かる黄金の身体、大樹のように太い角、一見すると巨神にも思える巨体は冥海竜を凌駕している。深海に棲まう巨人、荒ぶる神を超える者として言い伝えられるそのモンスターは―
「グオオオオオ…!」
皇海龍は冥海竜に向かって威嚇する。先程の攻撃と言い偶然迷い込んだというわけではないらしく、明確に冥海竜を追い出すつもりでやって来たようだ。
古龍は並のモンスターは歯牙にもかけない程の実力と悠久の時を生きる事ができる寿命の長さから、活動周期のサイクルが非常に長い。老山龍なども長生きしたものだと千年を越える個体が発見されている。実際に古龍が休眠、あるいは何かしらの事情で縄張りを長く空けていると人間がその場所に文明を築いてしまう、という事がしばしばあるぐらいだ。
今回も恐らくそういった事に近いケースなのだろう。元々皇海龍の縄張り、あるいは気に入った場所に冥海竜が棲み着いていた為に怒り心頭というわけだ。
「グルアアアアアァァァァァ!!!」
しかし冥海竜はそんな皇海龍の怒りを受けてもなお退くつもりはなく、咆哮を返礼とした。
理屈として考えれば理解はできる。怒る理由ももっともだ。だからといって「はい、そうですか」と言って譲るわけには行かない。ここはもう居心地の良い自分の住処だ。絶対に渡さないし、嫌だと言うのなら受けて立つつもりだった。
「グオオオオオォォォォォ!!!」
当然そんな対応をされたとあっては皇海龍も黙ってはいられない。退くのであればまだ軽く痛めつける程度で済ませたが、抗戦するのであれば見逃す事はできない。
「グルオオオオオ…!!」
「ッ…!」
皇海龍の怒りを感じ取った冥海竜は首をもたげてブレスを放つ。禍々しい黒色に輝く雷は皇海龍の表皮に着弾し、その防御力を突破して身体を貫く。
希少種へと進化して発電元である背電殻が更に発達し、電力の貯蓄量、生産力はもちろん火力そのものも向上している。自然の化身たる古龍、その中でも指折りの体躯を持つ皇海龍にダメージを通せる程度には。
「グオオオオオ!!」
しかし大きなダメージを負ったわけではなく、即座に反撃に転ずる。その巨体とは裏腹に高い機動力で突進し、冥海竜を狙う。
「━━━━━ッ!」
突進に伴った水流の勢いに冥海竜は内心驚きつつも身を翻して躱す。相手が古龍とは言え腐っても“大海の王”と謳われる海竜の希少種、水中での機動力は体躯の差もあって十分に負けていない。
「グルオオオオオッ!!」
ドゴオオオオオ…!!
冥海竜はその場でグルグルと渦を描くように回遊すると、複数の渦潮が発生し、尻尾を薙ぎ払うと自律しているかのように渦潮が動き出した。
海竜の主な攻撃手段としては蓄電、放電、ブレスなどが有名だが、実は体躯によって生み出す渦潮も武器の内の一つだ。蓄電も放電も身体にある程度の負担が掛かる為に乱発していてはすぐに疲弊してしまう。
故に普段獲物を狩る際にはその体躯を利用して渦潮を引き起こし、捕食するのが基本だ。しかし外敵との戦闘では隙の大きさとそれに対して期待できるダメージが少ない為に通常種や亜種は使わない事がほとんどだ。
だが、希少種には通常種や亜種を上回る体躯によって渦潮の範囲と数を増やし、戦闘で十分に実用できるレベルに引き上げていた。
その威力は巻き込まれれば間違いなくタダでは済まない。並のモンスターであれば近付いただけで引きずり込まれてしまうだろう。
皇海龍にとってもダメージは負いたくない筈。恐らく躱そうとする。その隙を狙ってブレスを叩き込む。先程の反応を見るに雷撃は弱点なのだろう。冥海竜の実力でも皇海龍の体力を削り切るのは骨が折れる。弱点である雷撃を上手く当てていかなければ撃退もままならない。
そして冥海竜は皇海龍の挙動に目を光らせる。いつどこに回避しても攻撃できるよう備えていると―
「グオオオオオ!!」
「!?」
―皇海龍は回避ではなく、渦潮に突進して強引に突破した。渦潮によって多少勢いは削がれたものの、止まる事はなく冥海竜に突っ込んで来た。
ドゴォ!!
「グッ…!」
咄嗟に身体を捻って回避するが、躱し切る事はできずに角が僅かに直撃して弾き飛ばされた。皇海龍の部位の中でも最も強固な部位を活かした突進は凄まじい威力を誇り、冥海竜は口から血を吐き出す。
「グルオオオオオ!!」
バリィッ!!
「ッ…!」
しかしタダでは終わらず通り過ぎた皇海龍の身体にブレスを放つ。攻撃直後の皇海龍にブレスを躱す事はできず、食らってしまう。
「グオオオオオ…!」
攻撃を食らった皇海龍は苛立ちを感じさせる声で唸りつつも、ダメージに苦しんでいる様子は見られない。事実ブレスを食らった箇所も多少焼け焦げたような痕ができているものの、身体の肉まで焼け焦げているわけではなさそうだった。
「グルルルルル…!」
冥海竜は考える。皇海龍にブレスや噛みつきと言った小技で倒す事はまず不可能だ。一応ダメージは入るしそれを何十発何百発と叩き込めば極論倒せない事はない。
しかしこの巨体に伴った防御力とタフネスを有している皇海龍相手に持久戦や我慢比べは下策だ。蓄電量を気にしなくて良いとは言えダメージを受ければ当然パフォーマンスは低下するし、大きな放電をした後は体力の消耗がある。
とは言え、皇海龍を倒すには確実に最大出力の放電が必要になる。消耗や出し惜しみをしていてはこちらがやられてしまうかもしれない。冥海竜は覚悟を決めた。
「オオオオオ…!」
皇海龍は忌々しげに冥海竜を睨みつける。弱点である雷を操ることもそうだが、それだけでは自身の防御力を突破する事はできない。小技のブレスで軽傷とは言えダメージを与えられる時点で大技であれば倒される可能性は十分にある。格下などではなく、油断ならない外敵であることを認識した。
互いに本当の意味で相手を認めた二頭は、自身の全力を解放する。
「グルアアアアアァァァァァ!!!」
「グオオオオオォォォォォ!!!」
二頭の海神は同時に吼え、水中を震わせる。冥海竜は口元から漏れ出る程の雷を滾らせ、皇海龍は身体を赤く発光させて周囲も怒りに呼応するかのように赤く染まった。
「グルルルルル…!」
本気を出した二頭だが、始めから猛攻を仕掛けるわけではなく、冥海竜はゆっくり皇海龍の周囲を回游し、皇海龍はそんな冥海竜を深追いせずに目で追うだけに留める。互いに無駄な行動は取らず、皇海龍は冥海竜が仕掛けて来るのを、冥海竜は皇海龍が動くのを待つ。
そして冥海竜が海底遺跡を二周した時、とぐろを巻いて力を溜めると―
「グルアアアアアァァァァァ!!」
―身体をきりもみ回転させながら猛スピードで突進して来た。その身体には黒雷を纏っており、皇海龍と言えどもまともに食らえばタダでは済まない。
「グオオオオオ!!」
ドゴン!!
「グオッ…!」
皇海龍は凄まじい速さで突っ込んで来た冥海竜の動きを見切ると直線上から僅かに身体をズラし、カウンターで尻尾を冥海竜の身体に叩き付ける。冥海竜の纏っていた雷も相応の出力が高かったのか、皇海龍の身体を焼き貫くが、構わず振り抜く。
「グルアアアアアッ!!」
「…ッ!」
冥海竜は咄嗟に拡散するブレスを放ち、皇海龍への目眩ましにする。体躯と体力で劣る以上、接近戦は絶対に避けなければならない。
「━━━━━ッ!」
「!」
そして距離を取った冥海竜だったが、皇海龍の取った行動に驚いた。絶対に逃さないようにしてくるかと思いきや、皇海龍も同じように距離を取ったのだ。
「グオオオオオ…!!」
皇海龍は唸ったかと思うと先程の冥海竜のように周囲をグルグルと回游し始めた。そこで冥海竜は皇海龍の目的を悟ったが―
ゴオオオオオ…!!
―阻止するには一手遅かった。皇海龍の体躯と遊泳速度によって生み出された渦潮の規模は冥海竜の比ではなく、海底遺跡全体を覆い尽くせる程の大きさとなっていた。
「グオ…!」
冥海竜も流れに振り回されないよう踏ん張るので精一杯であり、皇海龍の位置が分からない。敢えて流れに乗る事も考えたが、皇海龍も同じ事ができる以上追い付かれたら意味がない。
もういっその事リスク承知で最大出力の放電で吹き飛ばすかと考えていると―
ズドゴオオオオオ!!!
「グオ━━━━━…ッ!?」
―下方向から激流ブレスが放たれ、冥海竜は回避する間もなく呑み込まれた。
皇海龍は渦潮の流れに紛れて遺跡の下層部に移動していた。接近戦を仕掛けて一気に終わらせる方法も考えたが、反撃で放電を食らっては元も子もない。このまま流れに乗って移動しつつゲリラ的に激流ブレスを放って仕留める。
皇海龍は吹き飛ばした冥海竜の行方を探すが、姿がどこにも見えない。ブレスを当てる為に一旦その場で踏ん張る必要があったが、ブレスを放ったその一瞬だけは冥海竜の姿が見えなくなる。
「まさか」と考えた時には渦潮の中から黒い影が飛び出して来た。
「グルアアアアアァァァァァ!!」
ゴガアアアアア!!!
―弾丸のように突っ込んで来た冥海竜はもはや捨て身のつもりで来たのか、皇海龍の眼の前に辿り着くと同時に全力で大放電を放った。
その威力は海底遺跡全体の海水を一瞬で爆発させる程であり、轟雷が轟くような音と同時に大爆発を引き起こした。
「グルル…」
電気に耐性があるとは言え、爆発によって揉みくちゃにされた冥海竜はどうにか体勢を立て直す。背電殻の輝きも失ってはいないが、全身の甲殻にはヒビが入っていたり歪んでいる箇所もあり激流ブレスで大ダメージを受けたことが伺える。
事実最後の大放電で半ば特攻同然だった。しかし先に重傷を負った上に皇海龍は接近戦を避けるような立ち回りをしていた以上勝つには攻撃直後の隙を狙うしかなかった。
そうして策が成功したのは良かったが、問題は皇海龍を撃退し得る程のダメージが与えられたかどうかだ。一応戦おうと思えば戦えるが、先程のような無茶はもうできない。できることなら手打ちにしたいが…
「グオオオオオン!!」
「!」
冥海竜が注意深く周囲を観察していると、皇海龍は瓦礫を吹き飛ばしながら姿を現した。その身体には痛々しい焦げ痕ができており、立派な角も傍から見ればヒビが入っているように見えた。
しかし状況としては非常にマズい。あの様子を見るに心底頭にきているようだ。これ以上続けるなら命の懸ける覚悟をしなければならない。
「……………」
「…………?」
冥海竜は内心緊張しながら皇海龍を睨みつけるが、予想に反して皇海龍は仕掛けて来ない。周囲が赤く染まったままであることから、怒りが収まったわけではない筈なのだが…
「グルルル…!」
内心これ以上戦いたくなかった冥海竜は、試しに軽く唸りながら後退してみる。まだやるというのなら容赦しないが、できることならここで引き下がろうという意思表示。皇海龍が無傷であったのなら乗らないだろうが、皇海龍もダメージを負っている以上やりたくはない筈だ。後は乗ってくるかどうかだが―
「…グオオオ…!」
―皇海龍側としてもこれ以上はゴメンらしく、同じように唸りながらゆっくりと後退する。
そして冥海竜はより深い水底へ、皇海龍は地上からの光が降り注ぐ海面へ向かって行った。
深淵の玉座を戴く者は達の戦いは、きっとまだ続いて行くだろう。
この二頭は水中戦なきゃマジで復活ないからなぁ…どうにか復活して欲しい。ストーリーズで復活ないかな…
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
メインモンスター+αでコイツが好き
-
リオレウス
-
イャンガルルガ
-
クシャルダオラ
-
エスピナス
-
ティガレックス
-
ナルガクルガ
-
ラギアクルス
-
ジンオウガ
-
ブラキディオス
-
ゴア・マガラ
-
セルレギオス
-
四天王
-
双璧
-
ネルギガンテ
-
イヴェルカーナ
-
マガイマガド
-
メル・ゼナ
-
今回の司会ちゃん