こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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そろそろこの作品を投稿し始めて一年かぁ…時の流れは早いですねぇ…

それではお楽しみ下さい。


災厄の星

 “導きの地・荒野地帯”

 

 謎の地鳴りと火災が収まり、少しは騒ぎが収まった導きの地。主もやっと落ち着き、力の弱い小型、中型モンスター達も若干怯えは抜けきっていないものの、元の居場所に戻って来ていた。

 そして超災害級の古龍の襲来前から荒れていた荒野地帯も、今や安定している。そもそも苛烈にモンスター同士が争っていたのは主である滅尽龍がひょんなことから姿を晦まし、その後に残った広大な縄張りを求めていたからだ。

 ならば、その縄張りの主が戻って来ればどうなるか―

 

 

 

 

 

「ゴルルルル…!」

 

 

 

 

 

 ―そう、その強さを知っている他のモンスターは大人しく引き下がるしかない。随分長い間姿を晦ましていたが、異常気象が収まった頃にふと戻って来たのだ。

 しかも何があったのか、全身の棘を金剛棘に変質させ、特殊個体となって戻って来た。当然以前の主である滅尽龍と同一個体という確証はないが、姿を晦ます要因となった鏖魔との戦いで負ったとされる傷が確認できた事、下剋上精神が強い導きの地のモンスター達が滅尽龍に一切立ち向かう様子を見せずに沈静化した事から以前の主である滅尽龍でほぼ間違いないとされている。

 

「グルルルル…」

 

 さらなる力を手に入れて戻った滅尽龍も安定している以上暴れる事はなく、縄張りで気ままに過ごしており、今は全身の棘を齧って整理しているようだった。

 調査団としても導きの地の秩序を保ってくれるのなら願ってもない事であり、下手に刺激を加えないよう滅尽龍の調査は見送られている。そんな調査団の動きもあってか、今の導きの地は穏やかな環境となっていた。

 しかし大自然はいつも優しく厳しいもの。その安寧がいつまでも続くとは限らない事を調査団、そして導きの地に棲まうモンスター達も理解していた。

 

 

 

 

 

 ゴオオオオオ…!

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―滅尽龍が何かを感じ取った様子で空を見上げると、赫い彗星が空を流れていた。昼間でありながら彗星が流れるというのはおかしな話だが、人間であれば「珍しい」と思うだけで深くは考えない。

 

「ゴルルルル…!」

 

 だが滅尽龍は目を逸らすどころかまるで威嚇するように喉を鳴らす。すると空を流れていた彗星は急に一点で停止する。

 

「ッッ!!」

 

 それを見た滅尽龍は目を見開き、その場から大きく飛び退く。飛び退くと同時に彗星が強く輝くと―

 

 

 

 

 

 ズドオオオオオン!!

 

 

 

 

 

 ―音を彼方に置き去りにして滅尽龍に向かって落下して来た。飛び退いたお陰でダメージこそ無かったものの、規格外の速さに驚くと同時に凄まじい轟音と衝撃波が辺りに広がった。

 

「ギュオオオオオ…!」

 

 そして衝撃波と共にできたクレーターの中から影が姿を現す。

 銀を基調とした鋭いシルエットに噴射口を備えた翼。その姿は“銀翼の凶星”の異名を持つ天彗龍、バルファルクのもの―だが、所々おかしな点がある。

 翼の噴射口や背部が赫く染まっており、地上に降りている時であれば噴射しなくても良い筈の龍気を常に噴射口から溢れさせている。

 見るからに特殊個体という風体だが、当然その通り。この個体は恐暴竜の特殊個体と同じように自身が生み出す龍気に呑み込まれて暴走に近い状態に陥った個体―

 

“奇しき赫耀の”バルファルク

 

「ギイイイイイン…!」

 

 天彗龍は滅尽龍に向かって唸る。本来天彗龍は超高高度を飛行し、獰猛性こそ高いものの獲物を捕獲する際以外には地上に降りて来る事はなく、近年存在が確認されるまではずっと伝承上の存在だと信じられていた程だ。

 しかしこの個体は龍気に身体を侵された事によって凶暴性が格段に向上し、積極的に地上へ降りる姿が確認されており、とあるハンターからは「別のモンスターと戦っていると妙な気配を感じ、気付いた時には天彗龍が突っ込んで来ていた」というとんでもない報告も挙がっている。

 暴走というのも比喩でもなんでもなく、格上である嵐龍が暴れる中、躊躇なく強襲を仕掛けたという事例も存在する。流石に超大型古龍相手には分が悪く、多少怯ませるだけで終わった為に嵐龍相手には撤退を余儀なくされたようだが、格上相手にまで強襲を仕掛ける凶暴性は危険過ぎると判断され、存在が確認されたカムラの里近辺では最上位の危険度を持つモンスターとされている。

 

「ゴルルルル…!」

 

 滅尽龍も先程の襲撃の規模からただならぬ相手だと判断し、様子を見る意味合いも兼ねて威嚇する。戦ったとして負ける気はないが、これ程の相手に突っ込むのはよろしくない。勝ったとしても後が怖い。

 

「ギュアアアッ!!」

 

「!」

 

 なお自ら突っ込んで来た天彗龍は退くわけもなく槍翼を突き出して滅尽龍を貫こうとする。滅尽龍は横に跳んで躱し、鋭い瞳で天彗龍を睨む。こんな真似をされては流石に黙っていられないし、後が面倒になると言ってもそれらも追い返せば実質問題なしだ。

 

「ゴアアアアア!!」

 

「━━━━━ッ!」

 

 滅尽龍は負けじと吼え、前足を振り上げて天彗龍に向かって叩き付ける。しかし天彗龍は翼から龍気を噴射して加速し、攻撃を躱した後に空中でホバリングしながら様子を見る。

 

「オオオオオッ!!」

 

 滅尽龍は空中にいる天彗龍を叩き落とそうと跳躍し、前足を振り上げる。天彗龍はそれをギリギリまで引き付け―

 

 

 

 

 

「━━━━━ッ!」

 

 

 

 

 

 ―龍気を一気に噴射すると同時に器用に槍翼の角度を調整してカーブするようにして滅尽龍の攻撃を躱すと噴射口を滅尽龍の方に向けて龍気弾を発射する。

 

「グ、ウ…ガアアアアア!!」

 

「!」

 

 龍気弾を食らった滅尽龍は多少嫌がるような素振りを見せたが、すぐに振り払うと天彗龍に向かって突進する。翼の向きの切り替えが間に合わなかった天彗龍は滅尽龍からもろに組み付かれてしまう。

 

「ゴアアアアア!!」

 

「グッ…!」

 

 頭を狙っての前足の叩き付け、全身への齧り付きと容赦ない攻撃手段を取ってくる滅尽龍に天彗龍は苦戦する。

 

「キュルルルル…!」

 

 しかし槍翼を上手く身体の外に逃がした天彗龍は、それを滅尽龍の背中に接触するギリギリに定める。

 

「━━━━━ッ!!」

 

 ズドン!!

 

「ゴアッ!?」

 

 そして一気に龍気を噴射させ、滅尽龍の背中を突き刺す。流石にこの攻撃は効いたらしく、滅尽龍は仰け反って怯む。

 

「ギュアアッ!!」

 

 ズドッ!!

 

「ゴウウ…!」

 

 その隙にもう片方の槍翼も脱出させた天彗龍は滅尽龍に向かって槍翼を突き出し、吹き飛ばす事で身体の自由を取り戻した。

 

「ギュアアアッ!!」

 

 滅尽龍がまだ体勢を立て直している事を把握した天彗龍は龍気をチャージして一気に解放し、音速を越えた突進で追撃を狙う。

 

「! ゴルルルル…!」

 

 起き上がった滅尽龍は眼の前まで天彗龍が迫っており、回避は不可能だと一瞬で判断すると後ろ足で立ち上がって前足を突き出し、受け止めようとするが―

 

 

 

 

 

「━━━━━ッ!!」

 

 ズドン!!

 

「ゴアッ…!?」

 

 

 

 

 

 ―拮抗したのはほんの一瞬であり、そのまま吹き飛ばされてしまった。

 鋼龍や炎王龍の突進を真正面から受け止められる滅尽龍だが、流石に音速を越えた天彗龍の突進相手には分が悪かったようだ。

 

「ギュオオ…━━━━━ッ!!」

 

 滅尽龍を吹き飛ばした天彗龍は旋回すると、もう一度加速して滅尽龍を狙う。加速した状態の自分に追い付けない事は分かった。ならば当然それを活かして翻弄するのが最善手となる。

 そして天彗龍の身体が眼前に迫り、そのまま滅尽龍を貫く―

 

 

 

 

 

「ゴアアアアア!!」

 

 バギィ!!

 

「…ッ!?」

 

 

 

 

 

 ―と思われたが、天彗龍の姿を確認した滅尽龍は凄まじい速度で反応し、横から前足を振るって天彗龍を吹き飛ばした。

 躱す事だけならまだしもまさか反撃まで食らわせてくるとは思っていなかった天彗龍はもろに食らってしまい、空中姿勢の制御ができずに何度も地面をバウンドしながら転がる。

 

「ゴルオアアアアアッ!!」

 

 そこから滅尽龍は容赦なく天彗龍を追撃する。飛ばれてしまえば厄介だが、地上での接近戦ならば自分の方に分がある。勝負を長引かせるつもりはなく、ここで決めてしまうつもりだった。

 

「ギュオオ…━━」

 

 一方天彗龍は槍翼の噴射口を滅尽龍の方に向けて照準を定めていた。恐らく龍気弾を放つつもりなのだろうが、あれは来ると分かってさえいれば大したダメージにならない。滅尽龍は多少手傷を負おうとも、そのまま突っ込んでしまう心構えだった。

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 ズドオオオオオ!!

 

「!?」

 

 

 

 

 

 しかし、実際に放たれたのは龍気弾ではなく、凄まじい規模の龍属性のレーザーとも思える攻撃―“龍閃”を放った。

 空中でかつ予想を遥かに越える規模の攻撃に滅尽龍は躱せず呑み込まれてしまった。

 

「グ、オオオ…!」

 

 そして生き残って見せたがダメージは大きく、全身に焦げ跡が目立ち、棘もかなり圧し折られていた。

 

「ギュウウウ…!」

 

 しかし見事に反撃を当てて見せた天彗龍もまた、余裕のある状態ではなかった。先程の反撃に加えてその前の猛撃のほとんどを頭部に食らった影響で少しふらついている。“龍閃”も当てられたから良かったが、一度見せた以上二度目は簡単に当たってくれない事を、天彗龍は理解していた。

 

 “このままでは厳しい”。そう感じ取った二頭が取った行動は同じものだった。

 

 

 

 

 

「ギイイイイイィィィィィン!!!」

 

「ゴルアアアアアァァァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 二頭は天に向かって吼え、天彗龍は槍翼だけでなく頭部からも龍気を溢れさせ、滅尽龍は見た目の変化こそないものの、感じる怒気と殺気は更に恐ろしいものとなり、金剛棘の再生が龍属性の影響があるにも関わらず明らかに速くなった。

 互いに古龍としての力を全開にして睨み合い、僅かな静粛を破ったのは―

 

 

 

 

 

「「━━━━━ッ!!」」

 

 

 

 

 

 ―奇しくも同時の攻撃だった。

 天彗龍の槍翼による突きを滅尽龍が前足を叩き付けることで無力化し、そのまま飛び掛かって抑えつけようとする。

 

「ギュオオオオオ!!」

 

「グッ…!」

 

 天彗龍は槍翼を横に薙ぎ払い、空中に飛び上がった滅尽龍を叩き落とそうとする。滅尽龍は身構えていた為大きなダメージにはならなかったが、空中で食らって踏ん張りが利かずに吹き飛ばされてしまう。

 

「━━━━━ッ!!」

 

 天彗龍は間髪入れずに槍翼から龍気を噴射し、滅尽龍に向かって突進する。距離があまり開いていない為に加速しきってないものの、同じ古龍ですら凌駕する程の速さだ。体勢を崩した滅尽龍相手への追撃としては十分だと、天彗龍は判断した。

 

 

 

 

 

「ゴルオアアアアア!!」

 

 ズドドドドド!!

 

「ギュアアアアア!?」

 

 

 

 

 

 しかし、滅尽龍はその予想を上回り、持ち前のパワーで強引に体勢を立て直すと思い切り地面に前足を突き立てて圧力で棘を圧し折り、散弾のように金剛棘を天彗龍に向かって飛ばした。

 

「ゴアアアアア!!」

 

「━━━━━…ッ!!」

 

 バシュン!!

 

「グッ…!」

 

 怯んだ天彗龍を追撃しようとした滅尽龍だが、天彗龍は宙返りの要領で龍気を噴射しつつ身体を捻り、攻撃を凌いだ。

 

「ギイイイイイ…!」

 

「ゴルルルルル…!」

 

 全力を出した状態でもなお優位を取れない状況に二頭は目を細める。今までの攻防から考えるにこのままダラダラと戦った所で状況がどちらかに傾く事はないだろう。

 

「ギイイイイイ…!」

 

「! ゴアアアアアッ!!」

 

 すると天彗龍が突然天を向いて妙な鳴き声を上げる。嫌な予感を感じ取った滅尽龍は下手な事をされる前に仕留めるべく飛び掛かる。

 

「━━━━…ッ!!」

 

 ボッッ!!ドンッッ!!

 

「!?」

 

 その前に天彗龍が一瞬で加速し、天空に飛び立った。赫い光となった天彗龍は空を円を描くように飛行している事から逃げたわけではないらしい。恐らく最初の襲撃と同じ攻撃をするつもりだろう。

 

「━━━━━ッ!」

 

 いくら回復力に優れていると言ってもあの攻撃をもろに食らえば大ダメージを受ける事を悟った滅尽龍は金剛棘を最大まで硬化させ、空中へ飛び上がる。

 

「ゴルアアアアアァァァァァ!!!」

 

 そして翼を広げて吼えると彗星―天彗龍に向かって突進する。

 

キィン…!

 

 空を駆けていた天彗龍は一際強く輝き、滅尽龍に狙いを定める。かなりの距離が開いているが、二頭の瞳はハッキリとお互いを捉えていた。

 

 

 

 

 

「「━━━━━━━━━━ッ!!」」

 

 ドゴオオオオオン!!

 

 

 

 

 

 音速を越えた赫き彗星と、一切の存在を許さない不倶戴天の突進が激突した。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

「グ、オオオオオ…!」

 

 激突後、地面に落下した滅尽龍は荒地の砂を被りながらも起き上がった。しかし身体の棘は全て折れ、龍気によって止血こそできているが全身から血が出ている。肉弾戦に特化した滅尽龍だからこそなんとか立ち上がれているが、他の古龍であればそれすら難しかったかもしれない。

 

「ギュ…オオオオオ…!」

 

「!」

 

 一方、天彗龍も滅尽龍との激突から生き長らえていた。しかし身体のあちこちに金剛棘が突き刺さり、かなりのダメージを負っている事が目に見えて分かった。

 

「ゴルルルルル…!」

 

 傷の痛みに耐えながら、滅尽龍は天彗龍を威嚇する。その血肉で腹を満たしたい気持ちは山々だったが、これ以上の戦いは命を落としかねない。故にここで逃げるなら見逃す事に留める。

 

「……………」

 

 滅尽龍からの威嚇を受けた天彗龍は何か考え込むように黙り込み、顔を伏せる。

 

「…ギュルル…」

 

 そして一瞬導きの地の奥地―()()()()()()()()()()()()()()()。が、それもすぐに目を背けると滅尽龍に背を向け、龍気を吸引する。

 

「ギイイイイイ…ッ!!」

 

 ドンッ!!

 

 そして襲撃して来た時と同じように、目にも止まらぬ速さで飛び立って行った。赫い彗星がどこかへ向かっている事から本当にもう手を出すつもりはないようだ。

 

「ゴルル…」

 

 事態が収まった事に滅尽龍は安堵のため息を吐く。折角戻って来たというのに続け様にこんなハードな戦いばかりでは身が持たない。憂晴らしに手頃な獲物を喰らいたい所だが、もう少し回復を待たねばならない。

 

 ドドン…!ズズン…!

 

「!」

 

 そうしているとそう遠くない場所で木々を薙ぎ倒すような轟音と振動が伝って来た。恐らく瘴気地帯の主である恐暴竜だろうか。それと何かが戦っているのだろう。

 向かっても良かったが、疲労が大きい滅尽龍はまずは回復を優先した。もしこちらに侵入して来るようなら迎え撃つまでだ。滅尽龍は一先ず寝床に向かった。

 

 

 

 

 

―NowLoading―

 

 

 

 

 

 滅尽龍と争う天彗龍の姿を確認した調査団は、災厄の象徴とされる天彗龍―それも暴走した特殊個体が飛来した事で次なる災害に戦々恐々としていた。




はい、今回はここまで。次にバルファルクが出る時には縄張り争いにも期待したいですね。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

メインモンスター+αでコイツが好き

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